2019年05月19日

渥美幸裕 ニッポンノオト2.0

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渥美幸裕/ニッポンノオト2.0
(NIPPON NOTE RECORDS)



突然ですが「邦楽」って言うといわゆるジャパニーズ・ポップスやロックなんかを思い浮かべますが、更に伝統的な和楽器を使って演奏する音楽やいわゆる民謡などのことを「純邦楽」って言うんです。

この分野、アタシなんかは民族音楽の流れで聴いたりするんですが、やっぱり「音楽」というよりは「伝統芸能」として知られているから、世の音楽好きの皆さんにはなかなか馴染みが薄いことと思われます。


いや〜、でもこの辺の音楽ってすっげぇ面白いんですよ。

ちょいと昔に奄美でもトランス・ミュージックが流行った時、お店に来るお客さんと雅楽とか 瞽女(ごぜ)さんの唄とか聴きながら「これをトランスミックスしたらヤバいよね!」とか、そういう話で盛り上がったりした事があって、で、武満徹が作った邦楽とクラシック(現代音楽)の素晴らしいクロスオーバーであるところの名曲『ノヴェンバー・ステップス』とか、純邦楽ではないけれど、アジアの民俗楽器を大胆にジャズ・インプロヴィゼーションのフィールドで仕様したマッコイ・タイナーの『サハラ』とか、あの辺をお店でかけあがらワイワイ盛り上がった覚えがありますが、そう、逆に流行やヒットチャートなどから離れた所にある「日本古来の音楽」というのは、アタシら現代人の感覚から見たらどこかエスニックな情緒を感じる「アジアの音楽」であると同時に、やはり遺伝子レベルで不思議な懐かしさを感じる音楽になっておるのかも知れません。

しかし、一口に「日本の伝統音楽」と言いますが、その原型は古代から徐々に形作られていったという雅楽をはじめ、元祖ポップスといえる「今様(いまよう)」、能楽やそのルーツとなった猿楽や田楽、歌舞伎や浄瑠璃、それに絡んでの長唄や地歌、筝曲、などなどなど、長い歴史の中で、時代の流れや人々の生活スタイルに沿って、日本の音楽もまた、新しいものを生み出したり、枝分かれして進化していったりと、今に至るポピュラー・ミュージックと何ら変わらない道を辿って来た訳です。


日本の伝統音楽から「伝統音楽」っていう、何だかよくわからんが高級で有難いものっぽく思える肩書を取っ払って聴けば「日本の音楽」はとってもパンクでアナーキーで面白い(!)

そんなこんなで純邦楽と呼ばれている日本の音楽について知れば知る程、普段好きで聴いてるポピュラー・ミュージックへも良い刺激となってそっちも色々と楽しく聴けたりするんです。

あぁ、こういう話は楽しいなぁ、誰かもっと詳しい人からお話を伺えないかしら、と思っておりましたら、先月「渥美幸裕さんというギタリストの方が、日本の古典音楽に凄く詳しいよ。お話しない?」とご紹介を頂きまして、奄美市内の喫茶店でたくさんお話を伺いました。


渥美さんは元々スタジオ・ミュージシャンとしてジャズやポップスのフィールドで活躍しておりましたが、お父様が筝(琴)の演奏家だったということもあり、ある日自分自身のルーツである日本の古典音楽の探究に乗り出したという経歴をお持ちの方であります。

伺ったお話は、アタシが思う「純邦楽」の範疇を大きく超えて「古代日本に入って来た音楽のルーツ」の話から「一括りにされている伝統音楽だが、それぞれを見てみると、実は全く新しいものを取り込んで、時代時代で確実にアップデートされてきている歴史がある」という、非常にスケールの大きなお話を、とてもわかりやすく噛み砕いた語り口であり、とても楽しく実りの多いものでありました。

そう「アップデート」という言葉がひとつの大きなキーワードだったんですね。

その中で渥美さんご自身の活動についてのお話を伺うに、今現在その「伝統音楽の枠組みとして存在する日本の古典音楽をアップデートする試みに取り組んでいる」ということで、その内容というのが、アタシも普段から「こういう日本の音楽があったらなぁ」と、ぼんやり夢想していたことそのものだったので、まずはその活動を専門的な言葉を使ってどうこう言うよりも、実際の音源を皆さんには聴いて頂きたいと思います。






NIPPON NOTE 2.0

【収録曲】
1.鈴の段 -超訳三番叟-
2.越天楽 (唱歌バージョン)
3.金と銀
4.いぞみ
5.京の四季 春夏
6.越天楽
7.東山の月
8.天照 -超訳三番叟-
9.秋の嵐
10.揉の段 -超訳三番叟-
11.さくら変奏曲
12.胡飲酒
13.座標 001
14.平穏歌



上記リンクはアマゾンのストリーミングです。CDはオフィシャル・ホームページからお求めください
http://atsumiyukihiro.net/index.html#profile



『ニッポンノオト2.0』というタイトルのこのアルバム、文字通り雅楽から能楽、長唄、唱歌まで、日本の伝統的なものからそれぞれの音楽に着想を得たオリジナル楽曲が、文字通りアップデートされた斬新なアレンジで、目一杯浸るように楽しめます。

じっくりと時間をかけて何回も聴きました。

非常に惹かれたのは、単純に「伝統音楽に現代の音楽を掛け合わせたものではない」という事です。

よく、民謡や純邦楽の、ロック風だったりジャズ風だったりするアレンジを被せたものは世に出ております。

それはそれで楽しいものもあるのですが、双方のやっている事に対する理解の壁というものが往々にして立ちはだかり、大味、或いは消化不良になってしまうものが多かったりするんです(そこへ行くと生粋のアメリカン・ミュージックに潔く斬り込んでいった国本武春はすげぇカッコイイ訳です。おっと余談)。




サウンドは純邦楽の楽器の”そのまんま”のサウンドに、渥美さんのギターや、エレクトロニカのアレンジが溶け合って鳴っております。

これだけ書くと邦楽のエレクトロニカアレンジかと思われるでしょうが、ここで鳴っている音は全て「音楽」という同じ地平で溶け合って響き合っております。

古典楽器の演奏に、異物としてのギターやエレクトロニカを掛け合わすのではなく、恐らくリハーサルの段階から厳しく音を精査して、独自の”間”を持つ日本の音楽と同じように、引き算でギターを鳴らし”間”の効果を最大に活かす効果としての電子音やドラムのリズムを作り込んでいるのでしょう。

雅楽は、その音の荘厳な響きの中から華麗な空白が立ち上がり、三味線浄瑠璃や地歌は「ベン」と三味線が鳴ったその瞬間に、美しい闇がそこに零れて情景を拡げます。そんな空白や闇は、ドカドカと足し算で音を加えてしまっては聴く人に認識されないままに埋もれてしまう。ところがここではどうでしょう。空白も闇も、更に現代を生きる私達の感覚に近いものとしてリアルに姿を現します。

伝統として意識してもしなくても、日本人である私達の感覚や記憶といった、目に見えない部分に直接届いて揺さぶったり宥めたりしてくれる音楽。あ、これが「ヴァージョンアップ」というやつなのだなと、今日に至るまで50回は深くうなずいたと思います。

音楽って、本来目には見えないものですよね。そういう意味でこのアルバムに収められている音楽は、形容をスッと外した純粋な「今の音楽」だと思うのです。





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2019年05月16日

DJイベント『Have a Good Time』でした。

昨晩は屋仁川にあるカフェ『ポノポノ』にて、DJイベントに参加してプレイしてきました。

DJするのっていつぶりでしょう、本当に何年ぶりか分からないぐらいです。

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嬉しくなったのでテーマを「ブラック・ミュージックの歴史」にして、マ・レイニーから始まってジャズをほろほろ流してカーティス・メイフィールドのラスト・アルバムで終わろうと。まぁ思惑通り色々とかけました。

お酒や会話をまったり楽しみながらの、良い意味でのユルユルなイベントです。アタシも久々に会う音楽仲間のみんなと楽しくお話しながらユルユルと。。。

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ブースにいるとわざわざの差し入れがあったり(お菓子うわぁい♪)

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「ぷくぷく鯛」が余りにキュートだったもんで記念にぷくぷくした顔でパシャリ(見苦しき面体、盛大に晒しますいちいち失礼さんでございます)。


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今回は主催や出演の人達が、昔サウンズパルのカウンターにアタシが立っていた頃の高校生で「あの頃色んな音楽聴かせてもらいながらワイワイやってた感じが凄く懐かしくて、今奄美にああいうのあったらいいなと思って出演して欲しかったんです」という、もう涙出そうなぐらい嬉しい依頼だったんです。

そしてお菓子を差し入れしてくれた人達や、アタシが出るっていうんでわざわざ来てくれた人も。

皆さん本当にありがとうございます、これ以上書くときっと泣いてしまいます。








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2019年05月15日

クリフォード・ブラウン ザ・ビギニング・アンド・ザ・エンド

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クリフォード・ブラウン/ザ・ビギニング・アンド・ザ・エンド
(Columbia/ソニー)

「ジャズ」と聞いて真っ先に頭の中に浮かぶ音といえば、やっぱり1950年代のモダン・ジャズ。

そのモダン・ジャズのトランペットのスタイルを確立した人といえば、マイルス・デイヴィスとクリフォード・ブラウンが双璧だと思います。

23歳で「さあこれから!」という時に不幸にも交通事故で亡くなったブラウンに比べ、長いキャリアを生き抜き、その間革命的とも言えるスタイルの変換を何度も行ってきたマイルスの方が、ジャズファン以外にも有名ではありますが、それまでの高速で直線的なノリのビ・バップに見切りを付けて、クールで小粋なスタイルを確立させたのがマイルスなら、ビ・バップのスピリッツをそのまま受け継ぎつつ、新しい時代のグルーヴにそのホットな情熱を掛け合わせる事に成功した、言わば王道を突き進んだのがブラウンと言えるでしょう。


つまり、同じ50年代の始まりの時期に同じ楽器のパイオニアとして注目を集めた2人のスタイルが全く正反対なんです。

で、マイルスはそのワン・アンド・オンリーで追従者さえ寄せ付けない程のカリスマであったのに対し、ブラウンの方は死後にその後に続くあらゆるトランぺッター達に影響を与えております。

リー・モーガン、フレディ・ハバード、ドナルド・バードといった人達は、マイルス、ブラウンらのちょい後に出て来た人気プレイヤーで、彼らもまたモダン・ジャズ(ハード・バップ)を代表する名手と言われておりますが、そのプレイ・スタイルからは、マイルスよりもクリフォード・ブラウンの粋と熱情が入り混じった表現の継承を強く感じます。

ジャズ・トランペットの魅力といえば、金管らしい強力なヒットと音そのものの熱い質感。

いや、アタシは元々それが苦手でした。苦手でしたがブラウンのその誠実さ溢れる熱意が込められたひと吹きに、やっぱりヤラレてしまい、更にアドリブの、熱を感じさせながらも繊細に美しくフレーズを紡いでゆくそのセンスに夢中になり、更にそれだけに止まらない、聴けば聴く程ジワジワと味わいを感じさせてくれるブラウンの音楽は、今ではもう生活に欠かせないようなものになっております。

前回はブラウンの、端正な部分の魅力が楽しめる、西海岸アレンジの『ジャズ・イモータル』をご紹介しましたが






今日はブラウンの、より剥き出しの素顔をかいま見ることの出来る素晴らしいアルバムをご紹介しましょう。



ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド(期間生産限定盤)


【パーソネル】
(@A1952年3月21日)
クリス・パウエル(vo,perc)
クリフォード・ブラウン(tp)
ヴァンス・ウィルソン(as)
エディ・ランバート(g)
デューク・ウェルズ(p)
ジェイムス・ジョンソン(b)
オシー・ジョンソン(ds)

(BCD1955年5月31日)
クリフォード・ブラウン(tp)
ジギー・ヴィンス(tsB)
ビリー・ルート(ts,CD)
サム・ドッケリー(p)
エイス・ティンソン(b)
エリス・トリン(ds)

【収録曲】
1.アイ・カム・フロム・ジャマイカ
2.アイダ・レッド
3.ウォーキン
4.チュニジアの夜
5.ドナ・リー


『ザ・ビギニング・アンド・ザ・エンド』は、1952年のまだソロ・デビューする前のブラウンが参加していたクリス・パウエルのバンドにいた頃の演奏2曲と、1956年、つまり彼が亡くなる直前のラスト・ライヴの演奏と言われていた4曲のカップリングであります。

まず驚くのが『ビギニング』の2曲。

これ、聴く前は書籍とかで「R&Bバンドにいた頃の」と紹介されてたんですが、やっている音楽はびっくりのラテンであります(!)

パーカッションを叩きながら陽気に歌うクリス・パウエルを中心に、アフロ・キューバンなチャカポコのグルーヴが大変気持ち良い。

ジャケットからして渋くてハードボイルドなジャズを期待していたアタシにとっては、これは嬉しい誤算で、ついうっかりクリフォード・ブラウンが参加してることなんか忘れて一緒に踊ってしまったのですが(や、忘れてもいいぐらいにゴキゲンなラテン・ミュージックなんですよコレほんと)、更に嬉しい誤算だったのが、カッコ良く登場してアツく吹きまくるブラウンのトランペット。

これもう「キタキタキターーー!!!!」ってなります。クリフォード・ブラウンもしこのまんまこのバンドにいても「凄いトランぺッター」として確実に名を残したでしょう。周りで鳴っているリズムを全部巻き込んでの熱風の竜巻のような演奏、これだけでもう大満足。

と、思ったらそっからの『ジ・エンド』の4曲が、更に衝撃の王道ジャズ、熱気溢れる最高のハード・バップ・ライヴでこりゃまいったねとなる。

実は、この演奏、後の調査で正しくは1955年の演奏と判明し、クリフォード・ブラウンの生涯最後の演奏ではないんですが、あえていいましょう。








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そんぐらい内容が悶絶級なんで、純粋に「クリフォード・ブラウン最高のライヴ」として聴いてくださいな、いや、聴けますわ。

収録されたのは、フィラデルフィアにある小さなクラブハウスらしいです。

会場のワイワイガヤガヤアットホームな雰囲気といい、ほぼ無名の(サム・ドッケリーだけはアート・ブレイキーのアルバムとかで参加してるので知っておりました)参加メンバーといい、恐らくはツアー中に行われた現地ジャム・セッション系の音源でしょうが、ともかく臨場感溢れる一発録りの粗い質感も、無名とは言いつつもこのメンバーのプレイが良いんですよ。

曲はおなじみのスタンダードで、ライヴだけあって、それぞれのアドリブもたっぷり楽しめる贅沢仕様。で、実力者が揃ったしっかりしたバックに支えられてのブラウンのトランペット、これがどこまでもバランスよく突き抜けてて、その天才ぶりが分かりますね。

ミディアム・テンポの『ウォーキン』から、ソロはもう全開です。それが『チュニジアの夜』で更に盛り上がり、ラストの『ドナ・リー』で更にスピードアップしての大盛り上がりで更に手数を増やして「これでもか!」とたたみかけるように吹きまくります。

ところがどんなに速いフレーズを吹いても、音が潰れたり弱く鳴ったりしないんですよ。

トランペットって音程のコントロールが凄い難しい楽器で、速く吹くとひとつひとつの音がフラフラになりがちな上に、音がべちゃっと潰れてしまうことが、この時代はプロの演奏でもあったりするんですが、ブラウンの音は最初から最後までヨレないパリッとした芯の強さで駆け抜けます。


前半の古い録音と、中盤からのライヴは、全体的な録音の質感もバランスが取れていて、ひとつの作品としてのまとまりも意外とあります。何よりこのアルバム全体から溢れるライヴ感、これがたまらんです。








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