ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2017年07月27日

ジョン・コルトレーン The Complete 1962 Birdland Broadcasts

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John Coltrane with Eric Dolphy/The Complete 1962 Birdland Broadcasts
(GAMBIT)

コルトレーンが1955年にマイルス・デイヴィス・クインテットに加入してから亡くなった1967年まで、実に12年しかありません。

アタシなんかは彼が亡くなって10年ぐらい後にようやく生まれた世代なもんですから

「ジャズの巨人、コルトレーン」

とか言われると、おぉ、今は亡くなっちゃってるけど、きっと20年とか30年とかやってきたんだー。とか、何となく無意識に思っちゃう訳です。

そうでなくてもレーベルを2回変え(Prestige→Atlantic→Impulse!と渡り歩き)、そこからリリースされたソロ名義のアルバムだけでも30枚を超え、他のミュージシャンとの共同名義や主要メンバーとしての参加作、更に死後に発売された未発表音源を合わせるととんでもない枚数になります。

どう計算しても信じられない程の量であり、更にその短いキャリアの中で大きな音楽的転換をやってのけてる訳ですから、もう超人的な人だったんだと思う他ありません。

もちろんそんな濃密な活動の原動力は、彼のアーティストとしてのインスピレーション、つまり創造力と感応力ではあるのですが、コルトレーンと出会い、彼のインスピレーションを大いに刺激した先輩や後輩との関わりというのも忘れてはいけません。

1960年代初頭のコルトレーンが、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズという理想のメンバーを得て、特にパワフルさと繊細さ、様々なリズムを同時に組み合わせて放つことで演奏のスケールをグッと拡げたエルヴィン・ジョーンズのドラミングに大きく触発されて、いわゆるモダン・ジャズから”コルトレーン・ジャズ”という独自の境地を切り開いたことは、終生彼の音楽性に深い影響を与えたであろう決定的な出来事だと思います。

ことろでコルトレーンが、このカルテット結成の前後に、実はエルヴィンと同じぐらい大きな刺激を同じバンドのメンバーとして与えたミュージシャンがおります。

それがアルト・サックス/バス・クラリネット/フルート奏者であるエリック・ドルフィーです。

エリック・ドルフィーという人は、コルトレーンよりちょい年下ですが、チャーリー・パーカーの生み出したモダン・ジャズのサックス奏法を、全く独自に進化させた特異なフレーズを持っており、また演奏テクニックもズバ抜けていて、サックスの一番低い音から超高音域を物凄い速さで激しく駆け抜けるアドリブ・スタイルはとにかく斬新を極め(今でもコピーするのは至難の技と言われてます)、同時代の鋭い感覚を持つ演奏家からは「アイツは凄い」と評価されておりましたが、いかんせん彼の個性は強すぎて、また、その斬新なコンセプトも一般の聴衆が付いていけるようなものではなかったんです。

1961年、ブッカー・リトルというまだ23歳のトランぺッターとようやく共同名義で自分のバンドを結成することが出来たドルフィーではありましたが、不幸なことにリトルが急病でこの世を去って、ドルフィーのバンドは自然消滅に近い形で崩壊。

ここでアタシら素人は、新しいメンバーを入れてバンドを結成すればいいじゃないかと思うのですが、リーダーとしてバンドを組んでメンバーを食わすには、ドルフィーの稼ぎは余りにも少な過ぎました。まずは自分が食っていけるために、どこかのバンドに入れてもらって日銭を稼がなければお話になりません。

丁度その年の5月、インパルスという新興レーベルで「アフリカ/ブラス」という最初のレコーディングをジョン・コルトレーンが行い、ブラス・セクションの一員としてドルフィーは呼ばれました。基礎的な技術はバッチリ持っていて、おまけに譜面や音楽理論に滅法強いドルフィーをコルトレーンは気に入り

「じゃあ今度はアトランティックに残ってる契約を清算するためのレコーディングをするから君、今度はソロ要員として来なよ」

と誘って、もちろんドルフィーはこれを快諾します。

そんなこんなで1ヶ月もせぬうちにドルフィーはコルトレーンとの2度目のレコーディングに呼ばれ、ここでフルート/アルトを存分に吹かせてもらったアルバムが『オレ』として、実はエリック・ドルフィー参加唯一の正式なスタジオ盤として残されております。

ドルフィーのプレイに手応えと、何よりそれまで自分が思ってもいなかったぶっ飛んだ方向からのアプローチに刺激を受けたコルトレーンは

「今後も正式なバンドメンバーとしてひとつよろしくたのむ」

と言いました。

ドルフィーもコルトレーンの事は敬愛しておりましたし、同じようにジャズの新しい方向性を模索している者同士、惹かれるものはあったんでしょう。

「チャールス・ミンガスのバンドでヨーロッパに行かなきゃならないんだけど、それが終わる9月以降なら空いてるよ、こちらこそよろしく」

と、男同士の固い約束を交わし、果たして帰国して直ぐにコルトレーンのレギュラー・バンドに馳せ参じ、精力的に行っていたツアーで凄まじい働きぶりを見せたのであります。

一言で申し上げてコルトレーンとドルフィー、両フロントのやりとりは”鬼神同士のガチバトル”でありまして

・のっけからテンション最高なコルトレーンのソロ
           ↓
・それよりもぶっ飛んだ異次元フレーズで強襲するドルフィーのソロ
           ↓
・それを受けて更に凄まじく、時にフリーキーな展開にすらなるコルトレーン


というやりとりには、毎度毎度興奮して感動して、かっさらわれて言葉も出ません。


やっぱり経済的に苦しいのと、どうしても音楽家として自分のグループで表現を極めたかったドルフィーは、1年もしないうちにコルトレーンのバンドを惜しまれつつ退団してしまうので、アルバムとしては先ほどの唯一のスタジオ盤の『オレ!』そしてImpulse!からのオフィシャルな盤として『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』のシリーズしか音源はありませんが、やっぱりこの2人の演奏に特別な何かを感じる人は当時も多かったらしく、マイナーな私家盤レーベルから、ライヴ演奏やラジオ放送用音源のエア・チェックなんかは結構出ておるんです。





【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
エリック・ドルフィー(as,bcl,fl)
マッコイ・タイナー(p)
ジミー・ギャリソン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.Mr.PC
2.Miles Mode
3.My Favorite Things
4.Announcement by Symphony Sid Torin
5.The Inceworm
6.Mr.PC
7.Announcement by Symphony Sid Torin
8.My Favorite Things


1962年2月9日から2月16日にかけて、コルトレーン・クインテットは、ニューヨークのクラブ”バードランド”に出演しておりました。

丁度その演奏をラジオ中継しようと、放送用機材を持った番組スタッフが現場に入って録音した演奏がこの『1962 Birdland Broadcasts』。

ファンの間では昔から「ドルフィー入りのブートといえばこれ」と定評のある音源でして、その昔LP時代には”OZONE”という私家盤レーベルからリリースされたもの↓

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が、どんな手続きを経たのかちゃんとしたレーベルの”VeeJay”の所有になって日本盤はRVCレコードから再発されて ↓

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『バードランドのコルトレーンとドルフィー』

というタイトルで出回ったこともありました。

私家盤ながらこんだけリイシューされて長く聴かれ続けているということは、もうその時点で内容は保障されたようなもんで、実際に凄まじくアツい内容です。

コルトレーン、ついこの前まで『ジャイアント・ステップス』なんかで、オシャレでカッコいいジャズの最先端を極めていたはずなんですが、もうここで聴かれるコルトレーンは、フリーに片足の親指を突っ込んだぐらいの型破りなプレイを聴かせてくれます。

「Mr.PC」「My Favorite Things」の2曲はいずれもアトランティック時代の代表曲なんですが、サックス/バスクラ/フルートで緩急自在な、言ってみれば次の瞬間に何をしでかしてくるか分からないドルフィーの異次元ソロに、コルトレーンは目一杯の速射&ゴリ押し&フレーズ崩しで対抗。

言っときますがコルトレーンもドルフィーも、アドリブの中での”うた”を大事にする人達です。

だからアドリブでどんなにフレーズを意図的に崩しても、それがトータルな演奏とのバランスを、ギリギリ崩さないところでちゃんと音楽として成り立っている。

特に「マイ・フェイヴァリット・シングス」でのドルフィーのフルートの幻想的な美しさはため息が出ます。後年、ファラオ・サンダースを入れて、ラシッド・アリに不定形ビートを叩かせて、ほとんどフリー・ジャズと化したコルトレーンの、あの泥沼な魅力とはまた違った、壮絶な音楽の対話がゾクゾクしたスリルと、演奏が全曲終わった後も「まだ何かあるんじゃないか」とすら思わせる、コルトレーン、ドルフィー、エルヴィン、マッコイ、そしてギャリソンの壮大な過渡期の音楽です。

音質も、このテのものにしては思ったより悪くありません。「ん?」と思わせるところは8曲目の「マイ・フェイヴァリット・シングス」のマッコイのピアノ・ソロがいきなりカットされてドルフィーのソロが始まるところぐらい。

それより何より演奏そのものが脳天をぶん殴られるぐらいの強烈なものなので、コルトレーン・ファンのみならず、ジャズに刺激を求めるすべての人には強烈にオススメであります。


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2017年07月25日

マイルス・デイヴィス ワーキン

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マイルス・デイヴィス/ワーキン


(Prestige/ユニバーサル)

はい、今日も「コルトレーンのファースト・ステップを聴こう♪」と題しまして1956年の初期マイルス・デイヴィス・クインテットの作品を掘り下げていきたいと思います。

今日ご紹介しますのは「マラソン・セッション四部作」の最後の一枚になります『ワーキン』であります。

これはですのぅ、アタシは声を大にして言いたいのですが、名作揃いのこの時期のマイルスのアルバムの中でも非常に優れた出来の、名盤を通り越して芸術品の域に達してるアルバムと思うのですよ。

しかし、工事現場でタバコ吸って立ってるだけの、まるでカツアゲみたいなジャケットで損をしておる。

一応ジャケットには

『工事中→仕事中→ワーキン』

という洒落が込められてるのですが、ほんなもん言われてみらんとアメリカ人過ぎてよくわからんです。ただ怖〜い顔のマイルスに「よォ、カネ貸してくれ」とでも言われてるような気にしかならない。

しかーし!

ジャケがカツアゲだからといって、このアルバムを聴かずに放っておくのは勿体ないんですよそこのお嬢さん。

実はこのアルバムこそは、マイルスのミュートをかぶせた繊細でメロディアスなトランペット・プレイのカッコ良さ、胸にギュッとくる切なさと、レッド・ガーランドが奏でるえも言われぬ美しいピアノの大人な哀愁が目一杯堪能できる、という意味で四部作中ぶっちぎりの名作であるんです。

嘘だと思うのなら、1曲目の「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」を聴いてごらんなさい。

「宝石を転がすような」と形容されるレッド・ガーランドのピアノが、優しく切ないアルペジオを奏で、その上に絹糸を泳がすように、マイルスのミュート・トランペットが入ってくる。

美しい美しいバラードです。理屈をすっ飛ばしてギューっと胸が締め付けれらて、あぁ、この気持ちなんでしょう。カツアゲなんて最初からない、あるのは美しい音楽が夢のように柔らかく浮かんで沈んで夢のように淡い輪郭を描く幻想の世界。

くー・・・・。
















【パーソネル】
マイルス・デイヴィス(tp,@〜DFG)
ジョン・コルトレーン(ts,A〜DFG)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド
2.フォア
3.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ
4.ザ・テーマ (テイク1)
5.トレーンズ・ブルース
6.アーマッズ・ブルース
7.ハーフ・ネルソン
8.ザ・テーマ (テイク2)


・・・あぁいけない。マイルスのワン・ホーンが余りにも美しい1曲目に魂が持っていかれてコルトレーンを忘れてました。

そんな訳でこのアルバムでもバラード以降の2曲目からコルトレーンは参加してます。

まずはマイルスお得意のミディアム・アップ・テンポで、後にライヴでもよく演奏されることになる「フォア」で、この時期ならではの

・スムースで柔らかいマイルス→硬質で力強いコルトレーン

という対比が絶妙にバトンタッチされて、演奏の雰囲気は良い感じに小粋なものとなります。

で、カッコイイのは次の「イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ」ですねぇ。

コチラはグッとテンポを落としたミディアム・スロウのナンバーですが、コチラはよりクッキリとマイルスとコルトレーン、両者の個性の違いが曲調の中で見事なコントラストを際立たせます。

極力音数を絞ったマイルスのソロから、丁寧にフレーズを厳選しつつも迷いのない音を紡いでゆくコルトレーン。そのソロの直後にすかさずテーマを絶妙に崩したマイルスがリードするエンディング。これぞ粋です、モダン・ジャズの粋であります。

「ザ・テーマ」というのは、この頃のマイルス・グループがライヴのオープニングとエンディングに演奏していた、文字通りのテーマ曲。

ワクワクするようなリズムで軽やかに跳ねるマイルスと、ゴツゴツした音で力強くドッシリと歩くコルトレーン、これもまた対比がお見事。

そしてコルトレーンを大々的にフィーチャーした「トレーンズ・ブルース」と、マイルス、コルトレーンが抜けてガーランドにトリオ演奏で録音させた「アーマッズ・ブルース」と、ブルース2曲ですが、これもまた実に都会的でスマートに洗練されていて、いわゆる土臭い”ブルース”とはかなり違った味わい。

コルトレーン作曲の「トレーンズ・ブルース」は、やさぐれたワルなテーマを吹くマイルス&コルトレーンのハモり、そこからの”オシャレ不良”なマイルス、”硬派不良”なコルトレーンのソロのコンビネーションは、言うまでもなくお見事ですが、ブルースの雰囲気を損なわずに軽やかに鍵盤を転がすガーランド、ヒップに跳ねるシンバルワークでトッポい雰囲気を作り上げているフィリー・ジョーのドラムがまたいいじゃないですか。

「ハーフ・ネルソン」で再びテンポ・アップして、今度はテーマをピタリと合わせて吹くマイルス&コルトレーンにシビレてください。

淀みなく出てくるフレーズに、これ以上ないほど絶妙なシンコペーションを要所でキメるマイルス、もうたまらんですね。それを受けて勢いよく吹きつつも、マイルスに合わせるかのようにセンスのいいシンコペーションをこちらもキメてくるコルトレーン、もうたまらんですね。

以上、マイルス四部作でのコルトレーンは「マイルスの小粋で繊細なトランペットに対して、力強く勢いのあるテナー」で、大健闘どころかリーダーと肩を並べて堂々たるフロントぶりであります。

それももちろんガーランド、チェンバース、フィリー・ジョーの卓越したリズムのバッキングあればの話でもあり、何よりこの時代に開花した「スリルを孕んだ”粋なジャズ”」であるハード・バップを、メンバー全員が「こういうアプローチでやればカッコイイんじゃないか」というのを日々のライヴやセッションで研磨に研磨を重ねた結果なんだよね、という気はものすごくします。

それにしてもマイルスの”マラソン・セッション四部作”スタジオ盤なのに演奏がとってもリアルで素晴らしいライヴ感がありますね。コルトレーンの演奏だけをピックアップして書くつもりが、やっぱり曲と演奏全体のカッコ良さ、何より雰囲気の良さに引き込まれてしまい、ついつい長文になってしまいました。うん、たまらんです。






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2017年07月24日

マイルス・デイヴィス スティーミン

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マイルス・デイヴィス/スティーミン
(Prestige/ユニバーサル)

コルトレーンの歌心の源流を追って、ここのところ初期マイルス・デイヴィス・クインテット時代のコルトレーンを集中的に聴いております。

改めて聴いてやはり思うのは、コルトレーンのプレイのポリシー、つまり「それまでテナー・サックスでは誰もやってなかったシャープなサウンドで、エッジの効いたプレイをする」というのは、この時代既に確固たるものとしてコルトレーンの中で固まっていたんだなぁということです。

コルトレーンのデビューは遅く、マイルスのグループに参加した頃は既に30になろうとしていた頃でしたが、彼にとってはライバルであり、少し年下のソニー・ロリンズがその5年前には19歳にして堂々たる吹きっぷりで世間を沸かせていたことを考えると「俺は本当にジャズで食っていけるのか?」と、考え悩むばかりの20代であったであろうことは想像に難しくありません。

しかし、彼が20代ももう終わりに近付き、憧れのチャーリー・パーカーと一緒に演奏をしていたマイルスに声を掛けられた時は、既に20代の頃夢中で練習していたビ・バップの時代は終わりを迎えようとしておりました。

「ひたすら早くてヒップなフレーズを、熱気と技術に任せて吹きまくる」

というビ・バップから

「よりファンキーで、楽曲全体を考えたメロディアスなアドリブと、洗練されたモダンな演奏を」

というハード・バップの時代に突入した1950年代半ばにようやくソロ・アーティストとしての可能性を掴んだコルトレーン。そして、その時代を牽引して次の時代のドアに手をかけていたのが、自分をスカウトしてくれたマイルス・デイヴィスその人だった訳ですから、嫌でもやる気はみなぎろうというものです。

コルトレーンはしかし、その時点ではジャズ界隈のリスナーからはまだまだ未熟で何をやりたいのかよく分からないテナー吹き、という扱いを受けておりました。

テナーサックスといえばソニー・ロリンズのように、中低域を活かしたズ太い音で、よどみなく粋でイナセなフレーズを、リズミカルに次々と生み出すもの。或いはまだリスナーのほとんどは、ビ・バップより前の時代のスウィング・ジャズ・テナーの豪放磊落な、分かり易い男らしさがほとばしるプレイの残滓を追っていたのかも知れません。

このようなファンの感覚は

「誰もやってなかったことをやる」

と決めたマイルスにとってはどうでもいいものでした。

コルトレーンにとっても、エリントン楽団のジョニー・ホッジスが最初のアイドルであり、ちょっと前まではR&Bのアール・ボスティックのバンドで豪快で野性味溢れるホンク・テナーも”お仕事”で吹いていたのです。いかにロリンズやスタン・ゲッツら当時の一流テナーマンに比べて技術的には数段劣るとはいえ、プロとして求められさえすればある程度スイスイ吹けるぐらいの基本的な実力はあったでしょうが、コルトレーンの意識も

「自分ならではの、まったく新しいプレイスタイル」

な訳ですから、理解してくれるよき仲間と共に、大いに試行錯誤、切磋琢磨するべき時間は必要だった訳であります。

グループに加入したその年の1955年の演奏には、確かにコルトレーンの迷いが見て取れます(アルバム「ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット」)が、マイルスのコンセプトへのコルトレーンの理解力は素晴らしく、次の作品の「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」から、プレスティジでの最後のレコーディングであります”マラソン・セッション四部作”に至る1956年の一連の演奏を聴くと、もうたった1年のうちに何があったんだと思う程の技術的な上達と、他の誰にも似ていないしっかりとした個性が確立されたサウンドとフレーズが見事に花開いているのです。



【パーソネル】
マイルス・デイヴィス(tp)
ジョン・コルトレーン(ts,ACD)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)


【収録曲】
1.飾りの付いた四輪馬車
2.ソルト・ピーナツ
3.サムシング・アイ・ドリームド・ラスト・ナイト
4.ダイアン
5.ウェル・ユー・ニードント
6.オエン・アイ・フォール・イン・ラヴ


という訳でマイルスの”Prestige四部作”は、マイルスの優雅で繊細なトランペットの妙技と、センス最高ハード・バップ・ジャズをどのアルバムでも心ゆくまで楽しめますが、コルトレーン・ファンにとっても最初の飛躍が刻まれた胸の透くようなカッコイイ演奏にシビレることが出来る素晴らしいアルバム達です。

本日ご紹介するのは「クッキン」「リラクシン」ときて「スティーミン」です。

何となく四部作の中では、ジャケットがかわいい「クッキン」と「リラクシン」は人気ありますが、「スティーミン」と「ワーキン」はあんまり語られることがないような気がしませんか?

うんうん、内容的にはアルバム単位で甲乙付け難いのは本当ですし、せっかくなんでもっと多くの人に「スティーミン」と「ワーキン」を聴いてほしいので、今日は大いに語りましょうね。もちろんコルトレーンを中心に。

さて、本作スティーミンは、こちらも「リラクシン」同様に、リラックスして聴ける極上のジャズです。

更に目玉としては、ノリノリのビ・バップ曲「ソルト・ピーナッツ」と、セロニアス・モンクのコミカルなノリの良さが光る「ウェル・ユー・ニードント」での、コルトレーンの炸裂するプレイでしょう。

マイルスとしては、もうこの時点でビ・バップの急速ナンバーは「もういいか」という認識だったとは思いますが、アルバム4枚分のレコーディングをせねばならないからというのと、やっぱりライヴなんかではキャッチ―で速い曲はウケが良かったんでしょう。

それにここまでに散々ビ・バップをやってきたメンバー達にとっては”お手のもの”であります。

マイルスがミュートを外してパラパラパラ!と吹きつつも、ところどころで絶妙に音を抜いて間を活かした(コレが最高にセンスいい!)ソロをすれば、コルトレーンはそれまで溜めてきたものを一気に吐き出すかのような細かい手数での激しい吹きっぷり。

それを受けて”モダン・ジャズの世界で一番派手なドラムを叩く男”(←今考えた)フィリー・ジョー・ジョーンズがハイライトとなるド派手なドラムソロで山を作って一瞬のテーマをマイルス、コルトレーンがパッと吹いてズシャッと終わり。くーカッコイイ、スタジオ盤なのに何でこんなにライヴっぽいんだろう。

感動の余韻を更に膨らますかのように、今度はマイルスがワン・ホーンで歌う見事なバラード「サムシング・アイ・ドリームド・ラスト・ナイト」から、再びコルトレーンが参加しての、怒涛の「ダイアン」そして「ウェル・ユー・ニードント」。

「ダイアン」はミディアム・テンポの小唄ですが、おっと、言い忘れていたけどこの曲のコルトレーンのソロも目玉です。

テンポに合わせた絶妙の”抜き””スカし”なら、コルトレーンはテンポに対して倍ぐらいの数の高速フレーズをブチ込む思い切ったアドリブで突っ走るんですが、この時勢い余り過ぎて「キュイッ!」と音が裏返るミス・トーンを出してるんです。コレがもう最高にシビレます。いいなぁジャズって。。。

そしてセロニアス・モンクの「ウェル・ユー・ニードント」ですが、この頃まだその独特過ぎる個性ゆえに、一般人気とは縁遠かったモンクの曲を「何でだよ、カッコイイものはカッコイイじゃねぇか」と積極的に演奏していたのはマイルスです。

マイルスの代表作と思われている「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」だってモンクの曲です。

聴く分には独特の”飛び””はずし”が、リズムと絡まってウキウキするモンクのミディアム・アップ・ナンバーは、実は演奏する側にとっては実に難しいのですが、こんなもん結成して毎晩のようにライヴやってたマイルス・バンドの手にかかりゃ朝飯前。

コミカルで摩訶不思議な”うねり”のあるテーマをズラしたタイミングでカッコよくハモるマイルスとコルトレーンから、マイルスのスムースなソロからコルトレーンの力強いトーンが「ぎゅいーん」とフル加速していくこの流れ、たまらんですね。そこからバトンタッチした、珍しく低音をガラゴロミステリアスに転がすガーランド、その間もずーっとブイブイとぶっとい4ビートを刻み続けているチェンバースのベース、スネアとハイハットとシンバルを細かく使い分けて効果的に突っ込むところにピシャッと突っ込んでゆくフィリー・ジョーのドラム。たまらんですね、実にたまらんです。

最後は再びマイルスのワン・ホーンでの美しいバラードで、結局コルトレーンはこのアルバムではバラードでは参加せず、ミディアムからアップテンポの曲のみの参加となっておりますが、それだけにギアの入ったコルトレーンの凄さに「うひゃー!」と興奮するにはもってこいのアルバムなんじゃないかと思います。良いよ。

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2017年07月22日

マイルスデイヴィス リラクシン

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マイルス・デイヴィス/リラクシン
(Prestige/ユニバーサル)

1955年のマイルス・デイヴィス・クインテット参加からおよそ1年後にレコーディングされた、マイルスの「クッキン」「リラクシン」「スティーミン」「ワーキン」という、いわゆる”マラソン・セッション四部作”は、初期マイルスの素晴らしく繊細でスタイリッシュなトランペット・プレイと、彼のトータルな音楽家としての才能の開花を聴くことが出来る素晴らしいアルバム群であります。

そして、このバンドが初めての「ソロを大々的に取らせてもらえる、フロントマンとして雇ってくれたバンド」であったコルトレーンにとっても、独自の個性を最初に発揮させた場として、多くの素晴らしい名演を刻むことが出来たのでありました。

本日もマラソン・セッション四部作から「リラクシン」です。

このアルバムは、タイトル通りリラックスした演奏を集めたもので、収録曲のゴキゲン度は総じて高く、たとえば

「今日はちょっとマイルスな気分だね♪」

という時や

「仕事でヘトヘトになったから、ジャズでも聴いてホッとしたいわぁ」

という時なんかはそれこそピッタリなんじゃないかと思います。

マイルス・デイヴィスっていったらそりゃもうジャズの帝王で、何かよくわからんが凄い人で、ちょっと気難しい芸術家っぽいから、凄く難しい音楽をやってるんじゃないかしら?と思ってるそんなアナタ、確かにマイルスのカッコ良さって、どの時期も一貫してクールでニヒルなところで、モノによってはちょっと異常な緊張感とか、軽い気持ちでほんほんしたい時に聴いたらカウンターパンチ喰らわされる作品とかもあるんですが、で、アタシ個人的にはそんなアルバムこそがドップリギットリ浸れる最高なんだなこれ、だったりもするんですが、えぇ、世の中のほとんどの人はアタシと違って、平和を愛し、癒しを求める美しい心をお持ちだと思いますので、あえて”芸術”の方に突き進む一歩手前の50年代の音源をまずは「聴いてごらんなさいな」とオススメしたいのです。

特にバックにレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズがいた頃のマイルスの音楽は、マイルスのニヒルでクールなキャラクターは、演奏の中心で孤高のダンディズムとしてカッコイイ音と最高の雰囲気を放ってはおりますが、この3人のリズム・セクションがそれを彩ればあら不思議、マイルスのカッコ良さそのままに、小粋で優雅で実にオシャレな極楽ジャズとして鳴り響くんですよ。

という訳でここをご覧の

「ジャズ聴いてみたいなぁ、やっぱりマイルスかなぁ・・・。でも何か難しそう・・・」

とお悩みの方いらっしゃいましたらタイトルに「〇〇〜ン」と付いているマイルスの初期アルバムをまずは聴いてみてくださいね。それかこのブログのやチャラいレビューを読んでやってくだせぇ。。。




【パーソネル】
マイルス・デイヴィス(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)


【収録曲】
1.イフ・アイ・ワー・ア・ベル
2.ユーア・マイ・エヴリシング
3.アイ・クッド・ライト・ア・ブック
4.オレオ
5.イット・クッド・ハプン・トゥー・ユー
6.ウディン・ユー

与太はこれぐらいにして、このアルバムが先日ご紹介した「クッキン」と並んで、マラソンセッション4部作の中で特別人気が高いのは何故かというと、さっきも言ったように、楽曲演奏が軒並みくつろぎに溢れていて、ゴキゲンで親しみ易いということと、それに加えてスタジオ内のリラックスした空気もそのまま演奏の前とか後とかにちょこっと入っていて(もちろん全体の流れを妨げない程度)、実にいい雰囲気なんです。

オープニングの前にマイルスが


「(しわがれ声)先に演奏すんぞ、曲名は後で教える」

と、メンバーに呼びかけて、レッド・ガーランドが「ほいきた」とばかりに学校チャイムでおなじみの「きーんこーんかーんこーん♪」をピアノでやってアルバムが始まる。そこから小気味良いミディアム・テンポに乗ってマイルスのウィットに富んだ小粋なトランペット、コルトレーンの実に堂々とした和やかなソロでう〜ん、いいですなぁ、実にいい。

続いては美しいバラードでイントロを弾くガーランドに

「(しわがれ声)そこはブロック・コードでやってくれ」

と、やっぱりスタジオ内でのやりとりが入ってガーランド弾き直しからのマイルスの繊細で美しい美しいバラード。

はい、このバラードでのマイルスからタッチしたコルトレーンのソロがもう泣ける。

テナー・サックスらしい芯の太い音ではありますが、コルトレーンは「ズズズ・・・」と音を引きずらずに、メロディを過不足なく紡ぎ上げてゆくんです。これはこの後もずっと変わらないコルトレーンならではのスタイルなんですが、繊細な中にもマイルスと共通するけれどもどこか一味違う独特の”キレ”があって、しかも数分のやや短い展開の中で絶妙なストーリーを組み上げて、そこからレッド・ガーランドのピアノがため息のようにバトンタッチする。これたまらんですね。

で、個人的にこのアルバムのコルトレーンのベスト・プレイと思えるのが、ソニー・ロリンズが作った割とカラッと明るめのバップ・ナンバー「オレオ」です。

ちょいと早めでカリプソ入ったこの曲を、マイルスはとても気に入っていて、テンポよくアドリブを吹きまくっているんですが、こういうテンポとくればコルトレーン。

コード・チェンジを絶妙なリズムで強調しながらブンブン唸るベースでリードするポール・チェンバースとピッタリ呼吸を合わせるかのように、これ以上ないほど快調なアドリブをテクニカルにかましてくれます。だから誰だこの時期のコルトレーンへたくそだなんて言ったヤ(以下略)。

で、アルバムの最後はやっぱりマイルスの声も入ってます。

プロデューサーの

「Okか?」

という声に

「何がよ!?」

と、やや怒気含んで答えるマイルスがちょっと怖いんですが、この後ろでCDだと微妙に誰か何か言ってるなぁぐらいの声が入ってます。

何だろうと思ったらコレ、コルトレーンが

「(ビールの)栓抜きない?」

と誰かに訊いてる声なんだそうです。

全体的にゴキゲンなセッションなので、まずは雰囲気の素晴らしさを皆さんに感じてもらえたらなぁ、なんて思いつつ。。。



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2017年07月21日

マイルス・デイヴィス クッキン

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マイルス・デイヴィス/クッキン
(Prestige/ユニバーサル)

ジョン・コルトレーンのプロ・ミュージシャンとしてのキャリアは、ジョニー・ホッジスやディジー・ガレスピー、はたまたR&Bのアール・ボスティックといった人達のバック・バンドのメンバーとしてスタートしました。

これらの仕事は、ほとんどホーン・セクションの一人、或いはソロは吹かせてもらっても、自分の思うようなスタイルではやらせてもらえないことがほとんどで、後に巨人と言われる人のキャリアとしては実に地味であります。

そんなコルトレーンを拾い上げ、ソロ・アーティストとして世に出るきっかけを作ったのがマイルス・デイヴィスだったというのは有名な話。

どうもマイルスは最初ソニー・ロリンズを誘ったみたいだったなんですが、諸事情によってまだまだ無名だったコルトレーンにお呼びがかかったようです。

んで、コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズという、既に界隈では名が知られていた若手リズム・セクションに、まだほとんど誰も知らなかったコルトレーンを加えて作った五重奏団が、マイルスが最初に組んだレギュラー・バンドであります。

このバンド、マイルスの思惑通り、マイルスが提示する新しいコンセプト、つまりタテノリで客を沸かす演奏だけじゃなく、じっくり聴かせるスタイリッシュな都会的演奏にも、ツーといえばカーで即座に反応出来る素晴らしいバンドでした。

リーダー以外では、一番の功績はガーランド以下のリズム・セクションにあります。

もし、このバンドがサックス奏者のいない、マイルスのワン・ホーン・カルテットであったら、1950年代後半に、ゾッとするほど美しくメロディアスなバンドとなっていたでしょう。

もしかしたらマイルスは”帝王”じゃなくて”トランペットの詩人”とか、今頃呼ばれるような存在になっていたかも知れません。

マイルスの当時のコンセプトは、徹底して「クールに演奏して、ノセることもじっくり聴かせることも出来るジャズ」でありましたが、マイルスの心の内には、この頃既に

「誰もやっていないことを次々とやってやろう」

という意欲がメラメラと青白い炎となって燃えておりました。

そこでコルトレーンの加入です。

正直言ってその頃のコルトレーンは、ニューヨークでも全然無名なのはもちろん、その演奏を聴いていた人達からは

「コルトレーン?あいつヘタクソじゃないか。何だってマイルスほどの男があんな新人をバンドに入れたのかわかんねぇ」

と、批判もありました。

はい、これも有名な話ですね。

当時のサックスといえば、アルトもテナーも、チャーリー・パーカーのようにアドリブをよどみなくスイスイと吹きまくるのが一番カッコイイというのが常識でした。

たとえば既に人気を博していたソニー・ロリンズやスタン・ゲッツといった人達は、それこそテナー・サックスを自在に操って、いかにもテナーらしい中低域を活かした太い音(ゲッツはそこにしなやかさも加わります)で、難しいフレーズでも難なくこなし、何よりアドリブに一貫したメロディアスな展開があり、分かり易かったんですね。

資料によるとコルトレーンは、チャーリー・パーカーに憧れて、ビ・バップのフレーズは猛練習の末に50年代半ば頃には特に不都合なく吹けていたらしいのです。

でも、当時のジャズ界は”ビ・バップが吹ける程度”の腕利きなら腐るほどおりました。

ロリンズやゲッツといった人達が凄かったのは、それを経た上で、誰が聴いても彼らの演奏だと分かるぐらいの確固たるオリジナリティがあったからで、ただ難解なビ・バップをパーカーそっくりに吹けたところで、物まねで終わってしまうというのは、コルトレーンもよく分かっておりました。

で、ここからは”多分”の話なんですが、コルトレーンは早くから「ジャズお約束の”あの感じ”以外の演奏を展―で出来ないものか・・・」と、悩んで、でもなかなか定まらなくて、試行錯誤しているうちに徐々にトレードマークである、硬質でソリッドな音色やフレーズを生み出していったんじゃなかろうかと。で、そのトレーンの試行錯誤のサウンドやフレーズを耳にしたマイルスは、純粋に可能性の一点だけで「よし、お前はそれでいい」と、ライヴやレコーディングではその試行錯誤を本番でやらせていたんじゃないかなと思います。

一説によると

「いやぁ、何かどん臭いアイツが隣で吹いてると、オレのカッコいいトランペットが引き立つからね。いっひっひ」

と、マイルスは思ってたなんて言われてもおりますが、そうでしょうか?マイルスは演奏技量とメンバーのセンスには恐ろしく厳しい人で、もしコルトレーンの演奏に”どん臭さ”を感じていたなら、それは音楽をクールにスタイリッシュにキメたいマイルスにとっては耐え難いことで、何回か演奏して「はいクビ」となっていたはずでしょう。

ともかく1955年から56年の、マイルス・デイヴィスのグループに参加していたコルトレーンを聴いてみましょう。






【パーソネル】
マイルス・デイヴィス
ジョン・コルトレーン
レッド・ガーランド
ポール・チェンバース
フィリー・ジョー・ジョーンズ

【収録曲】
1.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
2.ブルース・バイ・ファイヴ(フォールス・スタート)
3.ブルース・バイ・ファイヴ
4.エアジン
5.チューン・アップ〜ホエン・ライツ・アー・ロウ


1956年、マイルスはメジャー・レーベルのCBSに「ラウンド・ミッドナイト」という作品を録音します。

もう皆さんご存知、初期を代表する名盤中の名盤ですが、マイルスと彼の最初のレギュラー・バンドが凄いのは、実はこの後です。

自分とことの契約が残っているのに他のレーベルにマイルスがレコーディングしていたことに腹を立てた、所属レーベル"Prestige”は、マイルスに

「いや、メジャーからアルバムなんか出したらダメだよ。だってお前とはまだアルバム契約が残ってるから、それクリアして全部のレコーディング済まさないと訴えるよ」

と、ほとんどいちゃもんに近いクレームを入れるのですが、ここでマイルスは

「(しわがれ声で)あと何枚分だ?」

と返します。

「アルバム4枚分だよ」

と、言われ

(ざまぁみろ、アルバム4枚なんてすぐすぐ出来るもんじゃねぇよ。しばらくはウチとの契約に専念してもらうぜぇ)

と余裕ぶっこいていたレーベルに

「そうかわかった。じゃあ4枚分すぐにレコーディングしてやっからスタジオ貸せや」

と、完全に脅迫に近いノリの啖呵で答え、実際にたった2回のレコーディングで、アルバム4枚分の音源を仕上げてしまいました。

これが世に言うマイルスのマラソン・セッション4部作、すなわち「クッキン」「リラクシン」「ワーキン」「スティーミン」という、いずれも初期を代表する名盤に数え上げられる作品達です。

マイルスが"ちゃちゃっ"と、スタジオでほとんど録り直しナシであっさりと作品を仕上げちゃったというのは、つまりこのクインテットが日常のライヴでそのクオリティの演奏をしていたということで、それはつまりマイルスも凄いけど、他のメンバー達の実力も、当時のジャズマン達の中で恐ろしくずば抜けていたということです。

つまり、コルトレーン下手くそじゃなかった。

実際に初期マイルス・クインテット時代のコルトレーンのプレイ、もちろんマラソン・セッション4部作でたっぷり聴けます。

まずは4部作の中でジャケットがオシャレというのと、ミュート・トランペットによるバラード名演「マイ・ファニー・バレンタイン」が聴けるということで、シリーズ中一番人気の『クッキン』。

はい、このアルバムの決定的名演は、確かに「マイ・ファニー・バレンタイン」です。

しかしこの曲はコルトレーンが抜けたワン・ホーンなので、コルトレーン聴くなら2曲目以降。特に後半の「エアジン」「チューン・アップ〜ホエン・ライツ・アー・ロウ」でのミディアム・アップのテンポに乗っての、饒舌な吹きっぷりが素晴らしいです。

アツく盛り上がりながらも、小粋でメロディアスなプレイを繰り広げるマイルスのソロを受けたコルトレーンは、まるで水を得た魚のように、絞った音数のマイルスと好対照なソロでもうグイグイ遠慮なく行きます。行きまくります。

コルトレーンが「音譜敷き詰め奏法」のシーツ・オブ・サウンドを完成させるのは、この約1年後。マイルスのバンドを辞めてセロニアス・モンクの所で理論を学びながら猛練習を重ねた結果なはずですが、この時点でもうコード・チェンジに対して細かい手数で直線的に音を重ねてゆく方向性はすでに見出だしているように思えます。

アドリブの速度、起承転結、そしてマイルスやバックのリズムとの掛け合いも実に完璧で、聴いていて何の違和感もありません。

全体の空気感はマイルスが持つ、とことん粋でスタイリッシュなそれですが、コルトレーン中心に聴いていると不思議と熱くたぎるものを感じます。






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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


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posted by サウンズパル at 19:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする