2024年07月18日
ジョン・コルトレーン ヴィレッジ・ゲイトの夜
ジョン・コルトレーン/ヴィレッジ・ゲイトの夜
(Impulse!/ユニバーサル)
コルトレーンがデビュー前から「オリジナリティ」というものに並々ならぬこだわりを持ち、バックを務めたリーダー達や共演者達のプレイからちょっとしたヒントも逃さずに糧として自らの個性を磨き上げてきた話は当ブログで何度もしてきました。
コルトレーンが時代を牽引するリーダーの一人となったのは、1960年代になって自身のバンドを持つようになってからですが、丁度良いタイミングで新進気鋭のレコード会社「インパルス」と契約し、第一作目となるアルバム『アフリカ/ブラス』を世に放ちます。
ここでアレンジャーとして起用されたのが、アルト・サックス、バス・クラリネット、フルートをこなすマルチリード奏者、エリック・ドルフィーでした。
エリック・ドルフィーという人は本当に凄い人で、どんな風に凄いかって言ったら、音域の限界ともいえるような超高音と低音が凄まじい速さで跳躍するようなフレーズを難なく吹けた。それも調性ギリギリの難しい半音階を一瞬で複雑に組み合わせながら。だからドルフィーが吹くアドリブのフレーズには、どこか奇妙で不安定な独特の響きがあったのですが、その個性はぶっ飛び過ぎていて、広く一般の聴衆にはまだまだ受け入れられてはおりませんでした。
コルトレーンはそんなドルフィーの才能を早くから高く評価し、世の人々に知らしめようと思っておりました。同時に「こんなオリジナリティに溢れたヤツと一緒にプレイ出来たら、オレのプレイもいい感じに刺激されてもっともっとオリジナルなものになるかも知れない」と思っていたことでしょう。ドルフィーに「一緒に演ろうぜ」と熱烈なラブコールを送り、遂にアレンジャーとしてではなく、純粋に「自分のバンドのもう一人のフロントマン」としてドルフィーを抜擢します。
まずは手始めに1961年5月のスタジオにて、古巣のアトランティック・レコードでまだ残っていた契約を消化するためのアルバムのレコーディングにドルフィーを誘います。この時の録音は『オレ!』というアルバムとして正式に発売されております。
で、ドルフィー入りのコルトレーン・バンドはこの後ライヴ盤として『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』とリリースして、怒涛のヨーロッパツアーへと出発。ここでの演奏は主に私家盤として色々発掘され、この強烈な個性と個性が互いにぶつかり合い、互いに刺激し合い、そして演奏全体を何ともいえない高みへと持ってゆく凄さを、耳にした多くの人に刻み付けた訳です。
ところが、コルトレーンの演奏記録では「このグループのライヴが8月8日から9月3日、つまりおよそ1ヶ月もの長い期間開催された会場はヴィレッジ・ゲイトっていうクラブなんですよ」というのがあって、ファンとしては「うわ〜、ヴィレッジ・ゲイトでやったライヴの音源とか出てきたら最高だろうな〜、でもないかー、ラジオ放送とかそういうのがいっぱいあったヨーロッパならまだしもアメリカの、しかもコルトレーンとかにとっちゃあいつもやってる馴染みの店ぐらいのニューヨークのクラブだからな〜」と、諦めてはおったんです。
いやでもモンクとのアレとかハーフノートでのアレとか、コルトレーンの家族が持っていたテープがあるからもしかしたら...。あぁ勿体ぶるのはやめましょう、はい、出たんです、ヴィレッジ・ゲイト。しかも2023年に。今回は何とニューヨーク市にある図書館の資料として眠っていたものらしいです。
録音の経緯もちょっと変わっていて、大体こういうライヴのプライベート録音ってのはコルトレーンの当時の奥さんとか、誰か関係者がコルトレーンが聴き返すために録っていたというのが多いのですが、今回の録音は何と、当時のヴィレッジ・ゲイトの音響担当の店員さんが
「新しくマイクとオープンリール買ったんだけど音どうかな?今度誰がライヴやるんだっけ?あ、コルトレーン?丁度いいや、そん時マイク吊るして音録ってみよう」
と、単なる店の機材チェックのための音源だったようです。
今の時代の我々からすると何と贅沢な、なんですが、当時のニューヨークのクラブはコルトレーンもマイルスも、その他のすんごい人達も当たり前に出てたから、まぁ日常なんでしょうね。何と贅沢な。。。
ヴィレッジ・ゲイトの夜 (通常盤)(SHM-CD) - ジョン・コルトレーン
【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts)
エリック・ドルフィー(as,bl,fl)
マッコイ・タイナー(p)
レジー・ワークマン(b)
アート・デイヴィス(b,D)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
【収録曲】
1.マイ・フェイヴァリット・シングス
2.ホエン・ライツ・アー・ロウ
3.インプレッションズ
4.グリーン・スリーヴス
5.アフリカ
(録音:1961年8月)
さて、内容にいってみましょう。ステージのほぼ中央の天井から吊るした1本のマイクで録ったとおぼしきこのライヴ盤、当然モノラルで、中央にエルヴィン・ジョーンズのドラムがドカンと座り、そのすぐ脇にコルトレーン、やや離れた位置にドルフィーという位置関係が確認出来る程、音質はクリアです。ただ、色んな人が指摘しているように、録音のバランスは最初からリリースを目的に録音されたものに比べたら悪く、特にベースとピアノは後ろに引っ込んでいる感が否めません。
それでもまぁイヤホンかヘッドフォン、或いはボリュームを上げたらエルヴィンのビシバシくるドラミング(特にバスドラの「ゴスッ!」がヤバイ)を中心に、ライヴならではの生々しい臨場感は十分に楽しめてお釣りがくるぐらいなので途中からバランスはどうでもよくなってきます。
1曲名はエルヴィンのドラムの遠くからドルフィーのフルートかフェイド・イン気味に入ってきて軽やかに飛び回るような音象を描き、続くコルトレーンのソプラノがエキサイティング極まりない『マイ・フェイヴァリット・シングス』。ドルフィーが入る前に録音されたオリジナル・ヴァージョンは確か1960年でしたね。そのヴァージョンのコルトレーンのソロは噛み締めるようにしっかりとメロディーを口ずさんでいる感じでしたが、1年も経たずにぶっ飛びまくった、フリージャズみたいなソロを吹きまくるコルトレーンの気迫に圧倒されます。
2曲目『ホエン・ライツ・アー・ロウ』はこの時期のコルトレーンには珍しいストレートなスタンダード・ナンバーですが、この小粋な曲を舞台に、ソロに突入するや暴れまくるドルフィーがまず凄まじいです。バスクラで「ここまでやるか!」というぐらいのいななきでスタンダードを解体しております。コルトレーンのソロはドルフィーより短めで、ドルフィーを大々的にフィーチャーした感じですね。この曲、実はコルトレーンがマイルスのバンドにいた頃に、アルバム『クッキン』でやっておりますので、興味ある方は聴き比べてみてくださいね。
さて、のっけからライヴ盤ならではのハイ・テンションでありますが、本番はこれからです。個人的にコルトレーンのキレッキレのソロが聴ける定番曲として好きな『インプレッションズ』、そして『アフリカ/ブラス』より『グリーンスリーブス』『アフリカ』と、怒涛の後半は、まずは期待に違わずイケイケの暴走を、いつものテナーではなくソプラノで繰り広げる『インプレッションズ』は、コルトレーンの独断場。ソロが盛り上げるにつれてどんどんパワフルにヘヴィになってゆくエルヴィンのドラムと一体となって激しく燃え上がるプレイがこのアルバムのハイライトとも言えますね。この大暴走を引き継いだドルフィーはどんなぶっ飛びを聴かせるのかと思いきや、熱気を逆手にとったミステリアスなフレーズで引き締めます。こういう展開もまたゾクゾクします。
『アフリカ』のイントロのようにまたまたフェイド・イン気味に今度はコルトレーンのソロから入る『グリーンスリーブス』は、コルトレーンの最初のソロを引き継いだマッコイ・タイナーのピアノが美しく、改めて「いい曲だな〜」とホロッとします。スタジオ盤ではなかったドルフィーのソロパートも、ライヴではしっかりと。バス・クラリネットという楽器の特性か、ドルフィーの吹くソロはどこかの民俗楽器のような、そんな雰囲気もあり、ここから『アフリカ』へと続く荘厳でスピリチュアルなムードを高めています。最後にコルトレーンの2回目のソロがありますが、今度はおよそ5分間をソプラノで吹きまくり、うわぁぁ〜!と盛り上がってから再び美しいテーマで着地を見事に決めておします。
で、ラストナンバーにして圧巻なのが『アフリカ』。淡々としたリズムとコードの繰り返しの中で叫んだりとぐろを巻いたりしながら何かを召喚でもしてしまいそうなコルトレーンのサックスとドルフィーのバスクラ、そこから暗い星屑を散りばめたかのようなマッコイの長めのピアノ・ソロの後に満を持して登場するのがアート・エイヴィスとレジー・ワークマンのツイン・ベースの長いソロ。22分ある曲ですが、ベースソロは何と5分以上あります。でも、このベースソロが、曲全体の漂う、呪術とか祝祭とか、そういった言葉がぴったりのムードを最も凝縮した空気を増幅させています。続くエルヴィンの静かなドラムソロがまた良いですね、緊張を一気に突き破るようにコルトレーンとドルフィーが同時にソロの応報を繰り広げ、聴く人の心をどっかにかっさらったままのフィナーレであります。
いやもうコルトレーンのライヴ盤は、良いとか素晴らしいとか言う前に、毎回物凄い力に引き込まれて圧倒されてしまいます。先も言いましたが録音バランスは多少悪いのではありますが、ほんと引き込まれてもみくちゃにされてるうちにどうでも良くなってきますので、コルトレーンが好き、ヘヴィなジャズにもみくちゃにされたい方には、コチラも他のライヴ盤どうよう是非聴いていただきたいなと激しく思います。
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2023年07月18日
大コルトレーン祭2023
こんばんは!今年も暑い夏と共に大コルトレーンの命日がやってまいりました。
毎年この日は、個人的に一番好きな『ラッシュ・ライフ』をまず聴いてしっとりした気持ちになるですが、今日はちょっと違うアルバムを聴いてアツい気分になっておりました。そのアルバムについては明日以降じっくりと書いていきますね。
という訳で。
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2022年08月29日
ジョン・コルトレーン ジュピター・ヴァリエーションズ
ジョン・コルトレーン/ジュピター・ヴァリエーション
(Impulse!/ユニバーサル)
コルトレーンが1960年代の初め頃から率いてきた、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)のカルテットは、およそ5年間の活動の中で多くの作品を世に出し、その中でコルトレーンというミュージシャンを、単なるジャズ・テナーの巨人という評価にとどまらない60年代最高のカリスマという位置にまで押し上げてきましたが、このカルテットは1965年に更なる音楽の探究に乗り出したいコルトレーンと、他のメンバー達との理想の食い違いによってあえなく崩壊してしまいます。
で、コルトレーンは新たにファラオ・サンダース(ts)、アリス・コルトレーン(p)、ラシッド・アリ(ds)という若手をメンバーに加え、大胆なフリーフォーム、1曲20分は超える長時間演奏という過激なアップデートを経た演奏を武器に再出発します。
ところが、この頃既にコルトレーンの体は深刻な病魔に蝕まれており、新バンド結成から僅か1年程、まだまだこれからというところであの世へと旅立って行ってしまいます。
後にファン達が「晩年のコルトレーン」と呼ぶようになる新生コルトレーン・クインテット、活動期間は僅か1年、その間にリリースしたスタジオ・アルバムは『エクスプレッション』のみだったという事は、なかなかに重い事実であります。
しかし、新バンド結成から亡くなるまで、コルトレーンはこれまで以上に精力的に活動して、ひっきりなしにライヴを行い、スタジオにも入っておりました。
オフィシャルなものでもライヴ盤は生前に出された『ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン』があり、死後も『ライヴ・イン・ジャパン』や、近年では『オラトゥンジ・コンサート』『ライヴ・アット・ザ・テンプル大学』などなど、そしてスタジオ盤ではラシッド・アリとのデュオ『インターステラー・スペース』『ステラー・リージョンズ』など、これが何で発表されなかったんだろうと思えるほどの素晴らしいクオリティを誇る作品がリリースされております。
スタジオ録音に関しては、コルトレーンがスタジオで回していたテープを奥さんのアリスが譲り受け、それを発掘のプロであるマイケル・カスクーナが中断部分やミステイクを丹念に削って作品化し、色んな手続きを経て世に出された。という訳なんです。
さて、本日ご紹介しますアルバム『ジュピター・ヴァリエーション』は、晩年のコルトレーン・クインテットの未発表スタジオ録音最大の成果と言って良いほど見事な「作品」であります。
実は、このアルバムに入っている演奏は、コルトレーン死後に一度世に出た事があります。
まずは2曲目の「ピース・オン・アース」、これは『ライヴ・イン・ジャパン』における美しい名演で知られる曲ですが、アリスがコルトレーンに死後、スタジオテイクに自身がアレンジしたストリングスとチャーリー・ヘイデンのベースをオーバーダビングしてリリースした『インフィニティ』というアルバムで聴けます。
そして、3曲目『ジュピター(ヴァリエーション)』と4曲目『レオ』は、ご存じラシッド・アリとのデュオ盤『インターステラー・スペース』のボーナストラックとして聴けるのですが、ここで「なーんだ、他で聴けるんならこのアルバムいらねぇや」と思うのはちょーーーっと待ったぁーーー!なのであります。
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【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,,bells-@A)
ファラオ・サンダース(ts,tambourine,wooden fluteA)
アリス・コルトレーン(p,@BC)
チャーリー・ヘイデン(b,@)
ジミー・ギャリソン(b,@BC)
ラシッド・アリ(ds)
レイ・アップルトン(perc,@)
【収録曲】
1.ナンバー・ワン
2.ピース・オン・アース
3.ジュピター (ヴァリエーション)
4.レオ
(録音:@1967年3月7日,A1966年2月22日,BC1967年2月22日)
まず、このアルバムが”作品”として非常に優れているのですよ。前半2曲をクインテットの演奏、後半2曲をコルトレーン×ラシッド・アリのデュオにした事で、聴きどころが非常に鮮明になって、4曲の緩急豊かな流れからダレることなく聴き通せる(それでも1曲の密度がかなり濃くてヘヴィなので心して聴くべし、なのですが、それはまぁこの時期のコルトレーンの演奏全部がそうだと思ってください)し、そういう流れで聴くと、特に後半のデュオが、全編デュオの『インターステラー・スペース』とはまた違った感じでより生々しく輪郭が浮き上がってくるんです。
1曲目『ナンバー・ワン』は、新生コルトレーン・バンドの自己紹介のようなフリーフォーム・ナンバー。不穏な空気が螺旋状に渦巻きまがら、コルトレーンが叫ぶ11分強の演奏です。ラシッド・アリがシャンシャンと細かくシンバルを刻み、アリスがカラコロガラゴロとちょっと儚い感じの鍵盤を転がしてジミー・ギャリソンが「ボウン、ボウン」と入魂の弦を弾く。そしてコルトレーンがアツくなればなるほどバックの醸す雰囲気がどんどん深い所へと沈み込むような、一言で”フリー”とは言えない荘厳な雰囲気であります。
2曲目『ピース・オン・アース』は、何と言ってもメロディが綺麗です。コルトレーンが吹くメイン・フレーズが徐々に形を変えたり崩したりしながら、感情の奥底から湧いてくるような希求のようなものを描きます。細かい”リズムのないリズム”を淡々と刻んでいるラシッド・アリのドラムと、クラシックの印象派のようなアリスの美しいピアノが涼やかに鳴り響いていて、ファラオの木製フルートがチラッと出てきて温もりを置いてゆく。ライヴ・イン・ジャパンの25分越えの陶酔感にどっぷり浸れるヴァージョンも良いですが、このギュッと凝縮された8分間もなかなか良いもんです。
そして後半のラシッド・アリとのデュオ。まずは『ジュピター(ヴァリエーション)』。コルトレーンとアリのデュオは、単純な”クインテットの他の楽器を抜いたもの”ではありません。コルトレーンもアリも、バンドのメンバーという枠を取っ払って、それぞれが一人の表現者として裸で向き合っている感じがします。「ゴボッ!ゴボッツ!」とひとつひとつの音を強めに吹くコルトレーンに対し、細かい音の拡散で上昇気流を作り、その上で更にコルトレーンが飛べるように空気を作ってゆくアリ、よく聴くと絶妙なアクセントでバスドラも細かく踏んでいて、ドラムの打撃の音域全体にも鋭く神経通しております。
ラストの『レオ』は、更にコルトレーンのテンションが上がり、最初からフルに飛ばしていて、これは本作中最も熱い演奏です。アリも物凄く力が入っていて、「スネア→タム→シンバル→」と、ぐるぐるぐるぐるリズムを旋回させて、高高度でコルトレーンのテナーと激しい一騎打ちを繰り広げている感じで、スネアを刻むアクセントの「タタタタタタ!」にバスドラが加わって、更にタムの連打も併せて「ズドダダダダダダダ!!!!」になるところなんか、もうね、もう凄くカッコイイですね。
ラシッド・アリは元々マックス・ローチのドラミングを凄く研究していて、特にソロ楽器のアドリブに対応するローチの細やかなリズム・チェンジを自らのドラム奏法に取り入れているそうです。ローチはあくまでオーソドックスなスタイルのドラマーではありますが、なるほどコルトレーンがサックスを吹き止めて鈴を鳴らしている時のドラムソロみたいなパートを聴くと、ローチの細かくたたみかけるソロからの強い影響が感じられるような気もしますが、何より「パシィ!」と響く出音の鋭さに「おぉ、確かにそうだ!」となって興奮しちゃいます。すいません、今正に聴きながら興奮しながら書いてますんで文章がちょっと先走ってる感満載なんですが、そこはご容赦ください。
『ジュピター・ヴァリエーション』前半の人数多めの演奏が内省的で、後半のデュオがハイテンションなんですよね。というか、これこそが晩年のコルトレーンの”色”だと思います。発掘モノとくればファン向けで〜と思う人もおるかも分かりませんが、この作品は「コルトレーンの晩年のフリーになった演奏ってどんななんだろう?聴いてみるべか」とお試しになりたい人にとっては特にこの時期のコルトレーン・サウンドを無駄なく分かりやすく伝えてくれる作品なんじゃなかろうかと思います。
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