2019年08月17日

ブルー・ワールド(またしてもコルトレーン未発表出る!)

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コルトレーン、またしても未発表音源発売の大ニュースです(!!)


昨年はインパルスでレコーディングされて全く世に出てなかった『ザ・ロスト・アルバム』がいきなりリリースされて、ファンのド肝を抜きました。



ええ、これは単なる「余りもんテープをてきとーに編集した」とかそんなんじゃなくて、丸々ガッツリアルバムだったので、しかもその内容がやっぱり素晴らしく中身が濃くて充実したものだったために、1年経った今では未発表だった云々はまるで関係なく、フツーに「60年代前半のコルトレーンの作品のひとつ」としての愛聴に耐えるものとして聴いております。

で、今回なんですが、今回のは流石に「発売されずに放置されてたままの未収録テイクか未発表セッションだろう」と思ったんですが、どうやらちょいと毛色の違う”作品”のようなんです。

コルトレーンは、1964年にカナダ国立の映画製作庁から『Le chat dans le sac』という映画の音楽を依頼されており、そのための音楽がレコーディングされ、実際に映画で使われたそうです。

この映画、日本では未公開なのですが、放映されたようです。で、その中で『ナイーマ』や『トレーニング・イン』『ライク・ソニー』『ヴィレッジ・ブルース』といった、コルトレーンの愛奏曲が流れてました。

資料によると、当時の人達はこの映画に使われている曲は、コルトレーンの過去のアルバムに入ってる演奏を使ったものだろうと思ってたそうなのですが、何とこれが、使い回しではなくてこの映画のために新たにレコーディングされたもので、それが録音から55年を経て、やっとリリースされる事になるんだということです。

つまりこのアルバムは、コルトレーン初の「映画のサントラ盤」ということでまずびっくりなんですが、50年代とかに別のメンバーでやっていた曲を、黄金のカルテットのメンバーで、しかもフリー化する直前の『至上の愛』のちょっと前の時期の演奏って言いますから、もう中身が重厚で熱いことは保証されたようなもんでしょう。


発売は2019年9月後半、CDとレコードが出る予定であります。

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2019年08月13日

マッコイ・タイナー リーチング・フォース

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マッコイ・タイナー/リーチング・フォース
(Impulse!/ユニバーサル)

1950年代末に結成され、60年代初頭に大々的に世に出たジョン・コルトレーンのカルテットは、コルトレーンのプレイのみならず、そのバンド・サウンドの突き抜けた個性的な演奏が注目されました。


その中でインパルス・レーベルが真っ先にソロ・アルバムの売り出しにかかったのが、ピアノのマッコイ・タイナーでした。


マッコイは、コルトレーン・カルテットのプレイは激しく吹きまくるコルトレーンを支え、というよりは真っ向からそのフレーズを受けて一緒に燃え上がるような壮絶な演奏でありましたが、単独のピアニストとしては、この時代の新しいジャズの理論である「モード」というものを理解した有望な若手としての評価も固めておりました。

そこでインパルスは1962年、コルトレーン・カルテットゆかりのメンバーで固めたピアノ・トリオ・アルバム『インセプション』を録音してリリースしました。





そしてそれから1年も経たないうちに、今度はメンバーを変えてまたもピアノ・トリオ・アルバムの『リーチング・フォース』をレコーディングしました。


これはですね、本当に異例というか、インパルスがいかにマッコイを特別なピアニストとして見ていてたかということの現れなんですね。

まず、ピアノという楽器は、まだまだジャズの世界では「フロントのホーン奏者を支えるリズム楽器のひとつ」という考えが根強く残っておりました。もちろん50年代から実力のあるピアニストのトリオ作はそれなりに人気があり、リリースもされておりましたが、アメリカではどうもピアノトリオってのは「良い感じのBGM」以上の評価はなかなかされないようで、バド・パウエルやセロニアス・モンクなど、一部の例外を除き、どちらかというと小粋だったりファンキーだったり、そういう心地良いものが好まれる傾向が、確かに今もあります。

そう、実はこの流れにちょっとした風穴を最初に空けたのが、モード・ジャズだったんです。

モードの金字塔と呼ばれるマイルス・デイヴィスの『カインド・オブ・ブルー』これに参加して、見事に芸術性の高いサウンドのキーマンとなったピアニストのビル・エヴァンス。彼が「新しいジャズを追究するためのピアノ・トリオ」を結成し、リリースしたのが『ポートレイト・イン・ジャズ』をはじめとするいくつかのトリオ・アルバム。

この、エヴァンスのトリオがジャズの世界におけるピアノ・トリオという編成に、一個の芸術表現をするフォーマットとしての確固たる地位
を与え、加えて多くの新しい表現への探究に燃えるピアニスト達へ大きな間口を開いたんです。

で、マッコイのまさかの2枚連続のピアノ・トリオでのリリースです。

もちろんマッコイは先にも述べたように「コルトレーン・カルテットのピアニスト」というネームバリュー以上に、新しいモードの手法を修めたピアニストとして既に独自のスタイルを持っており、もしかしたらインパルスは当時注目を集めていたビル・エヴァンスへの有力な対抗馬として”ピアニスト・マッコイ・タイナー”を売り出したかったのかも知れません。



リーチング・フォース

【パーソネル】
マッコイ・タイナー(p)
ヘンリー・グライムス(b)
ロイ・ヘインズ(ds)

【収録曲】
1.リーチング・フォース
2.グッドバイ
3.アーニーのテーマ
4.ブルース・バック
5.オールド・デヴィル・ムーン
6.ジョーンズ嬢に会ったかい

(録音:1962年11月14日)


実際にデビュー作の『インセプション』そして次の『バラードとブルースの夜』なんかを聴くと、そのスタイルはビル・エヴァンスと共通するリリシズムが底の方に漂っている印象を受けます。というか、コルトレーン・カルテットでの激しくヘヴィなプレイも、70年代以降のアグレッシブ路線の奥底にも、どうしようもなく狂った切なさのようなものが胸にグサグサと刺さるから、アタシはマッコイが好きなんです。はい、本質的にはこの人”切なさ”の人です。

さてさて本作『リーチング・フォース』ですが、前作と代わってマッコイのバックに付くのは、ベースがヘンリー・グライムス、ドラムがロイ・ヘインズであります。


うひゃーキタキタ!これはもうアタシ大好きなメンツです。

ドラムのロイ・ヘインズは、チャーリー・パーカーとも共演したベテランですが、何といってもコルトレーンやエリック・ドルフィー、ブッカー・アーヴィンといった、物凄くクセの強いホーン奏者のバックで叩く時の、その細やかなスネアさばきから繰り出されるスピード感が何と言ってもたまらん人で、こりゃもう同じく独自のスピード感持っとるマッコイとの相性は言わずもがな抜群です。

マッコイと最高に相性の良いパートナーといえばもちろんエルヴィンで、これにはアタシも全く異論はございませんが、エルヴィンと組んだ時の安定感とはまたちょっと違う、マッコイのスピード感が華やぐか、それともヘインズのスピード感が上を行くかのこの緊張感、もう1曲目の『リーチング・フォース』から激しいスリルを孕みながらデッドヒートしてますが、はい、もうたまらんです。


ヘンリー・グライムスは、個人的にバリッバリのフリージャズでありますアルバート・アイラーのアルバムでのプレイに衝撃を受けて大好きになったベーシストです。

この人は音に物凄く特徴があって、すごく太いんです。その太い音をグワッと鷲掴みにしてぶっ放しながら、空間を歪めて行くような強烈に豪快なスタイルの持ち主なんですが、バラードなんかでは実に的確なウォーキングで、時に弓弾きも披露しますがそのどちらもメロディアスなんですよね。やや屈折した感じの憂いが溢れるバラード『グッドバイ』や、ビル・エヴァンスとスコット・ラファロの演奏と間違えそうなぐらい端正な『アーニーのテーマ』で聴ける豪快な音と繊細な音符使いのベースプレイが、はい、もうたまらんです。


全体的にスピード感とバラードでのリリカルぶりがパワーアップして、どの曲でも彼の本領が発揮されております。特にマッコイ個人の”本領”の部分は後半、しっかりブルース形式、でもやはり解釈には独自のものがある『ブルース・バック』、得意のモーダル大全開な『オールド・デヴィル・ムーン』に刻まれております。これも本当に良いアルバム♪


















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2019年08月11日

マッコイ・タイナー インセプション

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マッコイ・タイナー/インセプション
(Impulse!/ユニバーサル)


私はマッコイ・タイナーというピアニストが大好きです。

コルトレーンのバックでは、ひたすら力強く情念を噴き出すようなプレイに没頭するピアノ、コルトレーンのバック以外では、情念を吐きつつも、どこかクールな知性を感じさせるピアノ。そしてどちらにも共通するのが、この人のピアノ・スタイルは、とにかく「硬派で耽美」ということ。

本当に大好きなんですが、やっちまいました。

何と、このブログでまだマッコイの単独アルバムを1枚も取り上げてないんですよ〜!(泣)

「ほらお前のそういうところよ!」

はいィ...アタシのこういうところです。

という訳で、本日からしばらく「マッコイ強化月間」として、マッコイ・タイナーのソロ・アルバムの紹介をいたします。いや、ごめんなさい、させてください。

マッコイ・タイナーといえば、このブログをご覧の皆様にとっては、コルトレーンのレビューですっかりおなじみの、コルトレーン長年の相棒とも呼べる、彼のバンドのメロディとリズムの両方を支える、いなくてはならないピアニストでありました。

残念ながら晩年のコルトレーンの目指す音楽性と彼の音楽性とが接点を見出すことなくエルヴィン・ジョーンズと共に脱退してしまいましたが、彼もエルヴィンも、コルトレーンの事はずっと尊敬し、その音楽的な影響を元に、それからの表現に活かしていた人達でありました。

特にマッコイに関しては、彼の後任でコルトレーン・バンドに加入したアリス・コルトレーンは、ラシッド・アリがエルヴィンとは全然違うアプローチでリズムの根幹をガラリと変えてしまったのに対し、マッコイのプレイ・スタイルを受け継ぐような感じでコルトレーンのフリー・フォームなサウンドに重く寄り添っており、もしかしたらアリスに対してコルトレーンから「マッコイみたいに弾いてくれないか」という指示があったのかも知れません。


さて、マッコイ・タイナーは1938年生まれでモダン・ジャズ世代のジャズマンとしてはかなり若い世代となります(年齢でいえばコルトレーンよりも12歳年下です)。

地元フィラデルフィアで10代の頃からバンド活動をしており、その後ニューヨークへと拠点を移し、1959年にはベニー・ゴルソンのジャズテットのメンバーに抜擢、それから1年後にはコルトレーンの新バンドのメンバーとして加入。この時何と22歳ということでしたから、早い時期から才能があったというより、しっかりとした世界観を内側に持っていた人だったんだなという事が伺い知られます。


その才能というか世界観が、プロデビューしていきなりのコルトレーン・カルテットで磨きに磨かれて花開いたのがマッコイ。つくづくスタイルも経歴も、特異中の特異であると言えるでしょう。

マッコイとエルヴィンは、コルトレーン・カルテットの中にあって、そのサウンドカラーを決めた強烈な個性的スタイルの持ち主であります。

ところがですね、この2人、コルトレーン・カルテットに居た時期とか、加入前とかの、コルトレーン以外での音源を聴いてみると「全くの別人」ばりにクールでスマートなプレイを楽しませてくれるんです。







インセプション

【パーソネル】
マッコイ・タイナー(p)
アート・デイヴィス(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.インセプション
2.ゼア・イズ・ノー・グレイター・ラヴ
3.ブルース・フォー・グウェン
4.サンセット
5.エフェンディ
6.スピーク・ロウ

(録音:1962年1月10日,11日)


今日はマッコイ・タイナーのソロ・デビュー作『インセプション』をご紹介します。

このアルバムは1962年、マッコイがコルトレーン・カルテットのメンバーとして在籍して、毎晩のようにバリバリの情念が沸きまくって吹きこぼれていた丁度その頃にレコーディングされたアルバムです。

ここではコルトレーン・カルテットの同僚であるエルヴィン・ジョーンズ、コルトレーンとは仲良しで、色んなセッションにもちょくちょく呼ばれて参加しているアート・デイヴィスを従えてのトリオ演奏で、これはもうメンツからして「コルトレーン抜きのコルトレーン・バンド」な感じ、のそれはそれはヘヴィで熱い演奏が聴けるのかと、緊張気味に身構えておりましたが、聴いてみたらコレがびっくりするぐらいクールでオシャレですらある、いわゆるモード・ジャズ・ピアノのスタイリッシュな空気に満ちた作品でした。

ここで演奏されているのは、いわゆるスタンダード曲ですね。マッコイのピアノは、極力粘らない、跳ねない、でもグルーヴィーに細かい音符をアドリブで重ねる毎に、ゆわっとした独自のグルーヴを出してて、その知的で端正なグルーヴ感は、同じ時代のピアニストで言うならばビル・エヴァンスに近い。

もっとも、エヴァンスはグルーヴィーに流れる局面でも、てんめりと盛られた”情”の部分の内側に沈み込んで行くような儚さとあやうさがありますが、マッコイのピアノは情感にゆらぐことなく、あくまでキリッとフレーズをちりばめて行きます。先ほど「知的で端正」と書きましたが、その音の立ち方や無駄のないフレーズ展開はやはり「硬派」と呼ぶに相応しいものだと思います。

そしてエルヴィン。コルトレーンのバックではブ厚く重いリズムの塊を豪快に連発する、文字通り重厚でパワフルなドラマーという印象の強いエルヴィンが、マッコイのピアノをブラッシュワークでの繊細なサポートに徹していて、これもまた「えぇ!?あのエルヴィン・ジョーンズなの!!??」と、最初びっくりしましたが、タタン!タタン!としなやかに力強くリズムが折り重なってゆく独特の畳み掛け方は、この人ならではのもの。繊細さの奥底にしっかりと持つ硬派な気迫が、マッコイ同様好印象です。

とにかくこのアルバムでは、気品あるバラードはもちろんですが、収録されているアップテンポの曲のスピード感が非常に斬新で「モードジャズって何?」と聴かれて理論的な説明を省いて簡潔に言うなら「このスピード感!」と言いたいぐらいです。3曲目の『ブルース・フォー・グウェン』とか、ブルースと言いながらほとんど全く粘らない、高速でシャキシャキ流れてゆくこのフレーズ。今の時代はこういったスタイルは主流になっておりますが、この時代のリスナーにとっては、とても衝撃的なものだったに違いありません。

最初は「何かフツー」と思ってたマッコイの初期アルバムですが、これは聴き込む毎にとてつもなく斬新で、爽やかにアウトしてゆく知性が凝縮された素晴らしい作品だなぁとしみじみ思って、もうかれこれ20年聴いてます。が、いやはや全く飽きるどころかますますクセになります。












”マッコイ・タイナー”関連記事




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