ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2016年01月31日

クラレンス・ゲイトマウス・ブラウン アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル

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クラレンス・ゲイトマウス・ブラウン/アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル

(Blue Thumb/Verve/ユニバーサル)


ミュージシャンというのは大体若い頃に全盛期を築いて、トシを取ると共にいい感じに枯れて渋い味わいを醸すタイプか、若い頃はそーでもないけど、トシ食ってから急に輝き出すタイプとがあるそうです。

でも、そういった流れ(というのか・・・)にも乗らず、完全マイペースで”勝手に全盛期”を好きな年齢でボンボン作る規格外の人がたまにいるんです。

ブルースの世界は割とそういう”規格外の人”の宝庫だったりするんですが、その規格外の中でもとりわけぶっ飛んで「凄いなぁこのオッサン・・・」としみじみ思わせるのがクラレンス・ゲイトマウス・ブラウンさん(以下ゲイトさん)であります。

ゲイトさんは1950年代、丁度ブルースがエレキギターを手にしてT・ボーン・ウォーカーを筆頭に「カッコいいギターソロが弾けるヤツが強い」というひとつの新しい思想が生まれた丁度その頃に、第一人者のT・ボーンの影響を受けつつも独自のやんちゃでワイルドなギター弾き倒しスタイルで早くも頭角を現し「T・ボーンのライバル」として、テキサス/ウエストコーストを中心に大人気を博します。

で、その頃の「ヒューストン・ジャンプ」と呼ばれたギャインギャインに粗くスイングするビッグバンドを従えて、それ以上に轟きまくるギター・ソロが渾然となった 
初期ピーコック音源
は、もうそれだけで完成されたひとつの究極形であり、ブルースの歴史に燦然と突出して輝く文句ナシの金字塔であるのですが、ゲイトさんはそれでは満足せず

「形式だけのブルースなんざオレは好かんね、そんなセコいものなんざどーでもいい、全部のかっこいいアメリカ音楽を演奏してやるよォ!」

と、ブルースもジャズもカントリーもケイジャンも何もかもごちゃ混ぜにした音楽を、しかも結構イイ歳になってからバリバリに演奏するようになりました。今で言う”ミクスチャー”の先駆けを、このオッサンは「オレは宇宙人だ!」と言いながら、一人嬉々としてやっておったんですね。

ギターの腕はもちろんバケモノなんですが、それにプラスして、フィドルやハーモニカなんかも披露するようになったのも丁度その頃(年代でいえば70年代〜80年代)で、アタシはピーコックでガツンとヤラレたのにその後のゲイトさんの作品を聴く毎に

「マジかよ!?ぶっ飛びすぎて訳がわかんねーーー!!」

と、これまた嬉々として浴びるように聴いたもんです。

ゲイトさんの何が凄いって、50を過ぎてどんどん精力的に音楽の幅を拡げていったことと、タダでさえバケモノなギターの腕を天井知らずに上げていったということは言うまでもなくなんですが、彼が行うところの「ブルース」「ジャズ」「カントリー」とか、そういった雑多な音楽が、全然作為的じゃなく、ごくごく自然に演奏の中で溶け合っているということ。

で、ゲイトさんは90年代になってもその快進撃を緩めることなく、2005年に81歳で亡くなる直前まで、元気にオレ節炸裂の演奏を行っておりました。

今日ご紹介するのは、ゲイトさんの音楽的な「いろいろ」が、ひとつ収まるところにカッコ良く収まったというべきか、1999年にリリースされた、そのタイトルもズバリな晩年の名作「アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル」をご紹介します。



【収録曲】
1.ロック・マイ・ブルース・アウェイ
2.ハーフ・ステッピン
3.フーティー・ブルース
4.フロント・バーナー
5.アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト
6.スワンプ・ゴースト
7.ウィズアウト・ミー・ベイビー
8.ゲイト・スウィングス・アゲイン
9.ストレンジ・シングス・ハプン
10.ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア
11.ギター・イン・マイ・ハンド
12.ジャンピン・ザ・ブルース
13.シングス・エイント・ホワット・ゼイ・ユースト・トゥ・ビー



アルバムは得意とするゴージャスなビッグ・バンドを従えたノリノリのスウィング大会♪

トレードマークの革張りファイヤーバード(ジャケにも写ってますねぇ)を豪快にバキバキ鳴らすスタイルは、70年代”スウィンギン・ゲイト”として4ビートで大暴れしていた頃の勢いを感じさせますが、往年に比べて音色も実に深みがあり、ギター・ソロも”ここ!”というところでガッツリと聴かせる、実に味わいに溢れたプレイに進化しております。

楽曲も勢い一辺倒、ごった煮ガンガンゴン!じゃなくて、ジャズ寄りの演奏の中にゲイトさんが体現してきたところの”アメリカン・ミュージック”な要素が上質にまとめられていて、ノリの良さの中にも落ち着いた熟練のプレイと歌唱(ゲイトさん、声もセクシーなのよ)が燻し銀の光沢を放ちます。あぁ、たまらんですねぇ・・・。

丁度このアルバムがリリースされた1999年は、ブライアン・セッツァー先輩オーケストラの「ダーティー・ブギー」がブレイクして、世界はネオ・スウィング・ブームで沸きかえっていた時、日本でも心あるCDショップでは「ネオ・スウィング特集!」と称してこのアルバムを試聴機に入れて展開しておりました。

齢80に近いこのブルース(て言ったら本人に怒られますが)の大御所の演奏を、若い音楽ファンはどう受け止めるだろう・・・?と恐る恐る反応を伺ってたら、何と「やっべぇ、これ、すげぇカッコイイ!スウィングしてるしギターもヤバい!!」と、軒並み好反応で、程なくして行われた来日公演でも、多くの「新しいファン」が集ったと聞いております。

ゲイトさんの何が凄いって、アルバム出す毎にぶっ飛びの進化をしてて、しかもその都度ガッチリ若い感性を持つ新しいファンを獲得してるってことなんですよね。普通ブルースつったらロックのルーツでとか、好きなミュージシャンが影響を受けたからとか、そういうワンクッションがあって好きになるもんですが、ゲイトさんに至ってはそういうクッションなしでダイレクトに聴く人の耳に届く音楽をやって聴いた人の心を鷲掴みにするということ。

ゲイトさんが過去にヒットさせた@FJの再演、”スウィングの鬼ぶり”ここに極まれりのインストG、どこまでもサザンな泥臭さのEとか、楽曲単位での聴きどころはそれこそ盛りだくさん。

ジャズファンには、チャーリー・パーカーでもおなじみジェイ・マクシャンのBK、言わずと知れたエリントン・ナンバーの大スタンダードDIL、カウント・ベイシーのCが、うぉお、こんなになるんだ!という新鮮な感動も味わって欲しいと思います。

あと、ゲイトさんとは恐らく長年の付き合いでもうほとんど一心同体のバンドの演奏/グルーヴも本当に素晴らしいです。ところどころめちゃくちゃカッコイイサックス・ソロいくつもが出てきて「ぴゃー!」となりました。

ジャケットの内側には、ちゃんと「この曲でソロ取ってるのは誰々」と書いてあるんですよ。そういう愛に溢れた丁寧なCDの作りも素晴らしいです。



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2016年01月30日

ザ・ブルーハーツ(THE BLUE HEARTS)




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ザ・ブルーハーツ/THE BLUE HEARTS
(メルダック)

小6の時でした。

頭悪いながらも「何だか世の中って生き苦しいぞ」って気持ちをずーっと持ってて、その時はこれが極限までモヤモヤしておったんです。

いわゆる思春期ってやつですね、こういう感情は多感な年頃になれば誰もが持つようになる。

そんな時、アタマの悪いアタシでもわかるストレートな歌詞と最高にガツンとくるサウンドで、勇気付けたを通り越して、救済してくれたのがブルーハーツ。そう思っております。

きっかけはNHKで夕方にやっていた音楽番組でしたね。1988年当時はバンドブーム最後の盛り上がりを見せていた時で、テレビにも面白い「バンド」という人達がたくさん出てきてて、何だかよくわからないながらも「あーおもしれー」と言って、ただテレビを眺めておりました。

その時

「くだらない世の中だー、ションベンかけてやるよー」

と、発せられた歌詞のワンフレーズがいきなりグザーっと胸に突き刺さりました。

画面を見たら坊主頭の面白い顔をした人が、それまで見たことのない奇妙なグネグネした動きをしてました。

その姿に「うはぁっ、コイツら変ー!」と思った一瞬、そして「ブルーハーツ」という名前を覚えて、早速CDを買いに行って、部屋にこもっては爆音で聴きまくってました。それこそ何ヶ月もずーーーーっと。

このファースト・アルバムは、それまで音楽知識ゼロ、社会問題とかに対する理解力ゼロのアタシに「戦うためにとりあえず大切なもの」を全て教えてくれました。

・僕達は泣くために生まれてきたわけじゃないよ(「未来は僕らの手の中」)

・なれあいは好きじゃないから誤解されてもしょうがない それでも僕は君のこといつだって思い出すだろう(「終わらない歌」)

・僕 パンクロックが好きだ 中途ハンパな気持ちじゃなくて ああ やさしいから好きなんだ(「パンク・ロック」)

・見せかけばかりじゃない 口先だけでもない いつか見るだろう 同じこぶしをにぎりしめて立つ人をきっと見るだろう(「街」)

・誰の事も恨んじゃいないよ ただ大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない(「少年の詩」)

どの曲のどの歌詞も、カッコイイとかそういうんじゃなくて、刺さるものがあったんです。

そしてアタシは生まれて初めて自分で”欲しい”と思って買ったこのロックのアルバムを聴いて「パンクロック」という言葉を覚えてそれからどんどん音楽にのめり込んでいきました。

あとね、ヒロトとマーシーは音楽が本当に好きで、古いロックンロールやブルースについても雑誌のインタビューとかでたくさん語っていて、パンクと同時にブルースに(親父経由で)ハマッてたアタシにとっては本当の意味で「学校には絶対いない先生」でした。






【収録曲】
1.未来は僕等の手の中
2.終わらない歌
3.NO NO NO
4.パンク・ロック
5.街
6.少年の詩
7.爆弾が落っこちる時
8.世界のまん中
9.裸の王様
10.ダンス・ナンバー
11.君のため
12.リンダ リンダ


人生経験なんてぜんぜんチャチかったんです、でも、ブルーハーツ聴いて初めて「救いってあるなぁ・・・」と思って、そっから色んな音楽を聴いて、何百回何千回も感動を重ねても、多分成長というものをしていないアタシの気持ちはその時と全然変わってません。

「あぁ世の中クソッタレだ!」「どーせ俺は一人なんだ」という、内側のしょーもないやさぐれに「あぁ、でも音楽があるんじゃね?」「パンクロックがあるよ」と、今もやさしく示してくれるのはブルーハーツ。

もちろんブルーハーツ解散してハイロウズになってもクロマニヨンズになっても、ヒロトとマーシーの基本姿勢「ロックンロールが好きだからそれでOK」っていうのはひとっつも変わってなくて、むしろ音楽的には今のサウンドの方がすげぇカッコイイんだけど、今日はあえてアタシの原点と原体験を晒しました。



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2016年01月29日

武田和命 ジェントル・ノヴェンバー

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武田和命/ジェントル・ノヴェンバー
(フラスコ・レコード/ユニバーサル)

はい、近頃は「日本や日本人の良いところを見直そう」という企画が、テレビやインターネットでは好評なようです。

あの、アタシはあくまでも音楽の人間としての側から言わせてもらいます。

「日本は凄い!日本人の感性はホントに素晴らしい!」

と。

今日はアタシにしみじみとそう感じさせてくれる1枚の日本ジャズの名盤を皆様にご紹介します。

武田和命というテナーサックス奏者の「ジェントル・ノヴェンバー」というアルバム、これはいわゆる”知る人ぞ知る和ジャズの名盤”として、多くの”ホンモノ”を聴き込んで来たジャズファンから大絶賛されているアルバムなんですが、いやいやいや、こういった作品こそ、一部の強烈なファンやマニアだけのものにするのは本当にもったいなくて「ジャズ」という言葉にちょっとでも何かこう特別な「くーーーーっ!」ってものを覚える人ならば、聴いておきましょう。むしろジャズとか全然知らないけれども、純粋な気持ちで「音楽」が好きならば、このアルバムはそれこそ一人一枚ぐらいに当たり前に持っていてもらわないと、という気持ちをアタシは抑えきれずにおれます。

テナー・サックスという楽器で、これほどまでに繊細で、どこか切ない情感や人生の深みとともに、奏でられる”うた”の美しさを表現した作品があったでしょうか?

最初から最後の一音がやるせない余韻を残して消えてゆくまで、どの瞬間もうっとりするような深い陰影が呼吸をしているかのような、完全に別次元の音楽がここにあります。

もちろん「ジャズ・テナー・サックスの名盤」というのは数え切れないぐらいあって、どれが一番というのは到底決められるものではありません。アタシとてジョン・コルトレーン、レスター・ヤング、デクスター・ゴードン、親父(コールマン・ホーキンス)、ブッカー・アーヴィン、ジョニー・グリフィン、ソニー・ロリンズ、ベン・ウェブスター、ウォーン・マーシュ、スタン・ゲッツ、ハロルド・ランド、ジョン・ギルモア、ハンク・モブレー、ウェイン・ショーター、フレッド・ジャクソン、イリノイ・ジャケー、アーネット・コブ・・・もうキリがないぐらいに特別な感情を抱いてしまうテナー奏者は数え切れないぐらいにいるのですが、武田和命の「ジェントル・ノヴェンバー」を聴いている時だけは、並み居る全てのジャズ・テナー・ジャイアント達の存在が霞んで、このアルバムでの演奏のことしか考えられなくなってしまいます。

そう、全てが特別なんです。

アタシが武田和命を知ったのは、当時フリー・ジャズが好きで山下洋輔を知り、その山下洋輔が絶賛し、共に活動をしていた。という記事を何かで読み「これは絶対日本の硬派なフリー・ジャズの人だ!」と思い込んだのが最初でした。

後ほど書きますが、武田和命という人は優れた才能を持ちながら活動には恵まれず、音源は本当に少なかったんです。

だからなけなしのカネで購入した唯一の(リアルタイムでリリースされた最初で最後の作品、しかも直後に武田は急逝して、結局「デビュー作にして遺作」になってしまった)アルバムという「ジェントル・ノヴェンバー」を聴いて、その余りにも艶やかでメロディアスな感情表現の塊のようなテナーの音色と、山下洋輔トリオの”フリー”を一切出さない、ひたすらにリリカルで上質なバックを聴き、良い意味で面喰らいました。

いや、衝撃でしたよ。その意外なほどにしっとりとしたサウンドはもとより、アルバム全部の曲がバラードなんですよ。

よく「似てる」といわれるのがコルトレーンの「バラード」や「クレッセント」ですが、確かにその頃意味もわからずに、ただ雰囲気が素敵で、よく遠い目をして聴いていたコルトレーンのバラードアルバムと、雰囲気はとてもよく似ております。音の上辺だけ聴けばコルトレーンだと言われてもすんなり受け入れてしまうでしょう。

でも、このアルバムを聴いて1年、2年と長く付き合っていくうちに、コルトレーンとは似てるけど根底にある強烈なオリジナリティ、例えばそれはどんなにしっとりとしたバラードを吹いても、アメリカ人がやると(黒人白人関係なく)根っこのところで乾いた感じの唄であるのに対し、武田和命のプレイはどこまでも叙情的で、これでしか味わえない潤いみたいなものがあるんです。いや本当に、聴けば聴くほど・・・。

【パーソネル】
武田和命(ts)
山下洋輔(p)
国仲勝男(b)
森山威男(ds)

【収録曲】
1.ソウル・トレーン
2.テーマ・フォー・アーニー
3.アイシャ
4.イッツ・イージー・トゥー・リメンバー
5.ワンス・アイ・トークト
6.アワー・デイズ
7.リトル・ドリーム
8.ジェントル・ノヴェンバー

アルバム全編が一切走らない、スロー・テンポのバラード。前半は彼が敬愛するコルトレーンの曲がやはり多いのですが、どの曲もさっきも言ったようにとことん叙情です。目に染みるほどの切なくひりひりした優しさと憂いに満ち溢れております。

そして後半のオリジナル曲、これがもう理屈抜きで胸にダイレクトにきます。奇をてらったとか、本当にそういったことは微塵もない、ただ美しいメロディーの上でシンプルに吹いているだけなんだろうけど、そこからジワジワジワと滲んでくる「うた」の質量が本当に凄くて泣きます。うん、もう「泣きます」としか言えません。

このアルバムは1979年にレコーディングされたライヴ盤なんですが、武田自身は60年代後半から活動を始めております。

しかし、多くの不運に見舞われて、ジャズから離れていた時期も長かったようです。

70年代後半になってようやく山下洋輔を中心に、彼の本当の実力を知る仲間達が表舞台に呼び寄せ、精力的な活動を行うのですが、1989年、病によって49歳という短い生涯を閉じてしまいます。

音楽とミュージシャン個人の人生を安直に結びつけるのはちょっとアレなんですが、武田の切なくもどこか内に厳しく外に優しいテナーの音、そしてスピーカーから放たれる空気の震えに身をゆだねていると、音そのものが人生の結晶のような気がしてなりません。いや、やっぱりジャズってそういう音楽じゃなかろうかと・・・。







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2016年01月27日

ローウェル・フルスン アーリー・レコーディングス1946-1952

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ローウェル・フルスン/アーリー・レコーディングス1946-1952

(Arhoolie/Pヴァイン)

『ブルースの眠れる巨人フルスンの初期音源集、サイドに弟のマーティのギターのみを従えたこの音源は、正に核しかないハードコア・ブルースだ』


と、書かれていたのは雑誌だったかそれともPヴァインのカタログブックだったか。とにかく名盤「トランプ」を聴いて、そのアツくそして限りなく辛口な歌唱に惚れてしまって、どうしてもこの人の”根源”をアタシは知りたくなりました。

唄を最初に聴いてそこまで思わせる引力みたいなものが、フルスン御大の声には宿ってたんです。 

そんな時にお役に立つのは、やはり何と言ってもガイドブックの類であり、たくさんの本や雑誌なんかから、パラパラパラとページをめくっていたら、件のキャッチフレーズが目にズドーンと飛び込んで来た。というわけなんです。

フルスン御大の初期レコーディング、しかも、バックは自分と弟のギターのみ、という実にシンプルな編成。。。

正直ホーン入りフルバンドのサウンド以外のイメージが、全く思い浮かばなかったんですが、これは良い傾向です。「想像できない」「予想できない」というのは、未知の素晴らしいサウンドとの出会いの前触れでありますから。

レーベルはライトニン・ホプキンスやミシシッピ・フレッド・マクドウェル等、戦後南部のリアルな(というよりも生々しい)ロウダウン・カントリー・ブルースを死ぬほどリリースしている信頼のアーフーリー。

これは間違いないっしょ!!

と、輸入盤をワクワクしながら探して見付けて購入した日の感動を昨日のように覚えております。

さて、中身の方は、御大のシャウト&キョーレツに埃っぽいあのヴォーカルが、ただシンプルな編成で聴けるものと思ったら、これが”あの”フルスンとは全くの別人でありました(!)

まず、ここで聴けるのは、シャウトも煽りもグッと抑えて、力まない地声で古いスタイルのテキサス・ブルースを淡々と唄う、完全にカントリー・ブルースマンと化したフルスン御大の、一切の装飾や演出のない、実にストイック極まりないブルースであります。






【収録曲】
1.Western Union Blues
2.Lazy Woman Blues aka I Worked So Hard
3.River Blues Part.1 aka Texas Blues Part.1
4.River Blues Part.2 aka Texas Blues Part.2
5.I Walked All Night
6.Between Midnight And Day
7.Three O'Clock Blues
8.The Blues Is Killing Me
9.Did You Ever Feel Lucky
10.I'm Wild About You
11.Blues With A Feeling
12.Why Can't You Cry For Me
13.There Is A Time For Everything
14.Lowell Jumps One aka Cash Box Boogie
15.Crying Blues aka Street Walking Woman*
16.You're Gonna Miss Me*
17.Miss Katy Lee Blues*
18.Rambling Blues aka Crying Won't Make Me Stay*
19.Fulson Blues aka Bad Luck And Trouble*
20.San Francisco Blues*
21.Trouble Blues*
22.I Want To See My Baby aka I'm Going To See My Baby*
23.Black Widow Spider Blues*
24.Don't Be So Evil*
25.I'm Prison Bound aka Doin' Time Blues*
26.My Baby Left Me aka Some Old Lonesome Day*

*=ボーナストラック


このうち、@〜Iまでが、さっきも言った「フルスン御大の唄と武骨なギターに弟のマーティンのリードギターのみが付いたカントリー・ブルース・セッションです。

とにかくどの曲もテキサス・ブルースの古いスタイルそのままに、ややミディアムな一定のテンポを淡々と唄う御大の声の繊細さ、決して饒舌ではないけれど言いたい事のみを的確なニュアンスで伝えるギターのバッキング、そしてマーティンの、これまた決してバカテクではないけれど、唄にピッタリと寄り添って、一緒に唄ってるかのようなロウファイなリードギターのみの濃厚で、ジワジワとクる渇いた味わいが最高です。どの曲も一緒に聞こえようが何だろうが、これがリアル・ブルース、コレを聴くことは男の義務であると、アタシは声を大にして言いたい。

後半はピアノ、ドラム、そして吹き人知らずのサックスなども曲によっては入る、やや賑やかなバンド編成ですが、これも60年代のゴージャスなウエスト・コースト・マナーじゃなくて、あくまで音数を増やすのとリズムを強調するためのバックであり、骨組みはフルスンが敬愛し、実際一緒に旅して回ったという大師匠テキサス・アレクサンダーからの影響がモロな、どこまでもヘヴィで深みとならではの味わいに溢れております。この辺りのニュアンスは、同じテキサスでも全然正反対と思ってたライトニン・ホプキンスのフィーリングと重なりますね♪

CD化されての再発は、本編14曲に加えて、怒涛のボーナストラック11曲という頭のおかしい仕様でありますが、そのボーナストラックも作風や時系列に矛盾がなくて、自然であります。持ってない人はぜひPヴァインからリイシューされた国内盤のCDを買いましょう!


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2016年01月26日

グウェン・マックレイ・ファースト

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グウェン・マックレイ・ファースト
(Parlophone/ワーナー)


何にせよこのジャケ、この顔です。

ギラギラした鋭い眼光に情念そのままに爆発したヘアー・スタイル、男による媚なんぞ微塵も感じさせない「男?食べ物?」ぐらいのムンムンに肉食系の香り(汗と化粧とヘアスプレーが濃厚に入り混じったアレ)を放つこの顔、このジャケ写。ラメ入りドレス、金ピカマイク。

そうそう、やっぱり「ソウル・シンガー」と名乗るならば、見た目でこれぐらいのインパクトを放って欲しいものです。どうですか?ソウルとか全然知らない人にこのジャケを見せても、100中99は「濃い!」「ワイルド!」という声が返ってくるでしょう?

はい、はい、アタシもソウルとか全然知らなかった時に「この顔」にヤラレたクチです。

ブルースが好きでジャズにハマッて「そうだ、ここまで来たらソウルやR&Bにも手ェ出してみよう。えぇと、ソウルつったら・・・まぁあんま知らんからとりあえずジャケ買いをしてみよう。ジャケ買いをするんならば、せっかくだから中途半端にカッコイイやつとかオシャレなのではなくて、もう見た感じからキョーレツに”匂う”ブツを買ってみよう」と。

えぇ、完全に衝動だったんですが、そん時「この顔」の主、グウェン・マックレイ嬢のレコードと出会って即買いでした。





【収録曲】
1.ムーヴ・ミー・ベイビー
2.ユア・ラヴ・イズ・ワース・ザン・ア・コールド・ラヴ
3.ヒー・キープス・サムシング・グルーヴィー・ゴーイン・オン
4.レット・ゼム・トーク
5.フォー・ユア・ラヴ (MONO)
6.イッツ・ワース・ザ・ハート
7.90パーセント・オブ・ミー・イズ・ユー
8.イット・キープス・オン・レイニング
9.ヒー・ドント・エヴァー・ルーズ・ヒズ・グルーヴ

さぁ、どんな音が出てくるか?きっとジャケットの通りのゴリゴリでネバネバなズ太いファンク・サウンドに乗って、ティナ・ターナーばりのシャウトが全編に渡って猛烈に展開されて、オレの耳なんざ2分でノックアウトしてしまうのでは・・・。

と、思ったら、このアルバム、ファンクなダシとグウェン嬢のヴォーカルもパンチは確かに効いているものの、時に激しくダンスを煽るかと思ったら、味わい深いしっとりとした色気も感じさせるバラードで聴かせるアルバムでありました。

ワン・コードのミディアム・アッパーなファンクの@、ライナノーツには幼い頃からゴスペルで鍛えたとあるそのハスキーな声がガツーンと来て、続いてよりメロッディアスなAと、ノリノリなファンクは前半ここまで。

この人のハスキー・ヴォイスの真骨頂が聴けるのはB以降、BCDのバラード3連発です。

そこはかとなくブルージーな、オルガンやストリングスも切ないバックを従えての、堂々&切々たる女心の唄いっぷりには、正直エタ・ジェイムスやアレサ・フランクリンのバラードを最初に聴いた時と同じ感動を覚えました。この人、パンチの効いた野太い唄い方と、持ち前のハスキーな声をしっとりと”語らせる”ことも出来る。しかも声に雑味の成分が程よく少ない、見た目のインパクトだけじゃなく、ホンモノの実力で聴かせるシンガーであります。

すっかりこのアルバムが気に入って、ライナノーツを読んだり、ソウルやR%Bの本などで「Gwen McCre」という名前を調べて「マイアミ・ソウル」なる素晴らしいジャンルのことも知るに至りました。

1960年代、早いうちから活躍し、このアルバムでLPデビューした頃にはすっかり「マイアミ・ソウルを代表する歌姫」として知られていたグウェン嬢、この後のアルバムでは「綺麗に写った(失礼!)」写真も使っておりますが、このアルバムはまず「ジャケ買い」「顔買い」で売れるべきでしょう。

何と、今はワーナー・ミュージック・ジャパンの「R&B1000」という素晴らしい企画で再発され、¥1000ちょいのすこぶるリーズナブルな価格でお求めできます。


ちなみに裏ジャケもなかなか♪

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