2016年01月31日

クラレンス・ゲイトマウス・ブラウン アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル

1.1.jpg

クラレンス・ゲイトマウス・ブラウン/アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル

(Blue Thumb/Verve/ユニバーサル)


ミュージシャンというのは大体若い頃に全盛期を築いて、トシを取ると共にいい感じに枯れて渋い味わいを醸すタイプか、若い頃はそーでもないけど、トシ食ってから急に輝き出すタイプとがあるそうです。

でも、そういった流れ(というのか・・・)にも乗らず、完全マイペースで”勝手に全盛期”を好きな年齢でボンボン作る規格外の人がたまにいるんです。

ブルースの世界は割とそういう”規格外の人”の宝庫だったりするんですが、その規格外の中でもとりわけぶっ飛んで「凄いなぁこのオッサン・・・」としみじみ思わせるのがクラレンス・ゲイトマウス・ブラウンさん(以下ゲイトさん)であります。

ゲイトさんは1950年代、丁度ブルースがエレキギターを手にしてT・ボーン・ウォーカーを筆頭に「カッコいいギターソロが弾けるヤツが強い」というひとつの新しい思想が生まれた丁度その頃に、第一人者のT・ボーンの影響を受けつつも独自のやんちゃでワイルドなギター弾き倒しスタイルで早くも頭角を現し「T・ボーンのライバル」として、テキサス/ウエストコーストを中心に大人気を博します。

で、その頃の「ヒューストン・ジャンプ」と呼ばれたギャインギャインに粗くスイングするビッグバンドを従えて、それ以上に轟きまくるギター・ソロが渾然となった 
初期ピーコック音源
は、もうそれだけで完成されたひとつの究極形であり、ブルースの歴史に燦然と突出して輝く文句ナシの金字塔であるのですが、ゲイトさんはそれでは満足せず

「形式だけのブルースなんざオレは好かんね、そんなセコいものなんざどーでもいい、全部のかっこいいアメリカ音楽を演奏してやるよォ!」

と、ブルースもジャズもカントリーもケイジャンも何もかもごちゃ混ぜにした音楽を、しかも結構イイ歳になってからバリバリに演奏するようになりました。今で言う”ミクスチャー”の先駆けを、このオッサンは「オレは宇宙人だ!」と言いながら、一人嬉々としてやっておったんですね。

ギターの腕はもちろんバケモノなんですが、それにプラスして、フィドルやハーモニカなんかも披露するようになったのも丁度その頃(年代でいえば70年代〜80年代)で、アタシはピーコックでガツンとヤラレたのにその後のゲイトさんの作品を聴く毎に

「マジかよ!?ぶっ飛びすぎて訳がわかんねーーー!!」

と、これまた嬉々として浴びるように聴いたもんです。

ゲイトさんの何が凄いって、50を過ぎてどんどん精力的に音楽の幅を拡げていったことと、タダでさえバケモノなギターの腕を天井知らずに上げていったということは言うまでもなくなんですが、彼が行うところの「ブルース」「ジャズ」「カントリー」とか、そういった雑多な音楽が、全然作為的じゃなく、ごくごく自然に演奏の中で溶け合っているということ。

で、ゲイトさんは90年代になってもその快進撃を緩めることなく、2005年に81歳で亡くなる直前まで、元気にオレ節炸裂の演奏を行っておりました。

今日ご紹介するのは、ゲイトさんの音楽的な「いろいろ」が、ひとつ収まるところにカッコ良く収まったというべきか、1999年にリリースされた、そのタイトルもズバリな晩年の名作「アメリカン・ミュージック・テキサス・スタイル」をご紹介します。



【収録曲】
1.ロック・マイ・ブルース・アウェイ
2.ハーフ・ステッピン
3.フーティー・ブルース
4.フロント・バーナー
5.アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト
6.スワンプ・ゴースト
7.ウィズアウト・ミー・ベイビー
8.ゲイト・スウィングス・アゲイン
9.ストレンジ・シングス・ハプン
10.ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニモア
11.ギター・イン・マイ・ハンド
12.ジャンピン・ザ・ブルース
13.シングス・エイント・ホワット・ゼイ・ユースト・トゥ・ビー



アルバムは得意とするゴージャスなビッグ・バンドを従えたノリノリのスウィング大会♪

トレードマークの革張りファイヤーバード(ジャケにも写ってますねぇ)を豪快にバキバキ鳴らすスタイルは、70年代”スウィンギン・ゲイト”として4ビートで大暴れしていた頃の勢いを感じさせますが、往年に比べて音色も実に深みがあり、ギター・ソロも”ここ!”というところでガッツリと聴かせる、実に味わいに溢れたプレイに進化しております。

楽曲も勢い一辺倒、ごった煮ガンガンゴン!じゃなくて、ジャズ寄りの演奏の中にゲイトさんが体現してきたところの”アメリカン・ミュージック”な要素が上質にまとめられていて、ノリの良さの中にも落ち着いた熟練のプレイと歌唱(ゲイトさん、声もセクシーなのよ)が燻し銀の光沢を放ちます。あぁ、たまらんですねぇ・・・。

丁度このアルバムがリリースされた1999年は、ブライアン・セッツァー先輩オーケストラの「ダーティー・ブギー」がブレイクして、世界はネオ・スウィング・ブームで沸きかえっていた時、日本でも心あるCDショップでは「ネオ・スウィング特集!」と称してこのアルバムを試聴機に入れて展開しておりました。

齢80に近いこのブルース(て言ったら本人に怒られますが)の大御所の演奏を、若い音楽ファンはどう受け止めるだろう・・・?と恐る恐る反応を伺ってたら、何と「やっべぇ、これ、すげぇカッコイイ!スウィングしてるしギターもヤバい!!」と、軒並み好反応で、程なくして行われた来日公演でも、多くの「新しいファン」が集ったと聞いております。

ゲイトさんの何が凄いって、アルバム出す毎にぶっ飛びの進化をしてて、しかもその都度ガッチリ若い感性を持つ新しいファンを獲得してるってことなんですよね。普通ブルースつったらロックのルーツでとか、好きなミュージシャンが影響を受けたからとか、そういうワンクッションがあって好きになるもんですが、ゲイトさんに至ってはそういうクッションなしでダイレクトに聴く人の耳に届く音楽をやって聴いた人の心を鷲掴みにするということ。

ゲイトさんが過去にヒットさせた@FJの再演、”スウィングの鬼ぶり”ここに極まれりのインストG、どこまでもサザンな泥臭さのEとか、楽曲単位での聴きどころはそれこそ盛りだくさん。

ジャズファンには、チャーリー・パーカーでもおなじみジェイ・マクシャンのBK、言わずと知れたエリントン・ナンバーの大スタンダードDIL、カウント・ベイシーのCが、うぉお、こんなになるんだ!という新鮮な感動も味わって欲しいと思います。

あと、ゲイトさんとは恐らく長年の付き合いでもうほとんど一心同体のバンドの演奏/グルーヴも本当に素晴らしいです。ところどころめちゃくちゃカッコイイサックス・ソロいくつもが出てきて「ぴゃー!」となりました。

ジャケットの内側には、ちゃんと「この曲でソロ取ってるのは誰々」と書いてあるんですよ。そういう愛に溢れた丁寧なCDの作りも素晴らしいです。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 14:10| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月30日

ザ・ブルーハーツ(THE BLUE HEARTS)




1.jpg

ザ・ブルーハーツ/THE BLUE HEARTS
(メルダック)

小6の時でした。

頭悪いながらも「何だか世の中って生き苦しいぞ」って気持ちをずーっと持ってて、その時はこれが極限までモヤモヤしておったんです。

いわゆる思春期ってやつですね、こういう感情は多感な年頃になれば誰もが持つようになる。

そんな時、アタマの悪いアタシでもわかるストレートな歌詞と最高にガツンとくるサウンドで、勇気付けたを通り越して、救済してくれたのがブルーハーツ。そう思っております。

きっかけはNHKで夕方にやっていた音楽番組でしたね。1988年当時はバンドブーム最後の盛り上がりを見せていた時で、テレビにも面白い「バンド」という人達がたくさん出てきてて、何だかよくわからないながらも「あーおもしれー」と言って、ただテレビを眺めておりました。

その時

「くだらない世の中だー、ションベンかけてやるよー」

と、発せられた歌詞のワンフレーズがいきなりグザーっと胸に突き刺さりました。

画面を見たら坊主頭の面白い顔をした人が、それまで見たことのない奇妙なグネグネした動きをしてました。

その姿に「うはぁっ、コイツら変ー!」と思った一瞬、そして「ブルーハーツ」という名前を覚えて、早速CDを買いに行って、部屋にこもっては爆音で聴きまくってました。それこそ何ヶ月もずーーーーっと。

このファースト・アルバムは、それまで音楽知識ゼロ、社会問題とかに対する理解力ゼロのアタシに「戦うためにとりあえず大切なもの」を全て教えてくれました。

・僕達は泣くために生まれてきたわけじゃないよ(「未来は僕らの手の中」)

・なれあいは好きじゃないから誤解されてもしょうがない それでも僕は君のこといつだって思い出すだろう(「終わらない歌」)

・僕 パンクロックが好きだ 中途ハンパな気持ちじゃなくて ああ やさしいから好きなんだ(「パンク・ロック」)

・見せかけばかりじゃない 口先だけでもない いつか見るだろう 同じこぶしをにぎりしめて立つ人をきっと見るだろう(「街」)

・誰の事も恨んじゃいないよ ただ大人たちにほめられるようなバカにはなりたくない(「少年の詩」)

どの曲のどの歌詞も、カッコイイとかそういうんじゃなくて、刺さるものがあったんです。

そしてアタシは生まれて初めて自分で”欲しい”と思って買ったこのロックのアルバムを聴いて「パンクロック」という言葉を覚えてそれからどんどん音楽にのめり込んでいきました。

あとね、ヒロトとマーシーは音楽が本当に好きで、古いロックンロールやブルースについても雑誌のインタビューとかでたくさん語っていて、パンクと同時にブルースに(親父経由で)ハマッてたアタシにとっては本当の意味で「学校には絶対いない先生」でした。






【収録曲】
1.未来は僕等の手の中
2.終わらない歌
3.NO NO NO
4.パンク・ロック
5.街
6.少年の詩
7.爆弾が落っこちる時
8.世界のまん中
9.裸の王様
10.ダンス・ナンバー
11.君のため
12.リンダ リンダ


人生経験なんてぜんぜんチャチかったんです、でも、ブルーハーツ聴いて初めて「救いってあるなぁ・・・」と思って、そっから色んな音楽を聴いて、何百回何千回も感動を重ねても、多分成長というものをしていないアタシの気持ちはその時と全然変わってません。

「あぁ世の中クソッタレだ!」「どーせ俺は一人なんだ」という、内側のしょーもないやさぐれに「あぁ、でも音楽があるんじゃね?」「パンクロックがあるよ」と、今もやさしく示してくれるのはブルーハーツ。

もちろんブルーハーツ解散してハイロウズになってもクロマニヨンズになっても、ヒロトとマーシーの基本姿勢「ロックンロールが好きだからそれでOK」っていうのはひとっつも変わってなくて、むしろ音楽的には今のサウンドの方がすげぇカッコイイんだけど、今日はあえてアタシの原点と原体験を晒しました。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 14:21| Comment(0) | 日本のロック・ポップス・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月29日

武田和命 ジェントル・ノヴェンバー

1.1.jpg
武田和命/ジェントル・ノヴェンバー
(フラスコ・レコード/ユニバーサル)

はい、近頃は「日本や日本人の良いところを見直そう」という企画が、テレビやインターネットでは好評なようです。

あの、アタシはあくまでも音楽の人間としての側から言わせてもらいます。

「日本は凄い!日本人の感性はホントに素晴らしい!」

と。

今日はアタシにしみじみとそう感じさせてくれる1枚の日本ジャズの名盤を皆様にご紹介します。

武田和命というテナーサックス奏者の「ジェントル・ノヴェンバー」というアルバム、これはいわゆる”知る人ぞ知る和ジャズの名盤”として、多くの”ホンモノ”を聴き込んで来たジャズファンから大絶賛されているアルバムなんですが、いやいやいや、こういった作品こそ、一部の強烈なファンやマニアだけのものにするのは本当にもったいなくて「ジャズ」という言葉にちょっとでも何かこう特別な「くーーーーっ!」ってものを覚える人ならば、聴いておきましょう。むしろジャズとか全然知らないけれども、純粋な気持ちで「音楽」が好きならば、このアルバムはそれこそ一人一枚ぐらいに当たり前に持っていてもらわないと、という気持ちをアタシは抑えきれずにおれます。

テナー・サックスという楽器で、これほどまでに繊細で、どこか切ない情感や人生の深みとともに、奏でられる”うた”の美しさを表現した作品があったでしょうか?

最初から最後の一音がやるせない余韻を残して消えてゆくまで、どの瞬間もうっとりするような深い陰影が呼吸をしているかのような、完全に別次元の音楽がここにあります。

もちろん「ジャズ・テナー・サックスの名盤」というのは数え切れないぐらいあって、どれが一番というのは到底決められるものではありません。アタシとてジョン・コルトレーン、レスター・ヤング、デクスター・ゴードン、親父(コールマン・ホーキンス)、ブッカー・アーヴィン、ジョニー・グリフィン、ソニー・ロリンズ、ベン・ウェブスター、ウォーン・マーシュ、スタン・ゲッツ、ハロルド・ランド、ジョン・ギルモア、ハンク・モブレー、ウェイン・ショーター、フレッド・ジャクソン、イリノイ・ジャケー、アーネット・コブ・・・もうキリがないぐらいに特別な感情を抱いてしまうテナー奏者は数え切れないぐらいにいるのですが、武田和命の「ジェントル・ノヴェンバー」を聴いている時だけは、並み居る全てのジャズ・テナー・ジャイアント達の存在が霞んで、このアルバムでの演奏のことしか考えられなくなってしまいます。

そう、全てが特別なんです。

アタシが武田和命を知ったのは、当時フリー・ジャズが好きで山下洋輔を知り、その山下洋輔が絶賛し、共に活動をしていた。という記事を何かで読み「これは絶対日本の硬派なフリー・ジャズの人だ!」と思い込んだのが最初でした。

後ほど書きますが、武田和命という人は優れた才能を持ちながら活動には恵まれず、音源は本当に少なかったんです。

だからなけなしのカネで購入した唯一の(リアルタイムでリリースされた最初で最後の作品、しかも直後に武田は急逝して、結局「デビュー作にして遺作」になってしまった)アルバムという「ジェントル・ノヴェンバー」を聴いて、その余りにも艶やかでメロディアスな感情表現の塊のようなテナーの音色と、山下洋輔トリオの”フリー”を一切出さない、ひたすらにリリカルで上質なバックを聴き、良い意味で面喰らいました。

いや、衝撃でしたよ。その意外なほどにしっとりとしたサウンドはもとより、アルバム全部の曲がバラードなんですよ。

よく「似てる」といわれるのがコルトレーンの「バラード」や「クレッセント」ですが、確かにその頃意味もわからずに、ただ雰囲気が素敵で、よく遠い目をして聴いていたコルトレーンのバラードアルバムと、雰囲気はとてもよく似ております。音の上辺だけ聴けばコルトレーンだと言われてもすんなり受け入れてしまうでしょう。

でも、このアルバムを聴いて1年、2年と長く付き合っていくうちに、コルトレーンとは似てるけど根底にある強烈なオリジナリティ、例えばそれはどんなにしっとりとしたバラードを吹いても、アメリカ人がやると(黒人白人関係なく)根っこのところで乾いた感じの唄であるのに対し、武田和命のプレイはどこまでも叙情的で、これでしか味わえない潤いみたいなものがあるんです。いや本当に、聴けば聴くほど・・・。

【パーソネル】
武田和命(ts)
山下洋輔(p)
国仲勝男(b)
森山威男(ds)

【収録曲】
1.ソウル・トレーン
2.テーマ・フォー・アーニー
3.アイシャ
4.イッツ・イージー・トゥー・リメンバー
5.ワンス・アイ・トークト
6.アワー・デイズ
7.リトル・ドリーム
8.ジェントル・ノヴェンバー

アルバム全編が一切走らない、スロー・テンポのバラード。前半は彼が敬愛するコルトレーンの曲がやはり多いのですが、どの曲もさっきも言ったようにとことん叙情です。目に染みるほどの切なくひりひりした優しさと憂いに満ち溢れております。

そして後半のオリジナル曲、これがもう理屈抜きで胸にダイレクトにきます。奇をてらったとか、本当にそういったことは微塵もない、ただ美しいメロディーの上でシンプルに吹いているだけなんだろうけど、そこからジワジワジワと滲んでくる「うた」の質量が本当に凄くて泣きます。うん、もう「泣きます」としか言えません。

このアルバムは1979年にレコーディングされたライヴ盤なんですが、武田自身は60年代後半から活動を始めております。

しかし、多くの不運に見舞われて、ジャズから離れていた時期も長かったようです。

70年代後半になってようやく山下洋輔を中心に、彼の本当の実力を知る仲間達が表舞台に呼び寄せ、精力的な活動を行うのですが、1989年、病によって49歳という短い生涯を閉じてしまいます。

音楽とミュージシャン個人の人生を安直に結びつけるのはちょっとアレなんですが、武田の切なくもどこか内に厳しく外に優しいテナーの音、そしてスピーカーから放たれる空気の震えに身をゆだねていると、音そのものが人生の結晶のような気がしてなりません。いや、やっぱりジャズってそういう音楽じゃなかろうかと・・・。







『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:44| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月27日

ローウェル・フルスン アーリー・レコーディングス1946-1952

1.jpg

ローウェル・フルスン/アーリー・レコーディングス1946-1952

(Arhoolie/Pヴァイン)

『ブルースの眠れる巨人フルスンの初期音源集、サイドに弟のマーティのギターのみを従えたこの音源は、正に核しかないハードコア・ブルースだ』


と、書かれていたのは雑誌だったかそれともPヴァインのカタログブックだったか。とにかく名盤「トランプ」を聴いて、そのアツくそして限りなく辛口な歌唱に惚れてしまって、どうしてもこの人の”根源”をアタシは知りたくなりました。

唄を最初に聴いてそこまで思わせる引力みたいなものが、フルスン御大の声には宿ってたんです。 

そんな時にお役に立つのは、やはり何と言ってもガイドブックの類であり、たくさんの本や雑誌なんかから、パラパラパラとページをめくっていたら、件のキャッチフレーズが目にズドーンと飛び込んで来た。というわけなんです。

フルスン御大の初期レコーディング、しかも、バックは自分と弟のギターのみ、という実にシンプルな編成。。。

正直ホーン入りフルバンドのサウンド以外のイメージが、全く思い浮かばなかったんですが、これは良い傾向です。「想像できない」「予想できない」というのは、未知の素晴らしいサウンドとの出会いの前触れでありますから。

レーベルはライトニン・ホプキンスやミシシッピ・フレッド・マクドウェル等、戦後南部のリアルな(というよりも生々しい)ロウダウン・カントリー・ブルースを死ぬほどリリースしている信頼のアーフーリー。

これは間違いないっしょ!!

と、輸入盤をワクワクしながら探して見付けて購入した日の感動を昨日のように覚えております。

さて、中身の方は、御大のシャウト&キョーレツに埃っぽいあのヴォーカルが、ただシンプルな編成で聴けるものと思ったら、これが”あの”フルスンとは全くの別人でありました(!)

まず、ここで聴けるのは、シャウトも煽りもグッと抑えて、力まない地声で古いスタイルのテキサス・ブルースを淡々と唄う、完全にカントリー・ブルースマンと化したフルスン御大の、一切の装飾や演出のない、実にストイック極まりないブルースであります。






【収録曲】
1.Western Union Blues
2.Lazy Woman Blues aka I Worked So Hard
3.River Blues Part.1 aka Texas Blues Part.1
4.River Blues Part.2 aka Texas Blues Part.2
5.I Walked All Night
6.Between Midnight And Day
7.Three O'Clock Blues
8.The Blues Is Killing Me
9.Did You Ever Feel Lucky
10.I'm Wild About You
11.Blues With A Feeling
12.Why Can't You Cry For Me
13.There Is A Time For Everything
14.Lowell Jumps One aka Cash Box Boogie
15.Crying Blues aka Street Walking Woman*
16.You're Gonna Miss Me*
17.Miss Katy Lee Blues*
18.Rambling Blues aka Crying Won't Make Me Stay*
19.Fulson Blues aka Bad Luck And Trouble*
20.San Francisco Blues*
21.Trouble Blues*
22.I Want To See My Baby aka I'm Going To See My Baby*
23.Black Widow Spider Blues*
24.Don't Be So Evil*
25.I'm Prison Bound aka Doin' Time Blues*
26.My Baby Left Me aka Some Old Lonesome Day*

*=ボーナストラック


このうち、@〜Iまでが、さっきも言った「フルスン御大の唄と武骨なギターに弟のマーティンのリードギターのみが付いたカントリー・ブルース・セッションです。

とにかくどの曲もテキサス・ブルースの古いスタイルそのままに、ややミディアムな一定のテンポを淡々と唄う御大の声の繊細さ、決して饒舌ではないけれど言いたい事のみを的確なニュアンスで伝えるギターのバッキング、そしてマーティンの、これまた決してバカテクではないけれど、唄にピッタリと寄り添って、一緒に唄ってるかのようなロウファイなリードギターのみの濃厚で、ジワジワとクる渇いた味わいが最高です。どの曲も一緒に聞こえようが何だろうが、これがリアル・ブルース、コレを聴くことは男の義務であると、アタシは声を大にして言いたい。

後半はピアノ、ドラム、そして吹き人知らずのサックスなども曲によっては入る、やや賑やかなバンド編成ですが、これも60年代のゴージャスなウエスト・コースト・マナーじゃなくて、あくまで音数を増やすのとリズムを強調するためのバックであり、骨組みはフルスンが敬愛し、実際一緒に旅して回ったという大師匠テキサス・アレクサンダーからの影響がモロな、どこまでもヘヴィで深みとならではの味わいに溢れております。この辺りのニュアンスは、同じテキサスでも全然正反対と思ってたライトニン・ホプキンスのフィーリングと重なりますね♪

CD化されての再発は、本編14曲に加えて、怒涛のボーナストラック11曲という頭のおかしい仕様でありますが、そのボーナストラックも作風や時系列に矛盾がなくて、自然であります。持ってない人はぜひPヴァインからリイシューされた国内盤のCDを買いましょう!


”ローウェル・フルスン”関連記事





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

posted by サウンズパル at 19:13| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月26日

グウェン・マックレイ・ファースト

1.jpg
グウェン・マックレイ・ファースト
(Parlophone/ワーナー)


何にせよこのジャケ、この顔です。

ギラギラした鋭い眼光に情念そのままに爆発したヘアー・スタイル、男による媚なんぞ微塵も感じさせない「男?食べ物?」ぐらいのムンムンに肉食系の香り(汗と化粧とヘアスプレーが濃厚に入り混じったアレ)を放つこの顔、このジャケ写。ラメ入りドレス、金ピカマイク。

そうそう、やっぱり「ソウル・シンガー」と名乗るならば、見た目でこれぐらいのインパクトを放って欲しいものです。どうですか?ソウルとか全然知らない人にこのジャケを見せても、100中99は「濃い!」「ワイルド!」という声が返ってくるでしょう?

はい、はい、アタシもソウルとか全然知らなかった時に「この顔」にヤラレたクチです。

ブルースが好きでジャズにハマッて「そうだ、ここまで来たらソウルやR&Bにも手ェ出してみよう。えぇと、ソウルつったら・・・まぁあんま知らんからとりあえずジャケ買いをしてみよう。ジャケ買いをするんならば、せっかくだから中途半端にカッコイイやつとかオシャレなのではなくて、もう見た感じからキョーレツに”匂う”ブツを買ってみよう」と。

えぇ、完全に衝動だったんですが、そん時「この顔」の主、グウェン・マックレイ嬢のレコードと出会って即買いでした。





【収録曲】
1.ムーヴ・ミー・ベイビー
2.ユア・ラヴ・イズ・ワース・ザン・ア・コールド・ラヴ
3.ヒー・キープス・サムシング・グルーヴィー・ゴーイン・オン
4.レット・ゼム・トーク
5.フォー・ユア・ラヴ (MONO)
6.イッツ・ワース・ザ・ハート
7.90パーセント・オブ・ミー・イズ・ユー
8.イット・キープス・オン・レイニング
9.ヒー・ドント・エヴァー・ルーズ・ヒズ・グルーヴ

さぁ、どんな音が出てくるか?きっとジャケットの通りのゴリゴリでネバネバなズ太いファンク・サウンドに乗って、ティナ・ターナーばりのシャウトが全編に渡って猛烈に展開されて、オレの耳なんざ2分でノックアウトしてしまうのでは・・・。

と、思ったら、このアルバム、ファンクなダシとグウェン嬢のヴォーカルもパンチは確かに効いているものの、時に激しくダンスを煽るかと思ったら、味わい深いしっとりとした色気も感じさせるバラードで聴かせるアルバムでありました。

ワン・コードのミディアム・アッパーなファンクの@、ライナノーツには幼い頃からゴスペルで鍛えたとあるそのハスキーな声がガツーンと来て、続いてよりメロッディアスなAと、ノリノリなファンクは前半ここまで。

この人のハスキー・ヴォイスの真骨頂が聴けるのはB以降、BCDのバラード3連発です。

そこはかとなくブルージーな、オルガンやストリングスも切ないバックを従えての、堂々&切々たる女心の唄いっぷりには、正直エタ・ジェイムスやアレサ・フランクリンのバラードを最初に聴いた時と同じ感動を覚えました。この人、パンチの効いた野太い唄い方と、持ち前のハスキーな声をしっとりと”語らせる”ことも出来る。しかも声に雑味の成分が程よく少ない、見た目のインパクトだけじゃなく、ホンモノの実力で聴かせるシンガーであります。

すっかりこのアルバムが気に入って、ライナノーツを読んだり、ソウルやR%Bの本などで「Gwen McCre」という名前を調べて「マイアミ・ソウル」なる素晴らしいジャンルのことも知るに至りました。

1960年代、早いうちから活躍し、このアルバムでLPデビューした頃にはすっかり「マイアミ・ソウルを代表する歌姫」として知られていたグウェン嬢、この後のアルバムでは「綺麗に写った(失礼!)」写真も使っておりますが、このアルバムはまず「ジャケ買い」「顔買い」で売れるべきでしょう。

何と、今はワーナー・ミュージック・ジャパンの「R&B1000」という素晴らしい企画で再発され、¥1000ちょいのすこぶるリーズナブルな価格でお求めできます。


ちなみに裏ジャケもなかなか♪

1.jpg




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:20| Comment(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月23日

カオスUK Kings for a Day〜The Vinyl Japan Years

1.jpg

カオスUK/Kings for a Day〜The Vinyl Japan Years
(Anagram)

えっと、はい、朝起きたら空気がいやにひんやりしていて、雨も降っていて、何かニュースによると奄美なのに最低気温4℃とか言って・・・いいぞ、もっとやれ。でございます。


こんなクソ寒い日は、ハードコアなパンクで気分をアゲアゲにするに限りますねぇ。

というわけでカオスUKです。

大体アタシは、音楽詳しいようで詳しくないんだ。買うものといえば結構直感で「ジャケ買い、レーベル買い、名前買い」が多かったりする。

カオスUKはもう完全に”名前買い”をしたバンドです。

だってほら「カオス」と「UK」ですよ。パンク/ハードコアのバンドとしては、名前が全てを物語っているという意味でこのバンドに勝てるバンドなんてそうはおらんです。

情報源のほぼ9割が雑誌だった頃、そこに載っているバンドの名前は片っ端からチェックしておりました。

ピストルズ、クラッシュ、ダムド、ストラングラーズ、ラモーンズ、ちょいとその辺の名前を覚えた後に知ったのが、デッド・ケネディーズ、ディスチャージ、G.B.H.そしてカオスUK・・・。

「ディスチャージ」と「G.B.H.」に関しては、アタマの悪い中学生だったアタシにはその意味がよくわからんかった。でも「デッド・ケネディーズ」と「カオスUK」だけは意味がわかっておお!となり、この2つのバンドは結構早い段階で自分にとって特別なバンドになりました。

幸いデッド・ケネディーズもカオスUKも、当時トイズ・ファクトリーから国内盤がリリースされていたので、注文したらすぐに入手することが出来て、うぉううぉう言いながら聴いておりましたが、カオスUKはね、ファーストがものすっごいノイジー通り越して音潰れまくってたんで、最初「!!??」でホントに手強かった・・・。

んで、上京して短大の頃は「カオスUKってヤベぇよ」と、嬉々として言ってたのに、周囲に知っている人はおらず、「うう・・マイナーなのかな・・・」と、ややイジケておりましたが、短大を出てレコード屋で働き出してからは知っている人だらけで(というかカオスUKぐらい知ってて当たり前という嬉しい状況)、やや眠っていたアタシのパンク・スピリッツに久々に火が点きました。

先輩と会話の中で「どの時期のカオスUKがいいか?」という議論になり、そこでアタシは「ヴィニール・ジャパンの頃のやつが最高だぜ」という情報を教えてもらったんです。

ちょいと説明しますと、カオスUKというバンドは、1979年にデビューしました。

この年は大体オリジナル・パンクというのが”出揃った年”であったんです。

んで、新しくデビューしたバンド達は、例えばピストルズとかクラッシュが原型を作った”パンクロック”というものに、更にどんだけ自分たちならではのオリジナルな持ち味を出せるか?もっと言えば「どうやったらパンクより過激なものが出来るか?」ということに心血を注いでおったんですね。

カオスUKのデビュー時には、既にパンクより激しいという意味で「ハードコア」という言葉がちらほら聞こえるようになった時期であります。

彼らはまず、ギターのアンプを限界ギリギリまで歪ませて、ギターの音というよりノイズに近いムチャクチャな音でジャガジャガ鳴らして、そのノイズまみれのサウンドの中でひたすらがなる、というスタイルを確立していて、レコード会社もメディアも彼らを「ノイズパンク」「ノイズコア」とかいう呼び方で売り出そうとしていたようです。これがファースト・アルバムの時。

んで、そのハチャメチャなサウンドが熱狂的な支持を得たカオスUKは、段々バンドとして荒々しい初期衝動はそのままで、よりサウンドをタイトでガッツリしたものに変換させていきます。

日本の在イギリスのインディーズ・レーベル(ややこしいな)「Vinyl Japan」は、1980年代当時本場UKで、イキのいいハードコアやパンクのバンドのレコードを色々とリリースしておりました。

カオスUKは、1980年代半ばから90年代にかけて、このVinyl Japanで5枚の作品をリリースしてます。

アタシが先輩とハードコア談義していた時は既に1990年代も後半だったので、単品でそれぞれのアルバムを入手するのはちょいと難しかったんですが、それでも何らかの形で手に入るCDとかはちょろちょろと集めてまして、でも、輸入盤だからライナーとかバイオグラフィ的な部分はほとんど「?」で、ただファーストの頃よりもっとエッジの効いたサウンドで、しっかりとした「ハードコア」を聴かせるカオスUKに「これこれ!こういうのが聴きたかったの、うほ!」と、燃え上がってました。




(Disc-1)
1.Gob on You
2.You Bastard
3.Public Image
4.Butcher Baby
5.Pump It Up
6.Don't Talk to Me
7.New Religion
8.Sick of You
9.Fuck All Y'all
10.Handle with Care
11.Witch Hunt
12.Plaistow Patricia
13.Blackmail Man
14.Belsen Was a Gas
15.For Adolfs Only
16.Bone Idol
17.Brain Bomb

(Disc-2)
1.King for a Day
2.Outta My Brain
3.Marvellous
4.Ramraid
5.Student
6.Police Story
7. C.Rap
8.Society
9.Ain't Got a Clue
10.Through with You
11.Speed
12.Chunderer
13.2000 Lies
14.This Song Has Been Genetically Modified
15.T.P.F.P.
16.Travisty
17.Gone & Forgotten
18.Killa on Da Loose

ほいでもって「Vinyl Japan」のカオスUKが聴ける、良い感じの2枚組があるぜ、と聞いて、2008年に迷うことなく購入したのが、この2枚組CD。

カオスUKはキャリアも長く、途中メタリックなサウンドになったり、色々と音楽的に”ちゃんと”(?)成長しているバンドなので、まずどれを買って良いのか迷っている方には「しっかりとした王道ハードコア」なサウンドのこの時期の音源をオススメしたいです。

勢い良く突っ走って、ちゃんとオチもあるノリで、とにかく曲がいいんですよ。あと、ピストルズとかP.I.Lのカヴァー(もちゴリゴリのハードコア・アレンジ)とかコステロとか、カヴァーにいい曲多いっすよ!

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 12:00| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月22日

アーマッド・ジャマル バッド・ノット・フォー・ミー

1.1.jpg

アーマッド・ジャマル/バッド・ノット・フォー・ミー
(ARGO/CADET/ユニバーサル)

先日、ツイッター上でジャズ好きの皆さんと盛り上がりました。

えぇと、さるお方から「しっとりJAZZ」というお題を頂いて、アタシが「うん、これはしっとりだぞ」と思うジャズをyoutubeから拾ってきて貼り付けるという、実に単純至極な企画なんですが、ありがたいことに多くの皆さんから好評の声を頂きました。

てへ(照)

その中のひとつに「Misty」という曲がありまして、この曲はもう誰の演奏でも「あぁ儚いね、切ないね・・・」となるジャズの名曲中の名曲なんですが、コレ、エロール・ガーナーという人がピアノでカヴァーして、これがもう大ヒット、「ミスティ」といえばちょいとツウな人なら「エロール・ガーナーだね」と答えるぐらいにド定番なんですが、アタシはあえてガーナーではなく、アーマッド・ジャマルという人のヴァージョンを選びました。

↓アルバムに入ってるヴァージョンです


選曲した理由は単純に「気分」といえば気分なんですが、それ以上にこの企画の「しっとり」という言葉が一番しっとり、じゃなかった、しっくりくるピアニストといえば、ビル・エヴァンス以外なら誰なんだ?ということをまず考えまして、それならば、おぉ!エヴァンスのいかにも白人的な洗練とは対照的な「黒い洗練」のピアノを弾くピアニストの草分けといえばジャマルしかおらんじゃないか!ということになってのセレクトです。

実はジャズ聴き初めのハタチぐらいの時、その頃はまだフリー・ジャズとマイルスとセロニアス・モンクぐらいしか知らなかったアタシが、何故か最初っから気になっておった”フリー・ジャズじゃないピアニスト”がアーマッド・ジャマルという人でした。

あのですね、セロニアス・モンクの「ソロ・オン・ヴォーグ」を聴いて、まーその、まだあれこれ聴いてないうちに、アタシは偉そうに「うむ、ジャズの心とは”間”であるわい」などと、悟っておった気になっておったんですね。

で、これまた全然ジャズのピアノの人なんか知りもせんくせに「チャラチャラしたピアノ弾きなんかいらん”間”で聴かせるヤツつれてこーい」と、偉そうに思っておったわけなんです。

そこでいつものよーに職場のバックルームで音楽雑誌をパラパラめくって流し読みしていると、ピン!とくるページがあったんです。

いきなり「この人の”間”は凄い」「とにかく”間”」「あのマイルス・デイヴィスが憧れてバンド結成の時何度も誘ったが断られたピアニストだ」と。

おぉ、”間”で聴かすのか〜、ていうかマイルスの誘い断るとか大した根性モンじゃのう。名前は・・・アーマッド・ジャマル。おぉ、何かよーわからんが、ケンカ強そうな名前ではある。

と、勢いで男惚れして、代表作、名盤と雑誌に書いてあった「バッド・ノット・フォー・ミー」をジャケ買い&名前買い♪

あのですね、アタシはこの時点で「ジャズ」といえばフリー・ジャズのドンガラガッシャンギャーギャーピーピーが好きで、マイルスがどんなだったかよーわかりもせんかったチンピラです。

ジャマルのこのアルバムも、だから勝手なイメージで、もう黒々としたブルース・フィーリングが渦巻いて、粘りに粘った低音がバカンッ!・・・ドス!!となるよーな、鬼気迫るピアノを想像しておったんです。

ところがコレが聴いてみたら全然イメージと違った(!)

まずですね、ジャマルの”間”は、モンクのそれが、例えばわざといびつな形で空間に放り投げられたような空白で、聴く人の想像を刺激してたくましくするのに対して、ジャマルの”間”(というか異常に少ない音数)が生み出す効果は、何というかとてもとてもスタイリッシュで、例えば「ここで流麗に弾いたらカッコイイけど、でもあえてスカッと音抜いてみたらもっとカッコイイべ?オシャレだべ?」とでも言わんばかりの、ストレートに”カッコイイ演奏”でした。

で、高い方のフレーズを奏でる右手が、「ツ・・・コロコロコロ・・・」と、可憐な音を立てながら、綺麗に何というか転がってゆくのを感じて、それがスタイルとかどうこう言う前に、アタシの中の「カッコイイものセンサー」にピコーンと引っかかったんですね。

言っときますがアタシは全然オシャレじゃないですよ。でも、そんなオシャレとは全然程遠い人間の鈍臭い感覚にもジャマルの弾くピアノは「ジャズって凄いオシャレでカッコイイ音楽なんだ。オシャレってわかるかい?ただ流行を身に着けて通りを歩いたり、派手な格好して騒ぐことじゃない」と、その道の神髄を説いてくれてるよーな気がして、アタシはしばらくジャマルの音楽を、意味はわかんないながらも「かっこいいなぁ〜・・・」と、部屋の薄明かりの中うっとりしながら聴き入っておりました。

その後にマイルス・デイヴィスの初期のアルバムを”ちゃんと”聴いて(恥)「うぉう、わかるわかる!引き算よね、引き算!そこで吹けばカーッってアツく盛り上がれるよーなところをクィッと寸止めしてクーッって聴かすのよね!」とか・・・一応わかったよーなことがほざけたのもジャマルのおかげでございます。





【パーソネル】
アーマッド・ジャマル(p)
イスラエル・クロスビー(b)
バーネル・フォーニア(ds)

【収録曲】
1.バッド・ノット・フォー・ミー
2.飾りのついた四輪馬車
3.ヴァーモントの月
4.ミュージック・ミュージック・ミュージック
5.ノー・グレイター・ラヴ
6.ポインシアナ
7.ウディン・ユー
8.ホワッツ・ニュー


収録曲はもう有名どころの美メロスタンダードづくしです。

ジャマルという人は、当時としては珍しく、ホーン奏者との共演をあまりしたがらず、トリオで演奏するのを好むピアニストでありました。

当時、と言いましたが、1950年代までアメリカでジャズといえば「ド派手にサックスとかトランペットとか鳴らして、盛り上げてなんぼ」が当たり前で、ピアノトリオなんかは良く言っても「ホテルやキャバレーのラウンジで、客の会話を邪魔しないBGM程度」ぐらいの扱いでありました。

レコードデビューする前のジャマルの”仕事”も、ラウンジのBGM係であったそうなのですが、ジャマルにとってはワイワイガヤガヤの酔っ払いや、いちいちうるさいホーン奏者を相手にするんではなく、淡々と演奏できて、客もオーナーもほっといてくれるラウンジのお仕事が性に合っていた模様です。ピアニストにしてみれば、静かなラウンジで演奏しながら冷静に自分自身のスタイルを研ぎ澄ますことが出来るっていうのは、もしかしたらかなり”オイシイ仕事”だったのかもしれません。

さてさて、ジャマルの「バッド・ノット・フォー・ミー」さすがに名盤といわれるだけあって、のっけからジャマルの全体的に淡々としているけれども、その少ない音数と抑えた装飾音の中で美のスイッチが入れば凄まじいアドリブが、独特の香気とともに気持ちよくフレグランスしております(←使い方あってる?)。

アルバムオープニングから洒落たアレンジで空気が変わる「バッド・ノット・フォー・ミー」につづく、高音パートの”キラキラ感”に心躍る「飾りのついた四輪馬車」冬の寒空に凛々としてる心象風景が伝わってくる「ヴァーモントの月」そしてこのアルバムのハイライトと評されるトリオの息もピッタリの至芸「ミュージック・ミュージック・ミュージック」、ジャマルのテーマ曲ともいえる軽いラテン・タッチの「ポインシアナ」”間”の美しさここに極まれり!な「ホワッツ・ニュー」(これはイントロの”間”がたまらんですち)と今度は美しいバラードでその”間”が光る「ウディン・ユー」・・・あぁ。結局どの曲もカッコイイんですけど、個人的には「ノー・グレイター・ラヴ」を推したいです。

ビリー・ホリディの愛唱歌でもあり、メロディーだけなら聴いて「あら、この曲?」となるぐらい有名な曲なんですが、それはさておき、軽快なドラムのブラッシングに乗ってテーマをサラッと弾いた後に出てくるアドリブの前半から中盤(2:30秒あたりから)一切音を強調させたりシンコペーションしないで「トトトトト・・・」と音譜を流す展開があるんですが、これはパッと聴いたらわからないぐらいアッサリしてるんですけれどもね、よくよく聴けばこれは物凄いテクニックだと思います。はい「音楽を聴かせるテクニック」です。


最後に、このアルバムのっけからジャマルの”間”の凄さ(パッと聴き全然凄くなく聴かせるところが凄い)に「うぉう♪」となることうけあいではあるんですが、そんなジャマルの演奏を一切邪魔せず、これまた少ない音数と冷静なリズムキープで支えてるイスラエル・クロスビーのベースとバーネル・フォーニアのドラムは本当に凄いと思います。ジャマルのトリオ以外ではあんまりお目にかかれない人たちではあるんですが、こんな凄い名手達をマイナーなままにしておくのはもったいないぞ!




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:40| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月20日

セロニアス・モンク ソロ・オン・ヴォーグ+1

1.jpg

セロニアス・モンク/ソロ・オン・ヴォーグ+1
(Vogue/ソニー・ミュージック)

ジャズを聴く上で大切なのは「スタイルや理論的なことなどの難しいことはさておきで、直感で”イイネ”と思ったらその作品を”雰囲気聴き”」することであります。

最初のうちはyoutubeでも何でもいいんで聴いてみていいなと思ったものから関連検索とかで色々と聴いてみてください。

そうやって色んなジャズを聴いていくうちに、何となく好みというものが分かってくるでしょう。そして「ジャズ」という音楽そのものに対して色んな想像が膨らんだり「このミュージシャンはどんな人だったんだろう?」とか色々と知りたくなってくると思います。

そうなってきたら、すかさずセロニアス・モンクを聴きましょう。

はい、多くの人が「何で?」となるだろうと思います。

「いきなりセロニアス・モンクとか言われてもわかんねぇし」

はい、ごもっともです。

けれどもジャズという音楽を好きになって、もっともっと楽しむために、好きだろうが嫌いだろうが”セロニアス・モンクを知る”ということは、これは絶対だと思います。


ちょいと理由を説明しますね。

セロニアス・モンクというピアニストは、ジャズの歴史の中でも「唯一無二」と言われる個性を持っております。

その個性というのは、音をわざと違うタイミングで繰り出したり、コードを崩した不協和音を「ここぞ!」という時にぶっこんだり、本来そこは勢いよくフレーズを「ガーッ!」と弾き切るべきところであえて音を出さなかったりと、色々と「何じゃこりゃ?」に満ちております。

不思議に思う人もいるかも知れません、怪訝に思われる方もいるかも知れません。

しかし、モンクという人の演奏・・・つまり「ズラし」「ハズし」「間」の究極ともいえる演奏は、元々がシンコペーションやセブンスやナインスといった「ハズレた音」で盛り上がることをよしとしていたジャズという音楽が元々目指していたところの究極でもあるんです。

しかし、誕生(多分1900年頃)から戦前のスウィング時代に至るまでに「アメリカの新しいポピュラー音楽」として認められたジャズは、技術的な面や理論的なものもどんどん体系化されて、戦後になってからはますます「理論」や「おやくそくごと」にがんじがらめになっておったんです。

そんな「おやくそく」に反発して「オレたちゃもっともっとアドリブを全面に出して好きにやろうぜ!」と、立ち上がったのがモンクやチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーといった人たちでした。

彼らは音楽的にジャズの自由度を高め、それに速度を加えた音楽を生み出して、それは「ビ・バップ」と呼ばれ、いつしかパーカーらが作った”新しいジャズのスタイル”そのものが「モダン・ジャズ」といわれるようになりました。


1940年代後半から50年代前半にかけて、モンクの仲間のチャーリー・パーカー(アルト・サックス)、ディジー・ガレスピー(トランペット)、ミルト・ジャクソン(ヴィブラフォン)、マックス・ローチ(ドラムス)といった人達が、ビ・バップ・ムーヴメントの中心におりました。

ややあってモンクの弟子というか弟分みたいな感じでバド・パウエルという天才が出てきて、後につづく”モダン・ジャズ”のピアニストたちみんなに軒並み大きな影響を与えます。

おぉ凄い!モンクの弟子のバド・パウエルがそんなに大活躍してるんだったら、モンクはもうそん時ゃシーンの最重要人物として、あちこちのセッションにひっぱりだこだったり、鬼のようにレコード出して、そいつがガンガンに売れておったのか・・・と思うところですが、実はそうじゃなく、モンクはその独特の”ノリよりも間を重視”なプレイスタイルが、ただ刺激が欲しいだけの一般大衆には全くウケずに、一人ビ・バップからもモダン・ジャズからも離れて不遇をかこっておりました。

この時にモンクの音楽性を「いや、アンタの音楽はわかりやすいし純粋に楽しいから絶対成功するよ」と一人だけ支持しておったのが、かのブルーノート・レコードのオーナー、アルフレッド・ライオンであり、モンクのレコードを早いうちから2枚もリリースしたのですが、このレコードの売り上げはさっぱりで、モンクもこれにはガッカリきて、早々にアメリカに見切りを付けて単身ヨーロッパに渡ったのでした。

はい、ここで「ジャズという音楽を好きになり始めた皆さん」が聴くべきモンクのソロ・ピアノ・アルバム「ソロ・オン・ヴォーグ」が、アメリカから遠く離れたフランスはパリで製作されたのでした。






【パーソネル】
セロニアス・モンク(P)

【収録曲】
1.ラウンド・アバウト・ミッドナイト
2.エヴィデンス
3.煙が目にしみる
4.ウェル・ユー・ニードント
5.リフレクションズ
6.ウィ・シー
7.エロネル
8.オフ・マイナー
9.ハッケンサック(ボーナストラック)


マイルス・デイヴィスの演奏で有名だった「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」で幕を開け、最後まで訥々と、ピアノの音と「音が鳴ってない瞬間の無音の美しさ」が、掴めそうで掴めない、実に不思議な空間と、そのシルエットは不確かだけれども何ともいえない、そして確かにモンクが繰り出すフレーズのそこここに存在する”美”の影が、聴く人の全感覚と想像力を、どこまでも刺激してくれる「ジャズがもっともっと好きになる一枚」です。

最初に「ジャズという音楽を何となくいいなと思った時にセロニアス・モンクを聴きましょう」といった理由は、ジャズという音楽を聴くために、絶対に鍛えておいた方がいい「想像力」というのが、好き嫌い関わらず鍛えられるからなんです。


で、まず聴くならば無駄の一切ないソロ・ピアノ作です。

もちろんバンドでのモンクも「楽しい」という意味においては格別なんですけれど「モンクのソロ・ピアノ」というのは、他のどの音楽の作品(ジャズというジャンルを取っ払っても)と比べても、どこにもすんなりとは収まらない、特別にして孤高の趣があるんですよね。

アタシはモンクを聴く大分前から

「セロニアス・モンクってすごい変わり者なんだぜ、いきなり不協和音ガーンて鳴らしたと思ったら、ソロの途中でいきなり弾くのやめて躍りだしたり、インタビューでは”ノウ”としか答えなかったり、とにかく変な人」

という情報だけは知っていて、いざモンクを聴くまでが結構長かったんです。

「どうせ奇人変人が奇抜なことやってるだけの、笑いのネタぐらいのもんだろう」

と、ちょこっと思っていたんですけど、生まれて初めて買った「ソロ・オン・ヴォーグ」を聴いた時、その余りにもしっかりとした個性と、思いも寄らぬ芸術的な完成度の高さに

「モンクがタダの奇人変人とかいう情報オレに吹き込んだやつちょっとこーい!!(怒)」

てなりましたもん。

でも、そっから色々とモンクを聴いて、いわゆる「楽しくぶっ飛んだ作品」も聴いて「いや、この人はホントは楽しいなぁ」とウキウキしましたが、やっぱりソロ・ピアノを聴いて他のアルバムを聴くと「うぅん、やっぱすげぇ・・・」で、他のピアニストの作品聴いた後にモンク、もっともっと幅を拡げてグールドを聴いた後にモンク、ハードコアの後にモンク、アフリカの民俗楽器なんかを聴いた後にモンク(すんげぇしっくりくる!)といった具合に、モンクはアタシの音楽に対する「あ、これは面白いぞ」とか「おや、これは何だろう?」という気持ちをどんな状況でも一番良い状態にしてくれるんです。




”セロニアス・モンク”関連記事




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:32| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月19日

アート・ペッパー Winter Moon

1.1.jpg

Art Pepper/Winter Moon
(Galaxy/OJC)


だって冬ですもん

身を切るようなヒリヒリとした、美しい音楽を聴いて

「あぁう、せつねー!これせつねぇ!でも切なくないよりいい!!」

ってなりたいじゃないですか。


あ、すいません。

空が灰色で、風は容赦なく強く吹きすさび、そして何があったという訳でもなく、どうにもダウナーな気分になってくる、それが冬。

「ココロの感傷スイッチ」をお持ちの皆様にとってこの季節は”切ない音楽がやけに聴きたくなる季節”であり、”切ない音楽がやたら胸に染みやがる時期”ですよね?ですよね?そうですよね?

はい、はい、今アタシの霊能力(笑)で、モニターの向こうの皆様の心の声に耳を傾けたら、大多数の方が「そうだそうだ」と賛同してくださっているご様子なので、今日はこのまま「すごく切ないこれどうしてくれんのよ」というとっておきのアルバムを紹介していきたいと思います。

アート・ペッパー晩年の傑作と呼ばれている「ウィンター・ムーン」というアルバムがあります。

その前に、アート・ペッパーという人は、1950年代から活躍するアルト・サックス奏者、甘く艶やかな音色と滑らかに唄うような流麗なフレージングで、チャーリー・パーカー以降の”モダン・ジャズ”といわれるジャズの流派の中で、いちはやく独自のスタイルを築いた人であります。

いや、世の多くのファンにしてみれば

1.jpg

このように実に端正なルックスをしていて、おまけにしなやかな色気のあるサックスを吹く(そしてそれが実に上手い)というので、もうミュージシャン通り越してちょっとしたハリウッドスター並みの人気があった人なんですね。

そんな人気者のペッパーは、人気者の宿命として、デビュー当初から数々のスキャンダルにまみれ、その中でもドラッグと深い仲にあるということは、ジャズマンにはもう有名な話でありました。

演奏を終えては気分転換のためにヘロインを打ち、そのまんま朦朧とした精神状態のままステージに上がる。クスリが切れると今度は酷い禁断症状が出てきて彼をドン底に叩き落すから、それに怯えたペッパーはどんどん薬物に溺れて・・・という、絵に描いたような中毒患者そのもののパターンに陥ります。

1950年代、艶やかな音色で甘く切ない幽玄の美の極致とも言えるアルト・サックスの演奏が刻まれたレコードのほとんどは、彼がクスリをキメてトローンとしているか、バッドトリップで前後不覚になっていた時の演奏と言います。アタシら凡人が聴く限りでは、そんな事など全く感じさせない、美しく健康的な演奏にしか思えないのに・・・。

そんなペッパーも、いよいよ薬物の魔力に呑み込まれ、刑務所→精神病院→矯正施設と順番にブチ込まれ、10年以上もシーンの表舞台から消えてしまいます。

もちろん1960年代にもなると「昔アート・ペッパーっていう凄いサックス吹きがいたんだよね、麻薬でダメになっちゃったらしいけど・・・」と、すっかり過去の人となってしまっていたのでした。

実際逮捕後のペッパーは重度の麻薬中毒患者で、刑務所の中でドラッグを絶っても、言語を絶する禁断症状とフラッシュバックの悪夢に苦しめられました。

今でもそうですが、麻薬中毒からの社会復帰というのは、生半可なことでは成し得ません。リハビリが上手く行ってすっかりクリーンになったと思っても、一旦クスリを再開してしまえばほんの数秒で元の廃人のような中毒患者になってしまうのがドラッグの怖いところです。

ペッパーも地獄のようなリハビリ生活から戻ってはきたものの、精神の内側にまで深く刻みこまれた”感覚”と「ミュージシャンとして復活しても、ジャズのブームもとっくに過ぎ去った今の時代、食ってゆくことはできるんだろうか・・・」という不安が常につきまといました。

ペッパーの麻薬常習癖については献身的な介護をして、ドラッグの類を一切生活に近寄らせなかった奥さんのローリーによってほぼ解消され、演奏や仕事の不安については、往年のペッパーの演奏から受けた感動を忘れていなかった熱心なジャズファン達のアツいラブコールによって大きな励みへと変わりました。

そして、1974年、ついにペッパーは完全にクリーンな心と体で復活します。

んで、復活したペッパーの演奏を聴いて多くのファンが感動と驚嘆の声を挙げました。

何とペッパーは50年代の頃とはスタイルこそ大きく変わらない、良心的なモダン・ジャズ・プレイヤーのままでしたが、そのアルトから放たれる音色が当時とは比べ物にならないほどに力強く、そして情感溢れるよりリアルなものに生まれ変わっていたのです。

「復帰後」のペッパーはその力強くブリリアントな輝きを感じさせるアルトの音色と、喜怒哀楽の意思がハッキリしたアドリブの素晴らしさで、多くのジャズファンを50年代以上に感動と興奮の渦に巻き込んだのですが、アルバムも意欲的なものを多く出しております。




【パーソネル】
アート・ペッぺー(as,cl)
ハワード・ロバーツ(g)
スタンリー・カウエル(p)
セシル・マクビー(b)
カール・バーネット(ds)
ビル・ホルマン(arr.cond)
ジミー・ボンド(arr.cond)

【収録曲】
1.Our Song
2.Here's That Rainy Day
3.That's Love
4.Winter Moon
5.When The Sun Comes Out
6.Blues In The Night
7.The Prisoner
8.Our Song
9.The Prisoner
10.Ol' Man River


1980年に録音されたこの「ウィンター・ムーン」は、そんな復帰後のペッパーが、ストリングス・オーケストラ(ヴァイオリンやチェロなど)をバックに配して、喜怒哀楽でいえば「哀」の部分を思いっきり吹いた、切ない切ない抒情詩です。

ペッパーのアドリブはこれ以上ないぐらい実にカッコ良く、そして情念たっぷりに唄っておりますが、時に感極まってフレーズが一瞬「ギュワッ!」と壊れるんですけれども、そんな瞬間に何かこう琴線が激しくかき鳴らされてしまうんですよね。

そしてストリングス・オーケストラのバックが、ものすごく冷たくて透明。

アート・ペッパー、それこそアタシは50年代の名盤といわれるものを最初に聴いて「ふんふん、カッコイイね♪」ぐらいだったんですが、そんな甘い気持ちはこの壮絶に美しい、でも儚い「ウィンター・ムーン」という、ペッパー晩年の傑作の前に砕けてしまいました。

人生の全てを、まるで祈りのようにアルト・サックスに託して吹ききったペッパーは、この2年後に脳溢血のため帰らぬ人となってしまいます。








『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 19:44| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月18日

MC5 Kick Out The Jams

1.1.jpg

MC5/Kick Out The Jams
(Warner)



キャアーーーーオオオォーーーー!!!パチパチパチーーーー!!!

「ブラザーシスター!、手を見せてくれそこのお前ら!。

手ェ見せろオラァ!

てめーら何でもいいからもっと騒げ!

てめーら俺らが望んでんのは革命だぁー!!。

ちょっとした革命だよバカヤロウ。

おい兄弟達よォ!

てめーらが答えになることを決断しねぇんだったら

てめーらが厄介なことになる時代なんだよ!

てめーら選べよー!

5秒やるから選べてめーらー!

5秒でてめーらのこの星での役割を理解するんだよォ!

5秒で今こそヤル時だって理解するんだよォ!

今からやれよ兄弟達よォ

てめーら俺たちに証明するんだぞ?

準備できたか!? 

準備できたかーーー!?

(キャーーーー!!オォォオォオオオーーー!!!!)

オレらからの証明をやるぜぇ・・・それがMC5だーーー!!!!』

ギャアアアアアーーーー!!ヒューヒュー!!パチパチパチ!!!!

デューン!ジャーンジャジャジャジャーーーーン!!!!



1960年代末のころ、時はヒッピーカルチャー全盛の時代のアメリカ。

「激動の60年代」を、まるで総括するかのような過激な音楽が次々と生まれては消えて行き、若者は「本当の自分」を探しにある者は仕事に就かず世界を放浪し、またある者はドラッグを使って精神の極限の景色を見てそのまま帰らぬ人になったりと、まぁ色々でした。

アメリカでは愛と平和とロックの祭典「ウッドストック・フェスティヴァル」なんかが開催されて、何となく若い人達は「平和がいいよね、俺たちハッピーでまったり生きるもんね〜」とまったりしたかった時代


「愛?平和?そんなもんクソじゃぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」


と、ド派手で意味のわからんギンギラギンな衣装に身を包み、中指をおっ立て、それまでありえんぐらいの汚く下品でヤカマシイ爆音のエレキギターをゴワンゴワン言わせて出てきたのがMC5、アメリカン・ロック最強の異端であり、それから15年後世界を熱狂の渦に巻き込んだ「パンク」のスピリッツで真っ先に武装して世間に不道徳な轟音と悪意と攻撃性に満ちた”ロック”という音楽を正しく伝えたメッセンジャーであります。

えぇと、冒頭の太文字で書いたのは、そのデビュー・アルバム「キック・アウト・ザ・ジャムズ」のオープニングでヴォーカルのロブ・タイナー(イカレアフロ)が客席に向かって行った挑発的なアジテーションです。

えぇと、ロック好きの若者はラブ&ピースに向かっているのに、そんな風潮に正面からケンカを売り、「愛と平和」に対抗する言葉として「マザーファッカー」という言葉に魂を吹き込み(つまり公の場で初めて使った)、PAシステムが未発達の時代に「あぁ?とりあえずギターアンプをいっぱい繋げればいいんじゃね?音、デカいべ」と、バカみたいな”アンプの壁”をステージにそびえ立たせ、挙句の果てにデビュー・アルバムがライヴ盤とか、あらゆる意味でいろいろとオカシイのがMC5なのです。

彼らがアメリカの一大工業都市デトロイトで1965年に結成されて、1969年に「恐ろしく政治色の濃い作品」である本アルバムをリリースして、一部の頭のおかしい過激な少数派からの熱狂的な支持を集めるも、その後2枚のスタジオアルバムをリリースして、「青少年に悪影響を与える」として販売停止とか、危険団体としてFBIからマークされたりと、順調な活動を続けるものの、2年後の1971年にはあっさりと解散してしまい、早々と伝説になってしまいました。




【収録曲】
1.Ramblin' Rose
2.Kick Out The Jams
3.Come Together
4.Rocket Reducer No. 62 (Rama Lama Fa Fa Fa)
5.Borderline
6.Motor City Is Burning
7.I Want You Right Now
8.Starship


しかし、その「反社会的」という精神と「爆音/轟音」という今のロックには欠かせないあれこれを、MC5は作り、モーターヘッドやダムド、さらにはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンといった”継承者”を次々と生んでおります。

「うるさくて、やかましくて、攻撃的なのがロック」と定義するならば、これ以上にロックなアルバムはござんせん。

爆音で聴いてくださいね、爆音で。






『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 18:59| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする