2016年05月31日

ビル・エヴァンス&ジェレミー・スタイグ ホワッツ・ニュー

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ビル・エヴァンス&ジェレミー・スタイグ/ホワッツ・ニュー
(Verve/ユニバーサル)

ユセフ・ラティーフの「イースタン・サウンズ」の記事を書いて、その中で「スパルタカス 〜愛のテーマ」について絶賛したのですが、早速ツイッターにアップしましたところ

「ラティーフは確かにグレイトだが”スパルタカス 〜愛のテーマに関してはビル・エヴァンスとジェレミー・スタイグのヴァージョンが至高だと思う」

というご意見を頂きました。

ふふふ、いいですなぁ、こういう盛り上がりすごくいいですよ。

はい「スパルタカス 〜愛のテーマ」の、もうひとつの絶品といえば、このビル・エヴァンスとジェレミー・スタイグのフルートが織り成すコチラに収録のヴァージョン。

エヴァンスといえば言うまでもなく、そのピアノ・プレイの根幹にあるものは、ヒリヒリするほどの詩情、そしてアドリブに突入した時の狂おしさ、もうこれに尽きるのでありますが、このアルバムでは、ゲストのジェレミー・スタイグがもう本当に凄い。

フルートといえば、その枕詞には「美しい」「柔らかい」「繊細」とか、色々な言葉が付くと思うんですが、ジャズにおいてこの楽器は、時に他のどんな管楽器よりも”情念”の部分をプレイヤーから引き出す楽器だと思います。

もちろんユセフ・ラーティーフもそうですが、エリック・ドルフィーやローランド・カークなど、ジャズ界においてフルートも得意とするリード奏者はたくさんおります。

彼らが残した「フルート名演」というものを聴いてみると、どれも楽器から出る音はもちろんでありますが、その息づかいにおいて「うわ、凄い・・・」と思わせるものが多い。

そこへきて”フルート専門の演奏家”であるジェレミー・スタイグなんですけど、この人はもう「美しい」「柔らかい」「繊細」に加えて、激しさと情念がてんこ盛りです。そして、この人がアドリブでガンガンに盛り上がってる時に発する「フッ!フッ!!」という息がもう凄いのです。

このアルバムは、エヴァンス・トリオとスタイグが、スタンダードの超有名どころを演奏していて、クレジットを見ると「枯葉」や「ソー・ホワット」など、エヴァンス初期の頃に名演を残したカヴァーが多いので「軽く楽しめるアルバムか?」と思いきやそうじゃない。もちろん”深く”は楽しめますが、”攻めのベーシスト”エディ・ゴメスと、”唄うリズムを繰り出す名手”マーティ・モレルを従えたこの時期のエヴァンスのキレッキレのプレイが、「もう死ぬんじゃないか」と思うぐらい激しく鮮烈な美メロを撒き散らすスタイグの決死のプレイに触発されて、どの曲でも何かもう凄い切なさを覚えさせてくれます。








【パーソネル】
ビル・エヴァンス(p)
ジェレミー・スタイグ(fl)
エディ・ゴメス(b)
マーティ・モレル(ds)

【収録曲】
1.ストレート・ノー・チェイサー
2.ラヴァー・マン
3.ホワッツ・ニュー
4.枯葉
5.タイム・アウト・フォー・クリス
6.スパルタカス 〜愛のテーマ
7.ソー・ホワット

エヴァンスの場合は「アドリブが激しくなればなるほどメロディアスになる」という、唯一無二の、これはもう必殺技と呼んでいいものを持っています。

多分この人は「意識して綺麗なものを生み出そう」とかそういうんじゃないんだ、本能がもう必死で”美”を追ってる。そういうところが彼の生み出す音楽を何より美しく、そして何より哀しいものにしてるんじゃないかと思います。

エヴァンスとスタイグ、二人の水際での美しいバトルが何かもう何かもうなアルバムです。

あぁ「スパルタカス」聴くために取り出したらやっぱり見事に全部の曲に深すぎる感情移入をしてしまいました。

”ビル・エヴァンス”関連記事


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2016年05月30日

ドイツのパンク

160530_225434.jpgさーて今日こそは気合いを入れてじっくりジャズ記事を書くぞー!

と、思ってはいたのですがよんどころない事情で本日も小ネタであいすいません。。。

ジトジトムシムシの日中にどういう訳か急にアタシのパンクスイッチが入りました。

しかもUKやUSの真っ直ぐなヤツじゃなくて、どっかこうヘンなパンクが聴きたいと思ってジャーマンパンク、S.Y.P.H.のセカンドですじゃじゃじゃん♪

1970年代末に、ジャーマンサイケ(プログレ)の番長格であるCANのベーシスト、ホルガー・シューカイ先生に見出だされてデビューしたんですが、このパンクロックとインプロヴィゼーションの、途方もなく渾然一体となった実にカオスなサウンドをどう表現したら良いか…。
posted by サウンズパル at 23:03| つぶやき、小ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月29日

ゴキブリ駆除

さて、昨日ユセフ・ラティーフのことを書いてツイッターに載せたら嬉しい反応がありました。

気合いを入れてブログを書こうと思ったら、今日は朝から立て続けに色々と用事が重なり、更新を断念して小ネタです。

ジメジメとうっとおしい季節になってきましたね。

奄美は亜熱帯ですのでこの時期から色んな虫が活発に活動を始めます。

虫の代表といえばみんなの嫌われ者のゴキブリです。
コチラのゴキブリはワモンゴキブリといって、本土でおなじみの黒いゴキブリと違って、全身茶色で頭にでっかい目のような模様がある、しかも本土のゴキブリよりも一回りおっきい(3cm〜4cmぐらい)やつなんです。

生態は冬はじっとしていて、あったかくなると急にウロウロし出します。

ウチは市街地の真ん中付近にあるんですが、夜になると通りを我が物顔で…(以下自粛)。

ゴキブリの天敵は軍曹ことアシダカグモと野良猫で、彼らがいてくれると表でゴキブリに出会うなんてことはほとんどないのですが、最近野良猫が減ったからかなぁ、遭遇頻度が一気に増えたような気がします。

ゴキブリを駆除する方法は、とにかく彼らの餌になるものを出さない!生ゴミや食べ残しは臭いが漏れない袋に密封する!が基本です。

家の中はこれを徹底しているから出ませんが、屋外のゴキブリには殺虫グッズを使いましょう。

とりあえず自宅周辺の、暗く湿った路地の陰とか排水溝周辺にコンバット、ホウ酸団子を仕掛けてみました。

最近は「ブラックキャップが最強ですよ」とか「意外と重曹もあなどれませんぜ」という話も聞くので試してみよう。

前の家の周囲は断続的な誘殺作戦が効を奏してゴキブリの気配が2年目でほぼなくなりましたが今度の家はどうか…?

長い戦いになりそうです。



posted by サウンズパル at 00:26| Comment(0) | つぶやき、小ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月27日

ユセフ・ラティーフ Eastan Sounds

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Yusef Lateef/Eastan Sounds
(Moodsville/OJC)

ジャズという音楽は、古くは戦前に始まり、50年代にモダン・ジャズの黄金期を迎えて、それ以来色々な進化を遂げながら今日まで至っております。つまりヒジョーに歴史の長い音楽なんですね。

んで、ジャズの凄いところは、誕生しておよそ100年間ずーっと”オシャレでカッコイイ音楽”の座をキープしてきたこと。

はい、例えばカフェやアパレル系のショップの方から「何かBGMで使えそうなオシャレな音楽を」と、選曲の相談をよく受けてました。

こういう時はアタシの好みは極力抑えて、まずはざっくり大まかに「BGMで使えそうな音楽」を聴いてもらっておりました。

ジャズ、ボサ・ノヴァ、フリーソウル系、R&B・・・と、定番からちょっと冒険してるのまで色々な音盤をかけて「こんなのどうですか?」と反応を伺うのですが、ほぼ8割方の方は「ちょっと待って、コレいいかも」と、ジャズのCDを何枚かセレクトしておりましたね。

そういうのを見ていると、アタシはつくづく思うんです、特にジャズについて。

「何というか、なまじっか知識とかあるよりも、アーティストの名前とかそういうの全く知らない人の方が、直感で”これ、カッコイイ””これオシャレ”ていうのを的確に当てて来るんだよなぁ・・・」

と。

よく人は「有名なもの=いい音楽」「知ってる人が少ないもの=マニアック」と区分したがりますが、知られていない音楽でも、聴かれさえすればフツーにポップスでありますし、広く世に知れ渡ると思います。

はい、話がちょっとアツくなったところで冒頭の”ジャズって音楽がずっとオシャレでカッコイイ音楽の座を何故キープできたのか?”という本題に戻りますが、時代でいえば1990年代以降にDJという人達がいて、彼らは自分の曲のバックトラックや、ミックス音源を作る時に、古いジャズやファンクのレコードなどから拾った音源をそれぞれのセンスで加工して今現在の最先端でカッコイイ音楽にする職人さんなのですが、彼らがそれこそジャズに関しては超有名な曲から、レコードなんかとっくに廃盤になっていてなかなか知られていないレアな音源までとにかく堀りまくってミックスしたんですね。

これがクラブとかで話題になって「あの曲の元ネタは!?」ということになって今度はそのサンプリング元の曲が入ったアルバムが売れる。結果としてジャズがリアルタイムで盛り上がっていた頃は、知ってる人は知ってるぐらいの作品にも脚光が当たり、正当に評価されるようになりました。

例えばコルトレーンの後期の作品など、これらは今では”スピリチュアル・ジャズ”として若い世代の音楽ファンからガッツリ支持されてるんですが、リアルタイムの60年代後半には「これはジャズじゃない」と否定的な意見の方が多かったんです。

でも、今の時代の音楽好きにとっては「これがジャズであるか?」とかそんなことよりも「音楽としてカッコイイか?」ということの方が重要な訳で、ジャンルじゃあないんですね。サン・ラーなんかもあの出で立ちで拒絶する人多かったらしいんですが、今やあの出で立ちだからこそ若い熱心なファンが世界中で付いていますもんね。

というわけで、今日はそんな”90年代以降のDJによるリヴァイバル”によってヒットとなったアルバムをご紹介します。ジャズ界のミスター・スピリチュアル、ユセフ・”多国籍入道”・ラティーフの「イースタン・サウンズ」なんですが、その前にこの曲を聴いてください。



知ってる人は知ってるでしょう♪

ジャジー・ヒップホップのカリスマ、Nujabesが放った大人気の曲「Final View」なんですが、このメロディーが実はこのアルバムのE「スパルタカス〜愛のテーマ」をまんまサンプリングしたやつなんです。

何ともエスニックな不思議な音色の楽器(ラティーフが吹くオーボエです)が奏でる何とも切ないフレーズと、美しいピアノ(バリー・ハリスのピアノです)が奏でる、心の奥底の”懐かしい感覚”にギュッとくるこの演奏、とにもかくにもこのアルバムの一番のハイライトなんですが、この曲を「これだ!!」と思ってサンプリングしたNujabesは本当に音楽の何たるかを心得た人であり、名作映画の劇中歌をこれほどまでに美しいジャズ・バラードに仕上げたユセフ・ラティーフの感覚のカッコ良さといったらありませんです。




【パーソネル】
ユセフ・ラティーフ(ts,oboe,fl)
バリー・ハリス(p)
アーニー・フェーロウ(b)
レックス・ハンフリーズ(ds)

【収録曲】
1.The Plum Blossom
2.Blues For the Orient
3.Chinq Miau
4.Don't Blame Me
5.Love Theme From Spartacus
6.Snafu
7.Purple Flower
8.Love Theme From the Robe
9.The Three Faces of Balal

アルバム自体は1961年に、ニューヨークの名門インディーズ・レーベル”PRESTIGE”の傍流”Moodsville”という子会社からそっとリリースされた「何かジャズなんだけど東洋風あり中近東風ありの、民族音楽チックな面白いアルバムよ♪」というふれこみの、うん、まぁジャズとしては完全にメインストリームにはない”冒険””実験”のものだったと思いますが、今の色んな音楽があふれた時代にあっては異色でも実験作でもなんでもなく、素直に「面白くてカッコいいジャズ」として聴けるのです。

「スパルタカス〜」がどうしても至上の名曲で、話がそっちにばかり言ってしまうのですが、しっかりしたブルースのAとか、ちょいとひねった感じの4ビートに、うねうね心地良く蛇行するテナーがクセになるBとか、バラードでしっとりと落ち着いたプレイ(これはバックのバリー・ハリスのトリオが流石!)も聴かせるCとか、同じバラードでもコチラは無国籍の風が吹いて実に妖しいFとか、同じ「〜愛のテーマ」でも、コチラはバリー・ハリスが奏でるピアノのイントロからユセフのフルートが何とも幻想的なGとか、何気にイイ曲いっぱい入ってますんでこれはぜひアルバムで聴いてください。




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2016年05月26日

懐かしの缶コーヒー

営業職の特権で「配達先のおばちゃんからジュースをもらう」

というのがあります。

特に奄美はおばちゃんが優しい♪

「あげ、どら、こんな暑い中大変だったじゃろう」

と、この前頂いたのがコチラ

↓ ↓ ↓


5.jpg

これは懐かしい!!!!

UCCのミルクコーヒーですよ。

アタシの記憶が確かならば、この缶コーヒーは1969年、日本で初めて生産された本格的缶コーヒー・・・。

しかしアタシが物心付いた時からずーーーっとこのデザイン。

うん、発売当初からのスタイルを今も持ち続けているのは、多分コレとダイドーブレンドコーヒーだけだと思います。

早速飲んでみましたが、これこれ、これですよ。今ドキはコクや香りにこだわった本格派とか微糖とかがたくさん売られてますが、ゴクッと飲んだその瞬間にガツンとくるパンチの効いた甘さとまろやか〜な後味。ほとんど「コーヒー牛乳」ではありますが、このゆるぎない孤高の味わいと存在感、忘れかけていた何かを思い出しましたよ。。。




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2016年05月24日

ギター・スリム シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ

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ギター・スリム/シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ユー
(Speciality/オールディーズ・レコード)


毎回ステージでは全身をド派手な原色の衣装で身を包むのみならず、何と服の色に合わせて髪まで原色に染めた(例えば服が赤なら髪も真っ赤、青なら髪も真っ青、といった具合)まだエフェクターはおろかゲインすらついていない単なるスピーカー”だったギターアンプで歪んだバカでかい音を出しまくる、根っからのクレイジー・ガイ。

それだけじゃなくそんな凶暴なギターに負けないバカでかい声でシャウトして、ギターソロになると特注品の100m以上あるコードを引きずって会場内を動き回り、そのまんま外に出て行って道路をビュンビュン走ってる車を止める真性の常識クラッシャー。

その素顔はというと、共演する有名なブルースマン相手に「ハハ、てめーらなんか俺に比べたら雑魚だ」クラスの大言壮語は当たり前。

ミュージシャンだとか常に複数はべらせていたおねーちゃん達の間でちょっとイケメンの話でも聞けば、本人のところへズカズカと行き、即殺されてもおかしくないクラスの派手な挑発(器物損壊アリ)をしてディスりまくるのは当たり前。ステージ衣装そのまんまのギンギンな出で立ちに、泥酔をして完全にイッちゃってる彼の目を見れば、ディスられた方もたまったもんじゃない。

しばらくの絶句の後に

「あぁ、コイツには関わらない方がいい」

と思ったヤツなんて、50年代のニューオーリンズには履いて捨てるほどおっただろう。

ともかく型破り&破天荒の破滅型に服を着せてブルースの魂を注入したような男がギター・スリム。

よく「アイツはクレイジーだった」と言われるミュージシャンは多いけど、これほどまでにキャラクターと創り出す音楽がピッタリ一致している人は他にいないんじゃないかと思われる。

今どきハイゲインの音なんて珍しくもなんともなくて、ギター・スリムのギターより物理的に歪んだ音はいくらでもある。

でも、アンプのボリュームツマミを限界超えでいじり倒しただけの音割れに毛が生えたようなサウンドの「ギョイーーーン!バキバキバキ!」と、空気を割って出てくるその一瞬、その一瞬の破壊力の何と鋭く凄まじいことか。また、喉からはらわたをひっつかんでそこらにブン投げているかのようなヘヴィなシャウトの、何と真っ直ぐで野太く力強いことか。

若き日のバディ・ガイが聴きまくって”キレ芸”の参考にしたとか、ジミ・ヘンドリックスが彼のトーンのニュアンスを何とか再現したくてアンプやエフェクターをいじりまくったとか、もちろんそういう話題にも事欠かないのだが、いやいやいや、彼のキョーレツなトーンと唯一無二の濃厚極まりないブルースフィーリングは宇宙から独立した何かヤバい星雲の中でドロドロと煮えたぎりながら赤黒く光っているような気がする。

はい、というわけでここんところルイジアナ/ニューオーリンズ・ブルースやR&Bばかり聴いておりまして、50年代ニューオーリンズを中心にほんの数年大活躍してあっという間にあの世に行ってしまったギター・スリムの決定的名演が聴けるスペシャリティ・セッション「シングス・ザット・アイ・ユースド・トゥ・ドゥ」うをフルボリュームで聴いております。



【収録曲】
1.The Things That I Used To Do
2.Well, I Done Got Over It
3.The Story Of My Life
4.A Letter To My Girl Friend
5.Trouble Don’t Last
6.Later For You Baby
7.Bad Luck Blues
8.Twenty Five Lies
9.Sufferin’ Mind
10.Stand By Me
11.Our Only Child
12.Guitar Slim
13.Reap What You Sow
14.You’re Gonna Miss Me
15.I Got Sumpin’ For You
16.Think It Over
17.Quicksand
18.Something To Remember You By
19.You Give Me Nothing But The Blues


聴いておるんですが、いやはや、ギター・スリムは他のニューオーリンズのブルース系の人たちとは、何というか住んでる次元が違いますね。

大体においてこの地のミュージシャンは”ユルくてオシャレ”な人が多くて、その独特のおおらかさが「あぁ、ニューオーリンズの音楽だべなー」と安心する上質な仕上がりなんですが、ギター・スリムだけはもうなんかニューオーリンズとか50年代のどうのこうのとか、そういう形容詞的なものから全部ブッ飛んで存在しております。

あ、いや、オシャレだし力強いし、ブルース・フィーリングもあるしギター・プレイも流石に”ギター・スリム”を名乗るだけあって、実にモダンでカッコイイんですよ、でもその全てにおいて語尾に”過ぎる”が付いてしまうんですよ、オシャレ過ぎて力強過ぎてブルース・フィーリンズがあり過ぎてモダン過ぎてカッコ良過ぎる・・・。

特にアルバム・タイトルになっている@なんて、バラードですよ、バラードなのに冒頭の歌い出しからもうザザザザーと全身の血液が沸騰しそうな熱気に襲われるんです。後はもうクラクラですよ。アルバムに曲はタップリ19曲入ってるんですが、コレ聴いてる間はずーっとノーガードでパンチくらい続けているボクサーのような気持ちになります。

「さぁ、今日こそコレを聴いて何か上手いことレビューしてやろう」

と思うのですが、1曲目が始まって2秒ほどでそんな気持ちはどっかに消し飛んで、ただただ聴きながらアツくなったり「うひゃーーー!」と奇声を上げたり、どうしてか切なくなって泣けてくる自分がおります。

ギター・スリムといえば、コレとアトコ・セッションズ(こっちは声がよりガラガラになっててとにかく唄が凄い)しかアルバムが出てませんが、どっちも同じ気持ちになりますよね。

誰かが「ブルースってスタイルとかそういう問題じゃなくて、唄ってるソイツの人間の部分がどこまでリアルに湧き出ているかどうかだ」って言ってたけど、ギター・スリムってそんなです。破天荒極まりない人間の全部が唄にもギターにもバリバリ出てる、ただそれだけなんだけどその”それだけ”が常に聴く人の想像力の上限を軽く突き抜けるのです。

ふー、書いてて汗ドバドバ出てきた。もっかい聴こう♪





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2016年05月23日

サン・ラー 地球降臨日




おぉ、今日は(正確には22日だけどいいよね)サン・ラーが地球に降臨した日ではないですか!

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2016年05月22日

世界一難しい恋

気合いを入れすぎてブルース入門なぞ書いてしまったものですから今日はすっかり燃え尽きちまったぜ症候群発症でございます。

朝からダラーっとファッツ・ドミノなんか聴いておるんですがちょいと息抜きに最近ダラダラ見ているドラマのことなど。。。

嵐の大野智君は好きな役者さんだということは以前にもどこかで書きました。

演技、というよりもあの不機嫌な猫みたいな「ブスッ」とした表情に何とも味があっていいんですよね。

「この人にはぜひ日本を代表する”苦い顔俳優”になってほしい」

というのがアタシのひそかな願いなんですが

そんなアタシの願いを後押ししてくれるようなドラマ「世界一難しい恋」が始まりました(つっても始まってから大分時間経ってるけど)。

大野智演じる鮫島零次というやり手のホテルグループの社長が、この人はビジネス第一主義のとっても冷徹な若手経営者なんですが、フランス帰りの新入社員柴山美咲に恋をして、最初は想いをどうやって伝えていいか分からずに、ずっと”ツン”なのですが、この気持ちが恋だと気付いた時から段々”デレ”になってゆくという。

ストーリーとしては単純なラブコメディなんです。でも、徐々に心を開いて人間らしく段々3枚目になっていく零次の表情の変化がもうたまりませんな、そしてそんな不器用社長を一生懸命支えて後押しするクールな秘書の小池栄子と誠実な運転手(不器用免許A級)の杉本哲太のコンビがまた最高です。

ドラマはこういう心温まるやつがいいな〜。。。




posted by サウンズパル at 11:30| Comment(0) | つぶやき、小ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月21日

ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



「お〜いぇ〜♪ わうわ〜♪」

「ヘイ大将、朝からゴキゲンだねぇ〜」

「おぉう、ゴッキゲンよ。ひゅぅ〜♪」

「今、流れてるのはブルースだよね。このグラサンのおっさん渋いなぁ〜」

「このオッサンはライトニン・ホプキンスだぜぇ、俺は”ブルース”つったら真っ先にこのオッサンが思い浮かぶんだよなぁ・・・」

「うん、歌もギターもどっから聴いてもブルースだぁね。でもそれ以上に見た目が!(笑)」

「そうそう、どっから見てもブルースマン以外の何者でもないという・・・(笑)」

「ところで大将、俺はね、ちょっと本格的にブルースを聴いてみようと思うんだがね」

「ほんほん♪そいつは最高だ」

「大将、あの〜・・・ブログ書いてるでしょ?そっから良さそうなのを何枚かと思ったんだがね」

「ふんふん♪そいつはゴキゲンだ」

「記事が多すぎて選べねぇよ」

「何言ってるのよ、俺まだまだオススメのブツで書いてないやつとかもいっぱいあるんだぜぇ、どれを買えばいいかとかはほんなもん適当に鉛筆に数字でも書いて転がして選べばいいんだよ」

「無茶言うなぁ(笑)そんなテキトーなこと言わずに、まぁ10枚ぐらいね、俺みたいな初心者でも分かりやすい”これが入門盤だ!”ってのを教えてよ〜。」

「えぇぇー、俺が算数が苦手なの知ってるでしょ?10枚きっちり選ぶとかそういうの苦手なんだよなぁ・・・」

「いいから教えろよ、今おいしそうに食ってるそのプッチンプリンにタバスコぶっかけるぞ」

「待て、わかったわかった。俺は算数苦手なようで実は得意なんだ。1から10までの計算?ま・・・まかしとけ。だからタバスコかけないで・・・」

「おぅ、観念したか。とっととはじめやがれ」


「じゃあとりあえずさっき動画でも流してたライトニン・ホプキンスだ」

「うんうん、アレは渋かった」

「この人のカッコイイところはね、たっくさんアルバムあるんだけど、アルバムによって出来不出来の差があんまりないところなんだ」

「そんぐらい気合い入ってたってことか」

「う〜ん、確かに気迫は凄いんだよね。特にスローブルース唄ってる時とかエレキ持ってギャンギャンにブギかましてる時なんかは怖いぐらいの凄みがあるんだけど、基本スタンスはむしろ”がんばらないこと”のような気がする」

「ほう」

「この人はレコーディングの時、スタジオの中にテーブル置いてそこにまず酒瓶と灰皿ドカッと置いて、まず呑むんだと」

「いいねぇそれ」

「基本弾き語りか、バックが付いてもせいぜいベースとドラムぐらいの編成でいつもやってた人だから、マイペース貫けたんだろうね。ガッチリバンドの人ならこうはいかない」

「オススメのアルバムは?」

「う〜ん、難しいけど最初に聴くんならやっぱり”モジョ・ハンド”かな?」

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(「ライトニン・ホプキンス/モジョ・ハンド」レビューはコチラから)

「これはジャケットがカッコイイね」

「うん、でしょ? だからジャケ買いでもOK♪」

「じゃあこれはチェックしとくよ」

「ありがとう。あぁ、ライトニン・ホプキンスという人に関して詳しいことはココにも書いてるから、まぁヒマな時にも読んでちょうだいな」


「じゃあ次は、シカゴ・ブルースって知ってる?」

「あぁ、聞いたことある」

「でしょ?ブルースの中にも色々なジャンルがあって、それぞれ個性があるんだけど、シカゴブルースは多分一番有名なブルースのスタイルかも知れない」

「何で?」

「60年代にビートルズとかストーンズとか、そういったイギリスの人気バンドがシカゴブルースのレコードをお気に入りで、影響も多く受けたんだ。その頃ブルースの流行はとっくに終わってたんだけど、ロック経由で人気に再び火が点いたんだね」

「へー」

「シカゴブルースと呼ばれる音楽は、もちろん戦前からあって、それは割りと小粋で洗練されたシティ・ジャズみたいな感じだったんだけど、戦後になってミシシッピから上京してきたマディ・ウォーターズは、あえて都会風の洗練されたブルースじゃなくて、生まれ育った南部の泥臭くて荒々しいブルースをシカゴでも唄ってたんだ。」

「でも、そんな音楽って、古臭いとか田舎っぽいとか言われて相手にされなかったんじゃない?」

「最初はね。だけど南部から出てきた人達は彼のブルースにとても親しみを感じていた。そしてエレキギターという新しい武器と斬新なバンド・スタイルでの演奏が”懐かしいけど新しい、何じゃこりゃ!”というサウンドを生み出した」

「ブルースがエレキ化したんだね」

「その通り、もちろんマディ以前にもエレキギターを使ったり、バンドでブルースやる人達はいた。でも、そのスタイルを”ひとつのスタイル”としてまとめた才能と、あと圧倒的なカリスマがマディにはあったんだね。作曲家のウィリー・ディクソン、ハープのリトル・ウォルター、ピアノのオーティス・スパン、後になってバディ・ガイ、ジェイムス・コットン、ジュニア・ウェルズとか、マディの周囲にはいつも凄いメンツが自然に集まっていた。」

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(「ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ」レビューはコチラ


「マディに関してもアルバムはものすごくたくさんあるけど、最初に聴くんならこれはもう”ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ”だね。マディの・・・っていうか色んな人がカバーしてるブルースの有名曲ばかり入ってて、本当にワクワクゾクゾクする。あと、マディの弾くスライドギターは本当に味がある・・・」

「これはベスト盤?」

「と思うだろ?実はこのアルバムはベストじゃなくて、最初に出されたオリジナル・アルバムなんだよ」

「ん?何で最初のアルバムなのにベスト??わけがわからん??」

「まぁその辺は色々と書いてあるからレビュー参考にしてよ」

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「モーニン・イン・ザ・ムーンライト」レビューはコチラ

「で、マディといえばハウリン・ウルフ。この人も南部からシカゴに出てきた人なんだけど、何かとマディとはライバル・・・っていうか張り合ってたもう一方のボスマンで、この人もブルース語る時には絶対にハズせない人なのよ」

「”吠える狼”って名前が凄いね」

「そう、芸名の通りこの人はもう声が凄い。多分この強烈なダミ声初めて聴く人のほとんどは”オーディオ壊れたんじゃないか?”って思うらしい。かく言う俺もその一人(笑)」

「この人のブルースは、どっちかというとガレージロックみたいなズバッとストレートで非常に分かりやすい。もし、マディを聴いてピンとこなかったとか退屈だと思う人がいたら、まずはウルフを聴いてごらんなさいって思う。声も凄いけどバンドの粗削りな音と暴力的なノリが声に全然負けてないからホント凄い」

「レコードデビューが40歳ってマジか!?それでいてこのパンクな音で暴れまくってたとか頭オカシイ・・・」

「いやいや、ブルースマンは基本頭オカシイよ(笑)。それでこの人は1976年に65歳で亡くなってるんだけど、死ぬまでずっとこの声は衰えなかったし、バンドのノリも一切変わらなかった。最後の方は体もだいぶ悪くなって車椅子に乗ってたにも関わらずだよ」

「いかん、そういう話聞くとハウリン・ウルフにハマりそうになってきた・・・」

「はは、じっくり検討しといてね。じゃあ次は・・・」

「ちょっと待って大将、ひとつ聞きたいことがあるんだけど」

「おう、何だい?ブルースのことなら何でもいいよ」

「ロバート・ジョンソンは知ってるんだけど、ブルースの中でロバート・ジョンソンってどんな存在なの?」

「あー、よくぞ聞いてくれたねぇ。じゃあお次はロバート・ジョンソンいこうか」

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「ロバート・ジョンソン/キング・オブ・ザ・デルタ・ブルース・シンガーズ」レビューはコチラ

「おっしゃー!待ってました」

「ロバート・ジョンソンはねぇ、多分たくさんの人がブルースって音楽と出会う時に、最初の方に出会うブルースマンだと思うよね」

「うんうん、俺もそうだった」

「んで、そこからブルースにハマる人、ロバジョン聴いてもあんまピンとこなかったからそのまんまブルースから遠ざかる人とがいる。それはまぁ好みの問題だからしょうがないとして・・・」

「えぇ?ロバート・ジョンソンでピンと来ねぇヤツなんているの?信じられん!」

「(笑)嘘を言いなさい、最初は誰だってピンと来ないはずよ。大体戦前の録音だし、弾き語りでパターンが似たような曲多いし。俺も最初は聴きながら心地良く寝てたよ」

「ぬぐぐ・・・」

「でも、ロバート・ジョンソンはある日突然”クる”んだよね。ある日突然急にこの声がすごくエモーショナルなものに聴こえてきて、ギターも何弾いてるかちんぷんかんぷんだったのが、何となく”分かる”よーな気持ちになってくる」

「そっからブルースにのめり込んで色んなスタイルを知って・・・例えばロバート・ジョンソンが影響を受けたブルースマンとか、同じ時代の違うスタイルのブルースとか、戦後のシカゴだったりテキサスだったりのブルースを色々と聴いて・・・」

「でも、最終的にはロバート・ジョンソンに戻ってくる!」

「あー、せっかく言おうと思ってたのにー」

「ふっふっふ、自分ばっかりオイシイところは取らせない」

「まぁとにかく、それでロバート・ジョンソンに戻って改めて聴いてみると・・・」

「全く異質なんだよ。彼は南部の、しかもブルースが一番泥臭くてワイルドなスタイルを保ってたミシシッピ・デルタのブルースマンなはずなのに、その繊細な唄とかギター・プレイとか、綿密に組み立てられた曲構成とかを聴くと、本当に一体いつの時代のどこのブルースマンなのか・・・聴けば聴くほどわからなくなる」

「すごく耳が良くて、レコードなんかで一回聴いただけの曲でも完璧に弾けたとかいうよね」

「耳が良かったってのはあるだろうね。でも、それにしても完成度が高過ぎるんだね。この時代のデルタのブルースマンとは、ちょっと違う感覚を持っていたんじゃないかなぁ・・・」

「それこそ”悪魔に魂を売った”ということにしておこう、そっちのがしっくりくる」

「んだね、ロバート・ジョンソンだけは本当に底なし沼だなぁとつくづく思うよ。ブルースが好きだったら、これはもう一生心の中に謎を抱えながら聴きつづけるしかないだろうね」

「うわぁ、そう思うと戦前ブルースってヤバいなー。何か俺の知らないことがまだまだたくさん埋まっていそう」

「戦前ブルースにちょっとでも興味持ったんなら、とりあえず本でもネットでも色々検索して、知らない名前を見付けたらまず聴いてみるといいよ。戦前はまだ”これがブルース”ってスタイルもはっきり決まってなかったし、結構みんな好き勝手やっててなかなかにアナーキー」

「そんなこと言ったら聴きたくなってくるよー!でもカネがない・・・」

「うん、ない(笑)だから最初は手軽に色んな人が聴けるオムニバス盤を聴いてみるのがいいね」

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「RCAブルースの古典」レビューはコチラ

「戦前ブルースのコンピといえば、これはもうこのRCAブルースの古典は絶対だぁね。まだ日本で戦前ブルースとかがあんまり知られてなかった時代に、日本人が少ない資料や音源を一生懸命集めて作ったオムニバスだよ」

「ジャケットが何かいいなぁ〜、手描きのイラストは味があるね」

「いいでしょ〜♪ 今は戦前ブルースのマニアックな音源でも、Pヴァインという本当に良心的なレーベルがほとんど復刻してくれているけど、昔はそういう太っ腹なレーベルもなくて、メジャーどころのレコード会社が権利持ってる音源を何とか頼み込んでかき集めたっていう話だけど、泣けてくるよね」

「わかる。ブルースですらあんま売れないのに、戦前のブルースなんか誰が聴くんだろうって思ってた人は多かったかも」

「いやぁ、戦前ブルースは今も言われなき迫害を受けてるよ。ちょっと泣ける話なんだけど聴く?」

「うん、長そうだから今度でいいや。それよりこのアルバムはどんななの?やっぱロバート・ジョンソンとかサン・ハウスとか、戦前の超有名どころがガッツリ入ってんでしょ?」

「いや、そこらへんは入ってないんだよ。当時のBMGビクターが権利持ってたのはRCAの音源だけだったから、そこらへんは弱いんだよ。でもミシシッピ・ブルースからジャグバンド、ピアノ・ブルース、シティ・ブルースとか、収録されている曲のバリエーションは凄く広くて、そんなに有名じゃないブルースマン達の曲が意外に凄く良かったりする」

「有名人/有名曲を聴いて楽しむっていうより、”ここで初めて名前を知って次に行くためのガイド”みたいな聴き方がいいのかな?」

「その通り!これ一枚あれば知識が凄く豊かに広がるのよ。そういう意味ではこれこそ究極のブルース入門盤と言っていい」


「もっとディープな、例えばロバート・ジョンソンより昔のデルタブルースとかあるの?」

「あ、そらもうコレよ。サン・ハウスとチャーリー・パットンの伝説のデルタ・ブルース・セッション」


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「サン・ハウス&チャーリー・パットン/伝説のデルタブルース・セッション1930」レビューはコチラ

「この二人はサン・ハウスが”デルタ・ブルースの父”でチャーリー・パットンが”デルタ・ブルースの創始者”って呼ばれてるんだけれども・・・」

「やったー、サン・ハウス!俺、ロバート・ジョンソンの次に買うのはサン・ハウスにしようと思ってたんだよね。つうかちょっと待って?このジャケットの裏にクレジットされてるウィリー・ブラウンって”クロスロード・ブルース”に出てくる”友達のウィリー・ブラウン”のこと?」

「あー、見付かったねウィリー・ブラウン。彼はサン・ハウスとチャーリー・パットンがどこかで演奏する時はほぼ横にいて、絶妙なギターでサポートしてたデルタ・ブルースのギター名人なんだよ。そういう訳でもちろんロバート・ジョンソンとも絡みはあっただろうね。ただ、彼が”友達のウィリー・ブラウン”だったかどうかは結局分からない」

「えー」

「まぁそこは謎のままにしといた方がロマンあるがな。とにかくデルタ・ブルースの・・・つうかブルース最初期の伝説的な巨人2人が唯一同じ空間で演奏したこのアルバムは、熱気が凄い、ラフで荒削りな演奏からビンビンくる圧も凄い。特にサン・ハウスは鬼だね。戦後の録音も凄いけど、このセッションでのサン・ハウスは何かヤバい世界に行ってる感すらある」

「ウィリー・ブラウンも唄ってるね」

「そうそう、ウィリー・ブラウンと、あと女流ピアニストのルイーズ・ジョンソンも唄ってて、これがまた味があっていいんだよ。細かいところがどうとかいうより、全体の空気感だけで感動させるし鳥肌も立たせる凄いセッションだよ」

「チャーリー・パットンはどうなの?」

「声はザラザラでギターはバッチンバッチン、おまけにルイーズ・ジョンソンが唄ってるバックで何かヤジってて、完全にヤカラ(笑)そらもうガラ悪くて最高よ」

「大将さっきからずーっと濃いのばっか薦めてくるけど、何かこうもっと落ち着いた感じの、まったり聴けるブルースないの?さっきから血圧が上がってきてるんだけど・・・」

「はぁ?ブルースなんざぁ濃くてなんぼだろ?そんなこと言ってたら・・・・いや、すまん。実は俺がよく夜中にまどろみながら聴くとっておきのお洒落でスマートな名盤がある」



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「T・ボーン・ウォーカー/モダン・ブルース・ギターの父」レビューはコチラ

「もちろんT・ボーン・ウォーカーは知ってるよね?」

「あぁ、ブルースの世界で始めてエレキギターを弾いた人だとか何とか・・・」

「とりあえず”誰が最初か”という話になると色々とややこしいんだが、T・ボーン・ウォーカーって人は”エレキギターを使ってギターソロを弾くブルース”のスタイルを最初に完成させた人ではある」

「でも、そんな人だから派手にギャンギャン弾いてたんでしょ?オシャレとかスマートとかまず大将の口から出る言葉じゃないよねぇ?俺は簡単には騙されないぞ」

「まぁお待ちなさい(笑)T・ボーンは派手に暴れることよりも、アレンジや構成の妙で”聴かせるブルース”を大成させた人でもあるんだ。B.B.キングが誰よりも影響を受けたことは有名な話なんだけど、それはメロディアスなギター・プレイはもちろんだけど、いつもパリッと決めたスーツ姿だったりインタビューでもジェントルな受け答えとかでも常にB.B.はT・ボーンを意識してた。はず」

「ジャケでは派手な開脚弾きしてるけど、実際は・・・」

「軽快なシャッフル・ビートに乗ってすいーっと足を開いて、そりゃもう綺麗なもんだったらしいよ。こういうジャケを見るとついド派手な音を期待しちゃうんだけど、このアルバムはいいよ。ギターがどうとかいうより、バンドサウンドそのものが落ち着いてて上質な感じがするよね。コイツを聴きながらちびりちびりやるお湯割りがたまんない」

「アンタ、呑めないだろ」


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「B.B.キング/シンギン・ザ・ブルース」レビューはコチラ

「T・ボーンときたらやっぱりB.B.キングを紹介せにゃあいかんね。この人も代表作が多すぎて、どれを出そうかほんっとに迷うし悩むんだけど、とりあえず60年代のアルバムは全部」

「いや、真面目にちゃんと選べよな」

「はいはい。個人的に凄い体験をしたのが”ライヴ・アット・リーガル”で、アレ聴いて本当に俺はB.B.のこと、有名人過ぎてなんだかって、まぁナメてたんだけどその偏見がブッ飛んだんだよね」

「ブルースのライヴだから、おっさんのドス黒い歓声が上がるのかと思ったら、何かほとんど若い女の子の黄色い声だったし、色んな意味で衝撃でした。ブルースってエロい」

「エロいエロい、全然渋い音楽なんかじゃない。」

「だからB.B.は、とりあえず若い頃のやつはどれ聴いてもいいのよ」

「終わらすなよ、タバスコ飲ますぞ」

「・・・特に一枚って言われれば実質的なファースト・アルバムの”シンギン・ザ・ブルース”かなぁ。いや、名盤はいっぱいあるんだけど、愛聴の度合いだけでコレは頭ひとつ抜けてる。ギター・プレイとか声とか、まだ青い部分もあるんだけど、それなりに頑張って自分のスタイルを必死で模索している途中のB.B.聴くと”あぁ、王様にもこういう時代があったんだなぁ”と和む。でもそれはあくまで後の作品と比べてであって、実はこの時代にもうゆるぎない”モダン・ブルース”がしっかり出来上がってる。完成された音を聴くと本当に凄いと思う」


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「ローウェル・フルスン/アーリー・レコーディングス1946-1952」レビューはコチラ

「よし、最後は全然入門盤でも聴きやすいとっつきやすいアルバムじゃないんだけど、ブルースの一番コアなものを感じてやまない大好きなアルバムでシメよう」

「え?最後ってまだ9枚目だけど」

「だから俺は数字が苦手なんだよ、後はテキトーにちゃっちゃと続き書いてくれよ」

「えぇーー」

「ローウェル・フルスン御大についてはライトニン、T・ボーン・ウォーカーと同じようにブラインド・レモン・ジェファソンテキサス・アレクサンダーっていう戦前テキサス・ブルースの始祖2人から直接ブルースの真髄みたいなものを学んだ人で、B.B.キングも先輩としてリスペクトしてる人なんだけど」

「この人は知らないなぁ」

「いや、知ってる人の方がもしかしたら少ないと思う。50年代にヒット曲がありながら60年代はほとんどくすぶってて”眠れる巨人”って言われてたみたい。それに戦後のブルースマンってやっぱりシカゴ・ブルースの人たちが圧倒的に有名で、テキサス系の人たちは意外に知られてなかったりするじゃない?それについて言いたいことは山ほどあるけど、ローウェル・フルスンって名前を、とにかくまぁこれで覚えてしまった人は、まずはこのアルバム以外のアルバムを購入してくださいと」

「オススメに上げといてどんな投げっ放しだよ!」

「最初に言ったぜ、この”アーリー・レコーディングス”は初心者向けじゃない。まずフルスンって人はガッツリバンドブルースの人なんだけど、このアルバムは、特に前半の曲はほとんど唄とギターだけで、しかもどの曲も同じような曲調で、派手な展開とか超絶なギターテクが聴けるとか、それとこの人は物凄く唄がうまくて本当に惚れ惚れするシャウトを繰り出す人なんだけど、ここではシャウトしない。ただ淡々とちょいと高めの地声でブルースしてるだけ」

「うう、話聴くだけでもかなり気合い入れて聴かないとダメなアルバムっぽい」

「そうだよ、でも俺はこの淡々として派手なところが一切ないフルスンの歌声と弟の伴奏に徹したギターからは純粋な、ドブロクみたいなブルース・フィーリングが無尽蔵ににじみ出てきてる感じがすごく好きでたまんないのよ。”ブルースは理屈じゃない”って俺は散々言ってきたけど、このアルバム聴くまでは分かってなかったんだなぁ。」

「ブルース聴いてると”結局ブルースって何なのよ”って思う時ある。まぁそんなに知らんけど」

「思うよなぁ、結局何なんだろう。意味なんて分からずにただ惹かれて聴いてるだけのような気がするし、これから先聴いていくうちに、もしかしたら答えみたいなのがちょっとだけ分かるような気がして聴いてるような気もするけどまぁいいか、これ以上あんまりグダグダ喋ると理屈っぽくなってしまう。とりあえずこんなくだらない与太話みたいな文章でも、誰かの心に何かが響いてその人がブルースを好きになってくれたらいいな」







posted by サウンズパル at 18:40| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月20日

ドクター・ジョン Gambo

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Dr.John's Gambo
(ATCO)

ニューオーリンズ音楽の最強の入門盤にして、70年代のブルースをルーツにしたロック/ポピュラーの中でも燦然とその強烈な存在感で金字塔として今もそびえ立つアメリカン・グッド・ミュージックの、これはもう基本中の基本と言って良いでしょう。

ここ数日、アタシは暑苦しいぐらいにニューオーリンズ音楽の素晴らしさについて力説してきました。

えぇ、むさ苦しく感じた方も多かろうと思います。

もしかして「あら、ニューオーリンズ音楽いいかも知れないわね」と思った方で、まだかの地の音楽を耳にしたことのない方、もしくは「いやぁ、お前の言うことなんかそんな簡単に信用できるかい」と思っておる方は、プロフェッサー・ロングヘアとかヒューイ・スミス、アラン・トゥーサン、リー・ドーシーとか何とか、今までこのブログで紹介した名前などまずは忘れて、この一枚を手にして頂けましたらアタシにとってはこれは本望というものでございます。

ワシは理屈抜きで楽しい音楽が聴きたい、お前の理屈なんぞ知るか!という方がもしいらっしゃいましたら、そういう方にこそ、この理屈抜きで楽しい底抜けで底なしのお祭りサウンドに、ひたすらオーイェーして頂きたいと思います。

はい、はい、いささか背伸びしてカッコ良くまとめますと、ブルースは目にしみて、ソウルは胸にきて、ファンクは腰にくるときてニューオーリンズの音楽は、目・肩・腰にグイグイくるんですよ。これは間違いない。









【収録曲】
1.Iko Iko
2.Blow Wind Blow
3.Big Chief
4.Somebody Changed The Lock
5.Mess Around
6.Let The Good Times Roll
7.Junko Partner
8.Stack-A-Lee
9.Tipitina
10.Those Lonely Lonely Nights
11.Huey Smith Medley
High Blood Pressure
Don't You Just Know It
Well I'll Be John Brown
12.Little Liza Jane

というわけで、今更ドクター・ジョンという名前は、ニューオーリンズに実在した伝説のヴードゥー教の呪術師の名前だとか、そんなニューオーリンズの象徴的な名前を芸名にしたこの男、最初はギタリストとしてバンドやってたけれど、ある日トラブルに巻き込まれて銃で撃たれた仲間の盾になって指を飛ばしてしまい、ピアニストに転向したんだけど、プロフェッサー・ロングヘアが生み出したセカンドライン・スタイルをあっという間にマスターして、ピアニストというのがどう見ても天職です本当にありがとうございました。になってしまったとか、そういう細かいことはどうでもよろしい。

「ガンボ」というニューオーリンズを代表するアメリカの国民料理(鍋煮込み)をタイトルに持ってきて、音楽を知らない料理マニアやコックさん達が中身を知らずに買って厨房でヒャッハーして踊りまくって仕事にならなかったとか(創作)、70年代、既に過去のものとして忘れ去られていたニューオーリンズ産の名曲の数々を、メリハリの効いたモダンでソリッドなサウンドに生まれ変わらせて復活させて今に至るとか、このアルバムが世に出たことにより、ロック界の大御所達が「俺も負けてねぇ!」と、デビュー前に夢中になってカヴァーしたニューオーリンズ・クラシックスを更にイカしたロック・アレンジに編曲してライヴで演奏するようになったとか、日本においては大瀧詠一、細野晴臣らナイアガラ近辺のミュージシャン達に与えた影響はものすごいだとか、遂にはボ・ガンボスという、バンド名も音楽性もこのアルバムに由来しまくるスーパーバンドが出てきたとか、書けばキリがないけど、その辺もドクター・ジョンのゴキゲンなダミ声と、転がりながらも恐ろしいタイミングでフレーズをビシバシ決めてゆく最高にゴキゲンなピアノと、「タタスタスタタン!タンタンタン!!」と、スネアが繰り返し繰り返し刻むニューオーリンズ独特のセカンドラインのやめられない中毒性に溢れたリズムに、目と肩と腰と頭と・・・その他全部をヤラレてください。



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/

BASEショップもありますよ(ここでしか買えない商品アリ)http://soundspal.thebase.in/
posted by サウンズパル at 18:54| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする