2016年08月27日

レイ・ドレイパー・クインテット・フィーチャリング・ジョン・コルトレーン

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レイ・ドレイパー・クインテット・フィーチャリング・ジョン・コルトレーン
(Prestige/New Jazz/ユニバーサル)

世の中には「良い」「悪い」という言葉の他に「味がある」という非常に素敵な言葉があります。

もうね、アタシはこの”味”という言葉大好き♪

そうなんですよ、特に音楽の分野でいえば、歴史に残る名盤とか、天才アーティストとか、もう本当に凄い人の凄い演奏、たくさんあります。

しかし、しかしですよ皆さん、完璧な凄いものばかり聴いていたら、耳が疲れませんか?

アタシにはこんな経験があります。

ちょっとジャズに興味を持ったお客さんで

「もう本当に本当に初心者なんで、とりあえず名盤を教えてください」

という、実に真面目で熱心な方がいらっしゃいまして、で、アタシもそん時は若かったので

「これはもう一流の物凄い名盤を揃えてお応えせねば・・・」

と、やや張り切りすぎていたんでしょうね。

頑張って張り切って、そらもうジャズの”超”の付く名盤を少しづつじっくりとオススメしてたんですが、ある日

「何か・・・ジャズってもっと気軽に聴ける音楽だと思ってたのですが、私にはまだまだ敷居が高すぎるような感じがします・・・」

と、その方は悲しそうにおっしゃってました。

私も悲しかった

でもね、これはアタシが悪いんです。

自分だって本当は「名盤」と、高いところに置かれて燦然と光を放つアルバムには衝撃を受けたけれども、そこから

「ジャズっていいな・・・」

と、心から思えるようになったのは、何か軽い気持ちで

「これって何かいいんだよな〜」

と、にこやかに聴けるアルバムに、”味”の魅力をたくさん教えてもらったからではなかったか?

だってお客さんにオススメするのに、世間の評価とか、狭い世界の中だけでの評判とか(ジャズの世界なんて狭い狭い)に一切を頼って、そこに自分が耳で聴いて「これはいいもんですよ」というものを入れて、お客さんに考えて判断してもらうってことを考慮してなかった。

はい、いけませんね。

そこからの反省の意味も込めて、アタシは「評判はあまり聞かないものをなるべく聴こう」と思って、色々とマイナーなものばかり聴いていた時期があります。

その中で引っかかったのが、チューバ奏者、レイ・ドレイパーのこのアルバムです。




【パーソネル】
レイ・ドレイパー(tuba)
ジョン・コルトレーン(ts)
ギル・コギンズ(p)
スパンキー・デブレスト(b)
ラリー・リッチー(ds)

【収録曲】
1.クリフォーズ・カッパ
2.フィリデ
3.トゥー・サンズ
4.ポールズ・パル
5.パリの空の下
6.アイ・ハドント・エニワン・ティル・ユー

(録音:1957年12月20日)


いや、引っかかったというか、単純に「コルトレーンが参加してる」ということで、完全なミーハーで見付けたアルバムなんです。ついでに”ミーハーってさいっこう♪”な話もしたいのですが、これやると長くなりますので・・・。

えぇと、話をレイ・ドレイパーに戻しましょう。

皆さんはチューバという楽器、知ってますか?吹奏楽部とかでよくアンサンブルの重低音部分を担当する、あのヒマワリのお化けみたいなデカい楽器です。

そんな楽器でありますので、ソロでブイブイ言うジャズの世界では、あんま使われてないんですね。

しかし、ドレイパーは気合いと根性で、この楽器で何とソロを吹くんだい!という志を持ってジャズの世界での飛躍を夢見ておりました。

「ちょいと変わった楽器をやってる若いのがおる」

ということで、彼に目を付けたレーベルが「NEW JAZZ」という子会社を立ち上げたばかりのプレステイジ・レコード。

「とりあえずー、レイ・ドレイパーのアルバム作りたいんだけどー、彼全然無名のあんちゃんだしぃ、チューバだけだと売れるかどうか物凄く不安だからー、誰かそこそこ有名なヤツと組ませるかー」

というわけでもう一人のホーン奏者として白羽の矢が立ったのが、当時プレスティジから初リーダー作を出したばかりのコルトレーン。

さてさて、そんなアルバムがどういう風に仕上がってるかと言いますと・・・。

『耕運機VSスポーツカー』

なのであります。

ドレイパーがモゴモゴした全く抜けのない音で「ブハブハブハ・・・」と、たどたどしいソロを吹けば、コルトレーンがその後で、体感速度はその10倍ぐらいの全開のソロでシャーーーー!!と駆け抜ける。漫才でいえばドレイパーは完璧なボケでコルトレーンは完璧なツッコミ。

この時レイ・ドレイパー17歳、コルトレーンは30歳。

怖いもの知らずでボフボフやっているドレイパー、相手がチューバだろうが少年であろうが容赦なく本気で吹きまくるコルトレーン、まったくどんな子供とどんな大人なんだと思います。

そして、物凄く扱い辛いであろうチューバでのソロは、さっきも言いましたが実にたどたどしく、コルトレーンとのソロの応報も、お世辞にもバランスが良いとは言えません。

が、何でしょうこのチグハグを「また聴きたいな♪」と思わせる不思議と後を引く唯一無二のオツな味わいは。

まぁ、色々と「不思議だな〜、不思議だなぁ〜」と思いながら、アタシは長年愛聴しております。

よくよく考えながら聴けば、ものすごーく抜けの悪い(失礼!ディスってないよ)ドレイパーのチューバと、とことん硬質でメリハリの効いたコルトレーンのテナーという、全く対照的なサウンドの間には、本人達が意図していないところで、実に絶妙な”緩急の差”が生じて、それが聴く人の生理的な部分に直接作用して、「何かすっげぇスリリング!」と思わせる効果が出ておるのです。

それから「ドレイパーのソロはたどたどしい」と書いて、実にその通りなのですが、どの曲でもテーマ(曲の最初のメロディーをハモる部分)で、ドレイパーはセンスのいい、もっといえば非凡なカッコイイ”ハモり”をバシッ!とキメておるのです。

うんうん、やっぱりアンサンブル要因として、多分ブラスバンドで鍛えまくったんでしょう。それからやっぱり才能あるんですわ。サックスとかトランペット奏者みたいに、先頭に立ってガンガン吹きまくるんじゃない、アンサンブル人としてメインフレーズを引き立てるズバ抜けた才能がこの人には。

あと、ドレイパーには作曲の才能もあります。

アルバム前半の3曲は彼のオリジナルなんですが、これがまた派手さはないけど、哀愁系のミドルテンポで加速する、聴けば聴くほどイイ曲なんですよ。

ドレイパー自身はこの後パッとすることなく1984年に強盗に襲われて悲劇の最後を迎えてしまいましたが、もし、彼が契約したのがPRESTIGEでなくBLUENOTEで、その作曲とアレンジの才能を開花させていたら・・・とか、ふっと夢想してしまいます。







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2016年08月23日

マノウォー Kings of Metal

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Manowar/Kings of Metal
(Atlantic)

今は地下ですが、それでもCD屋をやっていると、最近よく訊かれます。

「BABYMETALってどうですか?どう思います?」

て。

最初の頃は何のことかわからず

「何ですかそれ?」

と、逆に訊き返してたんですけど、ある人から

「アイドルの子たちが本格的なメタルをバックに唄ってるんです、面白いっすよ」

と、教えてもらい、映像を見せてもらいました。

なるほど、ギンギンの、かなりハードなメタル・サウンドに乗って、恐らくは80年代のヘヴィ・メタルのリアルタイムを知らないであろう女の子達が、アイドルの”風味”を残しながら激しくパフォーマンスを繰り広げる。

これは色んな意味で”ギャップ”のツボがハマる、非常に面白く、かつ画期的なアイディアだと思います。

はい、BABYMETALに関する個人的な”感想”はここまで。

そんなことよりもアタシはCD屋として

「うん、これをきっかけにして、もっと世の中の色んな世代の人に、ヘヴィメタルという最高にアツくてクールな音楽のカッコ良さを知ってもらえたらいいなぁ・・・」

と、切実に思っているんです。

そう、こういう時にこそ全国のCD屋、バンドマン、ギョーカイジンその他音楽にたずさわる人らは、便乗しまくってグッド・ミュージックを世の中に広める努力をせねばならんのではないですか。たとえ一人であってもアタシはします。

というわけで本日は「メタルの中のメタル」といえばこのバンドでしょう、マノウォーです。

ヘヴィメタルの時代が始まった1980年にアメリカから世に出てきて、2016年まで大きくスタイルを変えることなく

・重い

・激しい

・情感てんこ盛り

の3拍子揃った、気合いの入ったメタルをずーーーーっと演奏してきたバンドなんですよ。

彼らのモットーはズバリ

「混じりっ気ナシの純粋なへヴィ・ミュージックを、常に全力で演奏すること」

です。

「偽メタルには死を!」

を合言葉に、メジャー・レーベルとの契約書へのサインも血で行うなど、何というかもう徹底して”気合い”。

サウンドも、実はちゃんと聴けば叙情的だったり、深い知性に裏付けられた展開やアレンジもふんだんに楽曲の中に盛り込んでいるのですが、それは長年聴いて気付けばいいわけで、とにかくフルゲインにしたギターの轟音とバカテク、ベースとドラムの繰り出す容赦なく攻撃的なリズム、そしてヴォーカル、エリック・アダムスのパンク・スピリッツに溢れた、実に男・・・いや、漢らしい太みあるハイトーン・ヴォイスにグッと握り拳を固めて聴けばいいわけです。

アタシは高1の頃、アタシよりも全然洋楽、特にメタルに詳しい友達に、マノウォー教えられました。

そん時聴いてたメタルといえば、メタリカにパンテラにスレイヤー、メガデス、アンスラックス、スキッド・ロウ、ガンズ、オジー、それからラウドネス、X Japan・・・そんぐらいの、もうホントに有名どころしか知らなかったのですが、ある日

「マノウォー知ってるか?」

と、言われ

「まのおう?何じゃそれ?」

だったのですが

「ほれ、まぁ聴いてみろ。これがメタルだ」

と、CDを貸してもらい

「ほんとかよ・・・」

と思いながら帰宅して、翌日ソイツに会うなり

「ホントだった・・・」

と、拳握り締めて即答しました。

そんぐらい彼らのサウンドは、迷いとか妥協とか一切ない、力強さがストレートに「ガツン!」とくる刺激的なサウンドだったんです。





【収録曲】
1.Wheels of Fire
2.Kings of Metal
3.Heart of Steel
4.Sting of the Bumblebee [Instrumental]
5.Crown and the Ring (Lament of the Kings)
6.Kingdom Come
7.Pleasure Slave
8.Hail and Kill
9.Warrior Prayer
10.Blood of the Kings

そん時友達に貸してもらったのが、このアルバム「Kings of Metal」です。

1988年にリリースされた、彼らの6枚目のアルバム。

どこを切り取っても激しいしヘヴィだし、もう言うことありません。

初期の頃はもっとアメリカンな、ロックンロール寄りの演奏もやっていて、それもまたカッコイイんですが、このアルバムでドでかく打ち立てた世界観は「ヘヴィメタル」という意味において絶対的に揺ぎ無く、また、最近久々に引っ張り出して聴いてみましたが、その揺ぎ無いサウンドの威力は、2016年の現在においても全く損なわれないままに強烈であります。

その余りにも硬派な姿勢と、世評を物ともしない鋭角に特化したサウンドゆえに、セールス的には彼らから影響を受けつつも、よりポップな味付けのメタルバンドらの後塵を拝した形になりましたが、成功した後輩バンド達が口々に彼らへのリスペクトを語り、伝説として語られる。そして、そんな自分達への敬意を表す後輩達やファンを本当に大事にするという、音だけじゃなく、そういう気持ちの部分の”漢らしさ”もまたカッコイイと思うのです。




(これはもう名曲ですわね)
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2016年08月21日

ジョン・コルトレーン ジャイアント・ステップス

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ジョン・コルトレーン/ジャイアント・ステップス +8
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)


「金字塔」といえば正にこのアルバムのことでありましょう。

いや、アタシも長年コルトレーン者をやっております、個人的に大好きなアルバム、特別なアルバムはいーーーーっぱいあります。

しかし「じゃあお前、客観的にコルトレーンの”ズバリ名盤”というアルバムを紹介できるのか?」と言われたら、まず間違いなく本アルバム「ジャイアント・ステップス」のことは語ります、えぇ、このアルバムを語らずして、コルトレーンは語れない。

ちょいと専門的な言葉を使えば、コルトレーン流モード・ジャズの集大成、コード・チェンジの弾幕の中で間断なく吹きまくる”シーツ・オブ・サウンド”の快楽をひたすらに浴びられる、念願のメジャー・レーベルのアトランティックで、たっぷり時間と予算をかけてレコーディングすることができたコルトレーンの、やる気と喜びに満ち溢れた、伸び伸びとしたプレイが気持ちいい、とか、まーそれこそ色々と細々挙げることはできますが、一旦そんな細かいこたぁどーでもいい(!)

とにかく「あぁあ、ジャズってカッコイイ!!」という純粋な感動に、これほど満ち溢れたアルバムがありますか?いやない!

という意味において「ジャイアント・ステップス」は、コルトレーンの数ある名盤の中でも、やっぱり何をどう考えても頭ひとつ、スコーンと抜けている作品だと断言して、過言はないのです。

はい、ここまで読んで「そこまで言うならだまされてみよう・・・」と思った方は、こっから先の文章はすっ飛ばしてもいいんで、今すぐ画面をスクロールしてポチッてください。





【パーソネル】
(@〜DFJ〜L)
ジョン・コルトレーン(ts)
トミー・フラナガン(p)
ポール・チェンバース(b)
アート・テイラー(ds)
(E)
ジョン・コルトレーン(ts)
ウィントン・ケリー(p)
ポール・チェンバース(b)
ジミー・コブ(ds)

(GHI)
ジョン・コルトレーン(テナー・サックス)
シダー・ウォルトン(ピアノ)
ポール・チェンパース(ベース)
レックス・ハンフリーズ(ドラムス)

【収録曲】
1ジャイアント・ステップス
2.カズン・マリー
3.カウントダウン
4.スパイラル
5.シーダズ・ソング・フルート
6.ネイマ
7.ミスターP.C.

(録音:AC1959年5月4日,@BDF12月2日)





はい、ここまで読んでおられる方、アタシの与太にお付き合いくださいましてありがとうございます。

皆さん、あのー、よく音楽を聴いてて「わかる」とか「ピンとこない」とかあるでしょう。

ちょいとコレの話をします。

その「わかる」「ピンとくる/こない」ってのは、多分ですけど、ノリの良さ(スピード感)だと思うんです。

今の時代だと「ジャズ」って言ったら「落ち着いた大人の音楽」と思う方が、多分ほとんどだと思うんです。

イメージで言えば、オシャレなバーで、ゆったり流れてる感じとか、あー、アタシの想像力がアレなんで、上手く伝わらないかもですが、とにかく”ジャズ”といえば、そういう図が頭に流れる方、多いと思います。

しかし、コルトレーンのこの時代、つまり1950年代というのは、ジャズといえば全然落ち着いた音楽じゃなくてむしろ逆で、若い人達が、ひたすらクレイジーになりたくて、案外何にも考えんで、ただ刺激を求めて聴いてたフシが大いにありました。

今でこそあれこれと理論的なこととか解明されたり、その後の歴史と照らし合わせて「ジャズとは・・・」とか、そういう頭良さそーな口調で語れるようにもなってきましたが、そんな風にジャズが冷静に語られるようになってきたのは、実はつい最近なんですね。

もちろんこの時代にも評論というのはあったし、色んな人がレコードを出す度にキチンと解説してくれる偉い人はおりましたが、いざクラブに行くと、ほとんどの人がそのド迫力、かつキレッキレのジャズの生演奏を目の当たりにして、純粋に興奮してキャーキャーヒューヒュー言ってクレイジーになっておったわけです。

とにかくこの時代、ジャズの「強み」といえば、理屈抜きで聴く人の心をエキサイティングなものにさせるストレートなわかりやすさ、そして体感の凄まじい速さにあったんじゃないかとアタシ思います。

で、コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」このアルバムは、コルトレーンという、とてもとても創造意欲と実験精神に満ちたサックス吹きが、聴く人にその”体感”を、それこそあれこれ考えて、曲も演奏も死ぬほど工夫を凝らして、極限までリアルなものに仕上げたアルバムなんだと思います。

ホント、語り尽くそうと思えば、こっからが長くなるんですけど、まずはこの「駆け抜ける音楽」のカッコ良さ、皆さんも体感してください。



(個人的にこのアルバムの中で一番”加速”を感じる「Mr.P.C.」です、アタシはコレにとことんヤラレました)



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