ディープなコラム こちらにも書いてます♪

2016年09月28日

玉置浩二 Gold

4.jpg
玉置浩二/Gold
(Saltmoderate)


最近ね、凄くいいんですよ。

いや、何がって、玉置浩二ですよ。

いや、ホント。

ここ数日「大人になって改めてその良さがしみじみと分かってきた音楽」というテーマで、あれこれ聴いてるんですが、主にオーソドックスなジャズとか、60年代〜70年代のソウル、同じ時代のいわゆるアメリカン・ポップスなんかを聴いてるんですけどね、詰まるところこの時代の音楽の良さってのは何だろう?と考えた時に

「そりゃあ歌ですよ、歌としてグッとくるか、思わず一緒に唄ってしまっているか、そういう音楽がいいんですよ」

という、自分なりの結論がひとつ出ています。

ほぉん、唄かぁ・・・。

と、ぼんやり考えておったのが、3年前ですか。確か2013年頃だったと思うんですが、ボーッとテレビ見てたら、玉置浩二がドラマに出演してたんですよ。

不器用でクレイジーで、とっても優しいお父さんを演じてた「東京バンドワゴン」というドラマだったんですが、そのドラマの中で、しみじみといい味を出した演技を見せながら、ちょくちょくドラマの中で玉置浩二が唄うんですよ。

それが何というか、シーンとかセリフとか、登場人物達の心情に、どれもいちいちピッタリで、あの・・・狙ってスポット当ててはい唄〜って感じじゃないシーンばかりなのに、何でこんなに惹かれるんだろうと思ったんですよね。

そしてドラマのエンディング曲の「サーチライト」が、また凄く良かった。

どうしようもない人間の”孤独”みたいなのがあって、それに苛まれたり、傷付けられたりするんだけど、それでも僕は心を照らすサーチライト(愛しい存在の人の優しさ)を信じていたし、そうなりたいと思ってる。

という意味の歌詞を、この人独特の「ふをぉ〜ん」というハラー(叫ぶのでなく、ふくよかに張り上げる歌唱)をたっぷり交えた、そのサウンドといい、声の質感といい、物凄く奥底からくるブルース・フィーリングを、アタシなりに感じたんですね。

安全地帯の頃はアタシは小学生で、化粧してニューウェーブなサウンドを「面白い」とは思っても、真剣に聴くまでではなかったし、ソロになって「田園」ですごく売れた時は、バリバリの洋楽小僧で、日本のヒットチャートなんかには完全に背中向けてたんで、さほどの感慨は正直なかったんです。

そこへきて2010年代の”玉置浩二”これがとにかくグッときたんですよね。理屈でなしに。。。

「サーチライト」これは運命の一曲だと思って、アルバムを聴きました。



【収録曲】
1.それ以外に何がある
2.いつの日も
3.サーチライト
4.セコンド
5.かくれんぼ featuring.金子マリ
6.TOUCH
7.宙
8.泣くなひまわり
9.屋根の下のSmile
10.GOLD


というのも、さっきもちょっと触れましたが、ブルースやソウル、ゴスペルといったブラック・ミュージックが好きなアタシは、この玉置浩二のヴォーカルに、限りなくそのフィーリングを感じたんです。

フィーリングってのは「そういう風にやろう」と思ってもなかなか滲み出るもんじゃなくて、とにかく自分自身と、自分自身の持っている内側の”うた”を、どれほど濃密にリンクさせるかだと思うんですが、ほとんどの曲が統一された深い色合いを持つこのバラード・アルバム(あえてそう言おう)には、ハッキリとアタシの好きな60年代70年代ソウルのフィーリングを”玉置浩二のフィーリング”にした、一人の凄いシンガーがおりました。

アタシは昔からのファンでもないし、自分の好きな音楽を通じてしか玉置浩二を語れませんが、現在進行形の日本のポップスの、しかもかなりメジャーな位置に、こういうディープ・ソウル・ミュージックがあるというのは、素晴らしいことだと思います。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本のロック・ポップス・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月27日

オスカー・ピーターソン・トリオ・プレイズ

4.jpg
オスカー・ピーターソン・トリオ・プレイズ
(Verve/ユニバーサル)

世の中に「完璧」とか「完全」なんてものはそうありませんが、もし、アタシが誰かに「ジャズのピアノの人で完璧に近い人って誰かいるかい?」と訊かれれば、オスカー・ピーターソンを挙げたいと思います。

パッと思い浮かんだ彼の持ち味を羅列するだけでも

・右手左手の10本の指をフルに使って鍵盤を自在に飛び回るズバ抜けたテクニック

・「スイング」という言葉がこれ以上なくしっくりくる、ウキウキなノリ。

・かと思ったらバラードもしっとりと、でも目一杯の華麗な装飾を付けてしっかり聴かせる

・長いキャリアのどのアルバムも高水準。そしてどんな編成でもしっかりと破綻のない”ジャズ”を楽しませてくれる。

ジャズとしてはこれだけ”完璧”の要素を持っている人なんです。

しかも、彼の音はカラッと明るくて、深刻なところ、重たいところが少しもない。

アタシ個人としては「よぉし、今日は気合い入れてジャズ聴くぜぇ!」という日は、コルトレーンとかマイルスとかアイラーとか、どこか深刻で鬱屈としたジャズを聴きたい派ではあるんですが、一応人間です。時々は「う〜ん、今日は明るくて楽しいジャズが聴きたいぞ」と思うことだってある。

そういう時の「ヘイ、ジャズマン。何かゴキゲンなヤツをやってよ♪」という気持ちに真っ先に応えてくれるのがピーターソンです。

こんなことを言うとピーターソンは、テクだけのチャラい野郎なのか、とか、ソウルがない、とか思う人もおりましょうが、いやいやいや、当たり前だけどんなこたぁない。

どんな音符でも最高にスウィングするジャズに仕立てて、聴き手を楽しませながら、鍵盤から繰り出すどの音にもまんべんなく”上質なフィーリング”を丁寧にまぶして「おぉ、今日はいいの聴いたなぁ」と納得させるのがピーターソンです。

アタシが最初にこの人を知ったのは、伴奏をしているビリー・ホリディのアルバムでした。

ヴォーカルの伴奏っていうのはとっても難しくて、凄いテクニックある人は余計に、どこか変に目立ちゃったり、逆に伴奏に徹し過ぎて当たり障りない演奏になることが多いんですが、ピーターソンは、ビリー・ホリディというある意味クセだらけの人の唄にピッタリと寄り添って、サラッとしながらも唄心を尽くしたアドリブで引き立てて、しかもピアノも強烈に印象に残してるんですよ。

「これは凄い、このピアノの人のアルバムは買わなくては」

と、思ったのが、本当に最初の最初。

ビリーの歌伴で、隅々まで神経の行き届いた、甘い毒のある演奏をしていたから「この人は”甘い毒の人だろう”」と思って、ピーターソンのアルバムをいざ買って聴いてみたら、最初に言ったような、とても明快なピアノで、一切”毒”を感じさせなかったことが、良い意味での衝撃でした。「この人、本当のプロだ!」と。




【パーソネル】
オスカー・ピーターソン(p)
レイ・ブラウン(b)
エド・シグペン(ds)

【収録曲】
1.ザ・ストラット
2.レッツ・フォール・イン・ラヴ
3.サテン・ドール
4.小さな足
5.リトル・ダーリン
6.フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン
7.殆ど私のもの
8.シャイニー・ストッキング
9.夢からさめて

そうなんです、ピーターソンは、常に聴く人の耳を期待値以上の演奏で楽しませてくれるプロ中のプロ。

楽しく軽快で、物凄いドライヴ感に溢れる演奏をよくよく聴くと、その最初の一音から最後の一音に至るまで一切”気分”に流されることなく、そこに来るべき音が、来るべきタイミングで、来るべきトーンで、ピシャッとハマッているのが分かるんです。

だからといって、”計算”のあざとさはないんだなぁ。これは多分ピーターソンのズバ抜けたテクニックが、単なる家での練習じゃなくて、すっごいシビアな”現場”での実戦を繰り返して身に付けたものであるからに違いないと思います。

今回のオススメは、そんなピーターソンがゴキゲンな(や、ピーターソンは全部ゴキゲンだけどね♪)スタンダード曲を、トリオでとことん料理した1960年代初期の裏名盤。

ミディアム・ナンバーからジワりと始まって、ノリノリで終わるアルバムの構成がホントに素晴らしいし、ベースのレイ・ブラウンのぶっとい音、エド・シグペンの”スタッ””カシュッ!”とスマートに煽るセンスのいいドラミングともにゴキゲン。さっきから”ゴキゲン”しか言ってないけど、本当にゴキゲンなもんですから、他に言いようがないんです、えへ。




(名物番組「JAZZ625」の楽しいライヴ♪)

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月25日

テキサス・ブルース(PCD-2519)

160924_224002.jpg
これこれ、これです。

アタシに深淵なるテキサス・ダウンホーム・ブルースの素晴らしさと、リル・サン・ジャクソンという、恐ろしく孤高のクソかっこいいブルースマンの魅力を教えてくれた名オムニバス。
テキサスのブルースはねー、やっぱりなんつうか渇いてるんですよ。あと、ギターものもいいけどピアノブルースも最高!

若い頃のライトニン・ホプキンスとコンビ組んでたサンダー・スミスとか、マーシー・ディーとか、タフに鳴り響くテキサス・バレルハウス・ピアノの濃厚な真髄を、コレで楽しめちゃうんです。

1989年に出た盤ですが、中古はまだ奇跡的にあるみたいです↓↓



posted by サウンズパル at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月24日

リル・サン・ジャクスン Lil' Son Jackson

4.jpg
リル・サン・ジャクスン/Lil' Son Jackson
(Arhoolie/Pヴァイン)

ブルースは中学の頃から好きだったのですが、18の時戦前ブルースに完全に目覚めてからは、とにかく知らないブルースマンの、まだ聴いたことない音源を探しに必死でした。

1990年代半ば、今みたいにネットもYoutubeもない時代でしたから、何で探したかというと、オムニバス盤です。

おっきいCD屋さんのブルースのコーナーに行くと、大概オムニバスのコーナーがあって、そこには信頼の置けるレーベルのものから、どこの国のかわからんよーなアヤシイものまで、いろいろとありました。

ジャケットの裏のクレジットを見ては、知らない名前を見付け、知らない名前を見付けてはソッコーでレジに持ってったものです。

Arhoolie原盤、当時Pヴァインが出していた「テキサス・ブルース」を見付けたのはそんな時。

これが戦後テキサスのダウンホーム・ブルース(派手なバンド形式じゃない、弾き語り系中心のやつ)の有名どころから無名どころまでを集めた、ヒジョーに秀逸な一枚だったんです。

その中で1曲目から3曲目までに収録されていたのが、リル・サン・ジャクソン。

テキサスの、このテのダウンホーマーといえば、ライトニン・ホプキンスぐらいしか知らなかったアタシです。

ドロドロデロデロ、ブルースのどうしようもない”コア”の部分が煮立っているようなブルースを、きっとライトニンみたいにこのリル・サン・ジャクソンなる人もするんだろーか、とか思っていましたが、これがすっごい淡々とした、ブルースの荒涼とした大平原が広がっているような枯れた味わいで、衝撃を受け、以来リル・サン・ジャクソンは「ライトニンの次に好きになったテキサス・ダウンホーマー」になりました。

で、アタシの場合は「好きになったらとことん」ですから、このリル・サン・ジャクソンなるオッサンが、どういう人だったのか、調べたくなったんですよ。

そしたら面白いですよコノ人。ソングスターである父親と、教会でギターを弾いていた母親との間に1919年に生まれ、テキサス州内の農場を転々としていましたが、16歳の時に家を出て大都会ダラスへ。

ここまではブルースマンの前半生でよく聴く話なんですが、で、16歳のジャクソン少年がダラスで何をやってたかと言うと、これがブルースマンじゃなくて車の整備工(!)。

や、もちろん仲間らとバンドを組んで、最初は教会で演奏をするグループをやっていたんですが、段々と酒場でブルースを唄う夜の仕事が多くなってきたようで、ダラス近辺ではなかなかの評判だったようですが、彼はそこから全てを投げ打っての一攫千金ミュージシャンへの道へは行かず、やっぱり昼間は整備工をしながら、夜だけ唄っておったと。

やがて第二次世界大戦が始まると、徴兵されて兵役に就きます。もちろん腕利きの整備兵としてです。

そして復員後もやっぱりダラスへ帰ってきて、真面目に黙々と車の修理をしておりました。

えっと、1919年生まれですから、この頃は既にリル・サン・ジャクソン30代の半ばです。

整備の腕は評判で、正業でそこそこ稼げるようになっておるのと、まぁ家族も養っておったんでしょう。近所の人達は「メルヴィン(リル・サン・ジャクソンの本名)がブルース唄う」なんて、知りもしなかったと思います。

ところがその頃、友人の薦めで彼は一本のデモテープを、当時テキサスでは一番かそんぐらい有名なライトニン・ホプキンスが所属しているゴールドスター・レーベルに送り、何と1948年にはシングル盤を吹き込んでのレコード・デビュー。

単純に”体がちっちゃいから”という理由で”リル・サン”の芸名を貰っておりますが、まぁ、こんなテキトーな芸名貰ってもあんま嬉しくない。大体俺はカタギの車屋だ、ダチの野郎の口車に乗っちまったが、レコーディングが終わったらさっさとブルースなんてヤクザな世界から身を引いて静かに暮らすべ。とは思ってはおりましたが、何とリル・サンのレコードはそこそこのヒットとなってしまって、他のレコード会社からも次々声が掛かるようになってくるのでした。

そんなこんなで「あんまりやりたくないんだがブルースマン人生」を、40年代末から50年代半ば頃まで過ごしたリル・サンでしたが、元々ヤル気がないのに加え、ツアー中に交通事故に遭ったりしたことを契機に足を洗います。

元の”メルヴィン・ジョンソン”に戻り、ダラスの「街の修理工場のおっちゃん」として、黙々働いていたリル・サン。どうやら世の中もブルース人気は落ち着いて、ロックンロールとかいう新しい音楽が流行ってるようだし、やれやれ、これで静かに暮らせる。と思ったであろうリル・サンですが、話はここで終わりません。

ロックンロールの熱狂も一夜の夢となった1960年、今度は若い白人のリスナーがブルースを求めるようになりました。

彼らの情熱は凄まじく、まるでCIAばりの情報収集能力で、全国各地の”伝説”となって今は一線を退いているブルースマン達を発見し、色々と上手いこと言ってライヴやレコーディングの最前線に送り込んでおりました。

そんな中「ライトニン・ホプキンスのレコードを出すために」レコード会社アーフーリーを立ち上げた青年、クリス・ストラックウィッツにリル・サンは発見され(古い電話帳に載っていた本名から足が付いたそうですがおそろしい・・・)、「レコーディングしてはくれんですか」と熱心な説得を受けます。

「あの〜・・・すいません」

「おぅ、いらっしゃい。修理かい?メンテかい?」

「あの・・・ミスター・ジャクソン。あなたはリル・サン・ジャクソンさんですよね」

「・・・何だ、そんなヤツぁ知らねぇ。車の用じゃなきゃ帰ってくれ。ウチは整備屋だ」

「ちょっとだけ話いいですか?」

「よくねぇ、帰れ。オゥ、誰か塩まいてやれ!」

と、クリス・ストラックウィッツは何度も追い払われた、なんて話を聞いてますが(塩は流石にまかんでしょうが)無視されても怒鳴られてもめげずにリル・サンの工場に通いつづけ、カネ儲けしたいとかでなしに、とにかくブルースが好きで録音したいという話や、リル・サンのかつてのヒット曲を、曲名も出して丁寧に感動したことを伝え、結局はその情熱に押し切られる形で、リル・サンはレコーディングを一応承諾。

はい、その「発見後」初のLPであり、リル・サンにとっては生涯最初にして最後のアルバム、そして、戦後のテキサス・ダウンホーム・ブルースを語るには絶対に欠かせない名盤が、コチラ



【収録曲】
1.Blues Come To Texas
2.Cairo Blues
3.Ticket Agent
4.Louise Blues
5.Sugar Mama
6.The Girl I Love
7.Santa Fe Blues
8.Turn Your Lamp Down Low
9.Groundhog Blues
10.Gambler Blues
11.Charley Cherry (take 1)
12.Charley Cherry (take 2)
13.West Dallas Blues
14.Rollin’ Mill Went Down
15.Red River Blues
16.Roberta Blues
17.Buck Dance
18.I Walked From Dallas
19.Rock Me
20.Johnnie Mae

タイトルはシンプルに「リル・サン・ジャクソン」、ジャケットも特別に撮影された写真じゃなくて、自分とこの自動車整備工場の前で、普段の仕事着の写真を使っている、というのがまた何ともイイじゃありませんか。

事実、このアルバムに収録されているのは、基本弾き語りのシンプル極まりない編成で、独特の淡々とした語り口で繰り広げられる、ありのままのブルース。

決して張り上げない、感情の高ぶりに流されない声も、モノトニック・ベース奏法といって、親指で「ボン・ボン」と、コード・チェンジに関係なく同じルート音を使うギターも、派手さは一切ないんだけど、どういう訳か一度聴いたら耳の底にじわーっと残って離れない不思議な魅力があります。

コレはファンの勝手な妄想です。彼が表舞台に出るのを嫌がったのは、もちろん海千山千の自堕落な生活が嫌だったってのもあるんでしょうが、彼にとって”ブルース”っていうのは、誰に聴かせる訳でもない、純粋な自己との対話だったんじゃなかろうかと。そんなことを思わせるぐらい、ここで聴かれるリル・サンのブルースは、孤高の深みに溢れていて、静かで絶対的な説得力を持っておるのです。


リル・サンは、このレコーディングを最後に、音楽とはきっぱり決別して、1976年静かに生涯を閉じました。とかく破天荒、型破り、荒削り、常識破りなブルースマンの中にあって、その個性と唯一無二の内省的なブルースは、やはり出色のものです。音楽の歴史の片隅で、いつまでも鈍く深い輝きを放つものでありましょう。







『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 11:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月23日

ソニー・スティット パーソナル・アピアランス

4.jpg

Sonny Stitt Quartet/Personal Appearance
(Verve)

ジャズという音楽のカッコ良さを、その凄腕&無尽蔵の唄心炸裂のサックス・プレイで、とってもとっても分かりやすくストレートに、聴く人に伝えてくれる職人、ソニー・スティットを、前回前々回と引き続き皆様に紹介しております。

まずはビ・バップ黄金期を代表する素晴らしいメンバー達と、テナーでもって白熱の激戦を繰り広げた若きスティットのアツい演奏が楽しめる初期の名盤、続いて最大のライバルであり、色んな意味で比較して語られていたチャーリー・パーカーの楽曲に敢えてアルトで挑み、彼の影響を軽やかに克服した60年代の名盤を立て続けにご紹介しましたが、アタシがこれだけ言ってもまだスティットに興味が沸かない、「んなこと言ってもどーせ大したことないんだろう?」と思っている人に、今日は

「アルトもテナーも吹いているワン・ホーン作、しかも楽曲はスティットのオリジナル2曲を除いてほとんどがおなじみのスタンダードでどうだ!これ以上分かり易く曲の良さとスティットの演奏がズバッとくるアルバムなんてそうはないぜぇ〜♪」

という、とっておき盤について書きます。

かく言うアタシも、実は「お、今日はちょっとスティットでも聴くべか」と軽く思った時は頻繁に取り出して聴いている愛聴盤です。

ソニー・スティットっていう人のカッコ良さは、つくづく「いつでもどこでも普段着で、気軽に、しかし確実に上質な”ジャズの快楽”」を、聴く人に感じさせてくれるところなんです。

ジャズっていうと、何だか敷居が高いとか、高いオーディオで聴かないとダメなんじゃないかとか思う人はいて、それはそれで否定はしません。逆にその敷居の高さ、高級なオーディオで聴いた時の「うぉー!何じゃこりゃー!!全然違うー!!」ってのも、後々十分に楽しめる音楽ですから。

でも、スティットの「いつでもジャズ、どこでもアドリブ」な、良く言えばサッパリした屈託のなさ、悪くいえばあっけらかんとした単細胞さは、やれ敷居が高いとかやれ音楽的に高度なうんちゃら、とか、そういうつーまらないウジウジをスコーンと飛ばしてくれます。

スティットの「とりあえず吹きまくってみる」という、実に明快で”ツボ”な演奏は、そのまんまロックとかの「エレキギターでジャーンとやるの聴いたら理屈抜きで興奮する」というアレとまったく一緒です。

もうホント、笑っちゃうぐらい”聴くだけ簡単”で、物凄い質量の”ジャズってかっけー!!”を、何の理屈もなく教えてくれるのがスティット、らいっつ、なう。ハッハッハー!なんですよ。




【パーソネル】
ソニー・スティット(as,ts)
ボビー・ティモンズ(p)
エドガー・ウィリス(b)
ケニー・デニス(ds)

【収録曲】
1.Easy To Love
2.Easy Living
3.Autumn In New York
4.You'd Be So Nice To Come Home To
5.For Some Friends
6.I Never Knew
7.Between The Devil And The Deep Blue Sea
8.East Of The Sun (And West Of The Moon)
9.Original?
10.Avalon
11.Blues Greasy


はい、アルバム「パーソナル・アピュアランス」は、そんなスティットの”かっけー!”が、それこそ目一杯詰まったアルバムです。

録音は1957年、丁度ジャズの世界ではビ・バップから進化して、より黒っぽいファンキーなノリを重視したハード・バップという新しいスタイルが、例えばマイルス・デイヴィスとかアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズなんかが演奏してて、世界的にジャズが盛り上がっていた時代です。

この頃多くの若いジャズマン達は「如何にして人と違うことをやるか」ということに頭を悩ましておったんですが、この頃既に中堅からベテランぐらいのところにおったスティットは

「何やるかだって?んなもん考える前に吹け、全力で吹け」

とばかりに、お得意のビ・バップ高速フレーズを、流行だのスタイルだの全然カンケーなく、湯水のように吹きまくっております。

とにかくスティットは、アルトだろうがテナーだろうが、楽器を操る抜群のテクニック、特に低音から高音まで、どの音も同じ強さとボリュームで完璧にコントロールする技を既に極めておりましたから、そのテクニックを一番カッコ良く披露するには、ややもっさりしたハード・バップよりも「スカカカカカカ!!」と軽めに疾走して行くビ・バップのスタイルが一番手っ取り早かったのでしょう。

とはいえ、彼の尋常ならざるテクニックは、やっぱり楽曲をアドリブで料理して、そのフレーズから、聴き手に”うた”を感じさせるためにあるものです。

アルトでもテナーでも、次々と美しく、スリルと力強さで料理されてゆくスタンダードの、極上の味わいはどうでしょう。

このアルバムは、基本的にリラックスしたミディアム・テンポのナンバーが多いのですが、それはそれ、ミディアムだろうがレアだろうがウェルダンだろうがアドリブではキッチリ全力疾走してくれるスティットプレイには、やはり”本気”がみなぎっております。

はい、内容については余り細かいこたぁグダグダ言いません。スティットどうのサックスどうのというよりも、聴いて2秒以内に「これがジャズのカッコ良さーーー!!」と、ここに収録されている気合いの演奏からビシバシくると思いますんで、まずは感じてください。考えるのはその後でよろしい。スティットかっこいいんだぜぇ♪






”ソニー・スティット”関連記事



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 18:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする