2016年09月28日

玉置浩二 Gold

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玉置浩二/Gold
(Saltmoderate)


最近ね、凄くいいんですよ。

いや、何がって、玉置浩二ですよ。

いや、ホント。

ここ数日「大人になって改めてその良さがしみじみと分かってきた音楽」というテーマで、あれこれ聴いてるんですが、主にオーソドックスなジャズとか、60年代〜70年代のソウル、同じ時代のいわゆるアメリカン・ポップスなんかを聴いてるんですけどね、詰まるところこの時代の音楽の良さってのは何だろう?と考えた時に

「そりゃあ歌ですよ、歌としてグッとくるか、思わず一緒に唄ってしまっているか、そういう音楽がいいんですよ」

という、自分なりの結論がひとつ出ています。

ほぉん、唄かぁ・・・。

と、ぼんやり考えておったのが、3年前ですか。確か2013年頃だったと思うんですが、ボーッとテレビ見てたら、玉置浩二がドラマに出演してたんですよ。

不器用でクレイジーで、とっても優しいお父さんを演じてた「東京バンドワゴン」というドラマだったんですが、そのドラマの中で、しみじみといい味を出した演技を見せながら、ちょくちょくドラマの中で玉置浩二が唄うんですよ。

それが何というか、シーンとかセリフとか、登場人物達の心情に、どれもいちいちピッタリで、あの・・・狙ってスポット当ててはい唄〜って感じじゃないシーンばかりなのに、何でこんなに惹かれるんだろうと思ったんですよね。

そしてドラマのエンディング曲の「サーチライト」が、また凄く良かった。

どうしようもない人間の”孤独”みたいなのがあって、それに苛まれたり、傷付けられたりするんだけど、それでも僕は心を照らすサーチライト(愛しい存在の人の優しさ)を信じていたし、そうなりたいと思ってる。

という意味の歌詞を、この人独特の「ふをぉ〜ん」というハラー(叫ぶのでなく、ふくよかに張り上げる歌唱)をたっぷり交えた、そのサウンドといい、声の質感といい、物凄く奥底からくるブルース・フィーリングを、アタシなりに感じたんですね。

安全地帯の頃はアタシは小学生で、化粧してニューウェーブなサウンドを「面白い」とは思っても、真剣に聴くまでではなかったし、ソロになって「田園」ですごく売れた時は、バリバリの洋楽小僧で、日本のヒットチャートなんかには完全に背中向けてたんで、さほどの感慨は正直なかったんです。

そこへきて2010年代の”玉置浩二”これがとにかくグッときたんですよね。理屈でなしに。。。

「サーチライト」これは運命の一曲だと思って、アルバムを聴きました。



【収録曲】
1.それ以外に何がある
2.いつの日も
3.サーチライト
4.セコンド
5.かくれんぼ featuring.金子マリ
6.TOUCH
7.宙
8.泣くなひまわり
9.屋根の下のSmile
10.GOLD


というのも、さっきもちょっと触れましたが、ブルースやソウル、ゴスペルといったブラック・ミュージックが好きなアタシは、この玉置浩二のヴォーカルに、限りなくそのフィーリングを感じたんです。

フィーリングってのは「そういう風にやろう」と思ってもなかなか滲み出るもんじゃなくて、とにかく自分自身と、自分自身の持っている内側の”うた”を、どれほど濃密にリンクさせるかだと思うんですが、ほとんどの曲が統一された深い色合いを持つこのバラード・アルバム(あえてそう言おう)には、ハッキリとアタシの好きな60年代70年代ソウルのフィーリングを”玉置浩二のフィーリング”にした、一人の凄いシンガーがおりました。

アタシは昔からのファンでもないし、自分の好きな音楽を通じてしか玉置浩二を語れませんが、現在進行形の日本のポップスの、しかもかなりメジャーな位置に、こういうディープ・ソウル・ミュージックがあるというのは、素晴らしいことだと思います。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2016年09月27日

オスカー・ピーターソン・トリオ・プレイズ

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オスカー・ピーターソン・トリオ・プレイズ
(Verve/ユニバーサル)

世の中に「完璧」とか「完全」なんてものはそうありませんが、もし、アタシが誰かに「ジャズのピアノの人で完璧に近い人って誰かいるかい?」と訊かれれば、オスカー・ピーターソンを挙げたいと思います。

パッと思い浮かんだ彼の持ち味を羅列するだけでも

・右手左手の10本の指をフルに使って鍵盤を自在に飛び回るズバ抜けたテクニック

・「スイング」という言葉がこれ以上なくしっくりくる、ウキウキなノリ。

・かと思ったらバラードもしっとりと、でも目一杯の華麗な装飾を付けてしっかり聴かせる

・長いキャリアのどのアルバムも高水準。そしてどんな編成でもしっかりと破綻のない”ジャズ”を楽しませてくれる。

ジャズとしてはこれだけ”完璧”の要素を持っている人なんです。

しかも、彼の音はカラッと明るくて、深刻なところ、重たいところが少しもない。

アタシ個人としては「よぉし、今日は気合い入れてジャズ聴くぜぇ!」という日は、コルトレーンとかマイルスとかアイラーとか、どこか深刻で鬱屈としたジャズを聴きたい派ではあるんですが、一応人間です。時々は「う〜ん、今日は明るくて楽しいジャズが聴きたいぞ」と思うことだってある。

そういう時の「ヘイ、ジャズマン。何かゴキゲンなヤツをやってよ♪」という気持ちに真っ先に応えてくれるのがピーターソンです。

こんなことを言うとピーターソンは、テクだけのチャラい野郎なのか、とか、ソウルがない、とか思う人もおりましょうが、いやいやいや、当たり前だけどんなこたぁない。

どんな音符でも最高にスウィングするジャズに仕立てて、聴き手を楽しませながら、鍵盤から繰り出すどの音にもまんべんなく”上質なフィーリング”を丁寧にまぶして「おぉ、今日はいいの聴いたなぁ」と納得させるのがピーターソンです。

アタシが最初にこの人を知ったのは、伴奏をしているビリー・ホリディのアルバムでした。

ヴォーカルの伴奏っていうのはとっても難しくて、凄いテクニックある人は余計に、どこか変に目立ちゃったり、逆に伴奏に徹し過ぎて当たり障りない演奏になることが多いんですが、ピーターソンは、ビリー・ホリディというある意味クセだらけの人の唄にピッタリと寄り添って、サラッとしながらも唄心を尽くしたアドリブで引き立てて、しかもピアノも強烈に印象に残してるんですよ。

「これは凄い、このピアノの人のアルバムは買わなくては」

と、思ったのが、本当に最初の最初。

ビリーの歌伴で、隅々まで神経の行き届いた、甘い毒のある演奏をしていたから「この人は”甘い毒の人だろう”」と思って、ピーターソンのアルバムをいざ買って聴いてみたら、最初に言ったような、とても明快なピアノで、一切”毒”を感じさせなかったことが、良い意味での衝撃でした。「この人、本当のプロだ!」と。




【パーソネル】
オスカー・ピーターソン(p)
レイ・ブラウン(b)
エド・シグペン(ds)

【収録曲】
1.ザ・ストラット
2.レッツ・フォール・イン・ラヴ
3.サテン・ドール
4.小さな足
5.リトル・ダーリン
6.フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン
7.殆ど私のもの
8.シャイニー・ストッキング
9.夢からさめて

そうなんです、ピーターソンは、常に聴く人の耳を期待値以上の演奏で楽しませてくれるプロ中のプロ。

楽しく軽快で、物凄いドライヴ感に溢れる演奏をよくよく聴くと、その最初の一音から最後の一音に至るまで一切”気分”に流されることなく、そこに来るべき音が、来るべきタイミングで、来るべきトーンで、ピシャッとハマッているのが分かるんです。

だからといって、”計算”のあざとさはないんだなぁ。これは多分ピーターソンのズバ抜けたテクニックが、単なる家での練習じゃなくて、すっごいシビアな”現場”での実戦を繰り返して身に付けたものであるからに違いないと思います。

今回のオススメは、そんなピーターソンがゴキゲンな(や、ピーターソンは全部ゴキゲンだけどね♪)スタンダード曲を、トリオでとことん料理した1960年代初期の裏名盤。

ミディアム・ナンバーからジワりと始まって、ノリノリで終わるアルバムの構成がホントに素晴らしいし、ベースのレイ・ブラウンのぶっとい音、エド・シグペンの”スタッ””カシュッ!”とスマートに煽るセンスのいいドラミングともにゴキゲン。さっきから”ゴキゲン”しか言ってないけど、本当にゴキゲンなもんですから、他に言いようがないんです、えへ。




(名物番組「JAZZ625」の楽しいライヴ♪)

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2016年09月25日

テキサス・ブルース(PCD-2519)

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これこれ、これです。

アタシに深淵なるテキサス・ダウンホーム・ブルースの素晴らしさと、リル・サン・ジャクソンという、恐ろしく孤高のクソかっこいいブルースマンの魅力を教えてくれた名オムニバス。
テキサスのブルースはねー、やっぱりなんつうか渇いてるんですよ。あと、ギターものもいいけどピアノブルースも最高!

若い頃のライトニン・ホプキンスとコンビ組んでたサンダー・スミスとか、マーシー・ディーとか、タフに鳴り響くテキサス・バレルハウス・ピアノの濃厚な真髄を、コレで楽しめちゃうんです。

1989年に出た盤ですが、中古はまだ奇跡的にあるみたいです↓↓



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2016年09月24日

リル・サン・ジャクスン Lil' Son Jackson

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リル・サン・ジャクスン/Lil' Son Jackson
(Arhoolie/Pヴァイン)

ブルースは中学の頃から好きだったのですが、18の時戦前ブルースに完全に目覚めてからは、とにかく知らないブルースマンの、まだ聴いたことない音源を探しに必死でした。

1990年代半ば、今みたいにネットもYoutubeもない時代でしたから、何で探したかというと、オムニバス盤です。

おっきいCD屋さんのブルースのコーナーに行くと、大概オムニバスのコーナーがあって、そこには信頼の置けるレーベルのものから、どこの国のかわからんよーなアヤシイものまで、いろいろとありました。

ジャケットの裏のクレジットを見ては、知らない名前を見付け、知らない名前を見付けてはソッコーでレジに持ってったものです。

Arhoolie原盤、当時Pヴァインが出していた「テキサス・ブルース」を見付けたのはそんな時。

これが戦後テキサスのダウンホーム・ブルース(派手なバンド形式じゃない、弾き語り系中心のやつ)の有名どころから無名どころまでを集めた、ヒジョーに秀逸な一枚だったんです。

その中で1曲目から3曲目までに収録されていたのが、リル・サン・ジャクソン。

テキサスの、このテのダウンホーマーといえば、ライトニン・ホプキンスぐらいしか知らなかったアタシです。

ドロドロデロデロ、ブルースのどうしようもない”コア”の部分が煮立っているようなブルースを、きっとライトニンみたいにこのリル・サン・ジャクソンなる人もするんだろーか、とか思っていましたが、これがすっごい淡々とした、ブルースの荒涼とした大平原が広がっているような枯れた味わいで、衝撃を受け、以来リル・サン・ジャクソンは「ライトニンの次に好きになったテキサス・ダウンホーマー」になりました。

で、アタシの場合は「好きになったらとことん」ですから、このリル・サン・ジャクソンなるオッサンが、どういう人だったのか、調べたくなったんですよ。

そしたら面白いですよコノ人。ソングスターである父親と、教会でギターを弾いていた母親との間に1919年に生まれ、テキサス州内の農場を転々としていましたが、16歳の時に家を出て大都会ダラスへ。

ここまではブルースマンの前半生でよく聴く話なんですが、で、16歳のジャクソン少年がダラスで何をやってたかと言うと、これがブルースマンじゃなくて車の整備工(!)。

や、もちろん仲間らとバンドを組んで、最初は教会で演奏をするグループをやっていたんですが、段々と酒場でブルースを唄う夜の仕事が多くなってきたようで、ダラス近辺ではなかなかの評判だったようですが、彼はそこから全てを投げ打っての一攫千金ミュージシャンへの道へは行かず、やっぱり昼間は整備工をしながら、夜だけ唄っておったと。

やがて第二次世界大戦が始まると、徴兵されて兵役に就きます。もちろん腕利きの整備兵としてです。

そして復員後もやっぱりダラスへ帰ってきて、真面目に黙々と車の修理をしておりました。

えっと、1919年生まれですから、この頃は既にリル・サン・ジャクソン30代の半ばです。

整備の腕は評判で、正業でそこそこ稼げるようになっておるのと、まぁ家族も養っておったんでしょう。近所の人達は「メルヴィン(リル・サン・ジャクソンの本名)がブルース唄う」なんて、知りもしなかったと思います。

ところがその頃、友人の薦めで彼は一本のデモテープを、当時テキサスでは一番かそんぐらい有名なライトニン・ホプキンスが所属しているゴールドスター・レーベルに送り、何と1948年にはシングル盤を吹き込んでのレコード・デビュー。

単純に”体がちっちゃいから”という理由で”リル・サン”の芸名を貰っておりますが、まぁ、こんなテキトーな芸名貰ってもあんま嬉しくない。大体俺はカタギの車屋だ、ダチの野郎の口車に乗っちまったが、レコーディングが終わったらさっさとブルースなんてヤクザな世界から身を引いて静かに暮らすべ。とは思ってはおりましたが、何とリル・サンのレコードはそこそこのヒットとなってしまって、他のレコード会社からも次々声が掛かるようになってくるのでした。

そんなこんなで「あんまりやりたくないんだがブルースマン人生」を、40年代末から50年代半ば頃まで過ごしたリル・サンでしたが、元々ヤル気がないのに加え、ツアー中に交通事故に遭ったりしたことを契機に足を洗います。

元の”メルヴィン・ジョンソン”に戻り、ダラスの「街の修理工場のおっちゃん」として、黙々働いていたリル・サン。どうやら世の中もブルース人気は落ち着いて、ロックンロールとかいう新しい音楽が流行ってるようだし、やれやれ、これで静かに暮らせる。と思ったであろうリル・サンですが、話はここで終わりません。

ロックンロールの熱狂も一夜の夢となった1960年、今度は若い白人のリスナーがブルースを求めるようになりました。

彼らの情熱は凄まじく、まるでCIAばりの情報収集能力で、全国各地の”伝説”となって今は一線を退いているブルースマン達を発見し、色々と上手いこと言ってライヴやレコーディングの最前線に送り込んでおりました。

そんな中「ライトニン・ホプキンスのレコードを出すために」レコード会社アーフーリーを立ち上げた青年、クリス・ストラックウィッツにリル・サンは発見され(古い電話帳に載っていた本名から足が付いたそうですがおそろしい・・・)、「レコーディングしてはくれんですか」と熱心な説得を受けます。

「あの〜・・・すいません」

「おぅ、いらっしゃい。修理かい?メンテかい?」

「あの・・・ミスター・ジャクソン。あなたはリル・サン・ジャクソンさんですよね」

「・・・何だ、そんなヤツぁ知らねぇ。車の用じゃなきゃ帰ってくれ。ウチは整備屋だ」

「ちょっとだけ話いいですか?」

「よくねぇ、帰れ。オゥ、誰か塩まいてやれ!」

と、クリス・ストラックウィッツは何度も追い払われた、なんて話を聞いてますが(塩は流石にまかんでしょうが)無視されても怒鳴られてもめげずにリル・サンの工場に通いつづけ、カネ儲けしたいとかでなしに、とにかくブルースが好きで録音したいという話や、リル・サンのかつてのヒット曲を、曲名も出して丁寧に感動したことを伝え、結局はその情熱に押し切られる形で、リル・サンはレコーディングを一応承諾。

はい、その「発見後」初のLPであり、リル・サンにとっては生涯最初にして最後のアルバム、そして、戦後のテキサス・ダウンホーム・ブルースを語るには絶対に欠かせない名盤が、コチラ



【収録曲】
1.Blues Come To Texas
2.Cairo Blues
3.Ticket Agent
4.Louise Blues
5.Sugar Mama
6.The Girl I Love
7.Santa Fe Blues
8.Turn Your Lamp Down Low
9.Groundhog Blues
10.Gambler Blues
11.Charley Cherry (take 1)
12.Charley Cherry (take 2)
13.West Dallas Blues
14.Rollin’ Mill Went Down
15.Red River Blues
16.Roberta Blues
17.Buck Dance
18.I Walked From Dallas
19.Rock Me
20.Johnnie Mae

タイトルはシンプルに「リル・サン・ジャクソン」、ジャケットも特別に撮影された写真じゃなくて、自分とこの自動車整備工場の前で、普段の仕事着の写真を使っている、というのがまた何ともイイじゃありませんか。

事実、このアルバムに収録されているのは、基本弾き語りのシンプル極まりない編成で、独特の淡々とした語り口で繰り広げられる、ありのままのブルース。

決して張り上げない、感情の高ぶりに流されない声も、モノトニック・ベース奏法といって、親指で「ボン・ボン」と、コード・チェンジに関係なく同じルート音を使うギターも、派手さは一切ないんだけど、どういう訳か一度聴いたら耳の底にじわーっと残って離れない不思議な魅力があります。

コレはファンの勝手な妄想です。彼が表舞台に出るのを嫌がったのは、もちろん海千山千の自堕落な生活が嫌だったってのもあるんでしょうが、彼にとって”ブルース”っていうのは、誰に聴かせる訳でもない、純粋な自己との対話だったんじゃなかろうかと。そんなことを思わせるぐらい、ここで聴かれるリル・サンのブルースは、孤高の深みに溢れていて、静かで絶対的な説得力を持っておるのです。


リル・サンは、このレコーディングを最後に、音楽とはきっぱり決別して、1976年静かに生涯を閉じました。とかく破天荒、型破り、荒削り、常識破りなブルースマンの中にあって、その個性と唯一無二の内省的なブルースは、やはり出色のものです。音楽の歴史の片隅で、いつまでも鈍く深い輝きを放つものでありましょう。







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2016年09月23日

ソニー・スティット パーソナル・アピアランス

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Sonny Stitt Quartet/Personal Appearance
(Verve)

ジャズという音楽のカッコ良さを、その凄腕&無尽蔵の唄心炸裂のサックス・プレイで、とってもとっても分かりやすくストレートに、聴く人に伝えてくれる職人、ソニー・スティットを、前回前々回と引き続き皆様に紹介しております。

まずはビ・バップ黄金期を代表する素晴らしいメンバー達と、テナーでもって白熱の激戦を繰り広げた若きスティットのアツい演奏が楽しめる初期の名盤、続いて最大のライバルであり、色んな意味で比較して語られていたチャーリー・パーカーの楽曲に敢えてアルトで挑み、彼の影響を軽やかに克服した60年代の名盤を立て続けにご紹介しましたが、アタシがこれだけ言ってもまだスティットに興味が沸かない、「んなこと言ってもどーせ大したことないんだろう?」と思っている人に、今日は

「アルトもテナーも吹いているワン・ホーン作、しかも楽曲はスティットのオリジナル2曲を除いてほとんどがおなじみのスタンダードでどうだ!これ以上分かり易く曲の良さとスティットの演奏がズバッとくるアルバムなんてそうはないぜぇ〜♪」

という、とっておき盤について書きます。

かく言うアタシも、実は「お、今日はちょっとスティットでも聴くべか」と軽く思った時は頻繁に取り出して聴いている愛聴盤です。

ソニー・スティットっていう人のカッコ良さは、つくづく「いつでもどこでも普段着で、気軽に、しかし確実に上質な”ジャズの快楽”」を、聴く人に感じさせてくれるところなんです。

ジャズっていうと、何だか敷居が高いとか、高いオーディオで聴かないとダメなんじゃないかとか思う人はいて、それはそれで否定はしません。逆にその敷居の高さ、高級なオーディオで聴いた時の「うぉー!何じゃこりゃー!!全然違うー!!」ってのも、後々十分に楽しめる音楽ですから。

でも、スティットの「いつでもジャズ、どこでもアドリブ」な、良く言えばサッパリした屈託のなさ、悪くいえばあっけらかんとした単細胞さは、やれ敷居が高いとかやれ音楽的に高度なうんちゃら、とか、そういうつーまらないウジウジをスコーンと飛ばしてくれます。

スティットの「とりあえず吹きまくってみる」という、実に明快で”ツボ”な演奏は、そのまんまロックとかの「エレキギターでジャーンとやるの聴いたら理屈抜きで興奮する」というアレとまったく一緒です。

もうホント、笑っちゃうぐらい”聴くだけ簡単”で、物凄い質量の”ジャズってかっけー!!”を、何の理屈もなく教えてくれるのがスティット、らいっつ、なう。ハッハッハー!なんですよ。




【パーソネル】
ソニー・スティット(as,ts)
ボビー・ティモンズ(p)
エドガー・ウィリス(b)
ケニー・デニス(ds)

【収録曲】
1.Easy To Love
2.Easy Living
3.Autumn In New York
4.You'd Be So Nice To Come Home To
5.For Some Friends
6.I Never Knew
7.Between The Devil And The Deep Blue Sea
8.East Of The Sun (And West Of The Moon)
9.Original?
10.Avalon
11.Blues Greasy


はい、アルバム「パーソナル・アピュアランス」は、そんなスティットの”かっけー!”が、それこそ目一杯詰まったアルバムです。

録音は1957年、丁度ジャズの世界ではビ・バップから進化して、より黒っぽいファンキーなノリを重視したハード・バップという新しいスタイルが、例えばマイルス・デイヴィスとかアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズなんかが演奏してて、世界的にジャズが盛り上がっていた時代です。

この頃多くの若いジャズマン達は「如何にして人と違うことをやるか」ということに頭を悩ましておったんですが、この頃既に中堅からベテランぐらいのところにおったスティットは

「何やるかだって?んなもん考える前に吹け、全力で吹け」

とばかりに、お得意のビ・バップ高速フレーズを、流行だのスタイルだの全然カンケーなく、湯水のように吹きまくっております。

とにかくスティットは、アルトだろうがテナーだろうが、楽器を操る抜群のテクニック、特に低音から高音まで、どの音も同じ強さとボリュームで完璧にコントロールする技を既に極めておりましたから、そのテクニックを一番カッコ良く披露するには、ややもっさりしたハード・バップよりも「スカカカカカカ!!」と軽めに疾走して行くビ・バップのスタイルが一番手っ取り早かったのでしょう。

とはいえ、彼の尋常ならざるテクニックは、やっぱり楽曲をアドリブで料理して、そのフレーズから、聴き手に”うた”を感じさせるためにあるものです。

アルトでもテナーでも、次々と美しく、スリルと力強さで料理されてゆくスタンダードの、極上の味わいはどうでしょう。

このアルバムは、基本的にリラックスしたミディアム・テンポのナンバーが多いのですが、それはそれ、ミディアムだろうがレアだろうがウェルダンだろうがアドリブではキッチリ全力疾走してくれるスティットプレイには、やはり”本気”がみなぎっております。

はい、内容については余り細かいこたぁグダグダ言いません。スティットどうのサックスどうのというよりも、聴いて2秒以内に「これがジャズのカッコ良さーーー!!」と、ここに収録されている気合いの演奏からビシバシくると思いますんで、まずは感じてください。考えるのはその後でよろしい。スティットかっこいいんだぜぇ♪






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2016年09月21日

ソニー・スティット スティット・プレイズ・バード

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ソニー・スティット/スティット・プレイズ・バード
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)

ジャズ史にその名を残す、アルトとテナー・サックスの職人プレイヤー、偉大なる”現場第一主義”のアドリブファイター、ソニー・スティットを、ここ数日聴きまくっております。

さて、昨日は「ソニー・スティット聴くならまずコレだよ」と、1949年〜50年にビ・バップの錚々たるメンツと共にレコーディングした「スティット、パウエル&J.J.」をご紹介しましたが、やっぱりスティットのアルトが聴きたい!もっと長時間スティットのアドリブに酔い知れない!という方に、スティットがアルトのワン・ホーンでかっとばした名作をご紹介致しましょう。





【パーソネル】
ソニー・スティット(as)
ジム・ホール(g)
ジョン・ルイス(p)
チャールス・デイヴィス(b)
コニー・ケイ(ds)

【収録曲】
1.オーニソロジー
2.スクラップル・フロム・ジ・アップル
3.マイ・リトル・スエード・シューズ
4.パーカーズ・ムード
5.オウ・プリヴァーヴ
6.コ・コ
7.コンファーメイション
8.フーティ・ブルース
9.コンステレーション
10.ナウズ・ザ・タイム
11.ヤードバード組曲

はい、スティットが円熟の40代に突入する前の1963年に、レコーディングされた「スティット・プレイズ・バード」。

『コルトレーン・ジャズ(夜は千の眼を持つ)』とよく似たジャケットですが違います。

おっ?このタイトルはもしや・・・? と思ったそこのアナタ、はい正解です。

このアルバムこそが、スティットがかつて散々「似てる」と言われてたチャーリー・パーカー(”バード”はパーカーの愛称です)の楽曲をあえてアルバム単位で演奏し、堂々たる吹っ切れのアルトによるアドリブで「おぉ、すげぇや!やっぱスティットはスティットだぜ!」と世のジャズファンに言わしめたアルバムなんですね。

この時代というのは、既にパーカーが没して8年経っていた頃で、ジャズもビ・バップやハード・バップから、マイルスやコルトレーンらが新しく提唱したモード・ジャズや、より自由度の高いフリー・ジャズの時代に入っておりました。

サックスの分野においても、プレイヤーはチャーリー・パーカーの影響を受けて当たり前、その上でいかに自分なりの新しいスタイルを構築していけるかがとても重要なテーマになっていた時代です。

つまりはパーカー直系のビ・バップ・フレーズだけをやっても、聴衆にはヘタすれば「あ、はい」で終わってた厳しいといえば非常に厳しい時代です。

そんな時代にあえてストレート・アヘッドなモダン・ジャズ、しかもこの時点で既に色んな人に演奏し尽くされていたであろうチャーリー・パーカーの楽曲を、リアルタイムに「似てる」と言われてた当の本人が「おぅ、やってやるぜぇ」と、アルトかついでスタジオに入るって、何かすごく男気を感じませんか?アタシは素直にカッコイイと思います。

さて、肝心の演奏内容ですが、これが本当に素晴らしいのは言わずもがな。

「確かにストレートな、ひと昔前のビ・バップ全盛の勢いを感じさせるアルバムだけど、決して予定調和でも古臭くもない、鮮烈な仕上がり」

で聴く人を酔わせてくれます。

ここで何のけれん味もなく、好きなように全速でアルトをかっ飛ばすスティットのプレイは

「どうだ!俺はバードと違うだろう」

というよりは

「似てるって言いたいヤツぁ言えばいいさ、俺ァやりたいよーにやるだけだぜ」

と、実に男らしい爽やかさを感じさせます。

あのね、結論から言えばこのアルバム聴く限り、スティットとパーカー、”ビ・バップが根っこにある”というところ以外は全然似ていない。

たとえばこのアルバムに入ってる「コンファメーション」、これ、4分38秒を途中間奏ナシで一気に吹き切る、このアルバムの最高にゴキゲンなナンバーなんですが、パーカーのオリジナルは



アドリブに入ってから、いきなりトップギアが入ってます。つまりぶっ飛んでるんですね。何度聴いてもアドリブだけが何か別の楽曲のようにも思えます。「パーカーはアドリブが凄い!」てのは、この辺のテーマからいきなり遠方に「スコーン」と飛んでいくかのような独特のアプローチにあるんだろうなと思います。

一方でこのアルバムに入ってるスティットの「コンファメーション」



「ぱぱっつぱぱらららぱぱららぱぱ♪」という印象的なテーマ・メロディを、あくまで軸に置いて、そのメロディを徐々に分解しながら丁寧にギア・チェンジを繰り返してテンポ・アップ/ダウンを巧みに繰り返しながら飛距離を伸ばしている、実に”つじつま”の合ったアドリブ解釈です。

アタシはもちろんパーカーも大好きですし、ここで「どっちが優れているか」とかいうつまらない議論をするつもりはありません。パーカーにはアドリブに突入した瞬間、聴き手を狂わせる魔力があるし、スティットには「曲とアドリブ」の、その大胆で綿密な繋がりを聴き手に認識させながらグイグイと加速していく楽しさがあります。

だもんで、もし、ジャズが好き、もしくは興味があるという人は、パーカーもスティットも楽しみながらじっくりと愛聴して欲しいです。もちろん両者の違いなんて細かい事は気にしないでもジャズは楽しめますが、この”違い”が分かったら、ジャズのサックスを聴く時もっと豊かな楽しみ方が出来ると思いますよ♪

さて、スティットのアドリブは全編で冴え渡り、ジャズ激動の60年代にそのオリジナリティに溢れるストレートなプレイで「やっぱスティットはすげぇよ」と多くの人に思わせたと同時に、チャーリー・パーカーという優れたアーティストの楽曲の素晴らしさを、このアルバムはジャズの歴史にしっかりと刻み付けました。

スティットのプレイはもちろん素晴らしいんですが、アタシはジム・ホール、ジョン・ルイス、チャールス・デイヴィス、コニー・ケイという、フロントを煽るタイプでは決してないけれども、常に一歩引いた丁寧なプレイで主役を引き立て、作品全体の空気を上質で何か高級なものにしてくれるバックの好演もすごくプラスに作用していると思います。

特にジム・ホールのスイートな音色と”タメ”の効いたフレーズ運びは「パリパリパリ!」と飛ばすスティットと、気色は全く違いますが、「パリパリパリ!」の後にこの「てろ〜ん♪」と大人なギターが響くから良いのだ。






”ソニー・スティット”関連記事



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2016年09月20日

スティット、パウエル&J.J.


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スティット、パウエル&J.J.
(Prestige/ユニバーサル)

「大人になってからその良さがしみじみと分かったもの」

というそのがあります。

アタシにとってそれは、納豆とおからとソニー・スティットです。

や、ソニー・スティットが納豆とおからのようにヘルシーで素朴な味わいでは全くなくて、むしろ生粋のジャズ屋として、どんな現場でもアドリブ根性全開で「パリパリパリ!」と吹きまくるスティットは、小粒だけれどピリリと辛い、上質な一味とうがらしの如く、なんでありますけれども。

まぁいいか、とにかくソニー・スティット、さっきも言ったように生粋のモダン・ジャズのプレイヤーであるだけに、生涯スタイルを変えず、軽やかなフットワークであちこちのレーベルに大量の録音を残し、特に戦後のモダン・ジャズ、アルト・サックスの分野においては、チャーリー・パーカーの強力なライバルであり、共に切磋琢磨して時代を創り上げてきたジャイアントなのですが、どうにもこうにも「2番手」とか「パーカーのエピゴーネン」とかいう印象がぬぐえずに、過小評価されてきた感があります。

若い頃のアタシも、スティットはそういう目で見ておりました。

ヒジョーにもったいないことをしたと思います。

パーカーとスティットは”ビ・パップ・アルト”という意味においてはとてもよく似たスタイルを持っています。

特にアドリブに入ってからの加速、激しく上下して、華麗に急カーブを曲がったり、軽やかなシフトダウンで高速アドリブの中で”フッ”と小粋なブルース・フィーリングに溢れた旋律を放つところなんか、確かに「どっちがどっち」とはいえないぐらいの、同じベクトルのスリルを感じさせます。

しかし、音色を比べてみたら、これがもう全然違うんですよね。

パーカーは、他のアルト奏者と比べて、ややダークな音で、中音域が異様に太いんです。

この「ダークで太い音」で、信じられないような軽やかなぶっ飛び方をするから、そのギャップみたいなものに、みんな驚愕するわけです。

それに比べてスティットの音は、芯の太さはありますが、全体的に細くて硬い。

だからアタシは「パーカーと比べたらスティットって軽いんじゃね?」と思ってたんですが、ちょっとお待ちなさい(!!)

これはですのぅ、パーカーだけがハッキリ言って異質なんですよ。

大体元々テナーに比べてサウンドの線が細く、音色もブライトなアルト・サックスという楽器は、パーカーみたいにズ太い音で「ズガガガガ!!」とやるようには、ていうかそれができるようには、構造上できとらんのですわ。

だからジャズのアルト・サックスでいえば、スティットの音が「標準」なんです。

例えばアート・ペッパーなんかは、初期はスティットよりも更に繊細で軽やかなトーンですが、スティットほどパーカーと比較対象されておりません。だからペッパーの評価は相変わらず高くて、スティットは不当に低いまま、というのはおじさんはあんまり好きじゃないなぁ。

と、アタシの中のおじさんがある日唐突に言ってきたので、唐突に

「んだばスティット聴くべ」

となって、棚の奥からスティットあれこれを引っ張り出して聴いてみたんです。

その頃は、アタシもアート・ペッパーとかルー・ドナルドソンとかジャッキー・マクリーンとかジョージ・ブレイス(渋!)とか、ともかくまぁパーカーとコニッツとドルフィー以外のアルト吹きのアルバムを何枚か聴いて、それぞれの違いとか個性も何となく分かるようになってきたんです。

そしたらスティットの「パリパリパリパリ!!」のアドリブのカッコ良さ、NSR250(パーカー)に全然負けてないRGVΓ(スティット)の加速のヤバさみたいなもんに、こらもうすっ飛びまして、すっかりスティットも”フェイバリット・サックス・プレイヤー”に入りしました。

このブログをお読みの読者の皆さんは、ジャズ初心者の方も多いと思います。

だもんでまず、アタシは「スティットいいですよ、先入観ナシでどんどんお聴きなさい」と言いたいんです。

じゃあ、スティットのオススメ盤をゆるゆると紹介していきましょう。

あのね、皆さんね、アタシはさっきから「スティットのアルトかっこいいべ!」という話を散々してるんですけど、今日ご紹介するのは、実は”テナーを吹いてるスティット”なんですよ。

えぇ、ごめんなさい。

でも、あれこれ聴いて「スティットの”攻め”のカッコ良さ」と「モリモリ加速するアドリブのキレの良さ」、何より「モダン・ジャズ黎明期の、最高のメンバーの快演と共に楽しめる、ジャズとしてゴキゲン極まりない名盤」という意味で、まずは初心者の方へのオススメといたします。




【パーソネル】
(@〜H)
ソニー・スティット(ts)
バド・パウエル(p)
カーリー・ラッセル(b)
マックス・ローチ(ds)
(I〜P)
ソニー・スティット
J.J.ジョンソン
ジョン・ルイス
ネルソン・ボイド
マックス・ローチ
【収録曲】
1.神の子は皆踊る
2.ソニー・サイド
3.バッズ・ブルース
4.サンセット
5.ファイン・アンド・ダンディ(テイク1)
6.ファイン・アンド・ダンディ(テイク2)
7.ストライク・アップ・ザ・バンド
8.アイ・ウォント・トゥ・ビー・ハッピー
9.恋のチャンス
10.アフターヌーン・イン・パリ(テイク2)
11.エローラ(テイク2)
12.ティーポット(テイク2)
13.ブルー・モード(テイク1)
14.ブルー・モード(テイク2)
15.アフターヌーン・イン・パリ(テイク1)*
16.エローラ(テイク1)*
17.ティーポット(テイク1)*

つうか「アルト吹きなのにテナー吹いてるヤツもオススメに出来る」というのはですね、スティットは本当に器用な人で、テナー持というが、アルトと全然変わらないテンションで、ほとんど変わらない体感速度を感じさせてくれるんですよ。

伝記とかには「パーカーと似てるといわれるのが嫌で、パーカー存命中はテナーを吹いていた」と書かれてたりするんですが、スティットの初期のテナーは、やっぱりテナー奏者の吹くようなずっしりどっしりしたそれじゃなくて、中〜高音域でブリバリやるアルト・サックスそのものなアプローチなので、そしてそれはまだ当時誰もやっていないことだったので、もしかしたら「俺、テナーで行けるべ」と、ある程度本気で思っていたのかも知れません。や、あくまで憶測ですが、このアルバムの明らかに”速い”テナー聴いてると、何かそんな気分になってきます。

さてさて、この「スティット、パウエル&J.J.」というのは、タイトル通り、ソニー・スティットとバド・パウエル、そして最強のトロンボーン奏者、J.J.ジョンソンとのセッション作です。

とは言っても、前半がスティットとバド、後半はスティットとJ.J.と、セッション自体はキッチリ分かれてまして、だもんで前半はスティットのワン・ホーン・テナーが、後半はスティットのテナーとJ.J.の流麗なトロンボーンとの絡みが楽しめるアルバムとユルく思ってください。

圧巻なのはやはりスティットとパウエルのセッション@〜Hです。

あと、余り書かれていませんが、ベースにカーリー・ラッセル、ドラムにマックス・ローチとくれば、この時代最強の”ビ・バップのオリジネーター達”が奇跡的に集ったセッションなんです。

このセッションでは、まずスティットの快調に触発されたバド・パウエルのピアノが俄然猛然素晴らしい。

「ホーンが入ると途端に明快で力強いタッチになって、神懸りなアドリブを繰り出す」というのがこの時代(1940年代末〜50年代前半)のパウエルなんですが、Dではスティットのソロの途中でガンガン出てきてアドリブを食ってすらおります。

「ジャズはアドリブとアドリブのぶつかり合いが織り成す喧嘩の芸術」とはよく言いますが、このスティットとパウエルの、達人同士のよい意味での緊張感みなぎるやりとりは、これぞジャズの醍醐味だと思います、はい。

後半のJ.J.とのセッションは、幾分リラックスして、和気藹々とした感じです。

J.J.ジョンソンという人は、とにかくコントロールが難しく「ボヘボヘ」になりがちな(それが味なんですが)トロンボーンという楽器を巧みに操って、全く淀みない名人芸のソロを聴かせる人であります。

スティットもJ.J.も、互いに”挑んでやる!”という気迫にみなぎっておりますが、互いの楽器の特性と本質的なキャラクターの違いから、どちらかというとバドとのような対決ではなく「丁々発止のやりとり」に仕上がっておりますが、怒涛の前半戦を聴いた後は、こんぐらいリラックスした方がいい。でも、スティットのソロのキレは凄まじいです。KPの出だしのフレーズなんかもう「キター!!」て感じです。

演奏はいずれも当時のレコードの規格に合わせて、長くても3分ちょいなんですが、その3分の中にキチンと起承転結とストーリーがあるアドリブをぶっこんで、それが破綻しないというのは、この時代のジャズマンにゃ当たり前なんでしょうが、それもまた凄いですよね。







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2016年09月19日

オーティス・レディング ドッグ・オブ・ザ・ベイ


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オーティス・レディング/ドッグ・オブ・ザ・ベイ
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)

アタシはカタギの仕事をしながら、こうやってブログを書いたり、近所の常連さんからCDの注文を貰ってそれを配達したり、遠方の常連さんから受けた注文を発送したり、また、このブログを通してアマゾンでお買い物をしてくれた人がいればアマゾンから紹介手数料というものが振り込まれます(アフィリエイトというやつですね)。

そんなこんなで、お店を持たずにCD屋をやっておるんですが、これは結構大変ですが、大変でも「これは止めたらいかん!」と思いながら、地味にやっております。

「止めたらいかん!」の理由は色々ありますが、やっぱり音楽を通じて、CDやレコードを通じて人様と接していると、何というか大袈裟かも知れないですけれど「あぁ、人の心って美しいなぁ」と激しく感動することがいっぱいあるからなんですよ。

これはついこの間の話です。

先輩の某お店に行ったら、CDの注文をもらいました。

その中にあったのがオーティス・レディングの「ドッグ・オブ・ベイ」。

「おぉ、オーティスいいですね〜♪」

と、話題に花が咲きました。

ここからの先輩の話がいい。

「”ドッグ・オブ・ベイ”はね〜、俺が東京に居た頃の思い出の曲なんだよ。一緒にツルんでた先輩が、ジュークボックスあるところ行くと必ずオーティスの”ドッグ・オブ・ベイ”かけてたんだよな〜。何かそういうの、急に懐かしくなってねぇ。。。」

これですよ、もうホントこれですよね。

作った人や唄う人、演奏する人が魂を込めた音楽って、人の耳に届いて心に残るんです。

そして、心の中に残ったものは、その人の心の中で、かけがえのない”人生の物語”と溶け合って、いつまでも美しく存在する。

そして人様の会話の中で

「人生のこんな場面にあんな音楽があった」

というのを聞くと、こっちまで何というか幸せな気持ちになります。

こんな拙いブログではありますが、アタシは紹介する音盤が、読んでくれている人の「思い出に残るもの」になったら嬉しい。そんな気持ちで祈るように毎回書いております。

さて、オーティス・レディング「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」です。



【収録曲】
1.ドック・オブ・ザ・ベイ
2.最愛のおまえ
3.レット・ミー・カム・オン・ホーム
4.オープン・ザ・ドア
5.ドント・メス・ウィズ・キューピッド
6.グローリー・オブ・ラヴ
7.アイム・カミング・ホーム
8.トランプ
9.ハックル・バック
10.誰も知らない
11.オール・マン・トラブル


1960年代のソウル・ミュージックを代表するシンガーの一人として、人気の絶頂にあったオーティス・レディング。

彼はしかしその絶頂のただ中の1967年、飛行機事故によって、僅か26年の生涯を儚く終えてしまいました。

本作はそのオーティスの死を受けて、アルバム未収録だった過去の楽曲などを急遽集めてリリースされた追悼アルバムです。

オーティスといえば「ガッタガッタ!」という独特の掛け声と共に、ハイ・テンションで聴き手を圧倒するパワフルなヴォーカルが真骨頂でありましたが、60年代の半ばからは、グッと感情を抑制して、盛り上がりの時に一気にそれを炸裂させる、より深い歌唱に転換しようと試みておりました。

アルバムでいえばこの作品の前に録音された4枚目「ザ・ソウル・アルバム」のオープニングを飾る名バラード「Just One More Day」で、熟成した”新しい感じ”の歌声を披露したオーティスですが、もしかしたらこの時に「次回はミディアム〜スローのバラードを中心とした作品を作ろう」と思っていたのかも知れません。

飛行機事故の3日前にレコーディングされた「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」は、正にそんなオーティスの新境地。深く、一語一語の歌詞を噛み締めて唄うそのバラード表現は、聴いているこちらも思わず引き込まれてしまいますが、オーティス本人もいたく気に入り

「これは最高の楽曲だ、そうだね、今度のアルバムには絶対にコイツを入れてもらいたいよ」

と、言い残し、スタジオを後にして、そのまま帰らぬ人となりました。

この曲はオーティスの死後、シングルとしてリリースされて大ヒットした訳なのですが、アルバム全体を聴いてみても、前半の巧みな”バラードたたみ掛け”で、もう胸の内からアツいものがこみ上げてきます。

オーティスをあれこれ聴いて、アルバムも全て味わい尽くした人にとっては、確かに既存曲寄せ集めの編集は、不満があるかも知れませんが、それでもオーティスが魂込めて放った唄の素晴らしさが劣るものでは決してありません。

音楽って、本当に素晴らしいもんですよ♪

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2016年09月18日

エディ・マーフィーのものまね



エディ・マーフィーの「俺達のジェイムス・ブラウンのものまね」これ最高ですわ。


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2016年09月17日

ブリッツ Voice of A Generation

4.jpg
Blitz/Voice of A Generation

(Anagram/cherry Red)

昨日のSham69に引き続き、今日も性懲りもなく”オイパンク”について書こうと思います。

Oiという硬派で男らしいパンクロックがあると知ったのは、丸刈り小僧の中学生の頃でしたが、アタシは実はそれからあんまOiについて詳しくなってなかったんです。

というのもやはりOiの情報というのは、あの頃ほとんど流れてこなかったし(今みたいにインターネットで色々検索できる訳でもなし、情報源は雑誌や本しかなかったんですね)、頼みの綱の雑誌にしても、80年代後半から90年代はじめ頃は、パンクよりもメタル、ハードロックと、その頃じわじわと台頭してきたヴィジュアル系の記事が多くなっていて、バンドブームの残り香的な感じだったパンク系記事は、紙面から徐々に姿を消していた。そんな時代だったんです。

考えてみれば音楽雑誌の購買層なんていうのは、バンドや楽器やってる男子なんかよりも、これは圧倒的に特定のバンドやミュージシャンのファンである女子が強い訳で、もうちょっとよく考えてみれば、丸刈りで男臭く、ファッションアピール的な部分のほとんどないOiなんて、女性層に需要なんぞがある訳がありません。まるでこのブログみたいだ。

ともあれ少年時代のアタシは、数少ない情報を、これまた数少ない脳味噌でまとめ、以下のような結論に達した訳です。

「Oiっちゅうのは硬派で男らしい、カワサキの単車みたいなパンクど」

と。

3.jpg
(Oi PUNKの勝手なイメージは、KawasakiのKM90です)

うん、この満載で雑な「分かる奴だけ分かればいい感」・・・。


お、おぅ・・・。雑に分かってくれる人達のために、ヘコまず書き進めます。

そんなこんなで、18歳になったアタシは上京しました。

最初に住んだのは、埼玉の川越市で、まー電車の乗り方もよく分からなかったので、しばらくは歩いてウロウロできる上福岡駅周辺をウロウロしてたんですが、田舎から出てきた少年としては、早く電車の乗り方を覚えて、大都会東京へ遊びに行きたい訳です。

同じように上京して、都内に住んでいるので、何かもう渋谷とか下北沢とかをウロウロしている友人に電話して川越の家まで来てもらって、翌日渋谷行こうやという話をしておりました。

で、彼の助けで、アタシは生まれて初めての大都会「渋谷」へ行くことが出来た訳なんですが、渋谷というのは、大きなデパートがあちこちにありますよね。その中で一際目に付いたのが、マルイのロゴ。

あのロゴって『OiOi』でしょう。

なもんでアタシ

「オゥ!あの店気合い入ってとるがな“OiOi(オイオイ)”ち2回も叫んどる。何屋か知らんが大したもんじゃ!!」

と、大声で言って、ツレに

「おま・・・!バカ!ちょっと来い!!」

と、裏に連れて行かれて「アレはマルイっちゅうオシャレなデパートだから恥ずかしいこと言うな」と説教されました。

その後”マルイ”に入ってシャネルのロゴを見て


「オォ、”チャネル”ち何?」

と言ってまた

「おま・・・!バカ!ちょっと来い!!」

と、また裏に連れていかれて(以下略)

まーそんなことがありましたなー。

しかしその衝撃的な渋谷体験、なかんづくマルイのお陰で、アタシは「そうだ、東京だったらオイパンクのCDも探せばあるだろうし、あんまよく分からんかったOiについても、たくさん知ることが出来るだろう」と思って、ちょっとCD屋とかに行くときは”Oi”を意識して探してみようと思っておりました。

しかし、いかに大都会東京といえども、無知なアタシがジャケットだけ見て分かるようなOiのCDには、なかなかめぐり合えなかったんですね。

ようやくOiと出会ったのが、上京1年後、池袋の中古屋で何気にCDを物色している時

「THE BEST OF Oi!」

というCDと出会いました。

無題.png

これが、アタシにとってかけがえのない”Oi”の教科書です(今も)。

クレジットには大好きなシャム69の名前もあったんで「まぁ、他のバンドはよく知らんが、まぁ知らんからOiなんだろう」ということを納得して聴き狂っておったわけです。

その中で、特にカッコ良かったのが、The Businessと、本日紹介するBlitzです。



【収録曲】
1.We Are the Boys
2.Time Bomb
3.Voice of a Generation
4.Bleed
5.I Don't Need You
6.T.O.?
7.Propaganda
8.Criminal Damage
9.Vicious
10.Warriors
11.Nation of Fire
12.Your Revolution
13.Scream
14.4.Q.
15.Escape
16.Moscow
17.Closedown
18.Nation on Fire [Carry on Oi! LP Version]

はい、このアルバムは1982年リリースの、今やオイパンク至高の名盤と呼ばれている彼らのファースト・アルバム。

ブリッツは、ザ・ビジネスと共に、1980年代初期の「オリジナル・オイパンク」つまり、Sham69やMenace,Cock Sparrerといった先駆者達がその文化の下地を作り上げた後に登場した「初めからOiパンクだった世代」のバンドです。

「初めからOiパンクだった」というのは、この頃になると歌詞の中に、掛け声としての「オイ!」または「オイオイオイ!!」という言葉が普通に使われるようになったからです。

で、ここでほとんどの人が「その”オイ”って言葉何?」と思ってると思いますが、この言葉は、ロンドンの古い下町の言葉なんです。

そのものズバリの呼びかけの挨拶、日本でいえば「やあ」とか「よぉ」という意味で、言葉自体には深い意味はございません。

が、Oiという音楽が、労働者階級の若者の団結を強く訴えていたものであるという意味において、この掛け声は、どんな演説よりも説得力を持つスローガンとなったのです。

実際にこのアルバムを聴いていても、潰れたギター、ペキペキのベース、バシャバシャやかましいドラムの音が一斉に蜂起したような、ノリと勢いと、やさぐれな雰囲気と気合いだけの潔い演奏に加えて、録音のラフさがとてつもないライヴ感を出しております。




もうね、ここらへんは理屈じゃあないんです。ぜひとも拳を握り締めながら飛び跳ねたり頭ブンブン振りながら、ついでに拳も振り回しながら、サビを一緒に合唱するぐらいの気合いで聴いてみてください。

にしても80年代初期のオイパンク、音質がとにかくラフでたまりません。あのピストルズやクラッシュでさえ、とても洗練されたオシャレな音楽に聴こえてしまうぐらいです。








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