2016年09月17日

ブリッツ Voice of A Generation

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Blitz/Voice of A Generation

(Anagram/cherry Red)

昨日のSham69に引き続き、今日も性懲りもなく”オイパンク”について書こうと思います。

Oiという硬派で男らしいパンクロックがあると知ったのは、丸刈り小僧の中学生の頃でしたが、アタシは実はそれからあんまOiについて詳しくなってなかったんです。

というのもやはりOiの情報というのは、あの頃ほとんど流れてこなかったし(今みたいにインターネットで色々検索できる訳でもなし、情報源は雑誌や本しかなかったんですね)、頼みの綱の雑誌にしても、80年代後半から90年代はじめ頃は、パンクよりもメタル、ハードロックと、その頃じわじわと台頭してきたヴィジュアル系の記事が多くなっていて、バンドブームの残り香的な感じだったパンク系記事は、紙面から徐々に姿を消していた。そんな時代だったんです。

考えてみれば音楽雑誌の購買層なんていうのは、バンドや楽器やってる男子なんかよりも、これは圧倒的に特定のバンドやミュージシャンのファンである女子が強い訳で、もうちょっとよく考えてみれば、丸刈りで男臭く、ファッションアピール的な部分のほとんどないOiなんて、女性層に需要なんぞがある訳がありません。まるでこのブログみたいだ。

ともあれ少年時代のアタシは、数少ない情報を、これまた数少ない脳味噌でまとめ、以下のような結論に達した訳です。

「Oiっちゅうのは硬派で男らしい、カワサキの単車みたいなパンクど」

と。

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(Oi PUNKの勝手なイメージは、KawasakiのKM90です)

うん、この満載で雑な「分かる奴だけ分かればいい感」・・・。


お、おぅ・・・。雑に分かってくれる人達のために、ヘコまず書き進めます。

そんなこんなで、18歳になったアタシは上京しました。

最初に住んだのは、埼玉の川越市で、まー電車の乗り方もよく分からなかったので、しばらくは歩いてウロウロできる上福岡駅周辺をウロウロしてたんですが、田舎から出てきた少年としては、早く電車の乗り方を覚えて、大都会東京へ遊びに行きたい訳です。

同じように上京して、都内に住んでいるので、何かもう渋谷とか下北沢とかをウロウロしている友人に電話して川越の家まで来てもらって、翌日渋谷行こうやという話をしておりました。

で、彼の助けで、アタシは生まれて初めての大都会「渋谷」へ行くことが出来た訳なんですが、渋谷というのは、大きなデパートがあちこちにありますよね。その中で一際目に付いたのが、マルイのロゴ。

あのロゴって『OiOi』でしょう。

なもんでアタシ

「オゥ!あの店気合い入ってとるがな“OiOi(オイオイ)”ち2回も叫んどる。何屋か知らんが大したもんじゃ!!」

と、大声で言って、ツレに

「おま・・・!バカ!ちょっと来い!!」

と、裏に連れて行かれて「アレはマルイっちゅうオシャレなデパートだから恥ずかしいこと言うな」と説教されました。

その後”マルイ”に入ってシャネルのロゴを見て


「オォ、”チャネル”ち何?」

と言ってまた

「おま・・・!バカ!ちょっと来い!!」

と、また裏に連れていかれて(以下略)

まーそんなことがありましたなー。

しかしその衝撃的な渋谷体験、なかんづくマルイのお陰で、アタシは「そうだ、東京だったらオイパンクのCDも探せばあるだろうし、あんまよく分からんかったOiについても、たくさん知ることが出来るだろう」と思って、ちょっとCD屋とかに行くときは”Oi”を意識して探してみようと思っておりました。

しかし、いかに大都会東京といえども、無知なアタシがジャケットだけ見て分かるようなOiのCDには、なかなかめぐり合えなかったんですね。

ようやくOiと出会ったのが、上京1年後、池袋の中古屋で何気にCDを物色している時

「THE BEST OF Oi!」

というCDと出会いました。

無題.png

これが、アタシにとってかけがえのない”Oi”の教科書です(今も)。

クレジットには大好きなシャム69の名前もあったんで「まぁ、他のバンドはよく知らんが、まぁ知らんからOiなんだろう」ということを納得して聴き狂っておったわけです。

その中で、特にカッコ良かったのが、The Businessと、本日紹介するBlitzです。



【収録曲】
1.We Are the Boys
2.Time Bomb
3.Voice of a Generation
4.Bleed
5.I Don't Need You
6.T.O.?
7.Propaganda
8.Criminal Damage
9.Vicious
10.Warriors
11.Nation of Fire
12.Your Revolution
13.Scream
14.4.Q.
15.Escape
16.Moscow
17.Closedown
18.Nation on Fire [Carry on Oi! LP Version]

はい、このアルバムは1982年リリースの、今やオイパンク至高の名盤と呼ばれている彼らのファースト・アルバム。

ブリッツは、ザ・ビジネスと共に、1980年代初期の「オリジナル・オイパンク」つまり、Sham69やMenace,Cock Sparrerといった先駆者達がその文化の下地を作り上げた後に登場した「初めからOiパンクだった世代」のバンドです。

「初めからOiパンクだった」というのは、この頃になると歌詞の中に、掛け声としての「オイ!」または「オイオイオイ!!」という言葉が普通に使われるようになったからです。

で、ここでほとんどの人が「その”オイ”って言葉何?」と思ってると思いますが、この言葉は、ロンドンの古い下町の言葉なんです。

そのものズバリの呼びかけの挨拶、日本でいえば「やあ」とか「よぉ」という意味で、言葉自体には深い意味はございません。

が、Oiという音楽が、労働者階級の若者の団結を強く訴えていたものであるという意味において、この掛け声は、どんな演説よりも説得力を持つスローガンとなったのです。

実際にこのアルバムを聴いていても、潰れたギター、ペキペキのベース、バシャバシャやかましいドラムの音が一斉に蜂起したような、ノリと勢いと、やさぐれな雰囲気と気合いだけの潔い演奏に加えて、録音のラフさがとてつもないライヴ感を出しております。




もうね、ここらへんは理屈じゃあないんです。ぜひとも拳を握り締めながら飛び跳ねたり頭ブンブン振りながら、ついでに拳も振り回しながら、サビを一緒に合唱するぐらいの気合いで聴いてみてください。

にしても80年代初期のオイパンク、音質がとにかくラフでたまりません。あのピストルズやクラッシュでさえ、とても洗練されたオシャレな音楽に聴こえてしまうぐらいです。








『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2016年09月16日

シャム69 Punk Silngle Collection 77-80

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Sham69/Punk Single Collection 77-80
(Captain Oi!)

信じられない話ですが、アタシが中学の頃、中学生男子は全員強制丸刈りだったんです。

とにかくコイツが嫌いで、少なくともアタシがパンクロックという音楽に深い共感を覚えたのは、この強制丸刈りをはじめとする、理不尽なルールに憤っていたから、というのはデカイです。

何というか、こっちの「何でダメなの?」という問いに「ダメだからダメなのよ」としか答えがないルールって変じゃないですか。

まーとにかく中学時代というのは、こういったおかしなルールとの戦いでした。

でも「戦う」とは言っても悲しいかな非力な少年一人では、何をやっても勝てません。そりゃあそうです。

だからアタシは「革命家になる!」という夢を内に秘めて(や、秘めてもなかったかも・・・)、音楽関係、特にパンクロックに関する情報に関しては「これは世の中との喧嘩の必勝法だ」ぐらいの気持ちで収集しておりました。

「オイパンク」なる言葉を知ったのは、そんな時です。

当時ちょっとブレイクしたバンドで「COBRA」という日本のバンドがいまして、この人達が「オイパンクってこうだよ」と雑誌で語ってたんです。

簡単に言えば

・Oiは硬派

・Oiは男らしい

・髪型も男らしく坊主


ん・・・他にも結構大事なことをたくさん喋ってたと思うのですが、当時のアタシの脳味噌で理解出来た言葉が以上3点・・・(汗)

まーでもしかし、強制丸刈りで悶々としておったアタマの悪い中学生には、特に「オイパンクって坊主なんだぜ」というのは、これはもう天啓のように思えました。

んで「軟派よりも硬派がいい」と常日頃(今も)思っておりますアタシとしては、これはもう意味とかは分からんがオイパンクだろうと。そうなった訳です。

”Oi”というのは、これはパンクより早い時期にイギリスの若者達の地下文化です。

音楽的には、クラッシュやピストルズらが作り上げた「パンクロック」という音楽を、詩性を極力廃した現実的な歌詞、観客も全員で合唱できるような、覚えやすく、扇動的な楽曲、そして要所要所で叫ばれる「オイ!」という掛け声を持つもの。これが「オイ」と呼ばれております。

このジャンルが好きだったのが「スキンヘッド」と呼ばれるイギリスの不良達です。

今はヨーロッパでは「スキンヘッド」といえばネオナチや極右団体のように思われがちですが、当初は純粋に労働者階級の子供達が、社会への不満をスキンヘッドや軍払い下げのジャケット、そしてロックンロールやスカなどを大音量で聴き狂い、またはフーリガンとしてサッカー場で乱闘することで表現していたと言えます。

そうそう、イングランドはサッカー王国なんですが、フーリガンというのは暴徒化したサッカーファンではなく、最初から暴れるための集団です。まぁそれはどうでもよろしい。

このスキンヘッドの若者達が熱狂的に支持したバンド達が、徐々に彼らのファッションや思想などと音楽を融合させて「オイ」という1ジャンルが生まれました。

ほうほう、なるほど。

と、色んな本とかを読んで納得したアタシ。

「じゃあ何がオイパンクを代表するバンドなのか?」

といえば、それはThe BusinessとかBLITZとかなんでしょうが、当時は彼らのCDはなかなかに入手困難だったので

「オイに一番影響を与えたバンドだよ」

ということで聴いていたのがシャム69。











【収録曲】
1.I Don't Wanna
2.Ulster
3.Red London
4.hat Have We Got?
5.Borstal Breakout
6.Hey Little Rich Boy
7.Angels With Dirty Faces
8.Cockney Kids Are Innocent
9.If the Kids Are United
10.Sunday Morning Nightmare
11.Hurry Up Harry
12.No Entry
13.Questions and Answers
14.I Gotta Survive
15.With a Little Help from My Friends
16."Hersham Boys (7"" Version)"
17.I Don't Wanna (Live)
18.Rip Off (Live)
19.I'm a Man I'm a Boy (Live)
20.Tell Us the Truth (Live)
21.You're a Better Man Than I
22.Give a Dog a Bone
23.Tell the Children
24.Jack
25.Unite and Win
26.I'm a Man


1977年デビューした彼らは、オリジナル・パンクスと言っていいと思います。

当初からシンプルでゴツゴツした演奏、言葉をドスンと力強く叩き付けるジミー・パーシーの、カリスマ性あるヴォーカルが、何といってもこのバンドの魅力です。

70年代後半、パンクブームが世界中を沸き立たせている中、ピストルズは解散、クラッシュは音楽性をどんどん拡げて行く中で、いわゆる「変わらないこと」を強みにしていたのは、シャム69とダムドぐらいなもんでしょう。

特にシャム69のライヴは、観客全員を巻き込む楽曲の「合唱力」(でいいのか)の高さもあいまって、そらもう凄まじく沸いておりましたが、彼らのライヴは毎度の如くパンクスとスキンヘッド達が乱闘になり、途中で打ち切られることもしょっ中だったそうです。

シャム69のひたすらに硬派な音楽性、社会に対するこれもまた硬派な反抗姿勢、そして「パンクスとスキンズの現場での対立」があちこちに影響し、「Oi」というジャンルが生まれていくのです。

シャム69自体は、やはり硬派一直線なスタイルで金属疲労を起こしたのか、1980年代に解散してしまいますが、8年後には再結成。メンバーも以後大幅に入れ替わり、音楽的にもかなり自由度の高いスタイルになって復活するんですが、最高なのはやはり1977年から一度目の解散に至るまでの1980年までの演奏/楽曲/ライヴです。

オススメに「シングルス」を挙げましたが、これはシングル曲だけでなく、ライヴもたっぷり入ってますんで、タダのベスト盤以上に、彼らの魅力とカッコ良さを体現できるでしょう。つうかファースト、セカンドと順番に聴いていっても帰ってくるところはやっぱりこのアルバムだったりします。

今聴いても、不器用にあちこちに衝突しながら、まっすぐにぐいぐいと突き進んで行く、愚直な誠実さ、カッコイイなぁ・・・。

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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2016年09月14日

アル・ヘイグ・トゥデイ!

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アル・ヘイグ・トゥデイ!
(MINT Records/SSJ)

世の中には「幻の名盤」という言葉がございます。

発売当初は、そんなに売れなかったのに、後の世になってようやくその真価が認められたとか、ものっすごいマイナーレーベルで少量しかプレスしていなかったため、オリジナルのLP盤がすんごい値段になって中古市場に出回り、その伝説が作品の内容以上に話題を集めたとか、その両方の事情があれこれなって、とにかくファンの間では再発が待ち望まれていた作品のことであります。

んで、ジャズの世界というのは特に「幻の名盤」の宝庫であります。

というよりも、人間というのはジャズ好きとして年季を重ねてゆくとどうしても「人があんまり聴いてない、自分だけの名盤を探そう」という気持ちが出てくるらしく、えぇ、世間一般から見ればこれは病気・・・もとい”ビョーキ”と言っていい深刻な症状であるんですが、モダン・ジャズからモード、フリー、ジャズ・ファンク、フュージョンなどなど・・・どの時代の、どんなスタイルのジャズを聴いていても、ついつい「自分だけの特別」を探そうという気持ちが出てくるもんでして、えぇ、アタシも困っております(嬉)。

そういうジャズ好きのジャズ心をくすぐる達人として、寺島靖国さんというジャズ喫茶店主兼物書きの方がいらっしゃいます。

独断と偏見を装った、いかにも昭和のジャズ喫茶のオヤジという文章上のキャラクターである”テラシマヤスクニヌシノミコト”(勝手に命名)というキャラクターを実に巧みに操って、特に90年代以降、この人が独断と偏見を装ってオススメするアルバムは実によく売れました。

この方は、まだツイッターもフェイスブックもない時代に「アンチが騒げば名が知れ渡る」ということも熟知していて、今で言う炎上ビジネスの先駆けでもありまして・・・。まぁそれは本題とは余り関係がないのでサクサク行きましょう。

ジャズ聴き始めの頃のアタシは、まぁ若いし純粋だし、フリー・ジャズから入ってもおりますから、当然後期コルトレーンやアルバート・アイラーなんかをけちょんけちょんにけなす寺島さんの、強烈なアンチでありました。

「ぬわにがピアノトリオじゃい!ぬゎにが大人のテナーじゃい!てめぇの勧めるヤツなんか聴くかい!ヴォケェ!!」

と、突っ張ってはおったんですが、ある日たまたま偶然、寺島さんが大絶賛するズート・シムズを聴いたんですね。

そこで

「カ・・・カッコイイ・・・何これ・・・」

と。

で、アル・ヘイグです。

雑誌か何かで、これも寺島靖国さんの「絶賛アーティスト」でした。

記憶が曖昧なのですが、とにかく「バド・パウエルがどうした、ジャズ好きならアル・ヘイグだろ」ぐらいの、実に挑発的な書き方をされておったんじゃないかと思います。

ここでアタシは、またしてもまんまとヤラレました。

バド・パウエルはもちろん好きです。

むしろ、バド・パウエルはジャズの世界では、モダン・ジャズの演奏法の基本となる部分を作り上げた人ですから、ものすごぉく有名です。

また、その絵に描いたようなワイルドサイドの住人的な生き様からも、惹かれる人は多く、ジャズファン以外にも、強烈なファンが多いのです。

そのバド・パウエルを引き合いに出して「アル・ヘイグ」だとぉ!?

・・・賢い皆さんは、ここで気付きましたよね?

そうなんです、これはバド・パウエルをこき下ろすための文章ではなく、バド・パウエルを知っている人に”アル・ヘイグ”というピアニストの名前を強いインパクトで刻み付けるための、高等なレトリックなんです。

で、まんまとはめられたアタシ、「アル・ヘイグなんて・・・聴かないんだから!!」と、しっかり名前を覚えつつ、プンスカしておりました。

当時、東京のとあるUニオンで働いてたんですが、アタシがいたお店は、ディスク部とオーディオ部が併設されている店舗で、バックルームのロッカーに行くためには、オーディオの店舗の中をちょっとごめんなさいしてススス・・・っと通ってたんですね。

たまに閉店後、オーディオチェックのためにジャズを爆音で鳴らしていることがあって、これがまた鬼のようにいい装置で鳴らすもんだから、すこぶるカッコ良く聴こえてました。

ある日の夜半、レジ締めをしていると、オーディオの方から、最高にヒップでメロディアスで、しかも全体的にゆんわりと狂気を感じさせるジャズのピアノが流れてきます。

「おぉ、今日のジャズはピアノかぁ。えらいカッコイイなぁ・・・。バド・パウエルみたいだけど、いや、違う。もう少し音が端正で、バドみたいに明らかに病んでる音じゃないんだけど、この美しいアドリブ運びからは、どうもバドとは異質なクレイジーさを感じる・・・」

とか、レジ締めそっちのけで思っていまして、仕事終わってソッコーで、オーディオ部の先輩に

「すげぇピアノですね、これ誰すか?」

と訊いたら

「あぁ、コレ?アル・ヘイグだよ?」

と、先輩は眠そうに答えました。

うぉう、アル・ヘイグ!!

悔しかったので、前もって情報収集していて

・1940年代にデビューして

・バド・パウエルに唯一対抗できる白人ピアニストとして、ビ・バップ時代に人気を誇った

・でも、やっぱりヤク中であり、肝心の50年代、60年代のモダン・ジャズ全盛期にはあまり表立って活動してなかった

・70年代に突如復活を遂げた”生きる伝説”だった。

・そのプレイ・スタイルはセンスの塊で、メロディ感覚にも独自の美意識があって、更にリズム感も並外れたものがあった


ということが分かったので、いつか聴きたいと思ってはおったんです。

いやはや、確かに評判通りのズバ抜けたメロディの美学とリズム感の非凡さをビシバシ感じさせるけれども、それが決して勢いで「ドカーン!」とやってるんじゃなくて、完璧な”引き”を心得た、何というか余裕と深みを感じさせる演奏。

で、その完璧な演奏に、淡くふんだんにまぶされた”毒”の成分。

いや、これはもしかしたら気付く人と気付かない人がいる類のもんだと思います。

気付いた人は、もうアル・ヘイグ好きとかそういう以前に中毒になるだろうし(はぁい、アタシです)、気付かない人は気付かないでも「このピアノすごくオシャレでいいねぇ」と思えるだろうと考えると、もう気持ちはすっかりアル・ヘイグに夢中になって、その時すげぇいいオーディオで再生されていた「幻の名盤・アル・ヘイグのトゥデイ!」を買うことしか考えておりませんでした。





【パーソネル】
アル・ヘイグ(p)
エディ・デハーズ(b)
ジミー・カップス(ds)

【収録曲】
1.バグス・グルーヴ
2.ザ・グッド・ライフ
3.ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ
4.サテン・ドール
5.ブルー・スエット
6.スリオ
7.ブラザー・ホエア・アー・ユー
8.ポルカ・ドッツ・アンド・ムーン・ビームス
9.ウィロー・ウィープ・フォー・ミー
10.サウダージ


で、まんまと買ったんですね。はい、まんまと。

お店のような立派なオーディオ装置より100段ぐらい落ちるウチの安物コンポで再生しても、そのカッコ良さ、美しさ、センスの良さ、ミディアム・テンポの曲とバラードが小気味よく配置された選曲の良さ、そしてヘイグの両手から時にしっとりと、特に力強く放たれるアドリブに、やっぱり”ぬわぁ〜”とまとわる毒の香気にクラクラしました。

こういう派手さはないけれど、独特の味で聴かせる作品は飽きないんです。最初毒気にあてられてから今まで、このアルバムを退屈だと思ったことはありません。

で、ライナノーツを読んでみたら、

例えば「スリオ」だが、ぼくはこれを本作のベストと信じて疑わない。魅惑的なテーマ・メロディーが終わってアドリブに移ってからの滝が落ちるような流麗なラインをとっくりご賞味いただきたい



うんうん、わかる!「スリオ」のテーマからアドリブに行くあのスリルと快感は「ヤバイ!」ってなるもんねー。


ヘイグの偉大さは、こうしたことだけにあるのではない。華麗な奏法のわりに音色が憂いを帯びて聴こえてくるのにお気づきだろうか。例えば本盤の「柳よ泣いておくれ」「貴女は恋を知らない」「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーン・ビームス」といったバラッド群に注目していただきたい。妙な言い方だが、ピアノが泣いている。


ホントそれですわ!いや、泣いてる。うんうん、ワンワン泣いてるんじゃなく、人知れずむせび泣いているみたいな、音が「スッ」と消え行く時のあの余韻。アンタ凄いなぁ、分かってる人だなぁ。

で、ライナノーツの最後の執筆者の太字を見たら「寺島靖国」と書いてありました。

う〜ん、まんまと。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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