2016年09月05日

サリフ・ケイタ ソロ

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サリフ・ケイタ/ソロ
(ライス・レコード)

「アフリカ」といえばすぐにパッと思い浮かぶ音楽として、サリフ・ケイタの音楽があります。

カラッとした賑やかなファンク系ビートに、よく通る、しかしどこかその奥底には無限の説得力やカリスマな風格のある声が、最高に心地良いポイントで混ざり合ったそれは一言で「魂の音楽」と言ってもクサくはならんでしょう。

最初にサリフ・ケイタを聴いたのは、丁度22歳ぐらいの時。

70年代のアメリカのBLACK JAZZやSTRATA-EAST系の音が好きになり、その延長でフェラ・クティにハマッて、先輩に

「アフリカのこういうジャズっていうんすか?アフロポップ?とにかくカッコイイっすね。こういうのもっと聴きたいなぁ・・・」

と言ったら

「お前、アフリカ音楽好きだったらサリフ・ケイタは聴いてるんだろうな」

と言われ

「誰すか?」

となって、その後はお約束のパターンです。

フェラ・クティもサリフ・ケイタも、どちらも西アフリカ(ナイジェリアとマリ)で、どちらも西アフリカ伝統音楽に、ジャズやR&B、ファンクなど、アメリカン・ブラック・ミュージックの要素を大胆に取り入れた革新的なミュージシャンであり、どちらも「アフリカン・ポップスの巨匠」として名高いのですが、その音楽性はほとんど正反対ぐらい違います。

歌詞にふんだんに政治的なメッセージを盛り込んで、攻撃的なリズムの呪術っぽい繰り返しで熱狂のカオスを生み出すフェラ・クティに対し、サリフ・ケイタの音楽は、歌詞に込めたメッセージの熱を内に秘めつつも、政治的というよりは、もっと普遍的な、人間存在そのものの問題点を繊細に浮き彫りにしたような感触があります。

音楽的にも非常に聴き易く、全体的にポップであります。

ですが、そこはアフリカの王者サリフ、上っ面でなく”奥底”で聴かせます。

近年の作品は特に生楽器を中心としたシンプルなアンサンブルで、実に深みのある声で切々と聴かせる作品が多いのですが、音楽的色彩が相当にカラフルな初期の音源を聴いても、まずサウンドの華やかさよりも先に独特のコクと深みの方が強く印象に残ります。

とりあえず本日は、このブログでサリフ・ケイタを紹介するのは初めてだと思いますので、初期のソロ・デビュー・アルバム「ソロ」を紹介しながら、サリフ・ケイタという人について、ちょいと書いていこうと思います。




【収録曲】
1.ワンバ
2.ソロ
3.スアレバ
4.シナ
5.コノ
6.サンニ・ケニバ



(このCDの2曲目「ソロ」のライヴ、直立不動で歌う姿に何かもう凄いオーラが漂ってますな)



サリフ・ケイタは1949年、西アフリカはマリ共和国という国で生まれました。

このマリという国は、実に独自の弦楽器文化があり、アフリカ諸国の中でも素晴らしい民族音楽の宝庫なんですが、その話はちょい置いといて、サリフ・ケイタの話をサクサクいきましょう。

王族の末裔という凄い家に生を受けたサリフでしたが、アルビノという先天的に肌の色素が少ない体質であり(つまり黒人なのに肌が白い)、このアルビノというのは、病気でも障害でも何でもないのですが、やはりまだ「不吉だ」とかいう迷信が信じられていたのでしょう。生まれてほどなく、ほとんど勘当に近い形で一族を追われ、外に出てもずっと差別や迫害を受けるという悲惨な幼少期を過ごしました。

肌の色が人と違うというだけでマトモな生活ができないなんて、酷いといえば酷い話なんですが、そんなサリフをマリで唯一受け入れ、音楽の手ほどきをしたのが、西アフリカ一帯で音楽や歴史物語の”語り部”を生業としている”グリオ”と呼ばれる人々でした。

さっきのマリという国に独自の優れた管楽器文化がある云々という話をしましたが、それこそがこのグリオの人達が築き上げたものなんですね。

彼らはコラ(竪琴)ンゴニ(バンジョーの先祖)といった弦楽器のスペシャリストであり、太鼓や木琴楽器も自在に操り、また、演奏するだけでなく製作も行う世襲制の伝統職人であるだけでなく、国や王家の歴史や伝説の英雄の物語、神や悪霊を制する歌も継承しており、現地の人達からは、一種のシャーマンに近い畏敬を受ける集団です。

グリオは、その生い立ちから神聖な人々であるとされておりますが、同時に賤民として差別もされており、非常に複雑でデリケートな存在です。

さて、肌の色のことで差別され、一般社会では生きていくことの難しかったサリフ少年は、このグリオの集団に拾われ、彼らの直接の手ほどきを受けて、歌唱と楽器を覚えていくのですが、その過程で「声に人並み以上の力がある」と認められ、今度はグリオの世界からポピュラー音楽家への道へと突き進んで行くのですが、これが1967年、サリフ何と18歳の時であります。

彼がヴォーカリストとして参加した数々のバンドは地元や西アフリカ一帯で人気を博し「サリフ・ケイタ」という存在も、その肌の色も相俟って人々の口を通して、凄まじくミステリアスな神がかったシンガーとして有名になります(ここんとこ、ロバート・ジョンソンとかのブルースマンの伝説とちょいと似ております)。

ソロ・シンガーとして、更なる成功と名声を願ったサリフは1986年にフランスに移住、そこで元々グリオたちの伝統音楽と同じく”好き”であったジャズやR&Bなどの文化に大いに触れ、それらのエッセンスを見事血肉とします。

そして、満を持してのソロ・デビュー作が、1987年作。タイトルもそのままに「ソロ」でございます。

このアルバム、聴いてみれば分かるのですが、アフリカ伝統音楽の、かなりディープなフィーリングに、ジャズやアメリカン・ブラック・ミュージックのエッセンスが、全く不自然なく溶け合っていて、今聴いても「あ、これは凄い」となること請け合いなんですが、実はこんな凄いアルバムが、世界的に認められたのは、発売からちょっと経ってイギリス盤が出回ってからというから、歴史というのは何がどうなるのか分からないものですね。

とにかくサリフ・ケイタ「ソロ」は、アフリカの音楽ってどんななんだろう?あ、でもいきなり民族音楽全開なのはちょっと怖いかな・・・と思ってる人には、まずは何を置いてもオススメです。もちろん70年代のソウルジャズやジャズファンクなんかが好きな人にも♪


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 18:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界の民族音楽など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする