2016年10月26日

チャールス・ミンガス アット・カーネギー・ホール

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チャールス・ミンガス/ミンガス・アット・カーネギー・ホール
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)


いやぁ皆さん、ウッドベースは好きですか?

「ブンブンズンズンブンブンゴンゴン・・・」と、独特の重厚な響きでもって走る、またはゆったりと歩くジャズ独特の4ビートをウッドベースが刻めば「もうたまらん!」となりますよね。

ジャズを聴くと、つい頭が「あれもこれもモード」になってしまいます。

やれサックスのアドリブがどうとか、ピアノがとかベースがドラムがラッパが・・・と、頼まれてもないのに頭が勝手にステレオ化(?)して、それぞれの楽器の音を追いかけちゃうんですね。

で、楽器でいえばやっぱりベースを聴いてしまいます。

何でか分かりませんが、例えばビッグバンドとかで、ホーンが派手に鳴ってる中で、しっかりと”4”を刻んでいるベースを聴くと「うぉっしゃ!ジャズを聴いてるぞ!!」という、妙な安心感があるんです。

うん、ジャズって何だろう?って素直な疑問をお持ちの方は、どれでもいい、ジャズの演奏を聴いて、特にベースの音に合わせて体を揺らしてみるといいかも知れません。色々と理屈であーだーこーだ言うよりも、それが一番ジャズを体現できる手っ取り早い方法だと思います。

さて、そんな「ジャズをジャズたらしめているウッドベース」なんですが、素晴らしいプレイヤーいっぱいいます。でも、アタシの中では「特にこの人!!」という人が二人いて、一人はここ数日ちょこちょこ絶賛している、ビル・エヴァンス・トリオの二代目ベーシストことチャック・イスラエル、で、もう一人がジャズ界のベース番長、チャールス・ミンガスであります。

チャック・イスラエルに関しては、エヴァンスの繊細な繊細なピアノにぴったりと寄り添う、唄心に満ちたプレイとしっとり潤った音色に、心の奥底から泣かされるんですが、ミンガスの場合はこらもう凄まじいです。死ぬほどズ太い音で「ゴォォォ!!」と、聴き手のあらゆる感動や感傷を根こそぎブン撫でて行く、それはそれはワイルドな男らしさに溢れたベースですよ。

作曲家としても優れた人で、その楽曲は実は繊細だったり、とても知的で構成力の高いものだったり、で、ミンガスのベースが刻むラインとか、ソロやオブリガードのちょっとしたフレーズなんかは実際意外にセンチメンタルで、泣ける唄心みたいなのが目一杯詰まったこともやる人なんですが、そこは聴いてくうちに身に染みることでありますので、ここではガチャガチャ言いません。

さてさて、ミンガスがぶっとく刻む”4”のベースライン、その飽くなき魅力をゴリゴリに堪能できるアルバムを、本日はご紹介致しましょう。ミンガス晩年の傑作ライヴとの呼び声も高い「ミンガス・アット・カーネギー・ホール」です。




【パーソネル】
チャールス・ミンガス(b)
ジョン・ファディス(tp)
ジョージ・アダムス(ts)
ハミエット・ブルイエット(bs)
ジョン・ハンディ(as, ts)
ローランド・カーク(ts,stritch)
チャールズ・マクファーソン(as)
ドン・プーレン(p)
ダニー・リッチモンド(ds)

【収録曲】
1.Cジャム・ブルース
2.パーディド


「いいかテメェらーー!!」

「オォォーーーー!!」

「気合い見せろーーー!!」

「ォオオオーーーー!!!!!」

「いくぜオラァーーー!!・・・・ブンブンズンズンブンブンゴンゴン・・・」

「ギョワンギョワン!!バリバリブリブリ!!ゴギャァァァア!!!!バコォオオオン!!!」



・・・と、まぁ一言で言えば(汗)こんな感じの、1曲20分強を、ひたすら暴力的なスウィング感で爆走する、凄まじくテンションの高いライヴ。

しかもコレ、編成が凄いんですよ。何とホーン奏者6人の6管編成、しかもそのうち5人がサックス奏者です。

ついでに言うと、この編成でものすごーくソロの比重を重くしたアレンジでやってるんです。

重厚なアンサンブルとか、凝った編曲とか、あと、ミンガスといえば舎弟頭のダニー・リッチモンド(ドラム)と組んだ時は、2人でソロ吹くヤツらを自在に操っているかのような、必殺の変拍子でガンガンぶっこんでくるんですが、ここでは敢えてそれらの必殺技は封印して、フロントに好き放題やらせています。

サックス陣の中では、この当時のレギュラー・メンバーのジョージ・アダムスとハミエット・ブルィットの2人が、もうやんちゃというか、やさぐれてぶっ壊れたフリーキーでブルースヤクザァなプレイは、ハッキリ言ってDQNの域なんですが(汗)、このライヴでは怪人ローランド・カークが、いつもの自分のリーダー作では聴けないぐらいの凶悪なキレッぷりで暴れまくっておるんです。

このアルバムを聴く楽しみは、ハッキリ言って「キレッキレのローランド・カークを聴くため」でも全然いいぐらいなんですが、いや、ミンガス凄いですよ。大暴れに大暴れ、フリークトーン炸裂の大狼藉なフロントの絶叫に、ぶっといベースの”4”が全然埋もれてないんです。2曲トータルで46分もあるヘヴィなアルバムなんですが、その中でずーーーっとベースの「ブンブンズンズンブンブンゴンゴン・・・♪」が、演奏の真ん中で鳴り響いてるんですよ。

ミンガスという人は、トータルなミュージシャンとして、いや、アーティストとして本当に素晴らしい人で、名盤はいっぱいあります。スタジオ盤で物凄く徹底して作り込まれた美と狂おしさの極致みたいなアルバムもあるんですが「ジャズって何だ?ベースか?じゃあベースが凄いアルバム教えれ!」と思う方は、このアルバムの暴力的スウィング感を是非早い段階で体験して頂きたいと思います。そしてやさぐれろっ♪




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2016年10月25日

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン イーヴィル・エンパイア

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レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン/イーヴィル・エンパイア
(ソニー・ミュージック)

ロックの様々なスタイルが一気に芽吹き、その中で個性的なバンドが次々と出てきた90年代。

今にして思うとレッチリとガンズの大ブレイク、メタリカの「ブラック・アルバム」の衝撃から目が覚めやらぬうちにパンテラという究極にヘヴィなバンドが出てきて、かと思えば全く違う方向からニルヴァーナ。そこからの怒涛のオルタナティヴ・ロックの快進撃、パンクロック・リヴァイバル・・・。

リアルタイムで「今度はどのバンドがどんな新譜出すんだろう・・・」と、すごくワクワクしてた時代です。

特にヘヴィロックやミクスチャーの分野では、やっぱりパンテラやレッチリ、そしてビースティー・ボーイズという凄いバンドが既にシーンを完全な影響下に治めていたので

「もうこのジャンルではこれ以上のバンドは出てこないだろうな・・・」

と、何となく思っていた時に出てきたのがレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンです。

92年にリリースされたファーストは、それこそ衝撃でした。

ビースティ・ボーイズ・スタイルのミクスチャー・ロックのサウンドに、パンテラ系のヘヴィネス・サウンドが、これは奇跡的に融合した一枚だと、正直思いました。

しかし、この時点で「ヘヴィロックの新しい突破口を切り開いたデビュー作」は、まだまだ序の口でした。

94年にファーストを聴いて「カッコイイな〜」となっていたアタシが本当の意味でレイジにぶっ飛んだのはその二年後、96年にこの曲を聴いた時です。



単純に「カッコイイ」を突き抜けたテンションと緊張感、そして隅々まで綿密な構成によって作り込まれたサウンド(特にギター)、ノリはひたすらにムダがなくシンプルなのに、そのシンプルなサウンドの中に、全てをブチ込んだ感がある。うわ、何だこれ・・・!ヤバイ!!

その頃は丁度戦前ブルースばかり聴いていた時期だったんですけど、レイジの突き抜けた反骨のスピリッツは、戦前ブルースが根源的に持っているそれと全く同じベクトルと感じて、一人で興奮しきってました。




【収録曲】
1.ピープル・オブ・ザ・サン
2.ブルズ・オン・パレード
3.ベトナウ
4.リボルバー
5.スネイクチャーマー
6.タイヤー・ミー
7.ダウン・ロデオ
8.ウィズアウト・ア・フェイス
9.ウインド・ビロウ
10.ロール・ライト
11.イヤー・オブ・ザ・ブーメラン

とにかくサウンドはヤバいです。今聴いてもそれ以上の的確な言葉が見付からないほどにヤバいです。

歌詞も社会の矛盾に溢れた”システム”に対して徹底的に容赦のないものであることはファーストから全く変わらないし、音の幅がガッと拡がったものの、ラウドで攻撃的、ザックのヴォーカルも含めた全サウンドが真ん中に集まって一気に炸裂するようなストレートな曲の構成も全然変わってないです。よくロックバンドは「ファーストの勢いが最高で、セカンド以降はより音楽的に完成されたものになってゆく」といわれますが、確かにそうなんだけど、そんな理屈でしたり顔をするのは、何かどうも違うような気がするんです。つまりファーストの勢いに、更なる勢いを被せてきたとか、もともとヤバいものがちょっとした調味料を加えることで劇的にヤバくなったとか・・・。

あぁ、20年の付き合い(その途中買い直すこと2回)のアルバムなんですが、今も聴いた瞬間に全生理が沸騰して冷静でいられなくなります。



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2016年10月23日

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン

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レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン/Rage Against The Machine

(ソニー・ミュージック)

1990年代という時代は、色んな形で「パンク」が復権した時代だったと思います。

メロコアが流行ったとか、スカ・リヴァイバルが起きたとか、そういう表面的なことじゃなくて、歌詞にも音楽にも、社会的な強烈なフラストレーションに対する”否!”というメッセージを叩き付けるバンドが物凄い勢いで出てきたんですね。

その最右翼が、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。

ギンギンにトンガッたヘヴィなサウンドと、ブラック・ミュージックからの影響がデカいミクスチャーなリズムに乗って、まるでアジテーションのように聴く側の意識を過激に煽りまくるザック・デ・ラ・ロチャのラップ。

歌詞を読めばこの社会を動かしている経済とか政治とかのシステムを「マシーン」と呼び、それに容赦なく具体的な言葉で打撃を加え、ライヴではキューバ革命の英雄チェ・ゲバラの旗と共に、さかさまにしたアメリカ国旗をステージに掲げ、徹底的な「反体制」を呼びかける。

最初にライヴ映像見て、歌詞とかよく分からなくても「あ、コイツらは何かよーわからんが”戦ってるヤツらだ”」と、ものすごーくシンパシーを覚えたもんです。

でも、それより何より、当時まだレッチリとかアンスラックスとかビースティ・ボーイズでしか知らなかった「ヘヴィな音の横ノリ」が、このバンドで究極にまで研ぎ澄まされたようなミクスチャー・サウンドに「うほぉ!ぼげぇ!!」(何じゃそりゃ)と、言葉にならない衝撃を受けたんです。

ノリはタテノリの8ビートとは全然違いますが「コレはパンク!!」と、聴いて即認定しましたね。いやいや、パンクってのは音楽の種類じゃなくて姿勢なんです。






【収録曲】
1.ボムトラック
2.キリング・イン・ザ・ネーム
3.テイク・ザ・パワー
4.セトル・フォー・ナッシング
5.ブレット・イン・ザ・ヘッド
6.ノウ・ユア・エナミー
7.ウェイク・アップ
8.フィストフル・オブ・スティール
9.タウンシップ・リベリオン
10.フリーダム


音楽的な完成度の高さと、強靭なグルーヴ、そして歌詞に込められた呪詛のような鬱屈とした凄まじいエネルギーが渾然一体となった、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのファースト・アルバム。

アタシが正直決定的な衝撃を受けたのは、この次の「イーヴル・エンパイア」だったんですが、既にレイジにハマッてた人達から「いや、ファーストもいいよ。つうかテンションは全然変わらんよ、聴いてみ」と言われて遡って聴いてみたんですが、よりサウンドの幅の拡がった「イーヴル〜」に比べて、よりシンプルで荒削りで、音の圧力みたいなのが真ん中にギュッと集まって放たれているようなこのストレートな表現、コレはセカンドと同じぐらいの衝撃を受けました。

南米ニカラグアの革命からインスピレーションを得たクラッシュの「サンディニスタ!」に大きな影響を受け、アメリカと南米系移民の歴史を真摯に研究し、そのことがきっかけで「おかしくねぇか!?」と、いわゆる”マシーン”との戦いに目覚めたメンバー達の、これは社会に対する最初のキョーレツな一撃です。

ゴタゴタ言う前に、これは素直に音を聴いてノックアウトされた方がよろしいですな。90年代初頭にリリースされた、最高にエモーショナルで最高にハードコアで最高にパンクなアルバムだし、この破壊力は今もぜんっぜん衰えるどころかますますリアルに感じます。感じるしかない!





(ライヴ最高だな〜♪)



ワン・デイ・アズ・ア・ライオン




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