2016年10月18日

ジョニー・グリフィン ザ・リトル・ジャイアント

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ジョニー・グリフィン/ザ・リトル・ジャイアント
(Riverside/ユニバーサル)

音楽の世界というのは、結局のところ「その人の個性がどう輝いてるか」だと思いますので、誰かと誰かを比較して、或いは同じカテゴリで色々集めた中で「この人が最強!」なんてことはあまり意味のないことだと思いますので、普段はあまり使わないのですが、しかし一方で、ジャズのテナー・サックスというのは

「生演奏の場でバトルしてドイツが強いか競っていた」

という歴史を持つ楽器であります。

特に1950年代のハード・バップの時代までは、レコードに腕利きのテナーマン同士のアツいバトルが刻まれておりまして、アタシもテナー吹きますから、それはそれは興奮して聴いております。

なので今日はちょいと不毛な厨二話にお付き合いください。

はい、本日のテーマは

「ジャズ・テナー最強は誰か?」

というお話です。

ちょいとくどいようですが、音楽の世界は、どれだけ自分なりの個性を輝かせたかがそのミュージシャンの評価ではあるんですが、それやっちゃうと、流石にジョン・コルトレーンとかソニー・ロリンズとか、或いはアルバート・アイラーとか、いやいや親父(コールマン・ホーキンス)だとか、強烈に自分の世界を打ち立てちゃった人たちの独走になってしまいますので、ここはひとつ

・4ビートのモダン・ジャズ

・その中で演奏技術・アドリブのセンス・サウンドの存在感がズバ抜けてる

という2点基準で考えてみましょう。

まぁアレです。400ccネイキッドのバイクで、0m-400mを「よーいドン」すればどれが勝つのかというゼロヨンバトルと一緒ですね。

で、考えてみて、アタシは3秒で答えが出ました。

「そりゃあジョニー・グリフィンだろう」

と。

はい、ジョニー・グリフィンこそが”モダン・ジャズ最強のテナーマン”だとアタシは思います。

高速でもバラードでも、次々出てくるアドリブのフレーズ、どんなテンポでもしっかりと全力疾走できる機動性の良さ、そして何より「どんなフレーズでもしっかりと”音楽”として聴かせるだけの音色の強靭さ」を、グリフィンは強烈に兼ね備えております。

それにはちゃんと根拠があって、ブルーノートに「ザ・ブローイング・セッション」というアルバムがあります。

このアルバムは凄いんですよ、コルトレーン、ハンク・モブレー、そしてジョニー・グリフィンという、50年代後半を代表するハード・バップの人気テナー奏者が3人集まって、吹きまくっているんですけど、やっぱりコルトレーン者のアタシとしては、コルトレーンの完全に個性の確立されたプレイを聴いて「流石コルトレーン、他のテナー吹きとはモノが違うわい」と感動したかったんですが、何と何と!モブレーをぶっちぎって、コルトレーンを抑えてブイブイに吹きまくっていたのは、そん時全く名前すらも知らなかったジョニー・グリフィンだったんですね。

もちろんこのアルバムの、コルトレーン、モブレーが”ダメなプレイ”をしている訳じゃありません。

1957年、既に”シーツ・オブ・サウンド”という自分のスタイルを確立させたコルトレーンのプレイも、ミドル級ならではの深い味わいと、一度聴いたらまた聴きたくなる、何とも人なつっこい音色でブロウするモブレーも、全然カッコ良かったんです。

しかし、それ以上にグリフィンのプレイが、凄まじい衝撃でアルバム全体を、明らかに違う速度で駆け抜けていった衝撃が、とにかくデカかったんです。感動云々以前に「凄すぎてどう反応していいか一瞬分からなかった」というヤツです。

それですっかり「ジョニー・グリフィン最高だなぁオイ」となったアタシは、早速”グリフィンの一番有名なアルバムって何?”となって、「ザ・リトル・ジャイアント」を購入し、まんまと今に至るまで20年近くハマッています。




【パーソネル】
ジョニー・グリフィン
ブルー・ミッチェル
ジュリアン・プリースター
ウィントン・ケリー
サム・ジョーンズ
アルバート・ヒース

【収録曲】
1.オリーヴ・リフラクションズ
2.ザ・メッセージ
3.ロンリー・ワン
4.63丁目のテーマ
5.プレイメイツ
6.ヴィーナスと月


「リトル・ジャイアント」というのは、言うまでもなくグリフィンのあだ名です。

168cmという小柄な身体でテナーを構え、その見た目からは信じられないようなパワフルな音で、物凄い質量のフレーズをブリバリに吹きまくるから、彼のプレイを目の当たりにした人は、畏敬の念を込めてそう呼んでおったんだと。

で、グリフィンは若い頃から「バトル野郎」として凄く有名だったそうです。

その理由は、彼の出身地にあります。

イリノイ州シカゴといえば、ブルースの都。

戦後になってブルースとは別個になって洗練されてゆくニューヨークのジャズとは違って、50年代のシカゴではまだまだ泥臭いブルース・フィーリングが残るジャズ、或いはジャズのプレイヤーを目指す若者は、必ずR&Bのバンドで腕を磨き”現場”でヤジったり熱狂して暴れる客を満足させるための技術と度胸を併せ持っていなければなりませんでした。

バンドの花形であるテナー奏者はなおさらです。

テナー奏者は「おい、ソロ吹け!」と言われたら、バーのカウンターを吹きまくりながらねり歩く、いわゆる”ホンカー”というスタイルで、客を沸かせておりました。

小柄なグリフィンが、バカでかい音で「バリバリバリ!」と吹きまくりながらカウンターをねり歩くパフォーマンスは、それはそれはシカゴの街で話題になってたろうと思うのです。

ところが、こうやって目立つテナー吹きがキャーキャー言われていると、ここに別のテナー吹きがソロに割り込んできて”バトル”を仕掛けます。

単純に目立ちたいヤツ、名を売りたいヤツが挑むというのもあったようですが、ショーを盛り上げるために「アイツにコイツをぶつけてやろう」と仕込まれるガチバトルは、シカゴでは日常茶飯事。

それは、勝てば英雄負ければ終わりの、すごくすごくシビアな世界。

グリフィンやクリフォード・ジョーダンといったシカゴ出身のモダン・テナーマン達は、軒並みそういった実戦経験を、無名の頃から積んで勝ち残ってきた人達だったんですね。

だからバトルにはすこぶる強いし「どうすれば他のテナー吹きより抜きん出るか?」ということを、もう体の感覚で身に付けておったんだと思います。

のみならず、どんな演奏でもゆるぎなく発揮できる濃厚なブルース・フィーリングも自然と備わっている。これはシカゴ出身のテナー吹きの最高の強みだったと思います。

アルバムを紹介しますれば、グリフィンのテナーを中心に「手数より味」で聴かせるブルー・ミッチェル(トランペット)とジュリアン・プリースター(トロンボーン)の、ド迫力の3管編成。

それに「どんなフレーズにも的確に応える名手」ウィントン・ケリーのピアノ、ぶっとい音でゴリゴリ4ビートを刻むサム・ジョーンズのベースに、ドッシリと構えて絶妙な煽りで演奏を盛り上げるハード・バップ職人ドラマーのアルバート・ヒースという、実に渋いメンバーに支えられ、ニューヨークでも豪快に吹きまくるグリフィンの「くーかっこいい!」としか言葉が出てこないテナーが存分に堪能できます。

楽曲もほとんどがミディアム・テンポのいかにもなハード・バップ曲というのがいいですね〜。実はグリフィンはバラードもとてもとても上手い人なんですが、あえてこのアルバムでは甘いバラードは吹かず、ワイルドでちょいとワルなブルージー曲でガッツリ固めているところも、アルバムとしての高い完成度に貢献しておるようです。

演奏、編成、楽曲共に申し分ない50年代モダン・ジャズの名盤ですが、アタシが一番興奮するのは、このアルバムでのグリフィンの音色。

よく聴くと、テナーの音にナチュラルエコーがかかってるように聞こえるんですよ。

これ、多分アレです。普通のマイクセッティングだと、グリフィンの音があまりにもデカいからバランスが取れないってことで、マイクからちょっと離れたところで吹いたんでしょう(マイクエコーでは多分ないはず)。

こういうさり気ないところに”バトル野郎”の気骨みたいなのがギュンギュン感じられてたまんないんですわ。





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2016年10月17日

ディス・イズ・クラレンス・カーター

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クラレンス・カーター/ディス・イズ・クラレンス・カーター
(Atlantic/ワーナー)

訳も分からずブルースやジャズの音盤を漁りまくっていた頃は「ジャケ買いをしてみたら違う感じで驚いた」ということが結構ありました。

60年代後半から70年代にかけて流行した”サザン・ソウル”の中核を成すソウル・シンガー、クラレンス・カーターの実質的なファースト・アルバム「ディス・イズ・クラレンス・カーター」も、そんなアルバムのひとつです。

グラサンをかけた黒人のオッサンが、アコースティック・ギターを構えている、これはどう見ても弾き語りか、限りなくシンプルな編成のカントリー・ブルースを想像するじゃありませんか。しかーし!聴いてみてびっくり、ワクワクでレコードの針を落として最初に出てきたのは、弾き語りとは程遠いバンド・アレンジのソウル・バラード。それからギットギトにタイトなリズムが炸裂するファンキー・ナンバー(!!)

ををぅ・・・クラクラする。なんてなんて、濃いオッサンさんなんだろう。

これが、クラレンス・カーターを最初に聴いた衝撃でした。

いや、完全にブルースだと思っていたものが予想外にソウルで、でも、その感情表現丸出しのゴリゴリとしたパンチの効きまくった、一周回って特濃なブルース・フィーリングが充満するヴォーカルが、予想以上にブルース(R&B)で、これは素晴らしいものを知ったと思ったものです。

クラレンス・カーターは1936年にアメリカ南部アラバマ州で生まれます。生まれつき盲目というハンデを背負いながらも、ライトニン・ホプキンスジョン・リー・フッカーといった、戦後ブルースのスター達のレコードに大きな感銘を受け、シンガー/ギタリストとして身を立てることを志し、50年代にはマッスルショールズにある”フェイム・レコード”にデモテープを持って行き、初期にシングルをこのレーベルで吹き込むことになるんですが、このフェイム・レコードがちょい後に、サザン・ソウル全盛期をメンフィスのスタックスと一緒に築き上げた”マッスルショールズ・サウンド”を生み出すレーベルになります。

最初は大学時代の友人で、同じく盲目のカルヴィン・スコットと”カルヴィン&クラレンス”というデュオで活躍しますが、カルヴィンが66年に交通事故に遭い、引退(72年に復活してはおりますが、コンビ再結成には至っておりません)。

ソロになってからはもう爆走するかのように、そのパンチの効いたヴォーカルに、ちょっとスケベェでワルなキャラクターを全開にして、60年代から70年代を駆け抜けて、その後低迷の時期もあったけれど、今現在(2016)も現役で唄いつづけている、とにかく元気なオッサンなんですが、とりあえずこのファースト・アルバムは「R&Bからソウル」の時代の独特のアツい雰囲気と、最新の流行の中に、しっかりとディープなブルースの伝統が根付く、サザン・ソウルのコアなスピリッツがタップリ聴けます。




【収録曲】
1.愛を信じて
2.ルッキング・フォー・ア・フォックス
3.スリッピン・アラウンド
4.愛する資格
5.アイ・キャント・シー・マイセルフ
6.ワインド・イット・アップ
7.パート・タイム・ラヴ
8.スレッド・ザ・ニードル
9.スリップ・アウェイ
10.ファンキー・フィーヴァー
11.シー・エイント・ゴナ・ドゥ・ライト
12.セット・ミー・フリー


バラードが得意なクラレンスですが、そのバラードも単なるお行儀の良いラブ・ソングじゃなくて、堂々と「オレと不倫しようぜ」とか、そういうものが多くて、その何ともおおらかであけすけなところ、お下劣さも味になるところが南部のシンガーらしくてとってもいいんですわ。

この次のアルバム以降は、実にクサい”語り”や、トレードマークになる”笑い声”もタップリ入ってきて「クラレンスたまらん!サザンソウルうぇ〜い!!」な人(はぁいアタシです)にとってはもうズブズブの中毒性が増幅するんですけど、全然知らない人が聴いて、そのヴォーカルのパンチに素直に感動し易い、サザン・ソウルの奥深い世界に入り易いアルバムはこれです。




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2016年10月16日

ボブ・ディラン ナッシュヴィル・スカイライン

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ボブ・ディラン/ナッシュヴィル・スカイライン
(Columbia/ソニー)

ボブ・ディランのアルバムといえばあのダミ声、あのダミ声といえばボブ・ディランですが、実はアタシの中でボブ・ディラン聴き始め最初の頃は「あぁ、そういう声でも唄うんだな」という感じでした。

というのもですね、実はアルバムで買った初めてのボブ・ディランは全然ダミ声じゃなかった。

むしろ美しいバリトン・ヴォイスで、なかなかにムーディーなカントリー・シンガー然としたディランだったんです。

はい、中坊の頃、カントリーに何となく憧れを持っていたアタシは、雑誌の記事で「これがディランのカントリー・アルバム」という紹介文に促されるままに購入した「ナッシュヴィル・スカイライン」が、生まれて初めて所有したボブ・ディランのアルバムだったんです。

演奏は、スティール・ギターやその他アコースティックな楽器ばかりがひたすら穏やかに流れていく、頭の悪い中学生には、この壮大なスケールの、何となく深遠な感じのする音楽を素直に「カッコイイ!」と、言えるだけの大人の余裕なんてございません。歌詞も「君が好きなんだ」みたいな、甘いバラードみたいなのばかりで、もっとこう思ってたような「反社会/反体制」みたいなのとはまるっきりベクトルが違いました。

でも、不思議と「ついつい聴いていたくなる音楽」だったんですよね。

これ買って2ヵ月後には「もっとトンガったディランが聴きたい!」と思って「追憶のハイウェイ61」をソッコーで買いに行ったんですが、時が過ぎてアタシも大人になり、一丁前に人生の何たるかを分かった気になった頃「ナッシュヴィル・スカイライン」が、身も心もじんわりと奥底から癒してくれるボブ・ディランの、もうお気に入りのアルバムになったんです。

”ダミ声ディラン、トンガったディランはそれはそれでカッコイイ、でも「ナッシュヴィル」は格別”というのが、ボブ・ディラン好きになってから少しも変わらない感想です。ホント、他のアルバムと比べたら別人みたいなんですけど、そこがいいと思います。





【収録曲】
1.北国の少女
2.ナッシュヴィル・スカイライン・ラグ
3.トゥ・ビー・アローン・ウィズ・ユー
4.アイ・スリュー・イット・オール・アウェイ
5.ペギー・デイ
6.レイ・レディ・レイ
7.ワン・モア・ナイト
8.嘘だと言っておくれ
9.カントリー・パイ
10.今宵はきみと


1960年代に数々のヒットを飛ばし、色んな意味で時代の寵児となってしまったボブ・ディランですが、1966年にオートバイで事故を起こして大怪我をしてしまいます。

しかし、これが「もうツアーばかりでやんなっちゃったよ、何か唄えばセンセーショナルに騒がれるしよォ」と、腐りつつドラッグ(マリファナ、LSD等)にのめり込んでいたディランにとっては、良い充電期間となりました。

「ナッシュヴィル・スカイライン」は、事故後に静養していた郊外ウッドストックで、結婚したばかりの奥さんと生まれたばかりの子供の世話を焼きながらマイペースに創作に打ち込むことが出来た結果生まれた、ディランにとっては最も穏やかな心境をそのまま音楽にした作品なのかも知れません。

さて、最後に余談的なことを話すと、このアルバムでは1曲目「北国の少女」で、ディランが尊敬するジョニー・キャッシュ兄貴がゲスト参加しております。もちろんジョニー・キャッシュ兄貴はカントリー界の大物で、このアルバムのゲストとしてはピッタリなんですが、それ以前にディランにとっては、デビュー当時全然売れなくてレコード会社との契約打ち切りまで検討されていた窮地に「何を言ってる、アイツはいい歌を唄うじゃないか。」と一人擁護して、誰に何と言わようとも推していたのが誰あろうジョニー・キャッシュ兄貴なんです。

自身のテレビ番組「ジョニー・キャッシュ・ショウ」で、第一回目のゲストにディランを招くなど、それから二人の間には固い友情の絆が結ばれていた訳なんですが、意外にも正式なアルバムでの共演は、これが最初なんです。

そしてこのアルバムの中での大ヒット曲「レイ・レディ・レイ」。これはアルバム全編で心地良く響く、ピート・ドレイクのスティール・ギターも絶品の、本当に素晴らしい曲なんですが、実はこれ、元々映画「真夜中のカウボーイ」の主題歌として依頼されていた曲だったんです。

しかし、ディランが期日までに間に合わせることが出来なくて(おい!)、結局主題歌はニルソンの「噂の男」に変更された。そして「噂の男」の作曲者がまた、ディランのニューヨーク・グリニッジ・ヴィレッジ時代の先輩で、若き日のディランに、ウディ・ガスリーの次に大きな影響を与えたフォーク界の重鎮、フレッド・ニールという、何だか不思議な縁を感じる話もあります。

ディランに決定的な影響を与えた人で、このアルバムに直接関わってないのはランブリン・ジャック・エリオットだけですね、そういえば。


ちなみにこのアルバムで何故唄い方を変えたのか?インタビューにディランはこう答えております。

「タバコを止めたら声が変わっちゃったんだよネ♪」

で、次のアルバムからフツーにダミ声に戻っております。

ディラン・・・。



(「Lay Lady Lay」この声もいいですな〜♪)

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