2016年10月16日

ボブ・ディラン ナッシュヴィル・スカイライン

4.jpg
ボブ・ディラン/ナッシュヴィル・スカイライン
(Columbia/ソニー)

ボブ・ディランのアルバムといえばあのダミ声、あのダミ声といえばボブ・ディランですが、実はアタシの中でボブ・ディラン聴き始め最初の頃は「あぁ、そういう声でも唄うんだな」という感じでした。

というのもですね、実はアルバムで買った初めてのボブ・ディランは全然ダミ声じゃなかった。

むしろ美しいバリトン・ヴォイスで、なかなかにムーディーなカントリー・シンガー然としたディランだったんです。

はい、中坊の頃、カントリーに何となく憧れを持っていたアタシは、雑誌の記事で「これがディランのカントリー・アルバム」という紹介文に促されるままに購入した「ナッシュヴィル・スカイライン」が、生まれて初めて所有したボブ・ディランのアルバムだったんです。

演奏は、スティール・ギターやその他アコースティックな楽器ばかりがひたすら穏やかに流れていく、頭の悪い中学生には、この壮大なスケールの、何となく深遠な感じのする音楽を素直に「カッコイイ!」と、言えるだけの大人の余裕なんてございません。歌詞も「君が好きなんだ」みたいな、甘いバラードみたいなのばかりで、もっとこう思ってたような「反社会/反体制」みたいなのとはまるっきりベクトルが違いました。

でも、不思議と「ついつい聴いていたくなる音楽」だったんですよね。

これ買って2ヵ月後には「もっとトンガったディランが聴きたい!」と思って「追憶のハイウェイ61」をソッコーで買いに行ったんですが、時が過ぎてアタシも大人になり、一丁前に人生の何たるかを分かった気になった頃「ナッシュヴィル・スカイライン」が、身も心もじんわりと奥底から癒してくれるボブ・ディランの、もうお気に入りのアルバムになったんです。

”ダミ声ディラン、トンガったディランはそれはそれでカッコイイ、でも「ナッシュヴィル」は格別”というのが、ボブ・ディラン好きになってから少しも変わらない感想です。ホント、他のアルバムと比べたら別人みたいなんですけど、そこがいいと思います。





【収録曲】
1.北国の少女
2.ナッシュヴィル・スカイライン・ラグ
3.トゥ・ビー・アローン・ウィズ・ユー
4.アイ・スリュー・イット・オール・アウェイ
5.ペギー・デイ
6.レイ・レディ・レイ
7.ワン・モア・ナイト
8.嘘だと言っておくれ
9.カントリー・パイ
10.今宵はきみと


1960年代に数々のヒットを飛ばし、色んな意味で時代の寵児となってしまったボブ・ディランですが、1966年にオートバイで事故を起こして大怪我をしてしまいます。

しかし、これが「もうツアーばかりでやんなっちゃったよ、何か唄えばセンセーショナルに騒がれるしよォ」と、腐りつつドラッグ(マリファナ、LSD等)にのめり込んでいたディランにとっては、良い充電期間となりました。

「ナッシュヴィル・スカイライン」は、事故後に静養していた郊外ウッドストックで、結婚したばかりの奥さんと生まれたばかりの子供の世話を焼きながらマイペースに創作に打ち込むことが出来た結果生まれた、ディランにとっては最も穏やかな心境をそのまま音楽にした作品なのかも知れません。

さて、最後に余談的なことを話すと、このアルバムでは1曲目「北国の少女」で、ディランが尊敬するジョニー・キャッシュ兄貴がゲスト参加しております。もちろんジョニー・キャッシュ兄貴はカントリー界の大物で、このアルバムのゲストとしてはピッタリなんですが、それ以前にディランにとっては、デビュー当時全然売れなくてレコード会社との契約打ち切りまで検討されていた窮地に「何を言ってる、アイツはいい歌を唄うじゃないか。」と一人擁護して、誰に何と言わようとも推していたのが誰あろうジョニー・キャッシュ兄貴なんです。

自身のテレビ番組「ジョニー・キャッシュ・ショウ」で、第一回目のゲストにディランを招くなど、それから二人の間には固い友情の絆が結ばれていた訳なんですが、意外にも正式なアルバムでの共演は、これが最初なんです。

そしてこのアルバムの中での大ヒット曲「レイ・レディ・レイ」。これはアルバム全編で心地良く響く、ピート・ドレイクのスティール・ギターも絶品の、本当に素晴らしい曲なんですが、実はこれ、元々映画「真夜中のカウボーイ」の主題歌として依頼されていた曲だったんです。

しかし、ディランが期日までに間に合わせることが出来なくて(おい!)、結局主題歌はニルソンの「噂の男」に変更された。そして「噂の男」の作曲者がまた、ディランのニューヨーク・グリニッジ・ヴィレッジ時代の先輩で、若き日のディランに、ウディ・ガスリーの次に大きな影響を与えたフォーク界の重鎮、フレッド・ニールという、何だか不思議な縁を感じる話もあります。

ディランに決定的な影響を与えた人で、このアルバムに直接関わってないのはランブリン・ジャック・エリオットだけですね、そういえば。


ちなみにこのアルバムで何故唄い方を変えたのか?インタビューにディランはこう答えております。

「タバコを止めたら声が変わっちゃったんだよネ♪」

で、次のアルバムからフツーにダミ声に戻っております。

ディラン・・・。



(「Lay Lady Lay」この声もいいですな〜♪)

”ボブ・ディラン”関連記事



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 14:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする