2016年11月02日

チャーリー・ラウズ ヤー!

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チャーリー・ラウズ/ヤー!
(Columbia/ソニー・ミュージック)




これいいなぁ・・・、いつどんな時に聴いても聴く人の気持ちを優しく包んでくれて、そして程よく盛り上げてくれる。あぁ、チャーリー・ラウズ、たまんないよな・・・。

と、そのいかにも人柄の良さが滲み出たような、丸く丸く、優しくおおらかなテナー・サックスの音色を聴くと無条件にそんな気持ちになってしまいます。

はい、そんなチャーリー・ラウズ。一言でいえば「職人」とか「燻し銀の」とかいう渋い言葉を頭に冠して語られることが多い人で、ジャズファンには「セロニアス・モンク・バンドのテナー奏者を10年も務めたよき女房役」として有名なんです。

セロニアス・モンクという人は、ソロや大編成でもその強烈な個性を発揮できる人で、どんな編成でも音が鳴っている全ての空間を”モンク色””モンク型”に染め上げたり造り上げたり出来る異能の天才ピアニストなんですが、自分のレギュラーバンドに関しては「ピアノとベース、ドラム、そしてテナー・サックスが一人。これじゃなきゃダメ」というストイックなこだわりを持っておりました。

更に、バンド内唯一の管楽器であり、フロント楽器であるテナーにも

「私のバックでテナーを吹けるのは、ジョン・コルトレーンソニー・ロリンズジョニー・グリフィン、そしてチャーリー・ラウズ。他のヤツはダメだよ。」

と、ハッキリ言い切るほどのこだわりです。

実際にモンクの楽曲というのは演奏家にとっては非常に難しく、しかもかなり独特な”間”とアクセントを持つ本人と一緒の演奏は、若い頃から共演する、特にソロを吹くサックスやトランペットの連中にとっては、これはある種の修羅場でありました。

モンクの楽曲は、単に聴くだけならハッピーで深淵で、心も体も目一杯刺激してくれる素敵な音楽なのですが、いざ演奏するとなると、これは技術もセンスもないと全然無理な訳です。1950年代〜60年代初頭の時期において実際にモンクと共演し、その独特すぎる楽曲に正面から挑んで、モンクが「いいねぇ」と思ったテナー奏者は、このたった4人。

このうち、コルトレーンとロリンズは、もう言わずと知れた超超超ジャイアントですね。そしてこの2人よりちょい知名度は劣りますが、ジョニー・グリフィンは演奏家としての力量だけで言えば、コルトレーン、ロリンズをもしかしたら凌ぐほどの確かな腕を持っています。

で、チャーリー・ラウズ。

実はラウズは、知名度でいえばこの3人より更に劣ります。

実力が評価されているのも「モンクの良き相棒」としての点に、ほぼ集中していると言っていいでしょう。

コルトレーンのように強烈な”俺世界”を持っている訳でもないし、ロリンズのようなカリスマと確固たる存在感で、モダン・ジャズ・テナーの歴史を切り開いた訳でもありません。そしてグリフィンのようにイケイケドンドンにバトルを派手に制して名を轟かすような派手さもありません。

でも、ラウズにはこの3人を上回る”これ、いいんだよね〜”と、聴く人に思わせる”味わい”があります。

1960年代から70年代初期(つまりモンクが元気に活動していた時期)にかけてのモンク・バンドでのラウズは、繊細で大胆なモンクの世界観を一切損なわず、妙意即答の”中間を行くテナー”で見事にスウィングしておりましたし、どんなに燃え上がっても丸さと優しさを失わない音色は、その時代のモンクの作品に、安定とみずみずしさを与えておりました。

はい、せっかくのソロ・アルバムの紹介なのに、モンクバンド時代の話ですいませんねぇ・・・。でも、ラウズを知るにはやっぱりモンク・バンドでの長い長いキャリアと、その誠実な演奏を先に語らねばならないのです。その理由は「ヤー!」を聴けば分かります。




【パーソネル】
チャーリー・ラウズ(ts)
ビリー・ガードナー(p)
ベック・モリソン(b)
デイヴ・ベイリー(ds)

【収録曲】
1.恋の味を御存知ないのね
2.リル・ラウジン
3.ステラ・バイ・スターライト
4.ビリーズ・ブルース
5.ラウゼズ・ポイント
6.ノー・グレーター・ラヴ

「ヤー!」には、そんな”誠実で職人で燻し銀のテナーマン・ラウズ”の魅力が凝縮されております。

モンクバンドでのプレイ以上に柔らかく安定感のあるトーンで、肩の力を抜いてリラックスしたプレイが楽しめるこのアルバムは、これこそ時代を変えた訳でもないし世界に衝撃を与えた訳でもない、むしろそういったところとはまるで対極にあるような、ひたすらに心地良く、安心して「これ、いいよね〜♪」と聴けるアルバムなんです。でもってこういうのを聴いて「はぁぁ〜、よろしいなぁ〜。。。」と温泉気分で呟けるということが、ひょっとしたら「ジャズを聴く幸せ」なのかも知れないのです。

バックを固めるビリー・ガードナー(ピアノ)、ベック・モリソン(ベース)、デイヴ・ベイリー(ドラム)のトリオも、そんなラウズのリラックスした渋い渋いテナーに程良く刺激されて、キリリと締まった好演を展開しております。このトリオが繰り出す心地良くてチョイワルなグルーヴもはぁぁ〜、よろしいなぁ〜。。。

本当はバトルも出来るし、濃いブルース・フィーリングも持っていて、旺盛な実験精神もあったラウズですが、モンクのアルバムとこの作品では、そんなとこちっとも出さずにひたすら「ススス・・・」という吐息混じりの幸せたっぷりのテナーの音で酔わせてくれるから素敵です。

ミディアム・テンポの小粋な曲とバラードとのバランスもよろしいなぁ。。。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする