2016年11月05日

チャーリー・ラウズ&ポール・クイニシェット ザ・チェイス・イズ・オン

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チャーリー・ラウズ&ポール・クイニシェット/ザ・チェイス・イズ・オン
(BETHLEHEM/EMIミュージック)

ひきつづきセロニアス・モンクの良きパートナーでありつつ、モダン・ジャズ・テナー・サックス、屈指の実力派であるチャーリー・ラウズの作品をご紹介いたします。

ラウズが安定した力量の持ち主で、かつワン・アンド・オンリーの上質な”味わい”の持ち主であるということは、前回ご紹介しました「ヤー!」の頁で触れました。

もちろんモンクのバックで、カクカクポンポン(どんな擬音だ)と、空間を自在に変化させて楽しむモンクのピアノにピッタリと寄り添って、一服の清涼剤として、或いは演奏全体をキリリと引き締める香辛料としてリーダーのプレイを忠実に引き立てる「とてもよくできた若頭」としてのラウズもカッコイイんですが、自身のリーダー作で「好きなジャズを肩肘張らずにとことん楽しみながら味わいで聴かせるラウズ」これがたまらないんです。

何というか、ラウズのふくよかで優しい厚みのあるテナーの音は、ジャズっていう音楽を聴いて感じる多幸感のようなものが、エキスとしてギュッと凝縮されているような気がするんです。ほら「理屈じゃないんだよね、聴いてて何となく心地いいのよ」というあの感じ。

実際にラウズのそんなに多くないソロ・アルバムは、実にハズレがありません。

どのアルバムも、モダン・ジャズの上質な旨み成分が、ラウズの伸び伸びと楽しそうなブロウからじんわり滲み出ていて、例えば夜、ちょっとまったりした時間を過ごしたい時なんかもう最高です。今の季節でしたらそうですねぇ、コタツに入ってちょいと一杯やる時のBGMにはバッチリなんじゃないかと思います。聴き手に多くを要求しない、かといって無味乾燥じゃなくて、真剣に聴けばそれなりのドッシリした聴き応えを感じさせてくれるのもまたラウズ。

今回も、そんなラウズの”幸せ盤”を紹介しましょうね♪


ザ・チェイス・イズ・オン (UHQCD限定盤)

【パーソネル】
チャーリー・ラウズ(ts)
ポール・クイニシェット(ts)
ウィントン・ケリー(p,@BCE〜G)
ハンク・ジョーンズ(p,AD)
フレディ・グリーン(g,AD)
ウェンデル・マーシャル(b)
エド・シグペン(ds)

【収録曲】
1.ザ・チェイス・イズ・オン
2.ホエン・ザ・ブルース・カム・オン
3.ジス・キャント・ビー・ラヴ
4.ラスト・タイム・フォー・ラヴ
5.ユーア・チーチング・ユアセルフ
6.ニッティン
7.テンダー・トラップ
8.ザ・シングス・アイ・ラヴ


丁度ラウズがモンクのバンドに加入するちょいと前、同じくテナー奏者のポール・クイニシェットと組んで録音したテナー・バトル盤。タイトルも「チェイス(追っかけっこ)」ですねぇ。

よっしゃあ、テナーバトルだぜぇ!ブリブリゴリゴリに吹き合ってガチンコでやりあってるぜぇ!

と、思うでしょうが、このアルバムは実際に”バトル”という感じで2人が飛ばし合うのは1曲目のタイトル曲だけ。あとはまろやかなまろやかなポール・クイニシェットと、ややパリッとした音で悠然たるフレーズを美しく紡いでいくラウズとの、心温まる2テナー共演盤に仕上がっております。

これは、ラウズの尋常じゃない協調性の高さ(でないとモンクとは演れないもんね)もありますが、共演のポール・クイニシェットの個性に拠るところも大きいんです。

クイニシェットは、ラウズより10歳ぐらい年上で、スウィング時代から活躍しておる大ベテランテナー奏者です。

ジャズ・テナーの世界では、初めてまろやかで流れるようなスムースな奏法(後にチャーリー・パーカー、スタン・ゲッツなどにものすごい影響を与えた)を確立したレスター・ヤングと、音色からフレージングからとてもよく似ていたために、レスターの”大統領(プレス)”というあだ名にちなんだ”副大統領(ヴァイス・プレス)”というニックネームを持っていた人です。

このクイニシェットのスタイルというのが、スウィング時代の良きエスプリと、モダン時代のフレージングの
オイシイところを絶妙な配合(7:3ぐらいかな〜)で併せ持っていて、ラウズとの相性もすごくんですよ。

というわけでこのアルバムでのラウズは、そんな先輩クイニシェットのキャラをよくよく考えて、他のソロ作よりも若干強めのトーンで、結構力強く吹いております。よく「同じ楽器だとどっちが誰の音だかわかんないよ」と、悩ましい盤もあったりしますが、コレに関しては心配ご無用。「やわらかくひたすらスムースな音のクイニシェット・やや硬質で元気な音のラウズ」で、キャラがしっかりと際立っております。

互いの演奏巧者ぶりがミディアム・アップの曲調で見事に捉えられた@、それぞれに憂いを染み込ませた音をアドリブをやりとりしながら上質に掛け合わせてゆくバラードのACなど、重ねられる毎に深みを増す、上質な”男の会話”が穏やかに流れて、聴く方もウットリします。

ラウズの良さって”何度聴いても飽きないところ”だと秋の夜長にしみじみ。これもまたいいアルバムです。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 17:18| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする