2016年11月09日

ドビュッシー:海(デュトワ)


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海、牧神の午後への前奏曲、夜想曲、遊戯 デュトワ&モントリオール響

(DECCA/ユニバーサル)

やっぱり海に近い所で生活している訳ですから「海」をテーマにした音楽や文学には、どこか本能的に惹かれたりします。それは単純に”海が好きだから”というのとはちと違う、その美しさも壮大さも、或いは恐ろしさも・・・、諸々の芸術というものが、それをどう表現しているのだろう?という、根っこからくる気持ちによります。

「海」がテーマの曲をアタシが聴くときは、単純に「わー、綺麗だねー」というのではなく、作者があの巨大で底なしで、とことん美しく、でも得体の知れない不可思議なものとどれだけ真剣に対峙して、海というものをどれだけ心の目をガッチリ見開いて見ているか?それに尽きる訳です。

で、ドビュッシーの「海」です。

ドビュッシーは近代フランスの作曲家で、先輩格に当たるチャイコフスキーやショパンから、繊細で優美、そして文学的で相当にロマンチックかつドラマチックな作風を受け継いでおり、更にそこにより多くの音階を駆使した技法で、実に抽象的で幻想的な世界を築き上げ、世間的には「音の印象派」とか呼ばれております。

凄い作曲家なんですが、実はコノ人、クラシック以外のジャンル・・・例えばマイルス・デイヴィス以降のモダン・ジャズとか、プログレッシブ・ロックとか、その辺に凄く影響を与えてもおりまして、最近では椎名林檎嬢なんかが「ドビュッシー最高!」とか言ってたのを何かで読んだことありますね。えぇ。。。

それはそうとして、ドビュッシーです。

ピアノ曲が有名なドビュッシーですが(元々ピアニスト志望だったというのもあるからでしょう)、実は交響曲や管弦楽曲など、いわゆるオーケストラ音楽でも優れた作品を残している人なのです。

「海」は、管弦楽曲の最高傑作と評価の高い曲です。が、そのことはアタシは大分後になって知りました(汗)。

「お、この前ピアノもの聴いて良かったドビュッシーだ。しかもタイトルが”海”かぁ・・・何かよくわからんが聴いとこ♪」

ぐらいの軽い気持ちで買った「海」これが実によくわからんかったのですが、実に良かったのですよ。

”わからんかった”というのは、ドビュッシー独特の、掴めそうで掴めない、繊細でめまぐるしい曲展開、”良かった”のは、だからこそのはっきりとした音階や”形”で浮かんでくるのではなく、もっと幻想的な”光”や”影”で脳裏に浮き上がってくるイメージの美しさです。

解説書を読むと「夜明けから日暮れまでの海の移り変わりを描写した楽曲」と書かれておりましたが、ハッキリ言って最初に聴いていきなりそこまでは分かりませんでした。でも、海の、特に海原の”動いてないようで
実は大きく動いている表情”というのは、とてもリアルに音楽で描かれているなと思いました。

その後、ドビュッシーをあれこれ聴いて思うのは「水辺での光の戯れ」という言葉です。ハッキリと捉えられる形はないけれども、そこに何か本質的なものが確かにある。そういう存在を光の乱反射とその反対側にある影で感じさせてくれる音楽。どんなタイトルが付いていようが、ドビュッシーの音楽は本質的に”それ”だと思います。

このアルバムは、他にもバレエ音楽も入ってます。

特に注目なのが、1曲目に収録されている「牧神の午後」。


(牧神の午後)


この曲は、元々バレエ音楽として書かれたものではなかったんだけど、文学界とバレエ界に凄まじいインスピレーションを与え、伝説の天才ダンサー、ヴァーツラフ・ニジンスキーが主演/振り付けでバレエ「牧神の午後」を発表し、その前衛的なパフォーマンスは、賛否両論大いに物議を醸し、その後のバレエの歴史を変えたというエピソードがありますが、そこらへんはアタシがどうこう言うよりも、大リスペクトする山岸凉子先生の漫画で「牧神の午後」という大傑作がありますので、ソチラを読んでください。





ヒジョーにとっちらかった解説ですいませんが、ドビュッシーの「海」という作品、そしてこのアルバムに収録されている楽曲の数々は「音の印象派」というのが、なるほどこういうものなのか!と、ちょいと感性のアンテナが敏感な人にはすごくビンビンくる素晴らしい作品群です。えぇ、それこそジャズやロックが好きな人、音と音との知的で有機的な交感というものに惹かれる人は聴いてみて損はないと思います。




【演奏】
シャルル・デュトワ(指揮)
モントリオール交響合唱団
モントリオール交響楽団

【収録曲】
1.牧神の午後への前奏曲
2.海-3つの交響的スケッチ 第1曲: 海の夜明けから真昼まで
3.海-3つの交響的スケッチ 第2曲: 波の戯れ
4.海-3つの交響的スケッチ 第3曲: 風と海との対話
5.バレエ≪遊戯≫
6.夜想曲 第1曲: 雲
7.夜想曲 第2曲: 祭り
8.夜想曲 第3曲: シレーヌ(海の精)


指揮者はドビュッシーと同じくフランス出身のシャルル・デュトワです。

一時期NHK交響楽団の指揮者で「N響アワー」なんかにもよく出ておりましたので、知っている人は多いと思うんですが、アタシはこの人の事は「どんな音にも抒情を含ませることが出来るおじさん」と呼んでいます。

一見掴みづらいドビュッシーの音楽に、オーケストラを駆使して鮮烈さを保ちつつ、どこか儚げな抒情を演奏に「ふわっ」とコーティングするその指揮ぶりは素敵です。

実はドビュッシーの「海」はもうひとつ、恐ろしいぐらいに透明な美しさを放つピエール・ブーレーズ指揮の名盤もありますが、それはまた別の機会に。。。









『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:18| Comment(0) | TrackBack(0) | クラシック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする