2016年11月12日

マヘリア・ジャクソン ニューポート1958

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マヘリア・ジャクソン/ニューポート1958
(Columbia/ソニー・ミュージック)

早いものでもう11月も中盤。

毎年この時期から「あぁ、もうすぐクリスマスだな・・・」と、心が一足先に師走モードになってしまうのですが、クリスマスといえばアレですね。やっぱりブラック・ミュージック・ファンとしてはゴスペルのことが頭をよぎります。

で、ゴスペルといえば、色々なシンガーやグループがいて、それぞれ本当に素晴らしいんですが、アタシの中で揺ぎ無い、どこかこう絶対的なものとして存在しているのは、これはもうマヘリア・ジャクソン。

「不世出のゴスペル女王」とか「比類なき天才シンガー」とか、彼女を讃える言葉はそれこそ枚数にいとまがありません。「いやいやそんな、いくらマヘリアがゴスペルの中でもズバ抜けて有名であっても、肩を並べるシンガーぐらいはいるだろ?」と思ってあれこれ聴いても

・・・おりません。

たとえば「好き」という意味では、アタシはゴスペル・シンガーの中では圧倒的にシスター・ロゼッタ・サープおばさんが好きなんです。ジャンカジャンカ景気のいいギターと共にパワフルに放たれるシャウトを聴きながら「うぉうおぅ♪」となることこの上ないんですが、マヘリアの場合は、その「好き」とか「嫌い」とかを遥か下の次元に追いやって、聴く人の意識をその究極的な”声の力”で、何かこう凄い世界に誘ってくれるんです。

いや、アタシなんかはそれこそ信仰とかとは全く無縁な、それこそ初詣で神社行った時に「あー、金持ちになれますようにー」とお願いするぐらい罰当たりな人間なんですが、そんなチンピラうをして

「うぉぉ、マヘリアすげぇ。天国ってホントにあるかもしんねー」

と思わせてしまうぐらいの物凄い説得力があるんです。

さてさて

ジャズファンの皆さんは「真夏の夜のジャズ」という映画をご存知でしょう。

ご他聞に漏れず、アタシがマヘリアを知ったのはこの素晴らしい映画(&ライヴ映像)です。

お目当てのエリック・ドルフィー(チコ・ハミルトンのグループにいた初期の頃ですね〜♪)、セロニアス・モンク、アニタ・オデイ、そしてチャック・ベリーの素晴らしいライヴ・パフォーマンスを、鼻息荒くしながらフンフンと観ておった訳なんですが、真夜中の大トリで、司会の

「紳士淑女の皆さん、日曜の朝になりました。ここで世界最高のゴスペル・シンガー、マヘリア・ジャクソンさんをご紹介します」

という粋なアナウンス(アメリカでは「日曜の朝=教会に行く時間」という意味です)からマヘリア登場するんですが、荘厳なオーラをたたえてステージに出てきて、ノリノリの2曲を一気に唄いきった後に笑顔で言ったマヘリアのMCがまたいい

「You make me feel like a Star(まるでスターになったみたいね)」

はい、ゴスペルの人達というのは、どんな人気シンガーでも「自分はあくまで教会で唄ういち信徒である」という謙虚な気持ちを持っておりました。マヘリアは黒人コミュニティの中では当時押しも押されぬ大スターであり、レコードも凄まじく売れていたのにこの一言。日本で言うとアレですな、超大御所の落語家の師匠が人気のバラエティ番組に出て「アタシゃタダの噺家だから・・・」と、謙虚にふるまうようなもんですな。あ、ちょっと違うかもしれんけど、まぁいいか。



これが「真夏の夜のジャズ」でのステージです。

心から「すげぇな・・・」と思ったのは、このフェスに来ているお客さんは、ほとんど白人なんですよ。

ゴスペルというのは黒人社会ではもう「当たり前」の音楽だったけど、1958年当時はまだ白人と黒人が聴く音楽は完全に区別されていた時代です。リアルタイムでチャック・ベリーがロックンロールで若者の間にあった垣根をようやく取っ払ったぐらいで、そもそも白人聴衆はブラック・カルチャーの最深部にある”ゴスペル”なんて知りもしなかった時代に、聴衆がノリノリになって、終いには熱狂して踊り出してしまっているんです(!)

そして座って聴いてる人達の、マヘリアが唄ってる時の恍惚とした表情・・・。

正直唄がどうとか曲がどうとか、そういう細かいことじゃなく「唄うマヘリア、恍惚とする聴衆」の、この全体の雰囲気に、アタシは心揺さぶられました。音楽で「言葉が出ないぐらい感動した」という経験は、そうそうあるもんじゃないですが、マヘリア初体験は先入観ナシで正にそんな経験でした。




【収録曲】
1.イントロ~夕べの祈り
2.天国と呼ぶ町
3.私の道を
4.たやすいこと
5.雨が降ったよ
6.御手に世界を
7.聖者の行進
8.歌のように生きよう
9.キープ・ユア・ハンド・オン・ザ・プラウ
10.主の祈り
11.神の国を歩もう
12.ジェリコの戦い
13.ジーザス・メット・ザ・ウーマン・アット・ザ・ウェル
14.主の眼は雀に注がれん



その「真夏の夜のジャズ」でのステージを、映像では拝めなかった曲まで完全収録したのがCDの「ニューポート1958」です。映像ではただただ感動していただけでしたが、CDだと画がない分それが余計に深まります。


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 11:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする