2016年12月12日

クレイジーケンバンド 香港的士

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クレイジーケンバンド/香港的士
(ユニバーサル)

はい、昨日まではオーティス・レディングとサム・クックを気合いを入れて追悼しておりました(それぞれ12月10日、11日が命日)のと、ここ2週間ほどストーンズの「ブルー&ロンサム」が本当に素晴らしくて、もう頭ん中が濃厚極まりない”ソウル・ブルースモードに入っておりました。

う〜ん、このままでは日常生活に深刻な影響を及ぼしかねない!(いや、いいんですよ、ウェスカムですよ♪)ので、本日はユルりとクレイジーケンバンド♪

この夏(2016年)にリリースされました17枚目のフル・アルバム「香港的士」が、「おぉ〜、これは新作」と思って聴いたら、何と横山剣さんのミュージシャン生活35周年記念のアルバムとかで、剣さんがこれまで世のため人のために提供した楽曲をセルフカヴァーしているアルバムというじゃないですか。

イイーーーーーーーネ!!

そうなんです、イイんですよ。

剣さんはもちろんクレイジーケンバンドのフロントマンで、素晴らしいヴォーカリストで、また圧倒的な存在感を有するパフォーマー&エンターティナーであり、お茶の間の人気者です。

ところがそのキャリアの初期から、作詞作曲に非凡な才能を発揮して、色んなアーティストに素晴らしい楽曲を書いている作家さんでありました。

クレイジーケンバンドでのブレイクは、長年作詞作曲で培ってきたものを「じゃあ自分達の演奏でドーン!」と、炸裂させた結果のものなんですね。えぇ、素敵です。

バンドとしてデビューした当初から、彼らの楽曲のテーマには「歌謡曲」というひとつの巨大なコアがありました。

同時に「昭和」というキーワードもあって、でもそれは単なる懐かしさや、古い文化を面白おかしく再現するものではなく「歌謡曲」という戦後日本が生み出した全く新しい音楽の中にルーツとして存在する、古き良きアメリカの音楽(ジャズ、ソウル、R&B、ロカビリー、ロックンロール、ラテン、ボサ・ノヴァ等々・・・)のエッセンスを、最高にイカしたセンスとズバ抜けた演奏力でもってきちんと表に出すことにいつだって成功しているし、いつだって「イイーーーーーーネ!!」なんです。

はい、クレイジーケンバンドという最高にカッコイイ人達についてひとつだけ確実に言えることは

「この人たち本当に音楽が好きなんだ」

ということです。







【収録曲】
1.香港的士 -Hong Kong Taxi-(神崎まき)
2.本牧ソウルレディ(MOONDOGS)
3.タイムトンネル(TUBE)
4.退屈な日曜日(SMAP)
5.T字路/duet 野宮真貴(小泉今日子&中井貴一)
6.女ともだち(和田アキ子)
7.欧陽菲菲(グループ魂)
8.eye catch 湾仔巴士站 -Wan Chai Bus Stop-
9.バスが来る(神崎まき)
10.オヤコのマーチ(松崎しげる)
11.アルゼンチン逃避行(ジェロ)
12.第三京浜(渚よう子)
13.茶番劇(一青窈)
14.eye catch 本牧中央駅 -Honmoku Central Station-
15.TOTSUZEN CAR CLUB(CKB出演映画「イイネ!イイネ!イイネ!」挿入歌)
16.モトマチブラブラ(横浜元町チャーミングセール TVCMソング)
17.BABY BABY BABY(ダックテイルズ)
18.PLEASE(ダックテイルズ)
19.シンデレラ・リバティ(クールス)


アタシがごちゃごちゃ言うよりも、そりゃ聴いた方が早い!怒涛のセルフカバーいきますよー!!

上の曲名の横に()で書いてあるのがそれぞれの曲を提供したアーティストなんですけど、凄い名前が並んでいて壮観です。

しかし!

ここでクレイジーケンバンドによって新たにアレンジされ、演奏されているヴァージョンは、紛れもなく「クレイジーケンバンドの曲」になっていて、改めてクレジットを見返して「あれ?この曲確かアレだったよね!?」と、ようやく思い出すほど。

それぐらいクレイジーケンバンドのオリジナリティというのは圧倒的で、揺るぎない世界があるんですよね。ほら、じゃ〜んと一音鳴るだけで、ふわぁ〜っと夜の歓楽街のネオンとか、真夏のビーチとか、仲間とワイワイやる街の溜まり場とか、そういう風景が広がるんです。

個人的には後半に畳み掛けるダックテイルズ、クールスのナンバーに熱くなるものを感じましたが、いやいや、どの曲も演奏と歌詞が素晴らしい。

結婚する女友達を同性の立場から祝福するE、「これまでのパパはどこかフラフラしてたけど、君を授かることで、ここに生きる自信ができたよ」と"お父さん"の正直な本音をポロッと切なく唄うIとか、ユルく聴くつもりが、その本気の切なさとホロ苦さに引き込まれて、車の運転中にかなりヤバイことになりました(涙腺がね)。

あとDでデュエットしている野宮真貴さんの歌声は、本当にエレガンスの天国から降りてきた人の声だと思います。



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2016年12月11日

サム・クック ナイト・ビート

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サム・クック/ナイト・ビート(RCA/ソニー・ミュージック)


サム・クック

どこにでもいそうなアメリカ人の男性の名前ですが、この言葉を聞く時、私の胸の内には言いようのないアツく切ないものがこみ上げます。

彼こそはアメリカン・ミュージックの歴史の中で"特別の中の特別"なシンガーであり、1950年代後半から60年代の中盤、音楽も社会全体も大きく震え、変革する中で、最も多くの人々の感動の象徴であり、また、希望そのものでありました。

16歳の頃からゴスペル・グループのリード・ヴォーカルとして活躍し、やがてR&Bの世界へ進出。世俗の歌を唄っても、教会で福音を歌ってた頃と全く変わらぬ高揚と多幸感に満ち溢れた歌声で、聴く人の魂そのものを、彼は救済し続けました。

そう、サム・クックの声、その激烈シャウトと限りなく甘い囁きが奇跡の調和を保つ、全ての感情を揺さぶっては癒し、癒してはまた揺さぶるその歌声に包まれた時の聴く側の心の状態は、正に「救済」と呼ぶ他に、私は適切な言葉を知りません。

彼のヴォーカルが素晴らしいのは、もちろん天性の声に恵まれたのもあるでしょうし、幼い頃からゴスペル・グループの歌い手として、鍛練を重ねた結果でもあるでしょう。

けれどもそれ以上に、彼の歌は「上手い/カッコイイ」を飛び越えてどうしようもなく響くのです。

何故か?

それは分かりません、考えたって恐らく永遠に答えは出ないでしょう。

だから敢えて「偉大」とか「天才」とかいったありきたりの言葉でアタシはサム・クックを語りたくありません。

「お前はそこまで絶賛するけどサム・クックなんて本当にいいの?どうせ古い音楽なんだろ?」

という方には反論はしません、ただ黙ってサム・クックのアルバムを、何でもいいから聴いてごらんなさい。これは最高のソウルだしR&Bだしゴスペルだしロックだし、何より音楽だよ。

と、言うより他ありません。




【収録曲】
1.ノーバディ・ノウズ・ザ・トラブル・アイヴ・シーン
2.ロスト・アンド・ルッキン
3.ミーン・オールド・ワールド
4.プリーズ・ドント・ドライヴ・ミー・アウェイ
5.すべてを失くして
6.ゲット・ユアセルフ・アナザー・フール
7.リトル・レッド・ルースター
8.ラーフィン・アンド・クラウニン
9.トラブル・ブルース
10.ユー・ガッタ・ムーヴ
11.フールズ・パラダイス
12.シェイク・ラトル・アンド・ロール


1963年、サム・クックが亡くなる前年に発表した8枚目のアルバム「ナイトビート」を今日は皆さんに紹介します。

サム・クックといえば、以前も紹介した「ライヴ・アット・ザ・ハーレム・スクエア」や「ツイストで踊り明かそう」などの、その強烈に胸の透く力強い歌声が、ノリノリのゴキゲンな楽曲と共に炸裂して、感極った時にドコーン!とバラードがくる作品が人気で、再発される時もやっぱり注目を集めるんですが、サムの表現者としての底無しの凄味は、シャウトをグッと抑えて、優しい声で切々と唄う時により迫ります。

そう、このアルバムは、サムの深遠なるバラード・アルバム。

唄われているのはほとんどがブルースやゴスペルのカヴァーで、バックもしっとり落ち着いた小編成のバンドです。

この時代にずば抜けた人気をモノにしたサムには、度々レコード会社から「ポップスを唄わないか」と打診が来るようになりました。

というのも、R&Bで人気が出た黒人歌手は、次のステップとして、白人聴衆も購買層にすべく、いわゆる「黒っぽさ」を抑えたポップ・シンガーになることが、この時代望ましいとされていました。

何だかとても差別的に思えるかも知れませんが、この時代はブルースやR&Bの地位は驚くほど低く、音楽業界でもこういった考えは当たり前だったんです。

ところがサムは、デビューしてすぐにアーティストの著作権を正しく保護するための出版社を設立したり、マルコムXら公民権運動の指導者達とも非常に近しい関係にあり、自らも人種問題や政治的議論にも積極的に加わるほど、公民意識の高い人でありました。

レコード会社からの申し出はもちろん受け入れるのですが、彼が作った「ポップスなアルバム」は、シャウトは控え、ファンキーな"盛り上がるノリ"も抑えているにも関わらず、いや、それがかえって彼のルーツの最も深い部分にあるゴスペルの、荘厳な祈りのパートをポピュラー音楽の皮に包んで、リアルに鳴らすことに見事成功した、最高に質の高い、まごうことなきブラック・ミュージックの結晶がここには刻まれております。







(「ゲット・ユアセルフ・アナザー・フール」このピアノのイントロから唄、ギター、オルガンがゆっくり立ち上がる瞬間がもう・・・)



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2016年12月10日

オーティス・レディング オーティス・ブルー

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(Atlantic/ワーナー)

冬になるとオーティス・レディングが聴きたくなります。

彼の魂の奥底から「ぶわぁぁあああ!!」と感情を吐き出すシャウト、ザラつきつつもたっぷりのぬくもりを孕んだその声には、そんじょの暖房器具よりも心理的な保温効果がありますな。

短い生涯の中で彼がリリースした作品は少なく、しかしそのどれもが名盤、必聴に値する良質なものであることは、これはもうオーティスのアルバムを1枚でも所有して愛聴されておられる方ならば、誰もがそう思うことでありましょう。

その中でも「あぁ、今日はオーティスの歌声にじっくりと酔いしれたい、彼のバラードを心身に染み込ませて、心地良い憂いの中でまどろみたい」と思う時、アタシが聴くのは、1966年にリリースされたアトランティック3作目の「オーティス・ブルー」。

このアルバムは、特にバラードでのオーティスの歌唱の素晴らしさをじっくりと味わいながら聴くには、もう最高のアルバムなんですね。デビュー時からバックを務めるブッカーT&ザ・MG'sの、骨太で粘るグルーヴとのコンビネーションも、ここではもう完全に”一体”と言っていいぐらい見事なものです。




【収録曲】
1.オール・マン・トラブル
2.リスペクト
3.チェンジ・ゴナ・カム
4.ダウン・イン・ザ・ヴァレー
5.愛しすぎて
6.シェイク
7.マイ・ガール
8.ワンダフル・ワールド
9.ロック・ミー・ベイビー
10.サティスファクション
11.恋を大切に

さてさて、何から話そうか。。。

「バラードが素晴らしいアルバム」と、先ほど言いましたが、その中でも特に出色は、先行シングルとして大ヒットした「愛しすぎて」と、サム・クックのカバー「ザ・チェンジ・ゴナ・カム」であります。

サム・クックといえば、オーティスが登場する前のソウル/R&Bの大スターであり、そりゃもうアタシらが想像する以上の国民的人気をダントツで誇っていた時代の象徴なんですね。

しかし、ご存知のように彼は1964年、シンガーとしてアーティストとして絶頂を極めていたその年に、不幸な事件によってこの世を去ってしまった。

音楽シーン全体の喪失感は、大変なものでした。

それ以上に、サムを敬愛するこの時代の若いシンガー達にとっては肉親の死よりもショッキングなことであり、彼のようなスターになることを夢見ていたオーティスにとっても、それは非常に胸を痛める出来事だったことでしょう。

そんなことを思いながら「ザ・チェンジ・ゴナ・カム」を聴いてみましょう。

もうダメかも知れない そう思った時もあった

だけど今は 続けることが出来るように思える

ここまで来るのには とても長い時間がかかった

だけどわかるんだ 変化の時は来ている 来るんだ


この曲は、高まる公民権運動の熱気の中、サム・クックが周囲の反対を押し切って「反人種差別」のメッセージを「時代は変わるよ」というポジティブヴな歌詞に乗せて書いた曲です。

この歌詞のインスピレーションの源となったのは、言うまでもなくボブ・ディランの「風に吹かれて」であります。

炸裂するエネルギーの起伏に合わせて繊細な表現を滲ませるサムの歌唱とは良い意味で対照的な、感情をグッと溜めに溜めて一気に吐き出すオーティスの歌唱には、この曲に込められたメッセージ、サム・クックというシンガーへのリスペクト、または音楽そのものへの凄まじいほどの敬意が切なさと共に込められている。そう思います。

サム・クックの歌はもう一曲「ワンダフル・ワールド」です。

コチラはミディアム・テンポのとっても明るい曲で、サムの代表曲としてはもしかしたら現代の音楽ファンには「チェンジ・ゴナ・カム」より馴染みがあるかもです。ブ厚いホーン・アンサンブルと、放たれるオーティスの声との絡みが高揚しますね♪

その他、B.B.キングの「ロック・ミー・ベイビー」や、「ソウル側からのロックへの回答」として語り継がれているローリング・ストーンズの「サティスファクション」のノリノリなカヴァーなど、話題に事欠かない名曲/名カヴァーは多いですが、やっぱりタイトルに”ブルー”とある通り、最初から最後まで聴けば聴くほどに、上質なバラードがグッと胸にきて、その深い味わいを広げてくれます。聴きましょう。



(サム・クックのカヴァー、これはもう歌い出しから素晴らしい)


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