2016年12月05日

セロニアス・モンク ストレート・ノー・チェイサー

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セロニアス・モンク/ストレート・ノー・チェイサー
(Columbia/ソニー)

初期50年代(BLUENOTE、RIVERSIDE時代)のセロニアス・モンクは「強烈無比の異次元おじさん」であります。

何と言ってもモダン・ジャズ全盛期にありながら、最初からその、カギカッコの付いた「モダン・ジャズ」の範疇を軽々と飛び越えた超個性的なピアノ・プレイ、共演者をガンガン刺激し、時に完全に置いてけぼりにする楽曲やアドリブの展開など、もう本当にスリリングで、もうかれこれ20年以上の付き合いになりますが、今でも聴く度に「ふぇぇ、モンクすげぇ・・・」と、感嘆の溜息がついつい漏れてしまいます。

で、60年代以降、メジャー・レーベルのColumbiaに移籍した後のモンク。

これはアタシの大好きな「幻想異世界おじさん」のモンクなんです。

この時期は、モンクも自分のカルテット(ピアノ+テナー・サックス+ベース+ドラムス)メンバーを固め、良い環境の中で安定した演奏を聴かせてくれます。

特にテナー・サックスにチャーリー・ラウズが加わった事が、モンクの演奏にも、恐らく精神面にも大きな安定をもたらしたと思うんですよ。

モンク独特の世界に突っかかることなく、常に半歩引いた位置から的確なソロで見事モンクを引き立てるプレイに満足げなモンクが「よしよし、ワシもやっとくつろいで好きにやれるわい」と、楽しくそして淡々と、自らが生み出した幻想世界にピアノの旋律を泳がせて遊んでいるかのようであります。

そんな60年代のモンクのアルバムは、Columbia盤の数々の名作ジャケットに、その「幻想おじさん」ぶりが見事描かれておるんですね。

 まずはコレ↓


【パーソネル】
セロニアス・モンク(p)
チャーリー・ラウズ(ts,@〜CE〜H)
ラリー・ゲイルズ(b,@〜CE〜H)
ベン・ライリー(ds,@〜CE〜H)

【収録曲】
1.ロコモティヴ
2.アイ・ディドゥント・ノウ・アバウト・ユー
3.ストレイト・ノー・チェイサー
4.荒城の月
5.ビトゥイーン・ザ・デヴィル・アンド・ザ・ディープ・ブルー・シー
6.ウィー・シー
7.ディス・イズ・マイ・ストーリー、ディス・イズ・マイ・ソング*
8.アイ・ディドゥント・ノウ・アバウト・ユー (別テイク)*
9.グリーン・チムニーズ*

何ともソフトな色使いの不思議な構図の絵画がとても印象的なジャケットです。

最初下の方にモンクの顔が横たわってるなんて思いもよらなかったんで、それを見付けた時は思わず「おぉ!いた!!」とつぶやいてしまいました。それはさておき。

1966年にリリースされたモンクのColumbiaでの5枚目のスタジオ・アルバムであります本作は、モンクとカルテットの安定しつつ”ちょいと奇妙な音世界”がゆんわりと漂う7曲に、サラッと美しいソロ・ピアノ・トラックが2曲。アルバムとしてもバランスが実によろしくて、選曲もまた得意のミディアム・テンポを中心に、カチッとまとまったアルバムです。

モンクといえば「奇妙な」とか「風変わりだ」とかいうイメージがとてもあって、それはそれで一切間違ってはないのですが、この時期のモンクの演奏はとても自然に”ちょいとヘン”なことをやっていて、聞こえ方というものが実に自然で、本質的な”楽しさ””ウキウキ”を、まずは理屈抜きで味わえちゃうんです。

頑張っているのはやっぱりテナーのチャーリー・ラウズ。

タイトル曲の「ストレート・ノー・チェイサー」とかを、まず聴いて頂ければわかると思いますが、モンクのバッキングはかなり独特の”間”とタイミングで「・・・ゴーン!」「ガッキン♪・・・ゴンッ!」とバックでかなり自由に弾いてると思いきや、途中から一切弾いてない(!!)ベースとドラムだけ(コレも相当音数絞った軽快だけどシビアなバッキング)をバックに、実にスラスラ吹いておりますね〜♪ 


ラウズ入りのトラックではどれもこの調子で、カルテットの「ピアノ+テナー+ベース+ドラムス」の4つの動力が、最小限のパーツでしっかりと噛み合って動いてる、実に精妙の趣があります。

さてみなさん、収録曲に「荒城の月」があるのに「お?」となりましたね?そうなんです、実はこのアルバムは日本ではなかなか人気の盤なのですが、それはこの荒城の月が入っているからに他なりません。

大体60年代はジャズマンの間ではちょっとした日本ブームで、まぁその、単純に言えばアメリカでは普段はクラブで演奏して、ちょいと特別な時はホールコンサートが組めるぐらいのジャズマンでも、日本へ行けばツアーの先々でホールを手配してはくれるし、日本の客は真面目に演奏聴いてくれるし、ステージ降りても至れり尽くせりのおもてなしを必ずしてくれるということで、日本を訪れるジャズマンはみんな気を良くして「おかえしに」という意味で、日本の民謡や童謡(唱歌)をアルバムにいれたりしてたんです。

モンクの場合は、訪れたジャズ喫茶のオーナーが「お土産に」と渡したオルゴールが、この「荒城の月」だったんです。

この曲を気に入ったモンクは、事あるごとにこのオルゴールをジーっと聴いて「よし、この曲やるぞ!」と、いわゆる「サンキューニッポン」なノリじゃなく、音楽的に非常に真摯な欲求からカヴァーに至ったんですね。

プロデューサー 「おぉセロニアス、その何かエキゾチックで哀愁のある曲なんだい?いい曲じゃないか、作ったのかい?」

モンク「あぁ、これは日本の民謡だよ。メロディが気に入ったから、新作に入れていいかな?」

プロデューサー 「もちろん。日本で売れたらデカいぞ〜」

モンク(全く興味ない感じで鍵盤をいじっている)

プロデューサー 「あー・・・と、ところでセロニアス、この曲何てタイトルなんだ?」

モンク「知らない、メロディが気に入ってるんだ。何だっていいさ。レコードには"ジャパニーズ・フォークソング"とでも・・・」


実際の演奏も、16分を越えるかなりドラマチックなアレンジの中に、モンク独自の美学で「和」のフィーリングを幻想的に解体して再構築した、全くオリジナルな「幽玄」の世界を生み出しています。ここでもモンクの斬新なリズムとメロディの解釈にピタリと即応で応えるバックが素晴らしいですよ。

美しい幻想世界を淡々と、でもしっかりとスリルとミステリーの香を漂わせながら奏でるモンク。この冬のBGMにいかがですか?



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:27| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする