2016年12月10日

オーティス・レディング オーティス・ブルー

5.jpg
(Atlantic/ワーナー)

冬になるとオーティス・レディングが聴きたくなります。

彼の魂の奥底から「ぶわぁぁあああ!!」と感情を吐き出すシャウト、ザラつきつつもたっぷりのぬくもりを孕んだその声には、そんじょの暖房器具よりも心理的な保温効果がありますな。

短い生涯の中で彼がリリースした作品は少なく、しかしそのどれもが名盤、必聴に値する良質なものであることは、これはもうオーティスのアルバムを1枚でも所有して愛聴されておられる方ならば、誰もがそう思うことでありましょう。

その中でも「あぁ、今日はオーティスの歌声にじっくりと酔いしれたい、彼のバラードを心身に染み込ませて、心地良い憂いの中でまどろみたい」と思う時、アタシが聴くのは、1966年にリリースされたアトランティック3作目の「オーティス・ブルー」。

このアルバムは、特にバラードでのオーティスの歌唱の素晴らしさをじっくりと味わいながら聴くには、もう最高のアルバムなんですね。デビュー時からバックを務めるブッカーT&ザ・MG'sの、骨太で粘るグルーヴとのコンビネーションも、ここではもう完全に”一体”と言っていいぐらい見事なものです。




【収録曲】
1.オール・マン・トラブル
2.リスペクト
3.チェンジ・ゴナ・カム
4.ダウン・イン・ザ・ヴァレー
5.愛しすぎて
6.シェイク
7.マイ・ガール
8.ワンダフル・ワールド
9.ロック・ミー・ベイビー
10.サティスファクション
11.恋を大切に

さてさて、何から話そうか。。。

「バラードが素晴らしいアルバム」と、先ほど言いましたが、その中でも特に出色は、先行シングルとして大ヒットした「愛しすぎて」と、サム・クックのカバー「ザ・チェンジ・ゴナ・カム」であります。

サム・クックといえば、オーティスが登場する前のソウル/R&Bの大スターであり、そりゃもうアタシらが想像する以上の国民的人気をダントツで誇っていた時代の象徴なんですね。

しかし、ご存知のように彼は1964年、シンガーとしてアーティストとして絶頂を極めていたその年に、不幸な事件によってこの世を去ってしまった。

音楽シーン全体の喪失感は、大変なものでした。

それ以上に、サムを敬愛するこの時代の若いシンガー達にとっては肉親の死よりもショッキングなことであり、彼のようなスターになることを夢見ていたオーティスにとっても、それは非常に胸を痛める出来事だったことでしょう。

そんなことを思いながら「ザ・チェンジ・ゴナ・カム」を聴いてみましょう。

もうダメかも知れない そう思った時もあった

だけど今は 続けることが出来るように思える

ここまで来るのには とても長い時間がかかった

だけどわかるんだ 変化の時は来ている 来るんだ


この曲は、高まる公民権運動の熱気の中、サム・クックが周囲の反対を押し切って「反人種差別」のメッセージを「時代は変わるよ」というポジティブヴな歌詞に乗せて書いた曲です。

この歌詞のインスピレーションの源となったのは、言うまでもなくボブ・ディランの「風に吹かれて」であります。

炸裂するエネルギーの起伏に合わせて繊細な表現を滲ませるサムの歌唱とは良い意味で対照的な、感情をグッと溜めに溜めて一気に吐き出すオーティスの歌唱には、この曲に込められたメッセージ、サム・クックというシンガーへのリスペクト、または音楽そのものへの凄まじいほどの敬意が切なさと共に込められている。そう思います。

サム・クックの歌はもう一曲「ワンダフル・ワールド」です。

コチラはミディアム・テンポのとっても明るい曲で、サムの代表曲としてはもしかしたら現代の音楽ファンには「チェンジ・ゴナ・カム」より馴染みがあるかもです。ブ厚いホーン・アンサンブルと、放たれるオーティスの声との絡みが高揚しますね♪

その他、B.B.キングの「ロック・ミー・ベイビー」や、「ソウル側からのロックへの回答」として語り継がれているローリング・ストーンズの「サティスファクション」のノリノリなカヴァーなど、話題に事欠かない名曲/名カヴァーは多いですが、やっぱりタイトルに”ブルー”とある通り、最初から最後まで聴けば聴くほどに、上質なバラードがグッと胸にきて、その深い味わいを広げてくれます。聴きましょう。



(サム・クックのカヴァー、これはもう歌い出しから素晴らしい)


”オーティス・レディング”関連記事

『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする