2016年12月17日

ビッグ・ウォルター・ホートン メンフィス・レコーディング1951

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ビッグ・ウォルター・ホートン/メンフィス・レコーディング1951
(Pヴァイン)

ブルースにおけるハーモニカの歴史で、その奏法に革命を起こした人は何人かおります。

特に戦後、ギンギンに鳴るエレキギターのサウンドに合わせるようにハーモニカの音もアンプで電気増幅させたサウンドで吹かれるブルース・ハープのことを”アンプリファイド・ハープ”と言いますが、ブルースファンの中ではこの奏法を生み出したのは、これはもうリトル・ウォルターであると言われてます。

ところがブルースの世界には実は”もうひとりのウォルター”が居て、彼もハーモニカ奏者として試行錯誤の末に「あれ?ハープをアンプに突っ込んだらいけるんじゃね?」ということを発見した人だと云われております。

彼の名はビッグ・ウォルター。

ウォルター・ホートンとか”シェイキー・ジェイク・ホートン”とかも呼ばれております。

戦前から活動し、戦後シカゴ・ブルースの黄金期を創った忘れじの名手の一人であり、1981年まで長生きして一線で活躍し続けたので、音源も結構残っているんですが、リトル・ウォルターのような破天荒な生き様で数々の伝説を作った訳でもなく、サニー・ボーイ・ウィリアムスン(U)のような強烈にアクの強いキャラクターで、ブルースに憧れるキッズ達に「ブルースマンっておもしれぇなぁ〜」と深い印象を残した訳でもありません。

大言壮語、或いは生き様そのものが派手でギャンブル的なブルースマンの中で、彼の性格はどちらかといえば控え目でお人好し。自分がリーダーのレギュラーバンドはほとんど持たず、サイドマンとして呼ばれたら参加して、どんなセッションでもキッチリとリーダーを引き立てる熟練のプレイで応えるという大人っぷり。

吹き方もまた、大胆な強弱を付けてゴリゴリ吹いたり、伴奏の時もメインのフレーズにガンガン絡む訳ではなく、あくまでメインのフレーズや楽曲のメロディに寄り添って、ジワジワと情感を拡げてゆくようなスタイルで、一度ハマッたらこよなく好きになってしまう類の”味”で聴かせる人なんです。

さてさて、そんなビッグ・ウォルター、1917年にミシシッピで生まれておりまして、10代の頃に家族でメンフィスに移住しておりますが、この地でメンフィス・ジャグ・バンドスリーピー・ジョン・エスティスとコンビを組んでいたハミー・ニクソンらにハーモニカの吹き方を教わり、30年代には既にメンフィスからミシシッピ周辺のジューク・ジョイントを演奏して回る程のいっぱしのハーモニカ吹きになっておりました。

1940年代になると、メンフィスではブルース・バンドの電気化がいち早く行われておりました。

メンフィスといえばご存知エルヴィス・プレスリーでありますが、プレスリーの音楽が何であんなに初期の頃からロックしてたのかといえば、彼が小さい頃によく隠れて観に行ってたブルースのライヴが、既にギンギンにロッキンなヤツだったからなんですね。

「あの頃のメンフィスやウエスト・メンフィスでは分かりやすいクレイジーなノリのブルースがウケてた。ギターのボリュームを上げられるだけ上げて、ドラムもピアノもその音に負けないぐらいに目一杯叩くんだ。当然唄うヤツはもっと負けてられない。そんなノリだったよ、みんな」

と、シカゴに出る前にウエスト・メンフィスでブイブイ言わせていたハウリン・ウルフが言うように、当時のメンフィスで演奏されていたブルースは、とにかくラウドでロッキンだったんですねぇ。

ビッグ・ウォルターも、そんな環境の中で必要に迫られて”アンプリファイド”という技を編み出したんだと思います。

という訳で、彼がメンフィスでレコーディングしていた頃(一部シカゴ時代のものあり)の音源「メンフィス・レコーディングス」を聴いてみましょう。



【収録曲】
1.Jumpin’ Blues
2.Black Gal
3.Hard Hearted Woman
4.Go Long Woman
5.What’s The Matter With You (take 1)
6.Cotton Patch Hot Foot
7.Little Boy Blue (take 2)
8.I’m In Love With You Baby (Walter’s Blues) (take 1)
9.Blues In The Morning
10.Now Tell Me Baby (take 1)
11.I’m In Love With You Baby (Walter’s Blues) (take 2)
12.What’s The Matter With You (take 2)
13.Little Boy Blue (take 1)
14.Now Tell Me Baby (take 2)
15.Have A Good Time
16.Need My Baby (in a session)
17.Need My Baby (in a session)




お〜いぇ〜♪ いぇいいぇ〜い♪ な、8ビート・シャップル・ナンバーが多く、コレが実にノリやすくゴキゲン、またサウンドがいいですね。カラッと乾いたサウンドが醸しだす、何とも言えないヴィンテージ感と、ゲインの付いてないアンプでここまでやれるかというささくれだったギターの音と堂々渡り合っているホートンの、音色こそマイルドだけどかなりモダンなフレーズを繰り出すハープ、たまりません。

これがシカゴに行って小慣れてくると、よりヘヴィな質感になるんだよな〜。なんて機嫌良く思いながら、繰り返し聴けるサウンドです。これぞ50'sメンフィス・ロッキン・ブルース!

この時点でビッグ・ウォルターのハープは後年のようにギンギンにリヴァープを効かせた音ではありませんが、ワイルドに荒くれるバック・サウンドと何の違和感もなく、埋もれることなくブギしてジャンプするハープはたまりませんね。「戦後メンフィス・ブルース」と言っても、あんまりピンと来てくれる人は少ないんですが、このサウンドの質感、味わってしまったらもうこの音のとりこになりますよ。

ちなみにこのセッション、バックには後にジャズ・ピアニストとして有名になるフィニュアス・ニューローンJr.ら、ニューボーン兄弟、ギター、ヴォーカル、ドラム、ハープ、カズーを同時に一人でこなす”一人フルバンド男”(ここではギター、ドラムを同時演奏)ジョー・ヒル・ルイスなど、結構豪華なメンツが脇を固めております。

ちなみに”リトル・ウォルター”という芸名は、実は最初ビッグ・ウォルターが名乗ってたんです。

年齢的に大分後輩になるウォルター・ジェイコブスという少年が”リトル・ウォルター”を勝手に名乗って有名になっちゃったので「ま、いっか。じゃあオレはビッグ・ウォルターを名乗ろうね」と、あっさり名前を譲って、特にリトル・ウォルターのことを嫌うとかそういったのもなく、会えば親しく話をして可愛がってたんだとか。この人のそういうとこほんと好き。



(もういっちょご機嫌なやつを♪ 彼のハーモニカは音色フレーズ共にサニーボーイ・ウィリアムスンT世の影響が強いように思いますがどうでしょう?)

ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 14:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする