2016年12月24日

B.B.キング クリスマス・セレブレイション・オブ・ホープ

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B.B.キング/クリスマス・セレブレイション・オブ・ホープ
(ユニバーサル)

アメリカのミュージシャンにとって、スターの条件というのは

「クリスマス・アルバム」を作ること。

なんだそうです。

で、B.B.キング。

ブルースファン、いや、洋楽好きな人なら、B.B.がブルースを代表する大スターであることは、既に承知のこと。

長年シーンの最前線に立って頑張ってきたからベテランになって有名になったんでしょ?ほれ、60年代になってクラプトンとかストーンズがブルース人気に一役買って、それで「B.B.は凄い」とか言ったから人気出たんじゃ?と思う人、それは正解だけれどもちと違いまして、B.B.の場合は比較的若い頃からブルースの枠を飛びぬけた、異例とも言える人気を誇ってたんです。

その理由というのはもちろん50年代当時は斬新だったエレキギターでの単音のソロをぎゅいぎゅいと、当時最も人気だった「ホーン入りのフルバンド・スタイルのバンドサウンド」に乗っけて、当時これまたブルースやR&Bの世界では一番ナウでカッコイイものだったゴスペルの影響が濃い強烈なシャウトで唄ってたとか、そういうスタイル的なものもあったでしょうが、やっぱり何よりもB.B.キングという人は、ブルースという音楽を「個人の感情の奥底を表現したもの」として明確に捉え、かつそれを「最高のエンターティメントとして吐き出すこと」に、全キャリアを通じて心砕いていたからでしょう。

なのでB.B.のブルースは、いつどんな時にどの時期のどの曲を聴いても、最高にディープなブルースとしての奥行きと、パンチの効いたブラック・ミュージックとしての興奮と、上質なポップスとしてのツカミを持っています。

B.B.のブルースは、王道も王道、その真ん中に常にどっしりと腰を下ろしてはおるのですが、そこからちょいと手足を伸ばせばジャズにも行けるしジャンプやジャイヴにもR&Bにもソウルにも行けるし、当然ロックにもすぐ行けちゃう。それがどれだけ凄いことかということを、アタシは最近にしてしみじみ考えるようになっております。恐らくB.B.に関して言えば、60年代にロックの連中がブルースを再評価しなくても、一定以上の人気を保ったまま、60年代70年代、そして80年代90年代をたくましく生き残っていたと思います。えぇ。

さて、随分と前置きが長くなりましたが、今日ご紹介するのはB.B.キングのクリスマス・アルバムです。






【収録曲】
1.プリーズ・カム・ホーム・フォー・クリスマス
2.ロンサム・クリスマス
3.バック・ドア・サンタ
4.クリスマス・イン・ヘヴン
5.アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス
6.トゥ・サムワン・ザット・アイ・ラヴ
7.クリスマス・セレブレイション
8.メリー・クリスマス・ベイビー
9.クリスマス・ラヴ
10. ブルー・デコレイションズ
11.クリスマス・カムズ・バット・ワンス・ア・イヤー
12.ブリンギング・イン・ア・ブランド・ニュー・イヤー
13.蛍の光
14.ホワット・ア・ワンダフル・ワールド(ボーナス・トラック)


リリースは2003年、B.B.が何と御歳73歳の頃に”満を持して”リリースに踏み切ったアルバムなんですよ。

アタシは正直「B.B.ほどの大物が、これまでクリスマス・アルバムを作ってなかったんだ」という驚きの方が大きかったですね。えぇ、何と言っても最初に書いたようにアメリカのミュージシャンにとっては「クリスマス・アルバムを作ること」がひとつの人気の基準であった訳ですから。本当に意外でした。

でもまぁここまで来たら今のすっかりいいじいちゃんになったB.B.のアルバムだから、もうここまで来たら新作そのものがお祭りみたいなもんだから、きっと和気藹々の同窓会みたいな感じでゲストとか招いてやってるんだろう。うん、いいね、いいよね、そういうのもなんかね。

とか、思っていたのですが、コレが聴いてみてビックリ、ゲストとかは一切ナシで、当時のツアーバンドのみをバックに、唄もギターもかなり気合いの入った、本気度の高いクリスマス・アルバムでした。

のっけからロンサム感満載のじっくり聴かせる@で「あ、すいません、クリスマスナメてました」と反省したアタシ。

Aは、B.B.の敬愛するローウェル・フルスン御大の曲かと思えば、コチラはロイド・グレンのヴァージョンで、これまたミドルテンポでジワジワ盛り上げながら聴かせます。

「これぞブルースのクリスマス!」といった感じの、すこぶるハードボイルドな渋みが滲むB(原曲はクラレンス・カーターだぜぇ!)、ここで盛り上げといて次は絶対にバラードで泣かせにかかると思ったらやっぱりその通り涙腺直撃のC、前半のここまでで、本当に「あぁ、いいもん聴いたなぁ・・・と余韻に浸る間もなくジャジーなオルガンでスウィンギーに後半の幕開けを告げるDのインスト、すげぇグッとくるバラードE、60年代にヒットしたクリスマス・ソング(シングルは出してたの)のアレンジも楽しいセルフカヴァーF、ブルース/R&Bクリスマス・チューンの必殺定番曲、チャールズ・ブラウンのGときて、インストでたっぷりギターの泣きを響かせるH、このアルバムでは一番パーティー度の高い軽快なI、チャールズ・ブラウンと同じく、若き日のB.B.にとってはアイドルであったシンガー/ピアニスト、エイモス・ミルバーンのJ、そして再びチャールズ・ブラウンの小洒落たパーティー・ソングのK。

で、ラストの「蛍の光」なんですが、これは「ヤラレた!」「まさかここでこの曲が来るとは!」と話題になり、確かグラミー賞のベスト・インストゥル・メンタル賞に輝いた曲なんですけど



これにはちょいとした意味があって、もちろんこの曲は「古い年を送って新年を迎える曲」なので、クリスマス・アルバムのラストには意外でもなく、じつにしっくり来る選曲なんですが、Jのチャールズ・ブラウンのヴァージョンを聴いてみてください。



ね、イントロで使われてるでしょ。

こういう「先人へのさり気ないリスペクト」を大事な所にサラッと入れ込んでくるB.B.カッコイイんですよね〜・・・。

単純にクリスマスという「メモリアルな意味」だけじゃなくて、バンドとの本気のやりとりとか、70を過ぎてもまだまだアツいB.B.の気迫とか、こういった”リスペクト”がいっぱい詰まった、本当にひとつのアルバムとしての聴きどころが一杯詰まった素晴らしいB.B.のクリスマス・アルバムです。

それとこのアルバム、収益は、がんやエイズの治療などを行う医療センターに寄付されたそうです。

「自分の長年の夢」を実現させたその喜びを、人のためにスマートに使う。そういうところがカッコイイんですよねぇ・・・。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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posted by サウンズパル at 14:54| Comment(0) | TrackBack(0) | クリスマス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする