2016年12月29日

ジャニス・ジョプリン チープ・スリル

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ジャニス・ジョプリン/チープ・スリル
(ソニー・ミュージック)

ジャニス・ジョプリンは、もちろんロックやブルースを聴く人にとっては、例外なくその名前を聴けば胸にこみ上げてくるものを覚える特別な歌姫だと思います。

小柄な体から内面のすべてを振り絞りながら吐き出すような唄い方にしても、その生きざまにおいても、あらゆる意味で60年代ロックを象徴する(そして悲劇の)ヒロインでありながら、アタシなんかはどうしても”ジャニス・ジョプリン”という言葉を聞くと、それがどうしても「ブルース」という言葉とイコールなんじゃないかと思い、いつも心が熱く震えて目頭が熱くなります。

アメリカの中でも最も保守的と言われるテキサスで生まれ、生来の内気さと繊細すぎる性格から、同級生たちとはあまり馴染めず、自宅で家族の世話を焼きながら、自室でベッシー・スミスやレッドベリーなど、古いブルースのレコードを聴いたり、本を読んだり、ギターを弾きながらブルースを唄う静かで優しい少女はしかし、どうしても学校での生活とはうまが合わず、大学を中退して、ヒッピー達が集うサンフランシスコに一人出て行きます。

ここで彼女は唄が認められ、初めて心打ち解けて話が出来る仲間達と出会う訳なんですけれども、同時にドラッグとも出会ってしまい、片時も手が離せなくなってしまうんです。

結局、彼女は子供の頃からの夢だった「唄で認められる」という夢を叶えて、何万人もの観衆を熱狂させるスターになっても、色んな男達と付き合っても、最終的に心の隙間を埋める相手に選んだのはヘロインで、それがために正式にデビューしてからたった3年で、27歳の短い生涯を閉じざるを得ませんでした。

「独特」とか「個性的」とかいう陳腐なものを通り越して、鮮烈と衝撃に彩られたジャニスの唄は、人生の苦悩や悲哀に彩られています。

でも、彼女の唄からは、常にそういったものを飛び越えて心を躍らせる不思議な前向きのエネルギーがあって、アタシはそれにいつも元気付けられたり励まされたり、慰められたりしています。

「ブルース」といわずして何と言いましょう。




【収録曲】
1.ふたりだけで
2.愛する人が欲しい
3.サマータイム
4.心のカケラ
5.タートル・ブルース
6.オー、スウィート・マリー
7.ボールとチェーン
8.通行止め *
9.フラワー・イン・ザ・サン *
10.キャッチ・ミー・ダディ (ライヴ)*
11.マジック・オブ・ラヴ (ライヴ)*

*ボーナストラック



ブルースをがむしゃらに補充したい時アタシは、ジャニスの「チープ・スリル」をよく聴きます。

サンフランシスコで出会い、最初に彼女を受け入れた"ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニー"というロック・バンドが、ジャニスのヴォーカルをメインにして製作した、ジャニスにとっては実質的なデビュー・アルバムです(ビッグブラザー&ホールディング・カンパニーとしては2枚目)。

伝説のモンタレー・ポップ・フェスティバルで名演となり、ジャニスの名前を一気に知らしめた、ブルース・シンガー、ビッグ・ママ・ソーントンのカヴァー「ボールとチェーン」、身を切るような壮絶な歌唱で彼女の代表曲となった「サマータイム」はもちろん、明るく弾ける唄い方が何故かどうしようもなく切ない「心のカケラ」、ピアノのみをバックに、戦前ブルースのフィーリング濃厚な「タートル・ブルース」とか、あぁもうたまんなくヒリヒリするような曲がたっぷり入ってます。

ビッグ・ブラザーの演奏は、お世辞にもテクニカルとは言えません。ファズをガンガンかましてキレの良さとサイケな破れっぷりで暴れるサム・アンドリューのギターは「おぉ!」と思わせますが、リズム隊は結構素人っぽいんですよね。

だからジャニスはもっと本格的なソウル/R&Bなバッキングが出来るバンドを求めてビッグ・ブラザーから離れて行っちゃうのですが、この粗削りでドサクサな感じのバンド・サウンドとジャニスのエモーショナルなヴォーカルが、テク云々とはカンケーないところで爆発してるこの感じ、やっぱり特別です。

ブルースといわずして何と言いましょう。





(ジャニスとビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーによる「ボールとチェーン」モンタレー・ポップ・フェスティバルの映像です)


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 21:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする