2017年01月06日

ティナ・ブルックス トゥルー・ブルー

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ティナ・ブルックス/トゥルー・ブルー
(Bluenote/EMIミュージック)

一度音を知ってしまってからというもの「その名前を聴くだけで、特別な感情が胸にじわっと溢れてきてグッとなる」という人がおります。

その名前はティナ・ブルックス。

ブルーノートにたった1枚のアルバムを残し、その後シーンから忽然と姿を消した「幻のテナーマン」と言われた人なんですが、そのプレイはど真ん中のモダン・ジャズ/ハード・バップのファンキーな味わいに溢れ、そのテナー・サックスの音色は、豊かなブルース・フィーリングに裏付けられたコクと、奥底からほんのり香る何ともいえない男の哀愁が全編に漂っており、これがもうたまりません。

最初に知ったのはいつだったか・・・。あぁ、思い出した。ジャズを聴き始めて、最初にカッコイイと思ったフリー・ジャズ系、それから後期コルトレーンやアルバート・アイラー、アーチー・シェップ経由で集め出したImpulse!レコードのアルバムなんかを集めている時急に

「そろそろフリー・ジャズ系のものを聴いてみたい、何聴けばいいんだろう?BLUENOTEって一番有名らしいんだけど、やっぱりこの辺から聴けばいいのかなぁ?」と思い立ち、ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」やジャッキー・マクリーンの「スウィング・スワング・スウィンギン」など、一通りモダン・ジャズの名盤と呼ばれているものを聴き始めてみました。

そん時は「ブルーノート=アンダーグラウンドなジャズに対しての大メジャー。何か派手で明るいの多そう」と、偏見(汗)を持っていたんですが、いざ聴いてみたブルーノートのアルバムはどれも、ドストライクなジャズであると同時に、ブルースやR&Bなどの”渋いエッセンス”をものすごく濃厚に感じさせるものが多くて

「いや、ブルーノート何か思ってたよりダークでいいじゃん、ブルースじゃん♪」

と、ひとしきり感動したんですね。

色々聴いて気に入ったのが実はハンク・モブレイ。

この人の音色は、これはもう好きな人は「ああわかる」の類だと思います。派手さは一切ないんだけど、丸みのある豊かな音色と洗練されたブラックなフィーリングで、どの音源に参加していても「あ、いい味出してるテナー」とオイシイ存在感を醸してますよね。

「うん、ハンク・モブレイ。コルトレーンとかシェップと全然真逆でまたそれがいいぞ。こういうテナーの人他にいないかしらん」

と、雑誌をパラパラめくっていた時に出会ったのがティナ・ブルックスでした。

例によって

・幻のテナーマン

・でもそのプレイは実に良質なモダンジャズの”小粋”を体現するものである

・真にジャズを愛する人は、そのプレイから滲み出るR&Bやゴスペルのエッセンスと奥深い哀愁のとりこになるはずだ

とか、ジャズ聴き始めのアタシの心をとてもくすぐる文章と共に、生前残した唯一のリーダー作「トゥルー・ブルー」と、死後に未発表音源を集めてリリースされた「バック・トゥ・ザ・トラックス」、その他参加したすべてのセッション作品が丁寧に紹介されておりました。

「これは聴かねば」って当然なりますよね。

で、ジャズ雑誌にそそのかされるままに買ったのがまずは唯一のリーダー作である「トゥルー・ブルー」




【パーソネル】
ティナ・ブルックス(ts)
フレディ・ハバード
デューク・ジョーダン
サム・ジョーンズ
アート・テイラー

【収録曲】
1.グッド・オールド・ソウル
2.アップ・タイツ・クリーク
3.ドリスのテーマ
4.トゥルー・ブルー
5.ミス・ヘイゼル
6.ナッシング・エヴァー・チェンジズ・マイ・ラヴ・フォー・ユー


結論から言ってしまってアレなんですが、このアルバムがもう「大当たり」でした。

ブルーノートというレーベルの特徴をザックリといえば

「ファンキー大好き!」

「哀愁大好き!」

の一言に尽きると思うんです。

更にザックリ言えば、この2つの要素がしっかり入ってるアルバムが、ブルーノートの”当たり”です。

有名アーティストとか、売れたとか、そんなのは関係ありません。そもそもが「ブラック・ミュージック大好きおじさん」である、オーナーのアルフレッド・ライオンが「君いいね」と思ったミュージシャンに声をかけて、相性の良い、または良さそうなミュージシャンをスタジオに集め、スタジオでは満足行くまでじっくりとレコーディングさせる。

特に50年代60年代のブルーノートは、そんなライオンさんの愛と、それに最高の演奏で応えるミュージシャンの愛。そして共通する「ジャズのルーツであるブルースやリズム・アンド・ブルース、ゴスペルに対する愛」で彩られておるんです。

で「トゥルー・ブルー」。

ティナ・ブルックスの個性は「吹き過ぎないことが個性」と言えます。

ややハスキーな、くぐもった音色でもって、その語り口で聴かせるテナー。元々はR&Bのバンドでキャリアを積んだだけあって、そのフレーズはモダンだけれどもその場面でも隠しきれないブルースのやるせなさが、特にミディアムテンポの哀愁系ナンバーではジワジワジワジワと染みてます。

そんなブルックスの味わいに、絶妙なサポートで合わせるバックもまた見事、くすんだブルックスのトーンに合わせて頷くように抑制の効いたソロを展開するフレディ・ハバード、”哀愁系ファンキーピアノ”の若干”哀愁”が強めのデューク・ジョーダン、堅実にフロントを引き立てながら、味わいの部分を柔らかに拡げるサム・ジョーンズのベースとアート・テイラーのドラムス。

この、ブルックスの音色に寄り添っていい演奏を作り上げているバックとのチームワークが素晴らしいんですね。細かいことを色々と言うよりは、そのアーシーかつどこかやるせない雰囲気に「いいわぁ・・・」と酔うべきジャズ、それがティナ・ブルックスでありますね。







(こういう影のあるミステリアスなハードバップ、カッコイイですね。音色も合ってます♪)


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする