2017年01月10日

ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ

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ザ・ロンドン・ハウリン・ウルフ・セッションズ
(Chess/ユニバーサル)

ブリティッシュ・ロックとブルース、特にシカゴ・ブルースの関係というのは、切っても切れないものがあります。

言うまでもなくローリング・ストーンズやクラプトンは、デビュー前からチェス・レーベルのレコードを買い漁って、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、ボ・ディドリー、リトル・ウォルターなどなどなど、黄金期のシカゴ・ブルース/R&Bの演奏を熱心に聴き込んで、またはコピーにいそしんでおったことは、これはもう有名を通り越して常識な話。

もちろんブルースが大好きだったのはストーンズやクラプトン周辺だけでなく、この年代のイギリスの若者達にとってはブルースやR&Bというのは何てったって、それまで自分達の国にはなかった、とっても刺激的で斬新で不良でカッコイイ音楽だった訳ですから、50年代後半から60年代のイギリスでは、アメリカ以上にブルースがトッポい若者の間で大人気だったんですね。

一方でブルースにとっては、イギリスのロックの人達というのはこれはもう大恩人な訳です。

何故ならその頃まだアメリカではブルースやR&Bというのは「黒人の音楽」だった。

チャック・ベリーやエルヴィス・プレスリーの登場によって、ようやくブラック・ミュージックが一般に知られるようにはなったのですが、既に時代はブルースから誕生したばかりのロックンロールに人気の軸が移り、彼らが主なターゲットにしていた黒人の若者層は、そり都会的で洗練されたソウルの方に興味が移っていて「ブルースは一昔前の音楽」とまで言われてたところに、英国勢が「んなことねぇよ!こんなイカシた音楽あるか!!」と、海の向こうで盛り上がって、その盛り上がりがやがてアメリカの都市部のロック少年達に逆輸入みたいに伝わって、ブルースは息を吹き返した。という流れがあるんですね。

そんなこんなで1960年代には、ブリティッシュのミュージシャン達による「ブルースお陰参り」的な企画がライヴやレコードでは次々と誕生します。

また、ブルースの側からも積極的に若手ロックミュージシャン達とセッションしたアルバムなんかが出たりしまして、それぞれ良い感じに話題を提供し合っていた訳です。

そして遂に1970年、チェス・レコードで一時代を築いた大物ブルースマン達をロンドンのスタジオに招いてアルバムを作ろうという話があり、「イン・ロンドン」というタイトルで、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、ボ・ディドリー、チャック・ベリーといった、横綱級の4人がロンドンのスタジオで彼らを尊敬し、崇拝するロック・ミュージシャン達とスタジオアルバムを製作します。

以前チャック・ベリーのアルバムは解説したかな?という訳で、本日はわれらがハウリン・ウルフ親分のアルバムをいってみましょう♪



【収録曲】
1.ロッキン・ダディ
2.アイ・エイント・スーパースティシャス
3.シッティン・オン・ザ・トップ・オブ・ザ・ワールド
4.ウォリード・アバウト・マイ・ベイビー
5.ホワット・ア・ウーマン!
6.プア・ボーイ
7.ビルト・フォー・コンフォート
8.フーズ・ビーン・トーキング?
9.ザ・レッド・ルースター (誤った出だし&ダイアログ)
10.ザ・レッド・ルースター
11.ドゥ・ザ・ドゥ
12.ハイウェイ49
13.ワン・ダン・ドゥードゥル
14.ゴーイン・ダウン・スロウ (Bonus Tracks from London Revisited)
15.キリング・フロア (Bonus Tracks from London Revisited)
16.アイ・ウォント・トゥ・ハヴ・ア・ワード・ウィズ・ユー

1970年5月に四日間かけてレコーディングされたこのアルバム、まぁまずは豪華この上ない参加メンバーからご紹介いたしましょう。

ウルフと片腕のヒューバート・サムリン(ギター)そして若手ハーモニカ奏者のジェフリー・カープが、シカゴからやってきたブルースマン達。

そして英国勢が、まずこのセッションの人選やら何やら任されて、実質的にイニシアチブを取っているエリック・クラプトンを筆頭に、ビル・ワイマン(ベース)とチャーリー・ワッツ(ドラムス)、イアン・スチュワート(ピアノ)のストーンズ勢。

そして英国ブルースロックの雄、セッションには参加しなかったのでブ厚いホーンセクションと共にオーバーダブ参加、名手スティーヴ・ウィンウッドのピアノとオルガンも入ってます。

更に更に、初日のセッション(A)に間に合わなかったビルとチャーリーの代わりに、何とリンゴ・スターがドラムを叩き、クラウス・フォアマンがベースを弾いていたり、まーおっそろしいほど豪華、さながら「ブルース祭りイン・ロンドン」のごつなっとりますねこれ。

とにかく英国勢は、ガキの頃からウルフ親分大好きで「親分ようこそロンドンへ!」と、そりゃもう大歓迎モードだったでしょう。

しかし親分は機嫌が悪い。

「何でワシがイギリスくんだりまで来て、こんなロックのセッションに参加せにゃあいけんのじゃ。大体最近こんな仕事ばっかでやれんわい」

地元ではシャレじゃなく本気で命のやりとりスレスレの、やっばい現場で場数を踏んできたウルフ親分です。美学として「ブルースは和気藹々でやるもんじゃないどぉ!」という気持ちを人一倍持ってます。

更にこの時期は持病の心臓病と交通事故の後遺症によって、体調もかなり悪かったので、それこそ変に気を遣われたり、妙に優しい扱いを受けたり、そういうのも気に入らなかったんでしょう。当初和やかなムードだったスタジオは、親分登場と共に、かなり気まずく重た〜い空気になり、セッションはそのまんまスタートしてしまったとか。。。

しかし、音が鳴って演奏が始まれば、親分も「本気」が発動します。タイトでシャキッとしたブリティッシュ・ロックのノリとシカゴ勢の持つザラついた引きずるようなフィーリングは、本質的に溶け合うものではありませんが、親分は吠え、クラプトンは遠慮なしにガンガンソロを弾きまくり、ヒューバート・サムリンは一歩引いて絶妙なサポートギターで間を取り持つ、この緊張感溢れる空気はどうでしょう。素直に「カッコイイ!」と思える刺激かスピーカーからはビシバシ飛んできます。

圧巻はウルフ親分屈指の、重く引きずるスローナンバー「リトル・レッド・ルースター」です。

演奏がスタートするものの、やはりノリが合わず、一回ストップしてバンドに指示を出した後に再開するところもそのまんま収録されてますが、この時クラプトンが「親分すいません、自分らにはこのフィーリングがなかなか掴めないので教えて下さい!」と素直に教えを乞うたらしいんですね。

これでウルフ親分機嫌が直って、セッションは徐々に和やかなものになったみたいです。素直に本音でぶつかってくる若者に優しい親分、最高なんですが、実は最初から仲良くやりたかったけど「ブルース背負ってる」という意気込みもプライドもあって、頑なな態度取らざるを得なかったのかも知れません。それを見通して絶妙なタイミングで行けるクラプトンも流石です。

バックがほとんどこの時代の王道ブルースロック・サウンドなので、いきなりギトギトなのはちょっと・・・。という向きにはとにかくオススメですが、そうでなくとも元々ロッキンなウルフ親分、不自然さも妥協もなく、いつも通りノッております。

いや、本当は最初から案外楽しんでたんじゃないですかね?

あと、このアルバムのもうひとつの聴きどころはビル・ワイマンのベースです。

ストーンズではミックやキースの盛り立て役に徹している、やや引いたプレイのビル・ワイマンがこんなにブイブイ攻めるベースを弾く人だとは、コレ聴くまで思ってなかったです。


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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posted by サウンズパル at 18:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする