2017年01月14日

テキサス・ナイフスライド・ギター・ブルース

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ランブリン・トーマス、オスカー・ウッズ/テキサス・ナイフスライド・ギター・ブルース
(Pヴァイン)

ブルースギターの尽きせぬ魅力のひとつがスライドギターでありますね。

今はほとんどが指にボトルネックをはめたスタイルが主流になっておりますが、その原型を辿ると、ギターを膝の上に置いて、ナイフを滑らせる「ナイフ・スライド」というスタイルに行き着きます。

ナイフ・スライドがどれぐらい古いのか?誰が最初に始めたのか?というのは今もってブルースの歴史の藪の中でありますが、少なくとも弾き語りブルースマンのレコードとしては一番古いシルヴェスター・ウィーヴァーという人が、1923年には「ギター・ブルース」のタイトルでレコーディングした曲で、その頃には既に奏法として定着してたと言えるでしょう。

さてさて、このナイフ・スライド、最初の頃どこで拡がったのか?といえば、これはテキサスです。

「え?スライドといえばミシシッピ・デルタでしょ?テキサスって意外だなぁ」

と、思われる方も多いかも知れませんが、どうやらスライドギターは、テキサスにほど近いルイジアナ州のシューヴリポートという街で盛んになり、そこから西へ行ってテキサスで一気に拡がり、東へ行ってミシシッピのデルタ地域で進化したという見方が出来そうです。

今日ご紹介するのは、そんなルイジアナ州シューヴリポートで流行り、テキサスに広まったその当時の空気を感じさせるナイフ・スライドの名手二人のコンパイル盤。

スタイルとしては至極シンプルで、やや陰影の濃い味のあるブルースを聴かせるランブリン・トーマスと、ブルースからラグタイム、ジャズバンドとの共演まで多彩な芸を持つオスカー・ウッズ。

特にランブリン・トーマスに関しては、残された全録音ということもあり、歴史的にも貴重な音源なんですが、それだけでなくやはり戦前ブルースの"ナイフ・スライド"という独自のスタイルの楽しさがギッシリ詰まった素晴らしいアルバムなんですよ。




【収録曲】
(ランブリン・トーマス)
1.So Lonesome
2.Hard To Rule Woman Blues
3.Rock And Key Blues
4.Sawmill Moan
5.No Baby Blues
6.Ramblin'Mind Blues
7.No Job Blues
8.Back Gnawing Blues
9.Jig Head Blues
10.Hard Dallas Blues
11.Ramblin'Man
12.Poor Boy Blues
13.Good Time Blues
14.New Way Of Living Blues
15.Ground Hog Blues
16.Shake It Gal
(オスカー”バディ”ウッズ)
17.Red Nightgown Blues
18.Davis's Salty Dog Blues
19.Evil Hearted Woman Blues
20.Lone Wolf Blues
21.Don't Sell It-Don't Give It Away Blues
22.Baton Rouge Blues
23.Jam Session Blues
24.Low Life Blues
25.Token Blues
26.Come On Over To My House Baby Blues


まずは前半16曲収録のランブリン・トーマス。

戦後90年代まで活躍した、ジェシー・トーマスというブルースマンがおりますが、そのお兄さんです。

1902年(頃)にルイジアナ州ロンガスポートという街に生まれ、ほどなくシューヴリポートに行き、こことテキサス州のダラスとを行き来しているうちに、ブラインド・レモン・ジェフアソンやテキサス・アレクサンダーら、同地のブルースマンらと交流を深め、1928年から32年にかけて散発的にレコーディングを残しております。

その短い生涯(1940年代に旅先のメンフィスで病没)のほとんどを放浪の旅に費やした彼のブルースは、芸名通り"旅"にちなんだ苦悩や悲哀を朴訥な唄い口と、ヴォーカルに静かに寄り添う内省的なギターに、じんわりくる個性を感じさせます。

「職を求めてぶらぶらしてたら放浪罪で捕まった」

など、生活者ならではのブルーなテーマを扱った歌詞を、語りかけるように唄えば、ギターがそのメロディを追いかけるように、シンプルなコール&レスポンスの繰り返しが、この人の唯一ともいえるスタイルです。

しかも唄っている間は派手なバッシングは鳴らさず、場合によってはギター弾かないことすらありますので、かなり原初的といえば原初的、聴きようなやよっては相当にヘヴィ。バンドブルースに鳴れた耳には、いきなり喉元に錆びたナタでも突き付けられたような戦慄を覚えるのではないでしょうか。

一方、後半の10曲で、打って変わって派手で華麗なナイフさばき(?)で楽しませてくれるのが、オスカー"バディ"ウッズ。

この人は1900年頃、シューヴリポート生まれとされておりますが、正式な事は判っておりません。

しかし、1930年に白人ヒルビリー歌手、ジミー・デイヴィスのバック・ギタリストとしてレコード・デビューしてから、自己名義での録音の合間にグループでの録音もちょこちょこ残していることなどから、戦前のテキサス〜ルイジアナ近辺では、かなり名の売れたギタリストであり、放浪生活で何とか食っていたランブリン・トーマスとは対照的に、そこそこ羽振りの良い生活をしていたんじゃないかと思われますが、1940年に民俗学者のアラン・ロマックスに発見され、インタビューを受けた時には

「街角やジューク・ジョイントで演奏して生計を立ててるヨ。景気?良くないね、こんな生活をもう15年は続けてるなァ・・・」

と、語っていたようで、実際のところはよく判りません。

しかし、軽やかでどこか都会的な洗練と華やかさを持つ、例えば同じ30年代に活躍した、大都会シカゴのタンパ・レッドなんかにも通じそうな音楽性と、カラッとした明るい唄いっぷりは、なかなかどうして景気の良い感じがします。

ジミー・デイヴィス名義の「ミッドナイト・ガウン・ブルース」なんかもう、軽快なラグタイムですし、曲の展開に合わせて速度を上げて演奏をリードするところなんか、なかなか斬新ですし、管楽器(コルネット)も入るジャジーな後半もかなりセンスよく、この人の尋常でない芸の広さと懐の深さを感じさせます。


しかし、ランブリン・トーマスとオスカー・ウッズ、ほぼ同じ時代の同じ地域を中心に活躍した人ですが、こんなにも正反対&ほとんどスタイルに共通点が見られないというところがまた戦前ブルースの"ひとり1ジャンルぶり"ですね。本当に素晴らしいです。










(内へ内へ沈み込んでゆくランブリン・トーマスと)



(明るく豪快な味わいのオスカー・ウッズ♪)




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする