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2017年02月01日

CAN モンスター・ムービー

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CAN/モンスター・ムービー


つい先日ツイッターで「1969年の音楽でオススメないですか?」と、アタシにナイスな質問がありました。

質問してくれたのは、学生時代はもうサウンズパルの大常連で、今は東京でクウチュウ戦というイカシたプログレッシヴ変態ロックバンドをやっている西平由美子君だったのですが、これの質問でアタシの中で、何かこう「ビビビ!」とクるものがあったんです。

いや、だってほれ、1969年ですよ「ロックな年」の語呂合わせでおなじみで、実際にレッド・ツェッペリンのファーストだったり、キング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」だったり、オールマン・ブラザーズやザ・バンド、ブラインド・フェイスのデビュー作。

ビートルズは「アビー・ロード」、ストーンズは「レット・イット・ブリード」キャプテン・ビーフハートの「トラウト・マスク・レプリカ」や、フランク・ザッパ師の「ホット・ラッツ」も確かそーだったかもしんねー。

で、ロックだけじゃなくて、ジャズではマイルス・デイヴィスが「イン・ア・サイレント・ウェイ」と「ビチェズ・ブリュー」でジャズのエレクトリックを高らかに宣言して、ロックへの対抗意識の青い炎をメラメラと燃やしていた丁度その時期。

他にもソウルだったりサイケだったり、色々と1969年の名盤というのはあるんですが、ホントひとつひとつ取り上げてたらキリがないぐらいなんです。

「このシーンが盛り上がった」じゃない、どのシーンのどのミュージシャンやバンドも「他にない自分達だけのサウンド」を切り開くのに必死になって、結果ジャンルを超えて突き抜けた音同士が触発され合い、凄まじい時代を作っておったのだなと「69年」のことを考えると改めて驚愕致します。

で、この年の音楽のすごいところは、アメリカやイギリスのメジャーな国のメジャーな部分だけじゃなくて、それ以外の国でも音楽が同時多発的に全く独自の進化を見せ始めたこと。

「それ以外の国」

というのは、その頃のいわゆる西側諸国。

具体的に言うと日本、ドイツ(西ドイツ)、イタリア、フランスなどです。

特に60年代に、アメリカから大量のジャズ・ミュージシャンの移住を受け入れたドイツとフランス。この両国では、十代の頃ジャズの洗礼を受けた若者達が、後になってからロックバンドを始めるという、一風変わった流れが生まれておりました。

「ジャズ的なビートの実験と、インプロヴィゼーション(即興演奏)をロックに融合させた音楽」

といえば、イギリスではキング・クリムゾンやソフト・マシーンといったバンドが既にシーンを賑わせておりましたが、フランスでは1969年に大のコルトレーン・フリークであるクリスチャンヴァンテという青年が、イタリア放浪中に”啓示を受けて”マグマという凄まじいジャズ・ロック・バンドを結成。そしてドイツでは、CAN(カン)そしてグル・グル、アモン・デュール、タンジェリン・ドリーム、アシュ・ラ・テンペルとかいうバンド達が登場します。

これが、後に「プログレッシブ・ロック」と呼ばれる独特のクロスオーヴァーかつ実験精神に富んだロックの成り立ちではあるんですが、ドイツだけが、どうにもオカシくて面白いんです。

どうにもオカシくて面白いので、いわゆる「プログレ」と名付けられた音楽の中でも、ドイツだけは「クラウトロック」とかいう独自の名称が付けられてたりしますが、今日は1969年リリースの、カンのデビュー・アルバム「モンスター・ムービー」を紹介しながら、そこんとこをちょっとお話していきます。




【収録曲
1.Father Cannot Yell
2.Mary, Mary So Contrary
3.Outside My Door
4.Yoo Doo Right


CAN(カン)が結成されたのは1968年。キース・ジャレットのライヴ盤でおなじみのドイツはケルンという町で、クラシック/現代音楽の理論をみっちり学んだイルミン・シュミット(キーボード)、ホルガー・シューカイ(ベース)と、結成時には既にジャズ・ドラマーとして名を馳せていたヤキ・リーヴェツァイト、ホルガーの親友で、現代音楽や実験音楽を学ぶ傍ら、ロックやソウルなどを熱心に聴いていたミヒャエル・カローリ(ギター、ヴァイオリン)、そしてアメリカ人の実験音楽家、デヴィッド・ジョンソンで結成。

当初は実験色の濃いインストゥルメンタルを志向していたようですが、デヴィッド・ジョンソンがデビュー前に脱退し、ベトナム戦争の徴兵を拒否してドイツに逃れてきた黒人ヴォーカリストのマルコム・ムーニーが参加します。

おっと、ここでマルコムを"ヴォーカリスト"と書きましたが、これ違います。や、カンに加入してからのパートは紛れもなくヴォーカルなんですが、コノ人は元々彫刻家で、音楽に関しては全くの素人なんですよ。

しかし、カン(当時は別のバンド名を名乗っていた)のセッションに誘われて「じゃあまぁとりあえず・・・」と、楽器できないからマイク持って唄ってみたら、これがバンドの音にピッタリはまり、更にメンバー達に「俺達ロックでいこう!」と決意させ、あっという間に自主制作のアルバム「モンスター・ムービー」は出来上がり、遂に1969年、ロック・バンドCANが世に出現するに至ったのであります。

さて、2チャンネルの録音機材で作られたこのアルバム、サウンド自体は実に粗削りで、ローファイ極まりない味がありますが、内容はすこぶるハードで研ぎ澄まされた鋭さと緊張感がみなぎっております。

キレキレのサイケなギター、太いボトムのラインを冷静に刻みながら、時折感情の糸が切れたようにフリークアウトしてゆくベース、この機材で考え得る最大限の音響を駆使してノイズすら美しく聴かせるキーボード、夢遊病の錯乱みたいな狂気と熱気の境界を行き来するヴォーカル、そして何よりもまるでリズムマシーンのように、正確無比なビートを、他の音がどれだけ暴れても一切関知せずとばかりに送り続けるドラム。。。

パンキッシュに空間を突き刺して切り裂いてゆく@、意表を突いた甘めのバラードなんだけど、狂ったようなファズギターが暴れるA、クールでニヒルなB、そして20分を越える大フリークアウト、狼藉系大インプロヴィゼーション大会のC、たった4曲しか入ってませんが、収録時間・内容の濃さ共に通常の(て何だ!?)ロックアルバム2枚分ぐらいの聴き応えがあります。

「プログレ」といえば複雑な曲展開に変拍子、そして作り込まれたアレンジが盛り上げるドラマチックな楽曲というイメージがありますが、カンやこの時代のドイツの「プログレとも言われている」クラウト・ロックは、リズムの執拗な反復とサイケな上モノの暴走が、何事もなかったように同居していますので、やっばりカテゴライズ出来ない独特な音楽です。しかしハマります。

ジャーマン・クラウトロックは中毒性が高いので実にキケンな音楽なのであります。











(アルバム冒頭「Father Cannot Yell」すごく実験的・前衛的なサウンドですが、すごくパンクを感じませんか?)


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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする