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2017年03月14日

ロニー・ジョンソン ステッピン・オン・ザ・ブルース

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ロニー・ジョンソン/ステッピン・オン・ザ・ブルース
(ソニー・ミュージック)


ブルースの世界では「上手い」というよりは他の人にはないワン&オンリーの味があるとか、勢い一発で凄まじい破壊力とか、アンプを改造しまくってありえない歪み方した音で弾いてるとか、とかくそういう「突破してナンボ」みたいな考えがあって、単純に技術的な意味で「上手い」という人よりも好まれる傾向がありまして、アタシもどっちかというと、誰それが上手いとかそういう話よりも

「あはは、このギター頭おかしい〜」

とか

「なんじゃこれ!ありえんだろ・・・」

とか

「いやいや、これは”弾いてる”じゃなくて”叩いてる”」

とか

「ヤッベー!コレ、ヤベーっす!!」

とか、しまいにゃ

「あぁぁぁあぁおうぅうへdfghjk☆l;△!!」


と、訳の分からない悶絶までを総動員して楽しむのがブルースの作法とすら思っておりますが、そんなアタシでも、

「あ、この人のプレイに関してはそういったやさぐれとは違うな、キチッと上手いし味わいも完璧だな」

と、心から思える人がおります。

その人というのはロニー・ジョンソン。


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いわゆる「ブルースマン」というイメージとはやや違う、実にナイーヴで洗練された外見をしておりますが、彼の音楽性も、戦前という時代を考えると、洗練そのものと言ってもいいぐらいスマートなんです。

そして「完璧」以外の言葉が出てこないギター・プレイ。

流麗な単音弾き、絶対にハズさないリズム、どこを切り取っても美しいメロディになっているソロのフレーズなど、これはもう何というべきか「ブルース」というジャンルで括るのも憚られるぐらい、凛として孤高な気品を感じさせてやまないものなのであります。

さてさて、そんなロニー・ジョンソン、アタシがあれこれ言うよりも「ブルース・ギターのパイオニアの一人にして、ジャズ・ギターの元祖」という世間での評価を鵜呑みにしましょう。

はい、そうなんです。実はこのロニー・ジョンソン、ルイ・アームストロングやベッシー・スミスのバックを務めたり、ジャンゴ・ラインハルトやチャーリー・クリスチャンといった、ジャズ・ギターにおける「ソロ」のスタイルを確立し、ホーンやピアノにも負けないリード楽器としてのギターの地位を築いたイノベイター達に最大の影響を与えたり、どっちかというとその流麗かつテクニカルなギター・奏法は、ジャズ・ギターの原型の原型を、どうしても感じてしまいます。

その理由は彼の人生にあります。

1894年に"ジャズの都"華やかかりし頃のニューオーリンズに、両親も兄弟も全員楽器が出来る、旅回りの音楽一家にロニーは生まれました。

幼い転からギター、ピアノ、ヴァイオリンなど、様々な楽器を演奏し、特にギタリストとして非凡な才能を発揮したロニーは、家族と共にニューオーリンズの酒場や売宿が軒を連ねる歓楽街に繰り出しては、そこで初期のジャズを演奏していたと云います。

音源を聴けば解るのですが、ロニーのギターは、この時代の弾き語り出身のブルースマンとは明らかに異なる「楽器としてどこまで高度で幅広いことが出来るか?」という、ストイックなまで挑戦している、実に専門のギタリストらしいギターです。

最初に言ったような、ブルース独特の「気合一発魂一打」(何だこのヤンキー感)なギターではなく、ちゃんとした理論的な基礎が出来た上で、情感や哀楽を乗せている、非常に理知的かつ完成されたギター。これはやはり幼い頃からバンドで鍛えられ、ジャズで慣らした英才教育の賜物という感じであります。


ロニーの一家はなかなかの人気バンドだったそうですが、1917年に軍港の撤廃に伴う歓楽街(ストーリーヴィル)の閉鎖でほとんどのジャズマンは仕事を求めてシカゴへ上り、ジョンソン家も北部へ繋がる都会だったセントルイスに移り住みます。

ところがここに移り住んで間もない時、ツアーに出ていたロニーと兄ジェイムス以外のジョンソン一家は流行病にて全滅。

悲しんだロニーでしたが、食うためにはとにかく演奏して稼がねばならないと、片っ端から色んな仕事をこなし、そのうちのひとつであったブルースのオーディションを通過します。

ブルースは当時、流通しはじめたばかりのレコードという新しい媒体でブレイクし、聴かれるようになった最新の流行音楽でしたから、ロニーは

「よし、古いニューオーリンズ流のジャズよりも、これからはブルースの時代だ」

と決意し、ブルースのギタリストとして売り込みをかけ、1925年に念願のレコードデビューを果たします。

もし、彼がニューヨークかシカゴに出て、ジャズ・ギタリストとして認められていたならば、彼の人生も音楽の歴史も随分と違うことになっていたかも知れませんが、当時はビッグバンド文化が花開いた時代。ジャズでギターなんて音量面の問題から、とてもソロ楽器としては使えないシロモノでした。

余談ですがロニーから影響を受けたジャンゴ・ラインハルトは、アメリカのビッグバンド・ブームとはヨーロッパでギターを中心とした少人数のバンドのリーダーだったこと、チャーリー・クリスチャンは、30年代後半に登場したギターアンプの出力によってホーンに負けない音量を手に入れたことによってソロ楽器としてのギターの可能性をうんと拡げることが出来たんです。

はい、余談終わり。いい加減アルバムを紹介しましょう(汗)



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.MR. JOHNSON'S BLUES
2.SWEET POTATO BLUES
3.STEPPIN' ON THE BLUES
4.I DONE TOLD YOU
5.MIEAN OLD BEDBUG BLUES
6.TOOTHACHE BLUES - PART I
7.TOOTHACHE BLUES - PART II
8.HAVE TO CHANGE KEYS (TO PLAY THESE BLUES)
9.GUITAR BLUES
10.SHE'S MAKING WHOOPIE IN HELL TONIGHT
11.PLAYING WITH THE STRINGS
12.NO MORE WOMEN BLUES
13.DEEP BLUE SEA BLUES
14.NO MORE TROUBLES NOW
15.GOT THE BLUES FOR MURDER ONLY
16.UNTITLED
17.6/88 GLIDE
18.RACKETEER'S BLUES
19.I'M NUTS ABOUT THAT GAL

デビューから47年に活動が一旦下火になるまでに実に200曲以上(SP盤のシングルしかなかった時代としては驚異的な量なんです、これ)ロニー・ジョンソンの、戦前録音の極めつけとも言えるこちらは、1926年から32年までに自己のソロ名義や、正真正銘「ジャズ・ギターの開祖」と呼ばれる早世の天才白人ギタリスト、エディ・ラングとのギター・デュエットに、人気女性歌手ヴィクトリア・スピヴィとのコミカルなやりとり、そしてブルースの"闇"を個人的に最も感じさせるテキサス・アレンクサンダーの伴奏など、洗練を極めたアーリー・ジャズからとことんディープな"ど"ブルースまで、何でもこなせる上に器用貧乏に陥っていない、プロの妙技が飽きることなく最初から最後まで味わい深く香り高く楽しめる全19曲。

流麗な単音フレーズ、絶対にハズさない完璧なリズム(多分二回目)に、もう惚れ惚れしてしまいます。

「一人で弾いてる」というのが何回聴いても信じられない超絶技巧のインスト「Playing With The Strings」を聴いてまずはブッ飛んじゃって下さいな。


ロバート・ジョンソンが、姓が一緒ということで「俺はロニーと親戚なんだ」と、実際血縁なんて全然ないのにそれとなく匂わせて注目を集めようとしていたなんて話がありますが、そりゃこんなギター聞かされたらそう言いたくもなりますわって話です。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする