2017年04月29日

ジェシ・エド・デイヴィス キープ・ミー・カミン

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ジェシ・エド・デイヴィス/キープ・ミー・カミン
(ソニー・ミュージック)

はい、皆さんゴールデン・ウィークがやってきた訳なんですけれどもねぇ、どこへ行きますか?アタシはあくせく働いておりますので、今のところ何をして楽しむとかそういう予定はないんです。

「お、おぅ、毎日がゴールデン・ウィーク(休日とは言ってない)」

という、摩訶不思議な呪文を唱えて、今年も何とか乗り切ろうと思っております。

さて、ここのところ特集しております、ソニー・ミュージックの「ギター・レジェンド・シリーズ」の話を、アタシはしたいんでありまして、ゴールデン・ウィーク全然関係ない。

このシリーズは、ロックにブルースにジャズにと、ギターという楽器にスポットを当てながら、同時に素晴らしいアメリカン・ルーツ・ミュージックの楽しさや奥深さを味わえる、本当に素敵なアルバムが多いです。

その人個人が「アメリカン・ルーツ・ミュージックの体現者」として、その名を知られているレジェンドばかりなウホッ!なシリーズなんですが、本日ご紹介するジェシ・エド・デイヴィスこそは、そんなグレイト・アメリカン・ルーツ・ミュージックの体現者の最高峰にいるレジェンド・オブ・レジェンドと言っていいでしょう。

と、ここまで書いて

「え?だ、誰!?」

となった人は多いかも知れません。

そうなんです、ジェシ・エド・デイヴィスは、そのセンスとアメリカン・ロック・スピリッツの塊のような素晴らしいギター・プレイで、エリック・クラプトン、ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ロッド・スチュアート、レオン・ラッセル、ジョン・リー・フッカー、キース・ムーンなどの英米の大物ミュージシャン達のハートを掴み、それこそミュージシャンズ・ミュージシャンとして、知る人ぞ知る存在です。

特に我が国のロック・ファンには、ビートルズのソロ絡みなどの英国ロックの作品で知った人も多いと思うのですが、彼を知った人達が、たったの3枚しか出ていないジェシ・エド・デイヴィス名義のソロ・アルバムを聴くやいなや、アメリカン・ロックの濃厚な味わいにヤラレちゃう現象が、音楽好き界隈では起きておりまして、アタシはコレを

「ジェシ・エド・メロメロ現象」

と、今名付けたんですが、そんぐらい聴く人の心に訴える、土臭さと人肌の温かみに溢れた音楽を作っていた人なのであります。

その生い立ちからデビューを追えば、1944年(ミック・ジャガーと同い年)にアメリカ南部オクラホマに、両親共にネイティヴ・アメリカンの家庭に生まれ、少年時代はラジオで夢中になって聴いたブルースやロックンロールに魅了されてそのまま音楽の道へ進むことに。

で、最初に活動の拠点とする西海岸で出会って最初にバンドを組んだのが、後に”スワンプ・ロックの王様”と呼ばれ、アメリカを代表するシンガー・ソングライターの一人でありますレオン・ラッセル。

その後に、当時異色の黒人ブルース・ロック・シンガー&ギタリストとして、幅広い活動をしていたタジ・マハールにギターの腕が認められ、彼のバック・バンドのメンバーとなったのが1966年。この年にローリング・ストーンズ主催の一大イベント「ロックンロール・サーカス」に参加するためにタジと共に渡英しますが、この時ストーンズのメンバーやジョージ・ハリスン、そしてエリック・クラプトンらがこぞって彼のプレイを大絶賛

「すげぇよアイツ!何て美しいスライドだ!」

「いや、初めて見るヤツだけどカッコイイね」

「何か話してみたらめっちゃイイ奴だよ」

という風に、たった一度のコンサートで彼の株はミュージシャン仲間の間で急上昇し、その後このイベントで知り合った英国ミュージシャン達のレコーディングやセッションに呼ばれたり、ジェシはミュージシャン仲間内と、熱心なファンの間で「すげぇギタリスト」と密かにささやかれるようになっていきます。

で、元々がタジ・マハールのバックバンドの一員で、まぁとりあえず好きなギターが弾ければそれでいいと思ってたジェシは、まだソロ・プロジェクトとかそんなものは全く考えていなかったのですが、エリック・クラプトンから

「ジェシ、ソロ・アルバム作った方がいいよ。何ならオレが手伝うよ」

と、後押しされ、1970年ついにアトコ・レコーベルから1枚目の「ジェシ・デイヴィスの世界」を、翌年にはジョージ・ハリスン主催のバングラデシュ・コンサートに出演して、更にその翌72年にはセカンド・アルバム「ウルル」をリリースします。

いずれのアルバムも、クラプトンや盟友のレオン・ラッセル、ジョージ・ハリスンなど、気の合う仲間達が参加したり楽曲を提供したり、実にくつろいだ雰囲気の中、レイジーで幸福な時間が流れる極上のアメリカン・ロック・アルバムであります。


この、アトコからリリースされた2枚のアルバムは、いずれもワーナーから再発され、名盤としての評価も定着した感がありますが、1972年にレーベル移籍してリリースされた3枚目にして、ソロとしては最後の作品になってしまった「キープ・ミー・カミン」は再発もなかなかされず、待ち望んでいた方も多いアルバムです。




(ギター・レジェンド・シリーズ)
【収録曲】
1.ビッグ・ディッパー
2.シーズ・ア・ペイン
3.ホェア・アム・アイ・ナウ(ホェン・アイ・ニード・ミー)
4.ナチュラル・アンセム
5.フー・プルド・ザ・プラグ?
6.チン・チン・チャイナ・ボーイ
7.ベイコン・ファット
8.ノー・ディガ・マス
9.6:00ブーガルー
10.キープ・ミー・カミン


アタシも今までジェシ・エド・デイヴィスといえば、アトコからの2枚しか知らず、このアルバムは聴いたことなかったんですが、いや参った、素晴らしいです。

コノ人の素晴らしさは、アメリカの、それも南部のどこかルーズで気怠くて、でもしっかりとグルーヴしているバンド・サウンドに乗って、程よい手数と豊かな情感でもって歌うギターの、全く飾らない、気取らないカッコ良さにあるんですが、この3枚目は、割とキッチリ作ってある前2作に比べて、やってることは基本変わらない武骨なサザン・ロックなんですが、より肩肘張らないラフな作りが、ギターと歌(これが優しくて泣ける声なんですよ)のカッコ良さを更に引き立てていて、こりゃもうブルースやヴィンテージなアメリカン・ロックが好きなら一気に引き込まれてしまうことをお約束します。

1曲目からジャムセッション風のインストで、ブルース、バラード、カントリー・ロックと、実にリラックスした雰囲気の中、決してテクニカルではないけれど、暖かく深みのあるトーンで、歌うギター。

そう、この人のギターは、例えばデュアン・オールマンみたいに力強く根こそぎ持って行くわけでもないし、ライ・クーダーみたいに流麗なテクニックで何でもこなしますってタイプじゃないけど、とにかくく味や匂いがしそうな"いい音"で、曲の雰囲気や展開に一番しっくりくるフレーズを出してくる。一言で「たまらんギター」というのがコノ人の魅力なんですよね。きっと彼のプレイを目の当たりにした人達も

「一言、たまらん」

と、ベタ惚れしちゃったんでしょうね。

中盤からホーン・セクション加わってファンクやりだすんですが、これがまた黒人ファンクとはまた違うし、かといって薄味の洗練された感じには全然なってないし、やっぱり"たまらん"のですよ。

ジェシ・エド・デイヴィスは、ミュージシャンズ・ミュージシャンで、派手なスターになる気は多分なかった人ですが、かといって演奏はロック初心者や、知らない人を冷たく拒む人では決してありません。

この素晴らしいアルバムが\1080というプライスで出たことによって、たくさんの人に聴かれて、これまでの「知る人ぞ知るマニアックな名手」という評価が少し変わってくれればいいなと思います。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 12:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする