2017年05月23日

サンタナ キャラバン・サライ


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サンタナ/キャラバン・サライ
(ソニー・ミュージック)


サンタナの4作目のアルバム「キャラバン・サライ」。

うん、個人的に”好きなアルバム”といえば、それは真っ先にこの前作の「3」であり、荒削りな音も含めて純粋にラテン・ロックをあひゃあひゃ言いながら楽しめるといえば、ファーストになるのでありましょうが、このアルバムに収録されている深い瞑想性に溢れた音を聴けば、いや、もう「キャラバン・サライ」というタイトルだけを聴いても、自然と気持ちが幽玄に誘われ、高揚でもあり陶酔でもある特別な感情に、心の中がいっぱいになってしまうのです。

ロック繚乱の60年代末にデビューし”ラテン・ロック”という新風をシーンに流し込んだサンタナでありましたが、彼らの創造性はそれだけに終わりません。

中心メンバーであるギターのカルロス・サンタナは、デビュー前からジャズ、特にジョン・コルトレーンの実験的でスピリチュアルな音世界に傾倒し、同じぐらいリアルタイムでリリースされたマイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」等のエレクトリック・ジャズに大いに興味を示し、マイルス・デイヴィスと積極的に交流をしておりました。

また、その頃の白人/黒人を問わず多くの芸術的完成を持つ若者を魅了していたインド哲学にも相当のめり込み、アメリカを拠点に多くの著名人の弟子を抱えていたヨーギ・シュリ・チンモイに弟子入り。そしてラヴィ・シャンカールにシタールの手ほどきを受けるなど、その没入ぶりは本格的なものでした。

ジャズとインド哲学からの影響が、サンタナの音楽を一気に深化させました。

前作「3」から本作に至るまでの「ロックとラテンの融合」という意味においては、基本的な路線は変わっておりません。

けれども、アルバム1枚がまるでひとつの壮大なスケールの組曲であるかのような音楽性、そして何よりもそれまでの「内にあるものをエモーショナルに放出する」という表現手法は、ここへ来て内面へ収束するエネルギーの反動を受けて放出、という、あいやすいません、哲学的に言うと何だか難しくなってしまいますが、とにかく内へ内へと精神的な世界の深い部分にまで入り込む思念的なサウンドと、やっぱり爽快でどこまでもよく伸びるギターの響きと、より洗練されて、ひとつの確固たる世界を確立しているバックとが絶妙なバランスで溶け合って、唯一にして無二な音楽を、ここで奏でておるのです。




(ギター・レジェンド・シリーズ)


【収録曲】
1.復活した永遠なるキャラバン
2.躍動
3.宇宙への仰視
4.栄光の夜明け
5.風は歌う
6.宇宙への歓喜
7.フューチュア・プリミティヴ(融合)
8.ストーン・フラワー
9.リズムの架け橋
10.果てしなき道


CDを再生してしばらく「リーン、リーン」と鳴り響く虫の声(何と2分以上も鳴ってる!)に引き続き、かなりよじれた感じのサックスの音が、揺れ系エフェクトをかけたエレピがリズムを導くオープニング・ナンバー「復活した永遠のキャラバン」が荘厳にアルバムの始まりを告げ、ギターが本格的に雄大なソロを奏でるのはA「躍動」から。

そして「宇宙への仰視」ではスピリチュアル・ファンク、ヴォーカル入りで一番ロックっぽい「栄光の夜明け」前半のハイライトである「風は歌う」へと、演奏は様々なジャンルを横断しつつも、一貫して共通した荘厳なムードを保持しながら流れて行きます。

後半は、愛と平和のメッセージを込めた、サン・ラーばりのコズミック・ソウル「宇宙への歓喜」(この曲は原題の「All The Love Of The Universe」と呼びたいです、ハイ)、静寂を敷き詰めたシンセのゆわんとした浮遊からパーカッションがその静寂に浮遊する「フューチャー・プリミティヴ」、そのままでの流れからカルロスのギターとラテンのゴキゲンなリズム、ささやくようなヴォーカルとがまた素晴らしい融合の「ストーン・フラワー」更にテンポアップしてアルバム中最高の盛り上がりで聴かせる「リズムの架け橋」そして最後は一曲丸々壮大なエンディングのようなアレンジの上で目一杯の情念と余韻を響かせて飛翔するギターが最高にエモーショナルな「果てしなき道」。

はい、細かく一曲一曲解説しましたが、特に後半かなり激しく盛り上がっているはずなのに、聴いた後に不思議な静寂が心の内にゆわーんと漂う、本当に本当に不思議な感触を、壮大な感動と共に残すアルバムです。

収録曲はほとんどインスト、聴きようによってはジャズでもありますが、この強烈なオリジナリティ、やはりサンタナであります。本当に素晴らしい。



”サンタナ”関連記事


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2017年05月22日

ジミー・スコット ドリーム

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ジミー・スコット/ドリーム
(Sire/ワーナー・ミュージック)


突然ではありますが皆さん、歌ってのは結構なもんでございます。

はい、アタシにはちょっと特別な感情が湧いてくることがあって、それはいい歌を聴いたときに

「あぁ〜、これはいい歌だね」

と、しみじみ感動した時の、心の内側に浮いてくる、何だか悲しいような切ないような不思議な感情です。

特に悲しい歌、暗い歌を聴いている訳でもないのに、切々と心を打つ歌唱・・・。

こういった歌を聴くと、もうジャンルとかスタイルとか年代とかどうでもよくなってくるというのが正直なところ。

で、最近アタシの内側に、そういった”切々”を感じさせて止まない素晴らしい歌手が、ジミー・スコット。

90年代に「奇跡の声」と呼ばれ、テレビで話題になって、知っている人も多いと思います。

そう、男性に生まれながら、生まれつきのホルモンの病気が原因で変声期を迎えることが出来ず、そのまま女性のような声でずっと歌手活動をしてきた人。その優しく美しい歌声が、彼自身の苦労と偏見に苦しめられた人生の重みとシンクロして、聴く人に特別な感動をもたらし続けていた人であります。

ジミー・スコットは1925年に生まれてすぐに母親を亡くし、十人いた兄弟らと共に施設で育ちました。

ホルモンの病気による障害は少年時代からあちこちに出ていて、普通なら成長期を迎えて身長が伸びたり体力もそれなりに付くところを、彼の体力は十分に育まれず、慎重も150cmあるかないかでありました。

しかし、幼少の頃から音楽が、特に歌うことが大好きだったジミー少年は、早くから生きる道を音楽に見出し、音楽の世界へ飛び込んだのです。

最初は「世にも珍しい女性の声を持つ小さな男性シンガー」として、ある種見世物のような扱いでステージに上げられていたジミーでした。しかし、ニューヨークのクラブで唄っていたら、表で客引きをしていた売春婦達が、その愛らしくもどこか哀しい歌声に惹かれ、商売そっちのけでクラブに入ってジミーの唄を聴きにくるほどで、困った売春婦達のオーナーが、ジミーに請求書をよこしたという逸話も残っております。

で、ミュージシャンの中で、ジミーの特異な歌声の中にある非凡な才能に目を付けたのが、当時人気のバンドリーダーだったライオネル・ハンプトンです。

彼のバンドのヴォーカリストとして1948年に本格的なキャリアをスタートさせ、その風貌と少年(少女)のような声から”リトル・ジミー・スコット”というニックネームでステージに立つや人気者となった彼は、50年代にソロデビューのレコード契約をSavoyレーベルと交わします。

しかし、これがジミーにとっては不幸の始まりでした。

ジミーはバラードが好きで、自分のことを”ジャズ・バラード・シンガー”として知られて欲しいと願って活動しておりました。

ところがSavoyは彼のことを(当時シングル盤でヒットを出せば大当たりになる)R&Bのシンガーに仕立てようと画策。ステージでもそういった芸風で行くようにと命じます。

60年代にはレイ・チャールズが彼の声をとても気に入って、こっそりレコーディングをしてそれをラジオで紹介。一躍全米に彼の名前は知れ渡って二人の間で「じゃあジミー、君が望むようなジャズ・バラードのレコードを出そう」という話はほぼ決まりますが、ここでSavoyが「一生専属の歌手でいること」という契約を縦に発売を妨害。

つまり彼は、純粋に「素晴らしい歌を唄う歌手」として世に認められかけていたのに、やはりレコード会社やクラブを運営するいわゆる音楽業界の側は、彼を「カネの稼げる見世物」ぐらいにしか見ていませんでした。

ジミーは恐らくボロボロに傷付いたことでしょう。失意のまま音楽の世界を去り、中年を過ぎて音楽とは全く関係のない仕事を転々としていたといいます。

再び彼の運命が変わったのは、80年代以降、既に初老に差し掛かっていた頃に、ソングライターのドク・ポーマスや、R&Bの人気女性シンガー、ルース・ブラウンといった人達でした。

特にドクの方は「ジミー・スコットのレコードを出すのは音楽業界の使命だ!」と、公私に渡って支援をしながら、何とか彼のレコーディングが出来ないかと、あちこちのレコード会社に掛け合っておりました(サヴォイとの契約は、前オーナーが死去した時点で無効になっておりました)が、ドク・ポーマスは1991年にガンで死去。

悲しみに打ちひしがれたジミーではありましたが、自分の唄声を愛してくれたこの同い年のかけがえのない友は「オレの葬式で君は唄ってくれ」という遺言を残しており、彼は感謝と悲しみの全てを渾身のジャズ・スタンダード「Someone To Watch Over Me」を唄います。

これが参列者達に感動を与え、ジミーに再び世間が注目することになるのです。

ジミーのアルバムをリリースすることを真剣に考えていただけではなく、本気で長期契約によってしっかり売り出して行こうと考えていたサイモア・ステインというレーベルオーナーが、経営するサイ・レコードにジミーを招聘。










【パーソネル】
ジミー・スコット(vo)
ミルト・ジャクソン(vib)
レッド・ホロウェイ(ts,F)
ペイシャンス・ヒギンズ(ts,A)
ミッチェル・フルーム(org,D)
ジュニア・マンス(p)
リック・ザニガー(g,DF)
ロン・カーター(b)
ペイトン・クロスリー(ds)

【収録曲】
1.ドント・テイク・ユア・ラヴ・フロム・ミー
2.イット・シュドゥント・ハプン・トゥ・ア・ドリーム
3.アイ・クライド・フォー・ユー
4.ソー・ロング
5.ユー・ネヴァー・ミス・ザ・ウォーター
6.イッツ・ザ・トーク・オブ・ザ・タウン
7.アイム・スルー・ウィズ・ラヴ
8.ラーフィング・オン・ジ・アウトサイド
9.ドリーム

64歳になっていたジミーは、長い苦難の人生でようやく安住できる居場所と巡り合います。

サイ・レコードは彼の「ジャズ・バラードを唄いたいんだ」という願いを最高のレコーディング環境と、可能な限り一流のジャズ・ミュージシャン達をバックに集めて叶えます。

サイ・レコードからの2作目「ドリーム」は、ミルト・ジャクソン、ジュニア・マンス、ロン・カーターという大物達がジミーの繊細なヴォーカルを的確にサポート。

深みのあるヴェルヴェットな演奏の上に、更に静かにひしひしと染み渡るジミーの声、若い頃は少年と少女とが混在する、目一杯の悲しみを内に秘めて優しさで織り上げる、この声に何度アタシは天国を感じたことでしょう。どうしようもなく塞いだ気持ちが何度癒されたことでしょう。

ロック畑で有名なプロデューサーのマイケル・フルームと、ミックスを担当したチャド・ブレイクのコンビが作り出す、幻想的な音世界(独特の淡いエコーに、モノラルだけどヴォーカル真ん中、バックは楽器毎に左右からゆらっと響く配置)も、ジミーの声や情感の美しさを素晴らしく引き出していて、このアルバムはある種の中毒性すら帯びているんです。

ビリー・ホリデイやチェット・ベイカーの晩年の声に、抗し難い魅力を感じてしまうように、アタシはジミー・スコットの声にもまた、理屈や知識では割りきれないものを感じてしまいます。



"歌"って、本当にいいもんです。



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2017年05月21日

バディ・ガイ フィールズ・ライク・レイン

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バディ・ガイ/フィールズ・ライク・レイン
(ソニー・ミュージック)

今やブルース界の長老として、後輩ブルースマンやロック・ギタリスト達からの絶大なるリスペクトを集めているバディ・ガイ。

元々が直情型のフレージングと、ピックを使ったアタックの強い、つまり「小手先のテクニックよりもエモーションばこーん!」なタイプでありますので、バディの場合はロック側からの人気は非常に高かったんです。

で、年代的にもストーンズの連中とかジェフ・ベックとかクラプトンとかとは、大体10ぐらいしかトシが離れておりませんので「尊敬する大先輩」というよりは「頼れるアニキ」って感じだったんでしょう。特に最近のライヴ映像なんかを観ると、ラフな格好で「やぁやぁどうもどうも」みたいな笑顔で出てきて、凄まじい弾き倒しを疲労してくれるバディを後輩達が「どうだ、アニキは凄いだろう」と、笑顔でプレゼンツしているみたいな、そんな気さくさ、フレンドリーさ、あと、インタビューなんかでの滲み出る人柄の良さに、アタシは何だか「あぁ、ブルースってとってもいいな」と思ってしまうのです。

そんな感慨は、特にバディが長い不遇の時代を経てカムバックした90年代以降のアルバムを聴いて湧いてきます。

ファンの皆さんには、シルヴァートーンからの復帰第一作「アイ・ガット・ザ・ブルース」が、名作として人気がありますが、その翌年にリリースされた2作目の「フィールズ・ライク・レイン」もなかなかいい。というよりも、ジョン・メイオール、ポール・ロジャース、ボニー・レイット、イアン・マクレガンなど、彼をアニキとしたう豪華なゲストに囲まれて、豊かに幅の広がった曲風の中で、和気藹々をやりつつも直情に火が点いたら猛烈に暴れまくる快演が聴ける、これもまた名盤でございます。

元より、ブルースマンとしては若い世代(シカゴ・ブルース第二世代とか言われておりまする)のバディは、デビュー当時からR&Bの影響を強く受けたミクスチャーなブルースをやっておりました。

この”元からあった音楽性の広さ”が、90年代には本人の感情コントロールの見事さも相俟って、実に良い塩梅で花開いておるんですね。特にロックサイドには、デカい影響を与えた側の当人が、ニコニコしながら強烈なギター・プレイをひっさげて迫ってきている感アリで、単純に「丸くなった」「落ち着いた」では済まされない凄みもあったりするんです。



(ギター・レジェンド・シリーズ)

【収録曲】
1.シーズ・ア・スーパースター
2.アイ・ゴー・クレイジー
3.フィールズ・ライク・レイン
4.シーズ・ナインティーン・イヤーズ・オールド
5.サム・カインド・オブ・ワンダフル
6.サファリン・マインド
7.チェンジ・イン・ザ・ウェザー
8.アイ・クッド・クライ
9.マリー・アン
10.トラブル・マン
11.カントリー・マン


アルバム全体の空気として「伸び伸びやって、キリッと締めてる感じ」がとても心ニクいんです♪

正統派モダン・ブルースの「シーズ・ア・スーパースター」「アイ・ゴー・クレイジー」で、まずはテンション高めの弾き倒しで健在ぶりを最高にアピールして、看板曲であります3曲目「フィールズ・ライク・ア・レイン」です。

この曲はそれまでとガラッと変わってバラード、しかもかなりキャッチーなソウル・バラードみたいな感じで、バディの声も抑揚が美しく、つい聴き惚れてしまいます。更にバックでコーラスとスライドギターの何とも優しいソロを弾いているボニー・レイットのプレイが光っております。

原曲は1988年にリリースされたシンガー・ソングライター、ジョン・ハイアットのポップス曲なんですが、コレは曲も素晴らしいですが、歌詞もいいんですよね。人生の辛酸や苦難は直接表現されていないけれども、美しい情景の中でしみじみと迫るものがある男と女の純愛を、バディが切々と、語りかけるように歌う素晴らしいバラード。

中盤から後半は、掛け合いも楽しい「サム・カインド・オブ・ワンダフル」(with.ポール・ロジャース)「チェンジ・イン・ザ・ウェザー」(with.トラヴィス・トリット)、転がるマンボ・ビートの上でギターがキュインキュイン鳴り響くイントロから、B.B.キングばりの変拍子で更にチョーキングを炸裂させる「マリー・アン」バディが敬愛するギター・スリムの、原曲にほぼ忠実な渋いカヴァーがあり、ラストは「トラブル・マン」「カントリー・マン」と、往年のキレもやっぱり衰えていない必殺のスロー・ブルースでシメ。

非常に聴き易いし、楽しい展開とグッと渋い展開の分かり易さで退屈させません。

改めて90年代のバディを聴いてると「何かブルース聴きたいな〜」というブルース初心者の方のピュアな欲求に優しく応えてくれるのはこの辺じゃないかなぁと思えてきました。とにかく最近のバディすごく良いよ。


”バディ・ガイ”関連記事


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