2017年06月10日

ソニー・クラーク・トリオ(BLUENOTE)

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ソニー・クラーク・トリオ
(BLUENOTE/EMIミュージック)

さて、昨日の引き続き”そこはかとなく哀愁のピアニスト”ソニー・クラークであります。

でもって「ソニー・クラーク・トリオ」という全く同じタイトルでありながら、中身はまるで別物のブルーノート盤。

はい、実はこのアルバム、クラークの数少ない作品の中でも人気、というか「ジャズのピアノトリオ作」という意味においては我が国では屈指の人気盤で、今でもブルーノートのタイトルが再発されると決まって売り上げの上位が定位置という、ものすごく有名なアルバムなんですよ。

その昔お客さんと

「ジャズ入門用にどんなものをオススメすればいいか?」

というテーマで長々と話し込んだことがありまして、アタシはどっちかというと

「ん〜、聴いてもらって”あ、コレが好き!”ってのを選んでもらえばそれでいいんじゃないですかねぇ」

と、割とテキトーな感じだったのですが、お客さんの方が真剣に、色々と提案をしてくれました。

その結果

【初心者にオススメできるジャズ】あるいは【初めての人も安心して聴けるジャズ】の定義というものが出揃って、ザッとまとめればこんな感じになります。

・ジャケットがオシャレ 

「これは名盤」とか言われても中身知らなかったら、だからまずは持っていて嬉しくなるようなセンスのあるジャケットだと聴いてみようかな?って気持ちになる。

・やっぱりピアノもの

もちろんサックスとかトランペットとかビッグバンドとか、それぞれの魅力は奥深いものがあるけれど、まずは、じっくりも聴けるしサラッと流してもいいもの。とくればやっぱりジャズの基本のピアノ・トリオじゃなかろうかと。

・選曲は親しみのあるスタンダード系で

スタンダードというのは、色んな人が演奏している馴染みの曲ですな。たとえばテレビのCMなどでよく使われるような「あ、これは知ってる。どこかで聴いたことある」という曲がアルバムに入っていれば、それだけ親しみも湧くでしょう。

・それでいて軽くない、ある程度”重み”のある演奏

とはいうものの”オシャレ””聴きやすい””親しみやすい”だけでは飽きてしまいます。そこはジャズならではのディープさ、飽きのこない尽きせぬ味わいが、聴けば聴くほどジワッと滲んでくるものが長く愛されます。


そんなことを柄にもなくクソ真面目に論じておりましたら当然

「じゃあその条件を満たすアルバムってあるの?」

という話になりまして、はい、ここでびっくりしたのが、ほんの数秒で同時に

「ソニー・クラークのトリオ!」

と、いう結論が出ました。




【パーソネル】
ソニー・クラーク(P)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.ビ・バップ
2.時さえ忘れて
3.トゥー・ベース・ヒット
4.タッズ・デライト
5.朝日のようにさわやかに
6.四月の思い出


嘘のような話ではありますがホントです。

実際にアタシもそのお客さんも、モダン・ジャズとかピアノ・トリオとかよーわからん聴き始めの時に


「このジャケ、よく見るしカッコイイんだけど有名なアルバムなのかな?じゃあ買ってみようか」

と購入して、すっかりその魅力にヤラレて夢中で聴いていたという共通の経験があります。

はい、クラークのピアノは、先日のTime盤にも書いたように「軽快にスイングしててもどこか哀しげに漂うムード」の魅力ですね。

こちらブルーノート盤でのメンバーは、ベースにポール・チェンバース、ドラムにフィリー・ジョー・ジョーンズ。

どちらもクラークとは同年代の若手ですが、2人は既にあのマイルス・デイヴィスのバンドのメンバーとして大いに名を上げていた時期で、人気実力共に一流のバックを付けて、いかにブルーノートがクラークを売り出したかったかも分かります。

で、このアルバムでのクラークは、粘りのある音色でとてもよく歌うチェンバースのベースと、シンバルが派手にガシガシ言うフィリー・ジョーのラウドなドラムに乗ってじんわり。

そう、普通ならよく動くベースと躍動感溢れる激しいドラムに乗せられるままに、ガンガンに弾きまくってしまいそうなものですが、クラークはスピードに乗りながらも、湿り気のある音色で、一音一音をじっくり的確なフレーズを選びに選んで弾いており、その”間”と”タメ”によってやっぱりこの人ならではの哀感が余韻となってジワジワ流れておるのです。

選曲は全部有名スタンダードです。

どの曲も素晴らしいのですが特に名演として名高いし、実際聴いて最高にカッコイイとアタシも思った「朝日のようにさわやかに」この”引きずるような”とよく言われるピアノ演奏に、モダン・ジャズのカッコイイところは良い感じに凝縮されとると思います。ハイ。

同じタイトルでも雰囲気とコンセプトの戦前違うBLUENOTEとTIMEのソニー・クラーク・トリオ。もちろんどちらが好きかは聴く人の好み次第ですが、やっぱり両方聴き比べてそれぞれの良さを皆さんには噛み締めて欲しいです。この人こそ噛めば噛むほど味の出る人ですよ。







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2017年06月08日

ソニー・クラーク・トリオ(Time)

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ソニー・クラーク・トリオ
(Time/Solid)


ジャズのピアニストの中で、不思議と日本でだけ異常に人気という人がおります。

それが今日ご紹介するソニー・クラーク。

1950年代のモダン・ジャズの典型的な”ファンキーで味わいのあるピアノ”であり、どちらかというと派手にダーッ!と弾きまくるタイプではなく、じんわりと情感を込めた一音で聴かせるタイプの職人的なタイプのピアニストなんです。

で、50年代とか60年代の、ジャズ全盛期の頃は「味があるよね〜」というタイプのピアニストってすごく多かったんですね。

ザッと名前を挙げますと、ジュニア・マンスだとかタッド・ダメロン、エルモ・ホープ、それからマイルス・デイヴィスは実はこのタイプのピアニスト大好きで、有名どころだけれどもマイルスのバンドにいたレッド・ガーランドやウィントン・ケリーなんかも実はこのタイプであります。

で、そのマイルスや初期のバンドのピアニスト達に多大な影響を与えたアーマッド・ジャマルなんかもいいですね。ジャマルの繋がりで言えば同じシカゴのARGOレーベルに一枚だけアルバムを残して儚く消えていったドド・マーマロサなんかも・・・あ、いや、キリがないのでこの辺にしておきますが、とにかく

「ジャズを聴いてみよう」

から

「自分だけの好きなジャズを見付けたい」

というステップを経るにあたって、こういった、まぁ簡単に言ってしまえば、渋く通好みな人達の演奏に

「うわぁ、何かわからんけどすごくいいわぁ〜」

となるのは凄く素敵なことなんですね。

おっとっと、話が大分横道を経てしまいそうなので、ソニー・クラークに戻します。

ソニー・クラークという人は、そんな”何かいいね”と言われてそこはかとなく愛されるタイプのピアニスト達の中でも、特に日本人に愛されるサムシング・エルスを持っております。

そのサムシング・エルスとは何か?ということになりますが、コレが

”そこはかとない哀愁”

なんです。

演奏の中で出てくるマイナー・コードを、ちょっとした間とタイミングでもって引きずるように切ない余韻を匂わせる独特の演奏と音色、それは一言でいえば”哀しさ”なんでが、といって哀愁タップリとかそんなのじゃなく、ファンキーな曲の中にジワッ、ジワッと染み込んでいる、本当の意味での”そこはかとない哀愁”であります。

その”そこはかとなさ”というのは、実はアメリカ人にはよーわからんらしく、日本人でソニー・クラークのファンが多いことを知ったアチラのジャズファンが

「ソニー・クラーク?うん、まぁ確かに味のあるいいピアニストだよ、でも何で日本でそこまで人気ダントツなのかがよくわからん」

と、首をかしげたという話もあちこちで読んだり聞いたりして、すっかりおなじみだったりするんです。

このクラークの”そこはなとない哀愁”をすっかり気に入ってかわいがっていたのが、ジャズではこれはもう支持率No.1の人気レーベル「ブルーノート」であります。

モダン・ジャズ・ピアノといえばこの人に影響を受けていない人はいない巨人、バド・パウエル直系の、よく跳ねるバップ・ピアニストでありながら、彼が繰り出すフレーズには、どこか後を引く切ない味わいがあった。

これを聴き逃さなかったブルーノートのオーナー、アルフレッド・ライオンは、クラークとすぐさま契約を交わし、その年(1957年)と翌年のうちに何と4枚のアルバムを作りました。

麻薬中毒で若くして亡くなったクラークが生涯に残したアルバムはたったの6枚なんですが、そのうち5枚がブルーノートでの作品であり、もう何か説明するのもまどろっこしいぐらいの、以下のアルバムなんかは、今でも大人気の名盤として多くの人に聴かれ、そしてこよなく愛されております。


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クラークはそんなこんなで「ブルーノートを代表するジャズマン」と、我が国では認識されていて、その認識はおおむね間違いではないんですけど、実は、彼が整然にたった一枚だけ別のレーベルに残したアルバムがあって、そしてその一枚というのが、これがどう聴いても彼の本質を無駄なく浮き彫りにしたピアノトリオの名盤なのでご紹介します。

あ、散々ブルーノートの話で煽ってすいませんね(汗)「ブルーノートでのソニー・クラークに関しては明日以降気合い入れて書きますんで許してちょう。




【パーソネル】
ソニー・クラーク(p)
ジョージ・デュヴィヴィエ(b)
マックス・ローチ(ds)

【収録曲】
1.マイナー・ミーティング (take8)
2.ニカ (take5)
3.ソニーズ・クリップ
4.ブルース・マンボ
5.ブルース・ブルー (take3)
6.ジァンカ (take3)
7.マイ・コンセプション
8.ソニア (take1)
9.マイナー・ミーティング (take10)*
10.ニカ (take2)*
11.ニカ (take4)*
12.ブルース・ブルー (take1)*
13.ジァンカ (take1)*
14.ソニア (take3)*

* ボーナストラック



はい、1961年録音の「ソニー・クラーク・トリオ」であります。

実は同じタイトルでブルーノートからもピアノトリオのアルバムが出ていてややこしいので、アタシは「TIME盤」と呼んでおります。えぇ、そうなんです。クラークが、亡くなる2年前に突如フイッと違うレーベルで吹き込んだアルバムで、時期も時期だけにあぁそうか、ブルーノートとの契約が切れたから他のレーベルで仕事してたんだ。と思ったら、この後に再び古巣のブルーノートで「リーピン・アンド・ルーピン」というラスト・アルバムを吹き込んでいるので経緯はよくわかりません。

アタシも最初は

「ふーん、クラークのブルーノート以外でのアルバムねぇ。よくわからんけどカネがなくなったからテキトーに吹き込んだ”日雇い”の仕事なんじゃね?」

とか、結構ナメてかかってたんですが、ナメてました、すいません。コレ、クラークの本気が他のどのアルバムよりも凄まじく感じられる名盤です。

まず、クラークがトリオで一緒にレコーディングしているのが、ジョージ・デュヴィヴィエ(ベース)とマックス・ローチ(ドラムス)という二人の御仁。

実はこの2人、ビ・バップ時代からのベテランで、クラークにとっては最高に影響を受けて尊敬するバド・パウエルとしょっちゅうチームを組んで演奏していた、まさに理想のリズム隊なんです。

ズッシリと安定感抜群のフレーズを繰り出しながら、アドリブに即応して絶妙な”ハズし””スカし”が天才的なベースと、シャープなドライヴ感で気持ちよく突っ走るドラム。

この2人が繰り出す独特のエッジの効いたリズムに乗って、クラークはいつになくハードに、無駄のない音色で”ビシッ””バシッ”と、ジャズ・ピアノのアドリブとしては実に的確でクールなフレーズを次々に決めてくれるんです。

尊敬する先輩達のすこぶるカッコいいビートに、本能剥き出しで迫る気合いの入ったピアノは、それまでのクラークとは全く違う、いや、どっちがいいとかじゃない「これでしか聴けない」味わいです。

で、全曲オリジナル(おぉ!)で固めたクラークの楽曲もいいんですよ。例によって彼の楽曲は、カッコ良くスイングする中にやっぱり哀愁がじわっと滲み出てくる「あぁ、せつねぇ!」があります。はい、このアルバムでは、哀愁ありまくってます。

「TIME盤ソニー・クラーク・トリオ」は、まろやかな哀愁ピアニストのキャラクターをかなぐり捨てたクラークの、孤高で厳しい面が見られる、モダン・ジャズ・ピアノの美しいワン・アンド・オンリーなのです。


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2017年06月06日

ジャニス・ジョプリン イン・コンサート

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ジャニス・ジョプリン/イン・コンサート
(ソニー・ミュージック)

ロックやブルースといった音楽が、何故魅力的なのか?もとい音楽に目覚めて、夢中になって聴きまくるようになってから、何故アタシはロックやブルースという音楽に、抗し難い魅力を感じてしまうようになったのか?

ということを、柄にもなく真剣に考えております。

まず、ロックやブルースという音楽には、独自の粗さがあります。

綺麗で整っているものとは対極にある粗さは、それは歌い手とか演奏するミュージシャン達の内側のエモーションを力強く放出し、綺麗で整っているものを聴いては味わえない、独自の味わいとか感動とか興奮とか、そういったものとイコールなのかなと思います。

アタシがそんなことを強く考えるのが、ジャニス・ジョプリンを聴いている時です。

ガラガラでザラザラのジャニスの歌声は、決して透き通った綺麗なものではありません。

でも、ジャニスの声は他のどのシンガーにもない力強さと情感の深さに裏付けられた美しさがあるとアタシは思います。

ジャニスはロック・シンガーです。

そしてブルースが大好きでした。

自分の曲を作る前から、古いブルースを"ハスキー"というには余りにも激しい声を張り上げて、唄っており、やがて"ビッグブラザー&ザ・ホールディングカンパニー"というバンドをバックに従えるようになり、ガンガンに歪んだ、ラウドなロック・サウンドに乗せて、それに負けないぐらいのエモーショナルな声を響かせ、大好きなブルースやR&Bのスピリッツが炸裂するパワフルなロックに生命を吹き込みます。

本格的なデビューからたった2年ほどで、文字通り命を壮絶に削り尽くしてあの世に旅立ったことを、後の時代のアタシ達は知っています。

彼女の残された作品にはどれも、ロックとしてのはちきれんばかりの衝動の凄まじさと、彼女自身の人生の波乱万丈のすべてが込められたそのヴォーカルに”ブルース”という言葉の意味を、理屈ではない深いところで教えてくれるような底なしの説得力が迫ってくるのです。

さて、その昔、ある日突然アタシはジャニスのとりこになりました。

高校時代に買った2枚組のアルバム「ジャニス」これが全ての始まりだったんですが、本格的に彼女の歌声にガツンとヤラレたのは20代になってからのこと。

それから熱病にうかされるように彼女のオリジナル・アルバムを買い集め、レコード2枚組の素晴らしいライヴ・アルバムに出会ったのは、ある暑い夏の日。





(Disc-1)
1.ダウン・オン・ミー
2.バイ・バイ・ベイビー
3.オール・イズ・ロンリネス
4.心のカケラ
5.通行止め
6.フラワー・イン・ザ・サン
7.サマータイム
8.エゴ・ロック

(Disc-2)
1.ハーフ・ムーン
2.コズミック・ブルース
3.ジャニスの祈り
4.トライ
5.愛は生きているうちに
6.ボールとチェーン


もちろんジャニスはどれも最高で、優劣なんかとても付けられないのですが、彼女の激しくも優しく暖かい音楽表現の核心は究極的に言えばライヴにあります。

そのヴォーカルのスタイルそのまんまに、リアルな”瞬間”に全てを炸裂させる彼女のライヴ音源に、よろしくないものなどありません。

この「イン・コンサート」は、ジャニスの突然過ぎる死の直後に出された、前半が初期のビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーをバックに付けた演奏。後半が最後のバンド、フル・ティルト・ブギー・バンドをバックに付けた演奏で、曲目を見ればお分かりのように、彼女の代表曲、有名曲ばかりをセレクトした好選曲で、とにかくジャニスを聴いたことのない人にぜひとも聴いて欲しい内容です。

演奏内容について、これはもうアタシがどれだけ言葉を尽くしても、きっと皆さんが聴いた瞬間の感動の方が何億倍も説得力があると思いますので、細かくは書きません。前半が荒削りでジャニスが活き活きと唄っていて、後半はしっかり整ったバンド・サウンドに安心して身を任せて、シャウトする時とグッと感情を抑える時のコントロールが素晴らしかったりするのですが、それは些細なこと。とにかく全曲通して最高のロックでありブルース、これだけはハッキリと断言できます。

前半の最後に「エゴ・ロック」というブルース・ナンバーが入っていて、アタシこれが大好きなんですね。何てことないスローテンポの典型的なブルースなんですが、ジャニスのドバーーー!と吐き出すような声と、優しく包容力のあるビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのギター、サム・アンドリューの声との掛け合いが本当に素晴らしいので、特にブルース好きの方はこの曲にも注目(注耳?)してくださるとアタシは嬉しい。




”ジャニス・ジョプリン”関連記事


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