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2017年06月02日

オーネット・コールマン ヴァージン・ビューティー

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オーネット・コールマン/ヴァージン・ビューティー
(Portrait/ソニー・ミュージック)

人間誰しもが「バカになりたい」と思うことがある生き物です。

特に何となく忙しない今の世の中に生きていると

「もー、何をー、ふんがふんが♪」

となるストレスっていっぱいありますね。

優れた音楽家というのは、その「ふんがふんが♪」に絶え間なく挑み、人々を息苦しいストレスから解放してくれる人々のことなんだと、アタシは確信しております。

ジャズの世界には、オーネット・コールマンという人がおりまして、この人はフリージャズの大将とか、ジャズの常識を覆したとか、色々言われてるんですが、そういう難しいことを全部脇にでも置いて考えると、この人ほど自由に好き勝手、ストレスと一番遠い地平にある音楽を作った人はいなかった。

もちろん、いろんな”約束事”の多いジャズにおいて

「コードもメロディも関係ないよ、音が鳴ってる空間の中で、自分にとって一番”コレは気持ちいい!”という音を出すことが大事なんだよね。これ、ハーモロディックね」

と、独自の謎理論を持ち出して、そのお約束のことごとく逆を行く斬新な表現方法が変えたものは多いでしょう。何より同業のミュージシャン達から

「あの人は凄い、ああいう風に自由にやるのは、実際なかなか勇気がいることだ」

と、批判と同じぐらいのリスペクトも集めておりましたが、実は本人にとっては

「ん?自分にとって一番気持ちいい音楽やってりゃそれでOKなんじゃないの?」

という気持ちだけが、彼を創造に向かって後押ししてたものだったんじゃないかと思います。

特に1970年代以降、フリーキーなジャズをやるだけでは飽き足らず、バンドを電気化して、ファンクとか民族音楽とか、ロックとか、そういう”その辺にある音全部”を演奏の中に取り入れてドンチャカやっていた時期の彼の音楽は、ジャズとかどうでもよくて、ミクスチャーとかそういったことはさらにどうでもよくて、売れるとか売れないとか、そんなことは究極にどうでもいい、ただ、オーネット・コールマンによるオーネット・コールマンのための”快楽温泉ぬるま湯地獄ミュージック”であるような趣がヒジョーに強いのであります。

ぶっちゃけて言えばフリージャズとか前衛音楽とか言われて何かと賛否両論のセンセーションを巻き起こして、つうか周りが勝手に沸き上がってその渦中にいたオーネットが開き直って

「んもー、おじちゃんバカになっちゃうぞー」

と、とちキレた結果の音楽として、たくさんのエレキギターがそれぞれ勝手にぎゅよ〜ん、ずんちゃかずんちゃか♪ 2台のドラムがこれもそれぞれ勝手にずんどこどこどこずんどこどん♪ と、どこの国のかもよーわからんが、とにかく底抜けにハッピーでじゃんじゃかな祭囃子ビートを叩き出している上で、やたらすっとんきょうでヨジレまくりながらも、訳のわからない凄みに満ちたアルトサックスを「のへー、のへー」と吹きまくってしまっている。つまり同じバカなら躍らにゃ損々♪ とばかりに音盤に刻んだもの。それが”プライムタイム”と呼ばれた電気オーネット・バンドのサウンドなのであります。

さぁ皆さん聴きましょう♪ これを聴けばたちどころにー!ストレスから解放される、たちどころにー!明るくノーテンキな人間になれる、たちまちのうちにー!些細なことなんてどーでもよくなれる。

・・・と、まではいかんかも知れませんが、この底抜けに明るくて、気持ちいいんだか悪いんだかよく分からないぐねぐねうねうねしたビートと、明後日の方向にばかりすっ飛んでゆく、すこぶるピーヒャラなサックスが織り成す独自のポジティヴ・マジックに身を浸すのは、まず間違いなく楽しいと言っておきましょう。




【パーソネル】
オーネット・コールマン(as,vln)
ジェリー・ガルシア(g,@EF)
バーン・ニックス(g)
チャールズ・エレビー(g)
アル・マクドウェル(b)
クリス・ウォーカー(b)
デナード・コールマン(ds,key,perc)
カルヴィン・ウェストン(ds)

【収録曲】
1.3ウィッシーズ
2.ブルジョワ・ブギ
3.ハッピー・アワー
4.ヴァージン・ビューティー
5.ヒーリング・ザ・フィーリング
6.シンギング・イン・ザ・シャワー
7.デザート・プレイヤーズ
8.ハネムーナーズ
9.チャンティング
10.スペリング・ジ・アルファベット
11.アンノウン・アーティスト


電気化オーネットの名盤としては、以前にもレビューした「ダンシング・イン・ユア・ヘッド」という70年代のウンニャラな名盤がありますが、それをよりポップで分かりやすい(のか?)ノリでまとめたのが、1988年録音の「ヴァージン・ビューティ」。

オシャレな感じにこの音楽を言ってしまえば

「アンダーグラウンドほにょほにょコンテンポラリー・ジャズ・ファンク」

なんですが、別にオシャレなんてどうでもいいよという人は、このアルバムに収録された音楽が、スコーンと突き抜けた”ほにょほにょ”であることだけをとりあえず頭に入れてください。

二台以上のエレキギターとツインドラムによる脈絡は全くない軽快なビートに、ベニョベニョな無脊椎動物フレーズをタレ流す2本のエレキベースのアクが加わって、コレだけでも全然美味しい(のか?)んですが、そこに、やっぱり勝手に入ってきて勝手にブルースとファンクとあと何かよーわからんものをネチャネチャさせながら吹き散らかしては去ってゆくオーネットのアルト・サックスと、混沌の具合でいえばサックスよりもっと「おぅ?」なトランペットとヴァイオリンが、もう聴いてる人の脳味噌を優しくかき混ぜてくれます。

ノリとバックの質感は、80年代っぽいややチャラめのファンクではあるんですが、繋がりや協調性の全くないフレーズやバッキングを、たったひとつのメインリフ(なのか?)を絡めながら何度も何度も繰り返すやり方は、後のトランスミュージックとかミニマルテクノのそれに近く、実に摩訶不思議。

そんなオーネットのコンセプトに非常に共感したのが、グレイトフル・デッドという、ユルユル即興ロックの大将で、このアルバムには@EFの3曲で参加してます。

ジャズの大御所とロックの共演とか言うと、これまた刺激的な異種格闘技戦かと思いきや、ガルシアさんのギター、気持ちいい音でバンドに負けないラリラリなフレーズをべよーんと弾いて馴染んでいて、実に自然。


「バカになりたい」

と思った時は聴きましょう。とは言いませんが、コレさえ聴けばアナタも一段格上のバカに・・・いや、違う、ラグジュアリーな・・・これも違う。えぇと、よくわからんくなってきたのでよくわからんまま終わります。うん、これでいいのだ。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする