2017年07月22日

マイルスデイヴィス リラクシン

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マイルス・デイヴィス/リラクシン
(Prestige/ユニバーサル)

1955年のマイルス・デイヴィス・クインテット参加からおよそ1年後にレコーディングされた、マイルスの「クッキン」「リラクシン」「スティーミン」「ワーキン」という、いわゆる”マラソン・セッション四部作”は、初期マイルスの素晴らしく繊細でスタイリッシュなトランペット・プレイと、彼のトータルな音楽家としての才能の開花を聴くことが出来る素晴らしいアルバム群であります。

そして、このバンドが初めての「ソロを大々的に取らせてもらえる、フロントマンとして雇ってくれたバンド」であったコルトレーンにとっても、独自の個性を最初に発揮させた場として、多くの素晴らしい名演を刻むことが出来たのでありました。

本日もマラソン・セッション四部作から「リラクシン」です。

このアルバムは、タイトル通りリラックスした演奏を集めたもので、収録曲のゴキゲン度は総じて高く、たとえば

「今日はちょっとマイルスな気分だね♪」

という時や

「仕事でヘトヘトになったから、ジャズでも聴いてホッとしたいわぁ」

という時なんかはそれこそピッタリなんじゃないかと思います。

マイルス・デイヴィスっていったらそりゃもうジャズの帝王で、何かよくわからんが凄い人で、ちょっと気難しい芸術家っぽいから、凄く難しい音楽をやってるんじゃないかしら?と思ってるそんなアナタ、確かにマイルスのカッコ良さって、どの時期も一貫してクールでニヒルなところで、モノによってはちょっと異常な緊張感とか、軽い気持ちでほんほんしたい時に聴いたらカウンターパンチ喰らわされる作品とかもあるんですが、で、アタシ個人的にはそんなアルバムこそがドップリギットリ浸れる最高なんだなこれ、だったりもするんですが、えぇ、世の中のほとんどの人はアタシと違って、平和を愛し、癒しを求める美しい心をお持ちだと思いますので、あえて”芸術”の方に突き進む一歩手前の50年代の音源をまずは「聴いてごらんなさいな」とオススメしたいのです。

特にバックにレッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズがいた頃のマイルスの音楽は、マイルスのニヒルでクールなキャラクターは、演奏の中心で孤高のダンディズムとしてカッコイイ音と最高の雰囲気を放ってはおりますが、この3人のリズム・セクションがそれを彩ればあら不思議、マイルスのカッコ良さそのままに、小粋で優雅で実にオシャレな極楽ジャズとして鳴り響くんですよ。

という訳でここをご覧の

「ジャズ聴いてみたいなぁ、やっぱりマイルスかなぁ・・・。でも何か難しそう・・・」

とお悩みの方いらっしゃいましたらタイトルに「〇〇〜ン」と付いているマイルスの初期アルバムをまずは聴いてみてくださいね。それかこのブログのやチャラいレビューを読んでやってくだせぇ。。。




【パーソネル】
マイルス・デイヴィス(tp)
ジョン・コルトレーン(ts)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)


【収録曲】
1.イフ・アイ・ワー・ア・ベル
2.ユーア・マイ・エヴリシング
3.アイ・クッド・ライト・ア・ブック
4.オレオ
5.イット・クッド・ハプン・トゥー・ユー
6.ウディン・ユー

(録音:DE1956年5月11日,@〜C10月26日)


与太はこれぐらいにして、このアルバムが先日ご紹介した「クッキン」と並んで、マラソンセッション4部作の中で特別人気が高いのは何故かというと、さっきも言ったように、楽曲演奏が軒並みくつろぎに溢れていて、ゴキゲンで親しみ易いということと、それに加えてスタジオ内のリラックスした空気もそのまま演奏の前とか後とかにちょこっと入っていて(もちろん全体の流れを妨げない程度)、実にいい雰囲気なんです。

オープニングの前にマイルスが


「(しわがれ声)先に演奏すんぞ、曲名は後で教える」

と、メンバーに呼びかけて、レッド・ガーランドが「ほいきた」とばかりに学校チャイムでおなじみの「きーんこーんかーんこーん♪」をピアノでやってアルバムが始まる。そこから小気味良いミディアム・テンポに乗ってマイルスのウィットに富んだ小粋なトランペット、コルトレーンの実に堂々とした和やかなソロでう〜ん、いいですなぁ、実にいい。

続いては美しいバラードでイントロを弾くガーランドに

「(しわがれ声)そこはブロック・コードでやってくれ」

と、やっぱりスタジオ内でのやりとりが入ってガーランド弾き直しからのマイルスの繊細で美しい美しいバラード。

はい、このバラードでのマイルスからタッチしたコルトレーンのソロがもう泣ける。

テナー・サックスらしい芯の太い音ではありますが、コルトレーンは「ズズズ・・・」と音を引きずらずに、メロディを過不足なく紡ぎ上げてゆくんです。これはこの後もずっと変わらないコルトレーンならではのスタイルなんですが、繊細な中にもマイルスと共通するけれどもどこか一味違う独特の”キレ”があって、しかも数分のやや短い展開の中で絶妙なストーリーを組み上げて、そこからレッド・ガーランドのピアノがため息のようにバトンタッチする。これたまらんですね。

で、個人的にこのアルバムのコルトレーンのベスト・プレイと思えるのが、ソニー・ロリンズが作った割とカラッと明るめのバップ・ナンバー「オレオ」です。

ちょいと早めでカリプソ入ったこの曲を、マイルスはとても気に入っていて、テンポよくアドリブを吹きまくっているんですが、こういうテンポとくればコルトレーン。

コード・チェンジを絶妙なリズムで強調しながらブンブン唸るベースでリードするポール・チェンバースとピッタリ呼吸を合わせるかのように、これ以上ないほど快調なアドリブをテクニカルにかましてくれます。だから誰だこの時期のコルトレーンへたくそだなんて言ったヤ(以下略)。

で、アルバムの最後はやっぱりマイルスの声も入ってます。

プロデューサーの

「Okか?」

という声に

「何がよ!?」

と、やや怒気含んで答えるマイルスがちょっと怖いんですが、この後ろでCDだと微妙に誰か何か言ってるなぁぐらいの声が入ってます。

何だろうと思ったらコレ、コルトレーンが

「(ビールの)栓抜きない?」

と誰かに訊いてる声なんだそうです。

全体的にゴキゲンなセッションなので、まずは雰囲気の素晴らしさを皆さんに感じてもらえたらなぁ、なんて思いつつ。。。



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする