2017年07月25日

マイルス・デイヴィス ワーキン

1.jpg
マイルス・デイヴィス/ワーキン


(Prestige/ユニバーサル)

はい、今日も「コルトレーンのファースト・ステップを聴こう♪」と題しまして1956年の初期マイルス・デイヴィス・クインテットの作品を掘り下げていきたいと思います。

今日ご紹介しますのは「マラソン・セッション四部作」の最後の一枚になります『ワーキン』であります。

これはですのぅ、アタシは声を大にして言いたいのですが、名作揃いのこの時期のマイルスのアルバムの中でも非常に優れた出来の、名盤を通り越して芸術品の域に達してるアルバムと思うのですよ。

しかし、工事現場でタバコ吸って立ってるだけの、まるでカツアゲみたいなジャケットで損をしておる。

一応ジャケットには

『工事中→仕事中→ワーキン』

という洒落が込められてるのですが、ほんなもん言われてみらんとアメリカ人過ぎてよくわからんです。ただ怖〜い顔のマイルスに「よォ、カネ貸してくれ」とでも言われてるような気にしかならない。

しかーし!

ジャケがカツアゲだからといって、このアルバムを聴かずに放っておくのは勿体ないんですよそこのお嬢さん。

実はこのアルバムこそは、マイルスのミュートをかぶせた繊細でメロディアスなトランペット・プレイのカッコ良さ、胸にギュッとくる切なさと、レッド・ガーランドが奏でるえも言われぬ美しいピアノの大人な哀愁が目一杯堪能できる、という意味で四部作中ぶっちぎりの名作であるんです。

嘘だと思うのなら、1曲目の「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」を聴いてごらんなさい。

「宝石を転がすような」と形容されるレッド・ガーランドのピアノが、優しく切ないアルペジオを奏で、その上に絹糸を泳がすように、マイルスのミュート・トランペットが入ってくる。

美しい美しいバラードです。理屈をすっ飛ばしてギューっと胸が締め付けれらて、あぁ、この気持ちなんでしょう。カツアゲなんて最初からない、あるのは美しい音楽が夢のように柔らかく浮かんで沈んで夢のように淡い輪郭を描く幻想の世界。

くー・・・・。
















【パーソネル】
マイルス・デイヴィス(tp,@〜DFG)
ジョン・コルトレーン(ts,A〜DFG)
レッド・ガーランド(p)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド
2.フォア
3.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ
4.ザ・テーマ (テイク1)
5.トレーンズ・ブルース
6.アーマッズ・ブルース
7.ハーフ・ネルソン
8.ザ・テーマ (テイク2)

(録音:@〜EG1956年5月11日,F10月26日)


・・・あぁいけない。マイルスのワン・ホーンが余りにも美しい1曲目に魂が持っていかれてコルトレーンを忘れてました。

そんな訳でこのアルバムでもバラード以降の2曲目からコルトレーンは参加してます。

まずはマイルスお得意のミディアム・アップ・テンポで、後にライヴでもよく演奏されることになる「フォア」で、この時期ならではの

・スムースで柔らかいマイルス→硬質で力強いコルトレーン

という対比が絶妙にバトンタッチされて、演奏の雰囲気は良い感じに小粋なものとなります。

で、カッコイイのは次の「イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ」ですねぇ。

コチラはグッとテンポを落としたミディアム・スロウのナンバーですが、コチラはよりクッキリとマイルスとコルトレーン、両者の個性の違いが曲調の中で見事なコントラストを際立たせます。

極力音数を絞ったマイルスのソロから、丁寧にフレーズを厳選しつつも迷いのない音を紡いでゆくコルトレーン。そのソロの直後にすかさずテーマを絶妙に崩したマイルスがリードするエンディング。これぞ粋です、モダン・ジャズの粋であります。

「ザ・テーマ」というのは、この頃のマイルス・グループがライヴのオープニングとエンディングに演奏していた、文字通りのテーマ曲。

ワクワクするようなリズムで軽やかに跳ねるマイルスと、ゴツゴツした音で力強くドッシリと歩くコルトレーン、これもまた対比がお見事。

そしてコルトレーンを大々的にフィーチャーした「トレーンズ・ブルース」と、マイルス、コルトレーンが抜けてガーランドにトリオ演奏で録音させた「アーマッズ・ブルース」と、ブルース2曲ですが、これもまた実に都会的でスマートに洗練されていて、いわゆる土臭い”ブルース”とはかなり違った味わい。

コルトレーン作曲の「トレーンズ・ブルース」は、やさぐれたワルなテーマを吹くマイルス&コルトレーンのハモり、そこからの”オシャレ不良”なマイルス、”硬派不良”なコルトレーンのソロのコンビネーションは、言うまでもなくお見事ですが、ブルースの雰囲気を損なわずに軽やかに鍵盤を転がすガーランド、ヒップに跳ねるシンバルワークでトッポい雰囲気を作り上げているフィリー・ジョーのドラムがまたいいじゃないですか。

「ハーフ・ネルソン」で再びテンポ・アップして、今度はテーマをピタリと合わせて吹くマイルス&コルトレーンにシビレてください。

淀みなく出てくるフレーズに、これ以上ないほど絶妙なシンコペーションを要所でキメるマイルス、もうたまらんですね。それを受けて勢いよく吹きつつも、マイルスに合わせるかのようにセンスのいいシンコペーションをこちらもキメてくるコルトレーン、もうたまらんですね。

以上、マイルス四部作でのコルトレーンは「マイルスの小粋で繊細なトランペットに対して、力強く勢いのあるテナー」で、大健闘どころかリーダーと肩を並べて堂々たるフロントぶりであります。

それももちろんガーランド、チェンバース、フィリー・ジョーの卓越したリズムのバッキングあればの話でもあり、何よりこの時代に開花した「スリルを孕んだ”粋なジャズ”」であるハード・バップを、メンバー全員が「こういうアプローチでやればカッコイイんじゃないか」というのを日々のライヴやセッションで研磨に研磨を重ねた結果なんだよね、という気はものすごくします。

それにしてもマイルスの”マラソン・セッション四部作”スタジオ盤なのに演奏がとってもリアルで素晴らしいライヴ感がありますね。コルトレーンの演奏だけをピックアップして書くつもりが、やっぱり曲と演奏全体のカッコ良さ、何より雰囲気の良さに引き込まれてしまい、ついつい長文になってしまいました。うん、たまらんです。






”ジョン・コルトレーン”関連記事


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』


サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 大コルトレーン祭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする