2017年08月25日

ジョン・リー・フッカー ブーン・ブーン

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ジョン・リー・フッカー ブーン・ブーン
(Capitol)


さて、夏といえばジョン・リー・フッカーです(?)

2001年に亡くなってはおりますが、今年はジョン・リー・フッカーの生誕100周年記念ということで、8月22日の誕生日にはネット上で大いに盛り上がっておりました。

何にせよブルースの孤高の巨人として、その地の底の暗闇から響いてくるかのようなドスの効いた低い声と、ブギー一発、或いはドロッドロのスロー・ブルース一発、いずれのスタイルでもドぎつくうねってとぐろを巻いて襲い掛かるギターと、それらを効果的に響かせる「カッ、カッ、カッ」という靴の音でもって、”〇〇ブルース”というものではなく、唯一無二の”ジョン・リー・フッカー・スタイル”というものを築き上げ、50年以上もそれを貫き通した人であります。

マディ・ウォーターズやB.B.キングと同じように、戦後すぐぐらいの時期から本格的に活動を始め、そして60年代になって彼の最凶にディープなブルースに惚れた多くの若手ブルースマンやロック・ミュージシャン達に慕われておりますが、誰に衝撃を与えようと、どんなスタイルの相手と一緒に演奏しようと、この人のスタイルはずっと変わらず、どころか微動だにせず、ほぼワン・コードのブギかドロドロのスロー・ブルースを唸るのみ。

更にそのスタイルが余りにもワン・アンド・オンリー過ぎて、フォロワーどころか似たようなスタイルでブルースをする人すら現れず、ついでに言えば音楽的に孤高を極めたからさぞストイックでアーティスティックな人なんだろうと思ったら、後輩達の呼びかけには割と気軽に答えてライヴやレコーディングにはニコニコとフットワークも軽く出かけてゆく。

インタビューなんかでも「オレがオレが」ではなく、ひとつひとつの質問にとても真摯に向き合って、丁寧に言葉を選びながら、そして適度なユーモアと茶目っ気を交えながら紳士的に答えてくれる。実に腰の低いジェントルマン。

またそこが最高にカッコ良くて、聴く人をどこまでも「かっこぇぇ〜、あ〜かっこぇぇ」とブルースの底なしの泥沼に引きずり込む男、それがジョン・リー。

そんなジョン・リーには、もちろんアタシもブルース聴き始めの頃、割と早い時期に惚れました。

例によって中学時代に親父に薦められて買ったオムニバス”アトランティック・ブルース・ギター”に、エレキ弾き語りのドロドロなスロー・ブルースが入っていたのに「これやっべぇ!」と思ったのが一番最初。

で、高校生になって、音楽の色んな本とかを読むようになって、ジョン・リーについてもちょこっと知ることが出来たんですが、丁度リアルタイムでリリースされて、ヤングギターとかにも広告がデカデカと載っていたので何も知らずに「とりあえず買っとくか」と思って買ったのが、1992年に新作としてリリースされた『ブーン・ブーン』




【収録曲】
1.ブーン・ブーン
2.ジェシー・ジェイムスみたいな悪い奴
3.あのブルースをもう一度
4.シュガー・ママ
5.トリック・バッグ
6.ブギー・アット・ラッシャン・ヒル
7.ヒッティン・ザ・ボトル・アゲイン
8.ボトル・アップ・アンド・ゴー
9.聴こえぬ声
10.アイ・エイント・ゴナ・サファー・ノー・モア


これ凄くいいアルバムだったんですよね。

何がどういいかっていうと、ブルースのことなんかちょっとかじった程度だったアタマの悪い高校生にも「おぉ、何だか渋いけどギラギラしてる。これがブルースか!」と、ストレートに分からせてくれたんですよ。

当時のアタシといえば、ロックのCDを買っても、タテノリの速い曲か、アコースティックの綺麗なバラード以外はすっとばして聴いてたアタマの悪い高校生(2回目)です。

そんな音楽のことなんか何もわかっとらんクソガキに、1曲目から「お、おぉ!?」とグイグイ引き付けた。もちろんその時は引き付けられてるということしか分からずに、友達にも「何これ、ブルース?」と訊かれて「おぉ、コレがカッコイイんだぁ」と、何となく答えることしか出来なかったんですが、後になって色々聴いて、その”引き付ける感じ”こそがこの人のディープな声とギターのシンプルにして最高な魅力、そして90年代という時代に、ジョン・リーと相性の良い最高なゲスト・ミュージシャン達が懸命に組み上げたキャッチ―なアレンジが、ブラックホールみたいなジョン・リーの曲に親しみを加味したんだなぁと気付くに至りました。

映画”ブルース・ブラザーズ”の路上演奏シーンでもおなじみの代表曲「ブーン・ブーン」がまず冒頭で、この曲は1962年にヒットしたやつの再録音ですが、ジョン・リーがザックザックと刻むワン・コードのバッキングに絡むスティーヴィー・レイ・ヴォーンのお兄ちゃん、ジミー・ヴォーンが弾くロッキンなソロに、締まったリズムのベース、ドラムがバシッと決まって、最高のバンド・サウンドです。

若手モダン・ブルースのホープとして、色んなギター関係の雑誌によく登場してたロバート・クレイが、王道のモダン・ブルース・スタイルで、ファンキーなクラプトンみたいなギターを炸裂させるスロー・ブルースの「あのブルースをもう一度」も、好きにやらせてるようで実は低く唸るヴォーカルと、手数こそ少ないけど「ガリッ!」とひと掻きするだけでその場の空気をガラッと変えてしまうジョン・リーが凄いし、暴力チョーキングの魔人、アルバート・コリンズのギャイギャイしたサウンドと、トランス感十分なジョン・リー・ブギな楽曲が絶妙にハマッた「ブギー・アット・ラッシャン・ヒル」とかその辺のバンド・ブルースの盛り上がる曲と、凄まじくへヴィなギター弾き語り、もしくはハーモニカ(チャールズ・マッセルホワイト)とのデュオとかでズブズブと沈み込んでゆくモノホンのディープ・ブルース(特に怪しいトレモロが効きまくったギターの音がヤバい「シュガー・ママ」凶悪!)との、楽曲の配分なんかも凄くいいのです。

ジョン・リーの傑作、名盤と呼ばれているものは、初期の弾き語り時代(たとえば「ザ・グレイト・ジョン・リー・フッカー」など)に集中しますが、それは本当にコアしかない深淵極まりない音楽だったりして、実際アタシもこのアルバムみたいな「ブルース知らない人も、しっかりノセながら引き込むアレンジ」が効いた90年代のジョン・リーを知っていなければ、果たして50年代の名盤をちゃんと聴けただろうかと思います。

今でも折に触れて聴いている大切な大切なアルバムです。当然「ブルース」という言葉にちょっとでもピクッとなる人は、とてもいいアルバムなのでぜひ聴いてくださいね♪




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2017年08月24日

ジョン・コルトレーン・カルテット・プレイズ

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ジョン・コルトレーン・カルテット・プレイズ
(Impulse!)

暦の上ではもう秋ですが、残暑はまだまだ続いております。

嫌ですね、暑いしセミはもうこの世の終わりとばかりにミンミンジンジン鳴きまくってるし、一年で一番体力も気力も奪われるのがこの8月の後半なんですが、こんな重たい季節に聴きたくなるコルトレーンのアルバムに『ジョン・コルトレーン・カルテット・プレイズ』というのがあります。

終始どんよりとした不穏な空気と、聴く人の意識を深く深く瞑想の内側へと誘うかのような、ある意味スピリチュアルなムードが、アルバム全体を覆い尽くすような、いかにも60年代以降Impulse!時代のコルトレーンといった辛口でも甘口でもない、しいて言えば”重口”の味わいですね。

録音年は1965年で、名盤で代表作と言われる『至上の愛』と、最大の問題作と呼ばれる『アセンション』の間に挟まれた時期に録音され、しかもさっきも言ったように全編に渡って重く内省的なムードで覆い尽くされておりますので、コルトレーンの作品の中でもいささか地味な扱いを受けていたこともあって、お客さんにオススメしてても「へー、こんなのあったんだ。知らなかった〜」とか言われることもありました。

えぇ、そんな可哀想なアルバムなんですが、さっきも言ったように、このアルバムには独自の濃厚を極めた”重口の味わい”があって、アタシは大好きです。名盤や問題作と呼ばれている作品に衝撃を受けた後に、実際にアーティストの深い持ち味、もしかしたらその人が本当に表現したかった深層のサウンドは、こういったアルバムの中にこそあるんだと思います。

それこそ『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン』を聴いて

「うわぁ!何だこりゃ!!コルトレーンってこんなヤバい音楽やってたんだ!こんなんパンクですわ、ぬはっ!!」(←アホ)と、すっかり鼻息を荒くしたハタチそこらのチンピラだったアタシが、池袋のWAVE(懐かしいね)のアナログコーナーに走って買った2枚目のコルトレーンのレコードがコレ。

そん時も確かギラギラ暑い夏の時期で、朝も昼も夜も「ヴィレッジ・ヴァンガード・アゲイン」と「カルテット・プレイズ」をターンテーブルに交互に乗せてききまくっておりました。

ムシ暑い部屋の中で、汗をダラダラかきながら「よし聴くぞ!」と気合いを入れて聴いてたのが「アゲイン」の方で、意識せずムードに浸るために頻繁に流してたのは、実は「プレイズ」の方だったんですよね。何というか「聴こう」と構えなくても針を落としてレコードを回してさえおれば、自然と音が入ってくる。

そして厚さと疲れにいい感じにヤラレた心身を休めるために部屋の片隅に腰を下ろし、タバコふかしながらボーッとする時、ひたすらダークで重たいはずのこのアルバムに入ってる楽曲、コルトレーン・カルテットの演奏から繰り出されるフレーズのひとつひとつが、不思議な心地良さを伴って、体から心の奥底の方(多分)に、ジワジワと入り込んできて、そこに優しく拡がっていった感覚を、今でも思い出しますし、今でもこのアルバムを聴くとその感覚がじわっと蘇ってきます。




【パーソネル】
ジョン・コルトレーン(ts,ss)
マッコイ・タイナー(p)
ジミー・ギャリソン(b)
アート・デイヴィス(b,B)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)

【収録曲】
1.チム・チム・チェリー
2.ブラジリア
3.ネイチャー・ボーイ
4.ソング・オブ・プレイス

(録音:1965年2月28日、5月17日)


まぁ、そんなことを言っても、所詮は”個人の感想”です。

聴いてどう感じるかは、これからこの作品に出会う皆様方お一人お一人に体験して頂くことにして、ちゃんとした説明を致します。

実はこのアルバムには”チム・チム・チェリー”というもうひとつの呼び名があって、それは何でかと言いますと、はい、一曲目に収録されておるからなんですね。

”チム・チム・チェリー”といえば、ミュージカル「メリー・ポピンズ」の歌です。それ以前に

チムチムニー、チムチムニー、チムチームチェリー、わたしーはーえんとーつ そうじーやーさん♪


と、皆さん保育園や幼稚園なんかで唄った経験はあるんじゃないんでしょうか。そう、我が国ではそんな感じで子供の歌う童謡として有名です。

そんな、みんなが知っているマイナー調の3拍子の曲、これをコルトレーンが最高にカッコいいジャズ・ワルツにしてるんです。ソプラノ・サックスを最初は切々と哀愁のあるメロディーを慈しむように、でもアドリブに入ると指の速度を早め、狂おしさに青白い炎を燃やしながら。

コルトレーンの伝記本とかジャズのガイドブックの類では、コルトレーン最大のヒット曲となった「マイ・フェイバリット・シングス」みたいなミュージカル・ナンバーで、3拍子で、しかも同じようにソプラノ・サックスを吹いて、再びヒットを飛ばそうと目論んだレーベル側が、コルトレーンにカヴァーさせたと書いてありまして、確かにそんな背景はレコーディング時にはあったと思うんですが、もうこの時期の”コルトレーン・ミュージック”を4人で揺るぎない領域にまで作り上げたコルトレーン・カルテットには、ヒットとか有名曲とかそういうのはどうでもいいことで、スタンダードをいかに自分達の世界の奥深くで鳴らしてしまうか、それだけを激しく思考しながら、別世界の”チム・チム・チェリー”がここに仕上がっております。

同じことは、3曲目の「ネイチャー・ボーイ」にもいえます。

ナット・キング・コールのヒット曲として知られ、サラ・ヴォーン、スタン・ゲッツ、マイルス・デイヴィスなどなど、多くの有名ミュージシャンがカヴァーしている、大スタンダード。

原曲は美しいバラードですが、これも主たるメロディーがマイナースケールで出来ておりまして、例えばナット・キング・コールなんかのヴァージョンは「ちょっと物悲しい」くらいの悲しさを、コルトレーンはもうどこまでも沈み込む壮大なスケールの鎮魂歌のように仕上げていて、逆にアタシは何年か後にナット・キング・コールのオリジナルを聴いて「え?こんな感じだったの」とぶったまげたほど。

有名ミュージカルナンバーと、誰もが知る歌モノの有名バラードを入れたアルバムなのに、キャッチ―に仕上がるはずの曲なのに、ここまで深淵に沈めてしまうコルトレーン、容赦なくかっこいいです。。。

オリジナルの「ブラジリア」「ソング・オブ・プレイス」も、同様に深く沈み込むナンバーであります。

特にエンディングの「ソング・オブ・プレイス」は、ジミー・ギャリソンの長い長いベース・ソロがありまして、これがアルバム全体にそれまで漂っていた静かな熱気を吸いこむブラックホールのようで、で、実際ギャリソンの重厚な静寂に収縮されたカルテットのエネルギーが、3分30秒辺りで低音をゆっくりと響かせながら登場してくるコルトレーンの、まるで暗闇に流れ出すマグマのようなテナーで、これまた重く響き渡る。

アルバム全体的に重く、最後までドカーン!と炸裂する場面はないんですが、とてつもないエネルギーが煮立ってることを、この「ソング・オブ・プレイス」のコルトレーンが出てきて吹いている場面でいつも感じます。


深く、重く、・・・と何度も言ってますが、これこそがコルトレーンです。






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2017年08月22日

ブラックフラッグ Damaged

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Black Flag/Damaged
(SST)


「気合いの入ったロックを教えてください」

お店に立ってた頃、若いお客さんからよくこういう問い合わせを受けておりました。

時は1990年代後半。

うん、アタシも若かったですが、お客さんはもっと若かった。

大体そういう問い合わせをしてくる人達は、当時空前のブームだったメロコアから洋楽に入って、もうちょっと激しいやつを聴いてみたいと思って、ハードコアとかモダンヘヴィネスとか、その辺を聴き漁りたいという素晴らしい意欲を持っている人達です。

「気合いの入ったロックを・・・」

の問いにアタシは大体即答はせず、とりあえず「そうねぇ、メロコアに飽きたら次はやっぱりハードコアっしょー」とか、言って反応を伺ってましたが、この”ハードコア”というワードに、まぁみんな反応すること反応すること。「うぉぉ、ハードコア!」「聞いたことあるっす、ヤバイっすよね!」と、その時点でお客さん達もアタシも理屈を脱ぎ捨てて本能のみで、内側からこみあげてくるアツい感情をストレートな単語や擬音にして、まずは盛り上がります。

今にして思えば、CDが売れるとかオススメを気に入ってもらえるとか、そんなことよりも、こうやってうわぁっ!って盛り上がる瞬間が一番楽しかったですね。

それで”で、ハードコアといえばこの人ですよ”と、色々と古今東西のパンク系の人達のライヴやクリップを録画したビデオに入ってる、ヘンリー・ロリンズのライヴ・パフォーマンスを観てもらう訳です。

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ガッツリ鍛え上げられた上半身をむき出しに、常にファイティング・ポーズのような、足を踏ん張った姿勢でビシッとまっすぐ前を向いてそして叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ!しかも激しく動いて激しく叫んでいるのに、体鍛えまくっているから姿勢が崩れたりよろめいたりしない。

「ほら、これがハードコア。これを気合いが入ったロックと言わずして何を気合いの入ったロックと言うの。フフフ」

という言葉がつい興奮して出そうになりますが、あえてそこは無言でニコニコと反応を伺います。

反応は伺うまでもなく「すげぇ・・・」「やべぇ・・・」の声が彼らの口からため息と共に漏れているのを、アタシはひたすらニヤニヤしながら聞いてました。もちろん、モニターの画面にくぎ付けになっている目が真ん丸になっているのも含めて。

曲が終わって「これ・・・何て人ですか」という言葉を聞いてようやく、アタシは説明に入ります。

この人はヘンリー・ロリンズといって、アメリカのハードコアの初期の頃に出てきた第一人者みたいな人で、デビューした頃からもうこんな感じで気合いの塊みたいな人なんだ。でもね、どっからどう見てもパンクな人なのに、実はめちゃくちゃ規則正しい生活をしていて、筋トレもしてるし、政治とか哲学とかの本も読みまくってるインテリ。俳優もやってて映画にも出てるんだけど、ほとんど名前のないちょい役とか、でも色んなのに出てるから「あ、またあの人出てる」って、映画ファンには根強い人気があったりする。

で「うぉぉ、何か知らんけどすげぇ、カッコイイ!」と、ロリンズ・バンドのCDを手にする人、結構いました。

で、更に「この人のこともっと知りたい!」という人には、アタシはロリンズが最初に在籍していた、ブラックフラッグのことをオススメしていました。






【収録曲】
1.Rise Above
2Spray Paint
3.Six Pack
4.What I See
5.TV Party
6.Thirsty and Miserable
7.Police Story
8.Gimmie Gimmie Gimmie
9.Depression
10.Room 13
11.Damaged II
12.No More
13.Padded Cell
14.Life of Pain
15.Damaged I


やっぱりパンクといえば、ハードコアといえば、このバンド抜きに語ることは出来ないんですね。

1976年、イギリスでピストルズやクラッシュなどのオリジナル・パンクがセンセーションを巻き起こしていた頃に結成されて、アメリカならではの、もっと泥臭く、もっと暴力的なサウンドを追い求め、更に商業的な成功に重きを置かない気骨のバンドを世に出すために、元祖インディーズ・レーベルの”SST”を設立して、その後のパンク/ハードコア、そして世界のロック・シーンに与えた影響はとてつもなくデカい。

そんなことより何よりまず、ヘンリー・ロリンズがヴォーカリストとして在籍していた時の、無軌道で荒削りなサウンドの、理屈も理性も見事にぶっ飛ばすその破壊力は、どんなに音楽が進化しても、機械的に激しく荒々しい音が出せるようになった現在でも、十分に刺激的な音として通用するんです。通用するどころか未だに”気合い”という一点で、ロリンズ先生の居た頃のブラックフラッグのサウンドを突破できるバンドっているのか?いやいない。とアタシ思います、はい。

さて、そんなブラックフラッグの、まずはオススメのアルバムが、実質的なファースト・アルバムであります「ダメージド」。

実はブラックフラッグは、結成してからメンバーの流動が激しく、1枚目のアルバムを出すまでに3人のヴォーカリストが入れ替わっておりますが、1981年にワシントンのハードコアバンド”ステイト・オブ・アラート”に居たヘンリー・ロリンズが加入してからバンドはパワーと安定感を増し、西海岸のマイナーバンドだったブラックフラッグはアメリカのアンダーグラウンド界隈で一気に中心的な存在となってゆくのです。

で「ダメージド」。サウンドの要であるリーダーのグレッグ・ギンが叩き付ける”割れたきったない音”のギターと、パンチの効きまくった、いや、もう拳しかないぐらいのロリンズ先生のストレート、ど根性、気合い大炸裂なヴォーカルとが、ひたすら暴力的に疾走します。

優れたロックバンドのファーストは、大体荒削りで初期衝動に溢れた名盤が多いというジンクスがありますが、その見本のような、どこから聴いてもどんな風に聴いても初期衝動しかない、そんなアルバムです。

ブラックフラッグはこの後86年の一旦解散まで、ヘヴィメタルからの影響も取り込みつつ、どんどん音をへヴィな方向に深化させていきます。

ハッキリ言ってブラック・フラッグやその後のロリンズ・バンドには駄作というものがありませんが、やっぱり無駄の一切ない、というより荒々しさしかないこのファーストは「気合いの入ったロック」をお求めならばまずは聴くべきでありましょう。







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posted by サウンズパル at 19:22| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする