2017年09月04日

キャンド・ヒート(Canned Heat)

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キャンド・ヒート(Canned Heat)
(ユニバーサル)

60年代にイギリスの若者達が、アメリカのちょい昔のブルースやR&Bを「カッコイイ刺激的な音楽」として聴き狂い、バンドやってる連中はそれらのブラック・ミュージックのサウンドを競って自分達の演奏スタイルの中に取り込んで行きました。

こうやって誕生したのがブルースロックです。

ジョンメイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズを皮切りに、ヤードバーズ、そしてローリング・ストーンズといったイギリスのバンド達が、本国アメリカではとっくに昔の音楽となっていたブルースを、最先端の”ロック”として生まれ変わらせたんです。

一方ブルースを生んだ国、アメリカの若者達の中でも、ブルースは流行の音楽でこそなかったものの、南部のローカルバンド達にとっては重要なレパートリーであり、そして都市部の熱心なファンの間では、古いブルースのレコードは、熱心にコレクションしてじっくりと聴き込むための大切なツールでありました。

やがてイギリスでブレイクしたブルースロックが逆輸入される形でアメリカに上陸、ここで多くのミュージシャン志望の連中に刺激と衝撃を与え、アメリカでも「ブルースをロックでやるとカッコイイ」という価値観がジワジワと浸透してゆくのです。

元より、両国の白人青少年の間では、ブルースに対する認識には若干の違いがありました。

イギリスでは”オシャレでワルでクレイジーな音楽”という認識、アメリカではそれプラス”自分達のルーツのひとつとして見直されるべき音楽”という認識があったんですね。

ブルースを、特に戦前の古いブルースを熱心に愛好する都市部の若者達はそういった思いに突き動かされて、戦前に録音を残したブルースマン達を南部へ探しに行って”再発見”し、彼らをステージへと上げるように尽力しました。

そうやって”フォーク・ブルース・リヴァイバル”という空前のブームが起こり、一方でアメリカはアメリカの、フィーリングとスピリッツに溢れたブルースロックがそのまま”ロック”へと進化して・・・という、現在へと脈々と受け継がれる流れを生むのですが、本日はそんなアメリカのブルースロックの立役者、いやもうこの人達を抜きにしてはブルースロックもアメリカンロックも語れんでしょうというキャンド・ヒートというバンドをご紹介致します。

キャンド・ヒートは実は日本ではあんまり有名じゃありません。

ロックという意味ではジミヘンやジャニス・ジョプリン、ドアーズなど、強烈なカリスマと独自の音楽性を持った人達に存在として圧倒され、ブルースロックという意味では王道のシカゴ・ブルース・スタイルで多くのファン心を掴んだポール・バターフィールドに、それぞれ知名度は劣ります。

しかし、キャンド・ヒートの初期のアルバムには、このバンドならではの古いブルースへの深過ぎる愛と、洗練なんぞクソくらえなローファイ&やぶれかぶれなオリジナリティに満ち溢れた、たまらん味わいがあります。

喩えれば90年代以降にアタシ達にブルースのカッコ良さを、ロック・サイドから教えてくれたローファイでダーティなジョン・スペンサーやベック、G・ラヴ&ザ・スペシャルソースなんかの音楽性の元をたどって生けば、絶対にこの人達にブチ当たるんじゃないかと。そんぐらいやさぐれとりますし、何というか非常に好感の持てる、独特の”オタク臭”がするんですよ。




【収録曲】
1.ローリン・アンド・タンブリン
2.ブルフロッグ・ブルース
3.素敵な悪魔
4.ゴーイン・ダウン・スロー
5.ナマズのブルース
6.ダスト・マイ・ブルーム
7.ヘルプ・ミー
8.ビッグ・ロード・ブルース
9.ザ・ストーリー・オブ・マイ・ライフ
10.ザ・ロード・ソング
11.リッチ・ウーマン
12.オン・ザ・ロード・アゲイン (オルタネイト・テイク) (ボーナス・トラック)
13.ナイン・ビロウ・ゼロ (ボーナス・トラック)
14.TVママ (ボーナス・トラック)


1960年代中頃に、アメリカは西海岸の大都市ロサンゼルスで、熱心なブルース・レコードのコレクターであったボブ・ハイト(ヴォーカルとブルースハープ)とアル・ウィルソン(ヴォーカルとギター)が

「なぁ、ブルースやりたくね?」

「やりてぇ」

という気持ちだけで結成し、バンドの名前を戦前の”元祖クロスロード伝説”を持つブルースマン、トミー・ジョンソンの代表曲から取ったのがキャンド・ヒートです。

何が偉いってアナタ、この時代バンドやってる連中のブルースといえばやっぱりシカゴ・ブルースで、マディ、ウルフ、ボ・ディドリーにチャック・ベリー、はたまたB.B.キングだった時代に

「戦前のミシシッピ・デルタのブルースがよぉ」

と、(主に)アコースティック弾き語りのブルースマン達の音源を幅広く聴き込み、しかも単なるリスニングオタクにとどまらず、そのディープなフィーリングと演奏法を自然と出来るようになるまで楽器で覚え込み、更に単なるコピーじゃなくて、それをバンド・サウンドでやってみせたってのが、コノ人達の素晴らしいところなんですよ。

「ローリン・アンド・タンブリン」「ナマズのブルース(キャットフィッシュ・ブルース)」「ビッグ・ロード・ブルース」などなど、戦前から歌われている生粋のディープ・サウス・ブルースの名曲達が、野太いヴォーカルとハープ、絶妙な”間”とシンコペーションでギャインギャイン暴力的に鳴り響くスライド・ギター、まとめる気なんて何もないヤケクソな弾きっぷり/叩きっぷりなんだけど、実は粗削りでワイルドなウルーヴをしっかり生み出しているベースとドラムでリアルに蘇っている様を体験してください。

この後、どんどんオリジナル曲もやるようになって、演奏のクオリティもグッと上がるキャンド・ヒートでありますが、やっぱりローファイ&やさぐれた雰囲気上等のこのファーストは味わいの塊であります。スタイリッシュなブリティッシュ・ブルースロックとは真逆のアホッぽさ最高です。

ブルースが好きで、好き過ぎてついバンドまで組んでしまったこの愛すべきバカヤロウ達の魂を聴いてください。



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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 18:04| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする