2017年09月26日

ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ L.A.M.F.

1.jpg

ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ/L.A.M.F.

この前からロックンロール、ロックンロールと、このブログは結構やかましく言っております。

ロックンロールというのは、1950年代に生まれた音楽で、ブルースやR&Bをベースに、更なる楽曲の速さやノリの良さを追究した、非常に踊れる&分かり易い音楽であり、当然社会現象となるほどに若者を熱狂させた音楽です。

そしてこの素晴らしい音楽は、黒人と白人のミュージシャン同士が、同じ目的(つまりキッズ達を踊らせて騒がせるという行為)のためにガッツリ手を取り合って、ひとつのジャンルを築き上げた、史上初の音楽なのです。

えぇと、厳密にはジャズもそうなんですが、またちょっと違った話になりますのでここでは省略しますね。

で、その50年代を席捲したロックンロールが50年代の終焉と共に一気に衰退して、しばらくのインターバルを経て登場したのがロックというのは、皆さんもうご存知でありましょう。

で、ロックンロールは死んだのか?全部ロックに取って代わられてしまったのか?といえば、答えは当然「No」で、70年代にも80年代にも90年代にも、もちろん2000年代を経た今現在も「ロックンロールバンド」と呼ばれるバンドは無数に存在し、文字通りリズムをロックさせ、ロールさせたりしております。

んで、重要なのがこっち。彼らは「ロックンロール」と呼ばれますが、彼らの大半がやっているそのロックンロールは、1950年代のロックンロールそのまんまではなく、実は1970年代に新しく生まれ変わって復活を遂げた、新しい方のロックンロールなんです。

ん、この言い回しが適切かどうかは分かりません。が、ロックンロールは60年代の訪れと共に確かに一度直系と呼べる音楽的な継承が途絶えて、70年代にそのスピリッツを受け継ぐ若者達によって、ジーンズや皮ジャン、そして激しく打ち鳴らされる8ビートと、大出力のアンプで歪ませたギター・サウンドと共に見事な復活を遂げた音楽なのです。

「何の話や?さっぱり訳がわからん」

と、お思いの方もいらっしゃることでしょうから、話をこのまんま続けます。

ロックがアメリカやイギリスで、めまぐるしい進化を遂げていたのを見て、そのロックの生みの親の一人であるはずの男がこう言いました。


「ロックはいいが、ロールはどうした?どこに行っちまったんだロックンロールは?」


6.jpg

そう、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズです。

キースはローリング・ストーンズの中で、シンプルな3コード、単音でパラパラ弾きまくらないソロで、ロックバンドの中で「ロックンロール・ギターのカッコ良さ」というものを体現したようなギターをずっと弾いておりました。

後を引くリフ、独特のルーズな間から生まれ出る引きずるような、転がるようなグルーヴ。

言葉にすればたったこれだけのギターから醸し出される、何ともダーティーな不良のカッコ良さ。

そう、キースは70年代になってもロックに目覚めた不良な若者達の憧れであり、そんなキースを、ストーンズのロックンロール・サウンドを慕うアメリカの若者達の中で、そのサウンドやライフスタイルの継承者的存在として、ニューヨーク・ドールズというバンドが出てきました。

このバンドには、ロックから難しく面倒臭いところをほぼ省いた、8ビートに3コードという演奏スタイルで出てくる音を、とにかくやかましく、そしてグラマラスに演奏すること”だけ”に全てを捧げたような、ストレートで、ちょっとキケンなカッコ良さがあり、非常にセンセーショナルな存在として話題になったんですね。化粧もしているし。

はい、このニューヨーク・ドールズは”パンクロックの元祖”とかも言われております。その理由はまたちょっと音楽的なこととは違うあれこれが入ってくるので、ここでは省略しますが、50年代ロックンロールへの、単純な原点回帰でもない、かといって小難しくもない、独特のラフなグルーヴとやかましいギターの轟音で酔わせてくれる、新しいロックンロールを、ハッキリとした形でドンと世間に見せつけたのがニューヨーク・ドールズです。

もっといえば、このニューヨーク・ドールズのギタリストとして、そんなロックンロール・サウンドをギャンギャン演奏していて、いつの間にか存在そのものがロックンロールと呼ばれるようになったのが、ジョニー・サンダースであります。

アタシがまだ十代の頃、とある先輩に

「ロックンロールって何ですかね?」

と訊いたら

「バカヤロウ、お前ジョニー・サンダース聴け!」

と言われました。

更に別の人に同じ質問したところ

「それはジョニー・サンダースだ」

と、ほぼ同じ意味の答えが返ってきました。

二度目に質問した人は、ちょっと優しい人だったので

「チャック・ベリーとかエルヴィスとか・・・」

と、モゴモゴアタシが言うと

「うん、彼らは50年代のオリジナル・ロックンローラーだけど、清志郎とかチャボとか、とにかく今ロックンロールやってるヤツらは、みんなジョニー・サンダースから影響受けてるし、ジョニー・サンダース大好きなんだよ」

と、優しく説明してくれました。

実際その後も「ロックンロールが好きだ」という人とはたくさん会って、色々話をしましたが、やっぱりジョニー・サンダースという言葉を口にした瞬間に、少年のようにキラキラした目になったり、エンジンかかったようにアツく語ったり「あぁ・・・ジョニー・サンダースはもう絶対だよね・・・」と、憧れの目一杯入った口調で遠い目をして答える人・・・とにかくみんなにとってジョニー・サンダースという人は特別な存在なのだということを、アタシは心底痛感するに至ったのです。




1.BORN TO LOSE
2.BABY TALK
3.ALL BY MYSELF
4.I WANNA BE LOVED
5.IT’S NOT ENOUGH
6.CHINESE ROCKS
7.GET OFF THE PHONE
8.PIRATE LOVE
9.ONE TRACK MIND
10.I LOVE YOU
11.GOING STEADY
12.LET GO


数々のカリスマ的エピソードとか、やっぱりそういう人らしく、結構早くで亡くなったとか、そういう話もありますが、コレを聴くと全てがぶっ飛びます。

ジョニー・サンダースがニューヨーク・ドールズを辞めて最初に組んだロックンロール・バンド「ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ」のデビュー・アルバム「L.A.M.F.」。

どこにも何にも細工なんてない、ただ荒く、ポップで、そしてやかましい3コードのロックンロール!

最初聴いた時は「いや、これはもうパンクでしょ」と思ったし、正直に「セックス・ピストルズをもっと泥臭くして、どこか切ない感じをふんだんにまぶした音だ」とも思いました。

ジョニー・サンダースは、この頃ライヴで使ってたマーシャルの3段アンプをレコーディング・スタジオに持ち込んで、そのままギターを繋げてガーンと鳴らしてたそうです。

当時の常識では、3段アンプはライヴで音量を稼ぐのと、見た目で派手なインパクト狙いということで、レコーディングではもっと音が聞き取り易い普通の箱型アンプを使うものだというのがあったそうですが、ジョニーはそんなこと気にしません。

「ライヴでいい音出るアンプなんだから、レコーディングでも使うの当然だろ?」

とすらも、多分言ってません。そう、ロックンロール、理屈じゃないんです。

音楽的なあれこれは元より、このアルバムに入ってるのは、熱くてカッコよくて、切なくて興奮する、そういう音楽の”本質”ですよね。本質だけがむせるような質量で「これでもか!」と入ってる。1977年の作品ですが、こういうのに古いも新しいもないんです、ただカッコイイんです。ロックンロール。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:24| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする