2017年10月31日

ザ・ベスト・オブ・ブラインド・ブレイク

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ザ・ベスト・オブ・ブラインド・ブレイク
(Pヴァイン)

様々なジャンルの音楽を聴き込んでいくうちに、戦前ブルースに行き着いて「気が付けばその泥沼にハマッてしまってエライ事になってしまった」という話はよく聞きます。

実際アタシも18から19の時にある日突然ノイズだらけの古い録音のはずのブルースが、それまでにない生々しさでもってガツーンと聴こえるようになって以来、しばらく”戦前ブルースしか聴けない病”を患ってしまい、往生した記憶がございます。

最初はロックや戦後のブルースのルーツを探究するような気持で戦前ブルースを聴きかじるんですが、そのうち戦後の音楽にはない、戦前モノならではの楽しみや奥深さが楽しくなってしまい、結果泥沼にハマり込んでしまうことになってしまうのです。

では、その「戦前ブルースならではの魅力」とは何でしょうか?

うむ〜、これはもうたくさんあり過ぎて、全部書こうとすると長い上に精神的な重っ苦しい話もふんだんに混ぜられた、かなりイッちゃった文章になると思いますのでまず省略。

もっと音楽好きの皆さんに分かり易く説明するとすれば、戦前モノのブルースには、意外と洗練されて都会的な”陽”の部分に溢れたものがある、ということ。

そのひとつがラグタイムです。

ラグタイムはジャズの元になった音楽のひとつと言われ、大体19世紀頃に誕生しています。

西洋音楽起源の、当時のポップス(長調と単調による、非常にシンプルなもの)を、黒人がピアノで演奏する時、独自のシンコペーション(リズムのズレ、今で言う”アフタービートの黒っぽいノリ”ですねぇ)で、左手が「ボン、パン♪ ボン、パン♪」とリズムを刻めば、右手は主たるメロディーを(チャッチャッチャ♪チャラッチャ♪」と、前のめりにつっかかるように弾くようになり、これが「新しい!」と白人達にも大いにウケて、第一次世界大戦の時なんかは、人が集まる砕けた雰囲気の場所にピアノさえあればコレが演奏され、更に映画の世界ではコミカルな場面では必ず使われるぐらいに大流行した。

これがラグタイムなんですが、後にこの独特のグル―ヴィーな音楽を、ブルースマン達がギターで再現し、このスタイルの名手と呼ばれる人達が1920年代わんさか出てきました。

その代表的なギター名手が、本日ご紹介するブラインド・ブレイクです。

何にせよピアノでは右手と左手を使って、別々のシンコペーションで弾いていくというこのスタイルを、ギターを弾く右手の親指と人差し指(たまに中指も)を使って再現するというのは実に至難の技で、多くのブルースマンが「それっぽく弾ける」レベルでなかなかいい演奏をするのに対し、このブラインド・ブレイクという人は、完璧なリズム感、完全に独立した親指とそれ以外の動きで完璧に再現して、しかも他の追随を許さないオリジナリティを持っている訳で、ハッキリ言ってバケモノなんです。

戦前ブルースにハマりまくっていた時「盲目のブラインド・ブレイクは、特にその凄まじいギター・テクニックとラグタイム・ギターの完璧ともいえる完成度で」と書いてある何かの記事を見付け、早速ベスト・アルバムを買って聴いたら

「すげぇすげぇ、ブラインド・ブレイクも凄いけど、このサイドギターの人も凄いわ!ブレイクの弾くメロディにピッタリ合わせてしかも絶対にブレないしヨレない。恐ろしいリズム感だ!!」

と、興奮したんです。で、そのギタリストの名前を覚えようとライナノーツを読んだら、絶妙なリズムをバンボンバンボン刻んでいるサイドギタリストの事には一言も触れておらずに、ん?おかしいと思って色々と調べたら、実はあの「どう聴いても絶対に2本以上に聞こえるギターは、ブレイク本人が右手親指と人差し指による絶妙なコンビネーションで弾いているのだ」と知って、本気で卒倒しそうになりました。




【収録曲】
1.Blind Arthur’s Breakdown
2.Police Dog Blues
3.West Coast Blues (take 1)
4.Dry Bone Shuffle (take 2)
5.Too Tight Blues No.2
6.Skeedle Loo Doo Blues (take 2)
7.Bad Feeling Blues
8.Let Your Love Come Down
9.You Gonna Quit Me Blues
10.Diddie Wa Diddie
11.Early Morning Blues (take2)
12.Fightin’ The Jug
13.Sweet Papa Low Down
14.Sea Board Stomp
15.Black Dog Blues
16.Hastings St.
17.One Time Blues
18.Panther Squall Blues
19.Georgia Bound
20.Rope Stretchin’ Blues-Part1 (take2)

そん時買ったベスト・アルバムが、Pヴァインから出ていた怒涛の戦前ブルースの巨人達シリーズ『キング・オブ・ザ・ブルース〜』シリーズでしたが、今出ている上記ベスト盤は、その内容と一緒で値段が安くなったスグレ物であります。

例によって写真も一枚しか残っていないし、その生涯についても謎の多い、いや、多すぎるブレイクは、最初女性シンガーのバックでギターやピアノを弾くバック・ミュージシャンでしたが、そのギターの卓越した才能を認められ、ソロ・レコーディングをしてそれが予想外にブレイクした(ダジャレじゃないよ)したと言います。

主な活動地は、1920年代当時ジャズやブルースの最先端が毎晩のように演奏されていたシカゴ。

この地でほとんど独走状態の人気を誇り、後に戦前シカゴ・ブルース界で卓越したギタリストと評されることになるビッグ・ビル・ブルーンジィやタンパ・レッドなどにも直接影響を与えた人ではありますが、1934年に38歳という若さであっけなくこの世を去っており、また、30年代以降にはバンドブルースが隆盛を極め「ひとりジャズ・バンド」とも形容されたブレイクのようなラグタイム・ギターは徐々に演奏されなくなって、彼のスタイルを直接受け継いで今に伝える人はおりません(アコースティックなブルースをやるミュージシャンは時々ラグを演奏します、また、日本ではフォロワーとして有山じゅんじという凄い人もおりますが、いずれもレコードを通しての影響です)。

明るくリズミカルで、スローな曲もほんわかした味のあるブレイクの音楽は、ひょっとしたら最初はブルースに聞こえないかも知れませんが、それはそれで一向に構いません。このノリ、このグルーヴ、そして完璧なまでに洗練された音世界は、ワン&オンリーな音楽として、他のどのジャンルの音楽とも、ブレイク一人で対抗できるとアタシは思っております。

CDの内容についての解説、全然しておりませんが、アタシが何を言いたいのかは、このCDに収録されている彼の強烈無比なラグタイム・ナンバー『Blind Arthur’s Breakdown』『Dry Bone Shuffle』などを聴けば、ズドーンとお分かりになろうかと。


彼の謎に満ちた生涯については、過去にコチラ↓にも書いてありますんで、併せてお読み頂ければこれ幸い♪あ、文体が真面目ですが書いてるのはアタシです、ハイ。。。


”ブルース入門編 〜初心者のための優しいブルース講座〜”




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2017年10月30日

ジミ・ヘンドリックス エレクトリック・レディランド

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ジミ・ヘンドリックス/エレクトリック・レディランド

(MCA/SMJミュージック)

音楽好き、なかんづくロック好きにとって、そしてギターを弾く人にとっては、ジミ・ヘンドリックスといえばそりゃもう神様で、もしかしたらビートルズやストーンズ以上に、必ずどこかでブチ当たる人で・・・と、アタシが今更ここであーだこーだゴチャゴチャ言わなくても凄い人だということは、これはもう世間の常識として定着しておりますし、アタシもここへきて”エクスペリエンス時代のジミヘン”のことを書きながら痛感しております。

このブログのポリシーは

「採り上げたアーティストのことを知らない人に、どれだけ興味を持ってもらえるようなレビューを書くか」

でございます。

だからいくら有名で、洋楽ロックにそこまで興味のない人でも名前ぐらいは聞いたことあるというジミ・ヘンドリックスという人のことも、なるだけ分かり易く興味を持ってもらえるようにその音楽の素晴らしさを書いて行きたいと思うのですが、いざじっくりとジミヘンを集中して聴いてみると、頭で考えていたことが綺麗にすっ飛んで「すげぇ!」「やっぱ天才!」という、そのものズバリではあるんですが、どうも主観的な言葉しか出て来ないので困っております。

そうなんです、端的に言ってしまえば、ジミヘンという人のカッコ良さっていうのは

「他の誰とも似ていない、どれかひとつのジャンルに納めようとしても、必ずどこかからはみ出してしまうその音楽性の広さ」

というのに尽きるんです。

だからよく「ロックギターの神様」と言われ、なるほどそうだと思っても、そのギター演奏の中にはブルースもあり、ジャズっぽいところもあり、ロックともブルースともジャズとも言えないような突拍子もないアイディアがどこかで必ず出てくるので、その最高のほめ言葉ですら、彼を形容するには何とまぁ陳腐なんだろうと、後で必ず思ってしまいます。

だもんで、ジミ・ヘンドリックスという人は、「このようにカッコイイのだ」と、簡単な一言で断言してしまえるアーティストではなく、聴いた端々で「あ、これカッコイイ!」という瞬間がいくつもいくつも出てくるアーティストだと思います。

あぁ、こういう話をするとキリがありませんね〜。

最初にジミヘンを知って25年の間、ずーっと「この凄さの正体は何なんだ?」と思って聴いておりますが、未だに正体が掴めない。でもその”掴めないこと”がアタシの想像力をいつまでも刺激してくれる。素敵ですね。

さて、今日もそんなカッコいいジミヘンのアルバムをご紹介しましょうね。


【収録曲】
1.恋の神々
2.エレクトリック・レディランド
3.クロスタウン・トラフィック
4.ヴードゥー・チャイル
5.リトル・ミス・ストレンジ
6.長く暑い夏の夜
7.カム・オン(レット・ザ・グッド・タイムス・ロール)
8.ジプシー・アイズ
9.真夜中のランプ
10.雨の日に夢去りぬ
11.1983
12.月夜の潮路
13.静かな雨、静かな夢
14.焼け落ちた家
15.ウォッチタワー
16.ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)


ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの3枚目のスタジオ・アルバムにして、ジミヘンが生前にリリースしたスタジオ・アルバムとしては最後の作品になってしまった「エレクトリック・レディランド」です。

人によってはこのアルバムこそジミヘンの最高傑作、ロックでブルースでサイケデリックな世界観と、宇宙レベルの超絶なギター・プレイが奇跡の調和を見せながら最大限の威力で炸裂したジミ・ヘンドリックス芸術の集大成と言う人もおります。

オープニングのワウを聴くだけでほとんどの人が「あ、これジミヘン!」と反応する「ヴードゥー・チャイルド(スライト・リターン)」やボブ・ディランのカヴァー「ウォッチ・タワー」、サイケデリックなジミヘンといえばコレの「ジプシー・アイズ」など、ベスト盤やライヴ盤に入っていてもハイライトとなるような、名刺代わりの強烈な曲ばかり収録されておりますし、確かにセルフ・プロデュースでやりたかったことを自由に表現出来ているような解放感に満ちたギター・プレイ、曲によって必要なサウンドを提供し、演奏の厚みをグッと増す豪華ゲスト陣の参加などなど、このアルバムならではの魅力みたいなものが、彼の作品中では最高潮でありましょう。

アルバムがレコーディングされたのは、例によって前作「アクシス・ボールド・アズ・ラヴ」のレコーディングが終わった直後です。

この頃既にデビューしたイギリスを凌ぐ人気をアメリカで獲得していたエクスペリエンスは、大都市から中小都市まで、アメリカ全土をくまなく回る、かなりハードなコンサート・ツアーを行っておりましたが、そのツアーの合間を縫って、レコーディングは行われました。

で、この頃のジミヘンは、元々の「スタジオに引き籠るのが好き」という性格に更に拍車がかかり、ツアーの合間を見てはスタジオに色んなジャンルのミュージシャンを呼んでジャムセッションを行い、それを新曲のアイディアとして、片っ端からテープに録音しており、それはそのままエクスペリエンスという3ピースバンドの限界も徐々に形にするようになってしまいます。

ジャンルやセッション相手のスタイルに囚われることなく、斬新なサウンド・アプローチで音楽のあらゆる壁を軽々と乗り越えてゆくジミのプレイは、メンバー2人に「ちょっと待て、オレらもうついていけないかも・・・」という不安を抱かせました。

もちろんノエル・レディングもミッチ・ミッチェルも、ジャンルというものに左右されない、素晴らしい適応力を持ったミュージシャンです。

しかし、1968年の時点で、そんな彼らをもってしても、ジミの自由なプレイスタイル、それを具現化するためにスタジオにやってくるあらゆる出自のミュージシャン達とのセッションは大変なものでした。

それはデビューからずっとプロデューサーとして彼らを見てきたチャド・チャンドラーにしても同じことで、急激に注目を集めるジミと彼を取り巻く状況や目まぐるしく移ろう人間関係に嫌気をさしてしまい「エレクトリック・レディランド」制作中にチャドはプロデューサーの座を降りてしまいました。

現に「エレクトリック・レディランド」にゲスト参加しているミュージシャンの顔ぶれだけを見ても、スティーヴ・ウィンウッド、アル・クーパー、ジャック・キャサディ、デイヴ・メイスン、バディ・マイルス、フレディ・スミス、クリス・ウッド、スウィート・インスピレーションズ、ブライアン・ジョーンズ(ギターではなくパーカッションで参加)と、英国ロックからソウル/ファンク近辺までの多彩な顔ぶれです。

「エレクトリック・レディランド」は、ジミの斬新なアイディアに満ちたギターと、ゲスト陣を交えた自由なジャム・セッション風の曲展開、そして崩壊寸前のエクスペリエンスとの、テンションのギリギリの緊張感が「これ以上どこかにバランスが偏ると音楽的に崩壊してしまう一歩手前」のスリルが全編にみなぎっており、それがまたジミの最大の魅力

「何だかわかんないけど凄くカッコイイ!」

というあの感じを無限増殖させるんですね。

さて、ジミヘン初期の”エクスペリエンス時代”の3枚のオリジナル・アルバムを長々と紹介してきました。で、この際だからとこの数日、手持ちのジミヘン関連の全アルバムを聴きまくっておりますが、アタシの場合は「どれが好き?」と言われたら、やっぱり粘り気のあるファンクロックなカラーが強い「バンド・オブ・ジプシーズ」ではありますが「どれが凄い?」と聴かれたら、エクスペリエンス時代の3枚をオススメすると思います。

エクスペリエンス時代のアルバムはどう凄い?と言われたら

「何が凄いのかわからんけど凄いって思えるところが凄いんですよ」

と、やっぱり答えるでしょう。いやもうそう答えるしかないもの。



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2017年10月28日

ジミ・ヘンドリックス アクシス・ボールド・アズ・ラヴ

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ジミ・ヘンドリックス/アクシス・ボールド・アズ・ラヴ

(MCA/SMJミュージック)


はい、台風が近付いておりますが、今日もジミ・ヘンドリックスを皆さんにご紹介しながら、知ってるよーで実はよく分からないこの巨人の魅力について、一緒に考えて行きましょう。

彼のバイオグラフィ的なことに関しては、前回の「アー・ユー・エクスペリエンスト?」のところで書きましたので、そちらをまずはじっくりご覧頂くとして、本日はファーストとくれば順番的にセカンドだろうということで、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス2枚目のスタジオ・アルバム「アクシス・ボールド・アズ・ラヴ」です。

ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスがデビューしたのは1967年で、2枚目となる本作がリリースされたのも1967年。

これはどういうことかと言いますと、このバンドはまずイギリスで前評判も上々の中、アメリカ・デビューも果たした。そいでもって「すげぇよ、誰もこんな音楽聴いたことがない!ウホッ!!」と、アメリカの聴衆もあっという間に沸かせてしまったんですね。

だからアルバムがリリースした後に、すぐさま次のアルバムの制作に取り掛かった。とにかくもうジミ・ヘンドリックス・エクルペリエンスの登場というのは、デビュー・アルバムがリリースされてすぐに「次が聴きたいぞ!」という声が起きるほどのセンセーションだったんです。

そして何よりも、その頃のジミはもう”次”へのアイディアが、アルバム1枚には収まりきれないほどに次々と出てきておりました。

そう、ジミヘンという人がつくづく凄いなぁと、アタシが関心するのは、ロック・ミュージシャンというのはある意味ライヴに比重を置いていて、その日々の集大成みたいな感じでアルバムを作るもんだったりするんですけど、ジミの場合はウルトラハードなツアーの合間を縫って、空いた時間は常にスタジオに入ってセッションを重ねつつ、新しい音の実験に余念がなかったことなんです。

で、スタジオとライヴでテンションのムラがまったくない。

つまりスタジオではまるでライヴのようなリアリティを演奏でダイレクトに感じさせてくれるし、ライヴでもスタジオで綿密に作り上げたサウンドを何事もなかったように当たり前に繰り出す。

今日もやっぱり”天才”という言葉はあまり使わないようにして説明しようと思いますので、この言葉使いませんが、やっぱりその思考回路というのはアタシら常人とは違う次元にあるような気がします。だって、どんだけテクニックがあっても、作曲やアレンジに力(リキ)入れても、いざ生で演奏するとなると、そういうのとりあえず置いといて、ノリと勢いに意識を委ねてしまうのが人間でしょう。

ジミヘンの場合は、ライヴでもスタジオでも明らかに飛んではいるけれども、音楽的にグシャってる領域には絶対はみ出さないんだ。イカレてるけど冷静で、冷静だけどしっかりイカレてるというか・・・。

うむむ、この辺のことを考えてしまうと、もう”ジミの泥沼”とアタシが呼んでいる思考領域に意識持っていかれてマズいことになってしまうので、こういうことはこれから先もジミヘンを聴く毎に取り出して、一生かけてじっくり考えましょうか。答えは出らんと思うけど・・・。

さて、そんなこんなでジミヘンがデビューからソッコーでニュー・アルバムをレコーディングして世に放った1967年、この年ロックの世界ではひとつのキーワードが世間を侵食しておりました。

それはつまり「サイケデリック」という言葉です。

サイケデリックというのは、色々な説がありますが、とりあえずは薬物、特に幻覚作用のあるドラッグでハイになり、その時の視聴覚で捉えたものを表現するアートのことと、ぼんやり理解しておけばいいでしょう。

派手な原色がぐにょーんと混ざりあがったマーブル模様とか、ともかく派手な色彩感とか、音楽ではエコーとかファズとかトレモロアームを使ったギターの「ぐぎょーん」だとか、そういう奇妙に歪んだものです。

カルチャーとしてのサイケデリックは、60年代のアメリカやイギリスのアンダーグラウンドシーンで大いににぎわっておりましたが、それが当時の若者文化そのものの代名詞となったのが、1966年にビートルズがリリースしたアルバム「リボルバー」です。

ドラッグによる幻覚体験を極めて忠実に再現しようと、様々な音響効果を駆使した結果、奇妙な”違和感の快楽”を聴き手に覚えさせる、ビートルズのアルバムの中でも最も実験色の濃いものですが、ロックを代表するスーパー・バンドのサイケデリック宣言(?)によって、時代の潮流は一気に変わり、それまでオーバーグラウンドで健全な音楽をやっていたアーティスト達ですら、程度の差はあれ、何がしらサイケデリックを感じられる作品を世に出すようになりました。

で、そこにタイミング良く登場したのが、過剰とも言える音響効果をバリバリに生み出してフツーに演奏していたジミヘンです。

彼はサイケデリックの申し子であるかのように世間でもてはやされ、また、今もそのように信奉されていることも多いのですが、ジミの場合は、元よりサウンドであり得ない効果を得ることに異様な情熱を燃やしていたし、その幻覚的なサウンドは、サイケが流行っていようがなかろうが、多分関係なかったんじゃないかと思います。

たまたま時代がそうで、そういったトレンドの方が彼の音楽に接近して、彼の求めているもののどこかにピッタリと符合したと。





【収録曲】
1.EXP
2.アップ・フロス・ザ・スカイズ
3.スパニッシュ・キャッスル・マジック
4.ウェイト・アンティル・トゥモロウ
5.エイント・ノー・テリング
6.リトル・ウィング
7.イフ・シックス・ワズ・ナイン
8.ユー・ガット・ミー・フローティン
9.キャッスルズ・メイド・オブ・サンド
10.シーズ・ソー・ファイン
11.ワン・レイニー・ウィッシュ
12.リトル・ミス・ラヴァー
13.ボールド・アズ・ラヴ


いかにもサイケデリックなイラストが施されたジャケットからも分かるように、このアルバムでジミがファーストから行っていた実験的な音作りは更なら深みに到達しております。

1曲目から凄まじいフィードバック・ノイズが炸裂し、楽曲の中では歪みの他に今で言うコーラスやフランジャーなどの先祖となる揺れ系エフェクター”ユニヴァイブ”の使用、2台のテープマシーンを使ったサウンド・コラージュなど、あらゆる最新技術を使ってのやりたい放題なんですが、それでもギター・プレイそのものは決して音楽的な破綻をきたさず、彼の根っこにあるR&Bのフィーリングをたっぷり含んだロックギターであります。

ジミのプレイはよく”宇宙的”と言われますね。

それは収録時間の制限がなければどこまでも無限に即興演奏が出来そうな、スケールの大きなソロ・プレイに依るところはもちろん大きいと思いますが、リフや歌ってる時のバッキングの、丁寧かつメロディアスなフレーズから感じさせるイメージの豊かな拡がりみたいなものにも言えるなぁと、最近アタシは思っております。

そして、音作りにおいてはサイケで型破りな”実験”が行われているにも関わらず、楽曲そのものはポップな親しみやすさ、2分から3分の収録にキッチリ収まる完成度の高さが実はこのアルバム最大の魅力です。

バラード名曲として多くのカヴァーを生んだ「リトル・ウィング」「キャッスルズ・メイド・オブ・サンド」「ボールド・アズ・ラヴ」がやはり楽曲として出色でありますね。そしてノエル・レディングがヴォーカルを取っただけで、いい感じのブリティッシュ・ロックになる「シーズ・ソー・ファイン」など、ギター・プレイだけじゃない作品としての懐の深さがあって、実に飽きさせません。

そんなわけでアタシは相変わらず「ジミヘンってやっぱり何か意味不明の凄さがあるー」と思ってます。それはつまり言葉では言い表せない音楽的な密度の濃さなんじゃないかと思います。







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