2017年10月25日

ジミ・ヘンドリックス アー・ユー・エクスペリエンスト?

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ジミ・ヘンドリックス/アー・ユー・エクスペリエンスト?

(MCA/SMJミュージック)

音楽好き、なかんづくロック好きにとって、そしてギターを弾く人にとっては、ジミ・ヘンドリックスといえばそりゃもう神様で、もしかしたらビートルズやストーンズ以上に、必ずどこかでブチ当たる人で・・・と、アタシが今更ここであーだこーだゴチャゴチャ言わなくても凄い人だということは、これはもう世間の常識として定着しております。

うん、ジミヘンはそりゃ凄い、カッコイイ、アタシだってジミヘン聴いて何度「うっひゃー、ありえん!」と叫んだことか、そんな体験をストックするほどのスペースが、心の中にはもうほとんどないぐらい衝撃を受けました。

でもね皆さん、ここでアタシからお願いです。

「ジミ・ヘンドリックスは天才だ!」「エレキギターの偉大な革命家だ」とかいう世間の声は、まだジミヘンを良く知らない、聴いたけどそんなに?って方は、この際思い切って無視して頂きたいのです。

はい、やっぱりジミヘンだろうがジョン・レノンだろうが、やっぱり音楽なんですよ。

何よりも最初に「この音楽いいな〜」ってのが先に来て、次にアーティストにスポットが当たって、天才とか偉大とかグレイトとかそういうのが来て欲しいんですね。単純に音楽が好きな人間としては。

アタシの場合は、ジミ・ヘンドリックスと出会ったのは16の時で、そんとき今も親友してますが、同じ学校でギター弾く男と意気投合して、ヴァン・ヘイレンがどうのスティーヴ・ヴァイがどうの、イジー・ストラドリンがどうのマーシーがどうのと、ギター話に毎日のように明け暮れてたんです。

で、当然ギター話をしてるから、ジミヘンの話にもなります。

でも聴いたことないから

「ジミヘンってヤバいよなぁ、ギター燃やす人だろ?」

ぐらいの知識で盛り上がるしかなかったんですね。

その時、ソイツの家でジャケットに惚れて買ったのが「ジ・アルティメイト・エクスペリエンス」っていうベスト・アルバムで(その時の話はコチラ)、それを聴いた最初の感想は

「正直よくわからん、よくわからんけど何か凄い!」

でした。

何が凄かったのか?乏しい音楽知識と、まだ初心者も初心者なギターの腕前ではそれすらも分からなかったけど、あえて言うなら

「何をどうやって弾いてるのかも、どうやったらこういう音が出るのかもさっぱりわからん!」

だったんです。

よくジミヘンを聴いていきなり雷に打たれたような衝撃を受けたとかいう話を聞きますが、それはもしかしたらアタシなんかよりずっとずっと年上で、ジミヘンの時代とほとんど変わらないギター環境(アンプとかエフェクターとか、そういう技術面での話)の音楽と、キチンと聴き比べることが出来たからなんじゃないかと思うんですね。

少なくとも1990年代以降の音楽機材は、ハイゲインのアンプや物凄いぶっ飛んだ効果音とか出せるエフェクターとかは普通にあったし、録音技術も向上してて、オーバーダビングも、音を派手にするためのイコライジングもほぼ自在でした。

だからむしろその頃高校生のアタシにとっては、ファズのゴワゴワした音とか、アナログディレイのモコモコした音とか、ハイ・トーンでもデス声でもない歌声とか、超高速でもないリズムとか、むしろ「あぁ、昔の音楽だな」としか思えなかったんです。

ちょっと読んでいる皆さんを混乱させてしまうかも知れないけど、ちょっと後からジワジワきたのが

「そんな昔の音だから何か凄い!」

という、何だか不思議な衝撃です。

さて、

さてさてさて・・・。


ここまで読んでいい具合に頭が混乱したそこのアナタ、ジミ・ヘンドリックスを聴いてみませんか?


えぇと、最初で言えば良かったのですが、何でかっつうとジミヘンの魅力って、やっぱり何と言っても「そのわけのわかんなさ」であると、ズバリ思うんですよ。この人のギターを使っての表現の突拍子のなさ、やりたくてしょうがなかったのは分かるけど、何でそうなった感というものは、何十年付き合ってもやはり強烈で、その強烈さというのは紋切型の「天才」とか「革命児」とかそういう言葉の何倍も生々しい説得力があるんです、はい。






【収録曲】
1.フォクシー・レディ
2.マニック・デプレッション
3.レッド・ハウス
4.キャン・ユー・シー・ミー
5.ラヴ・オア・コンフュージョン
6.アイ・ドント・リヴ・トゥディ
7.メイ・ディス・ビー・ラヴ
8.ファイア
9.サード・ストーン・フロム・ザ・サン
10.リメンバー
11.アー・ユー・エクスペリエンスト?
12.ヘイ・ジョー
13.ストーン・フリー
14.パープル・ヘイズ
15.フィフティ・ファースト・アニヴァーサリ
16.ジ・ウィンド・クライズ・メアリー
17.ハイウェイ・チャイル

で、1967年発表の、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのデビュー・アルバム「アー・ユー・エクスペリエンスト?」です。

ジミヘンはアメリカ北部の都市、シアトルで生まれた黒人でありますが、実はお母さんはチェロキー族の血を濃く引くネイティヴ・アメリカンで、その絡みから母方の祖母の住むインディアン居留地で過ごすことが多かったようです。

それゆえに、幼少の頃からブルースやゴスペルにドップリだったというような、同世代かちょい上のブルースマンやソウル・シンガーにあるような、ブラック・ミュージックの強烈なバックボーンは持っておりません。

その代り、彼は少年時代からブルースやR&B、ロックンロールのレコードを熱心に聴き込んでおりました。

後に

「ブルースの基礎をすごく持っているのに、何をやってもはみ出してしまう奇妙なスケール感」

と評される彼のスタイルは、自室でブラック・ミュージックを中心にあらゆるジャンルの音楽を聴きまくり、それを覚えたてのギターでことごとく耳コピしていたからなんだろうなと思います。

10代でアマチュア・バンドを組み、徴兵で行った空軍でもバンド活動をして(この空軍バンドには、後に最後のバンド”バンド・オブ・ジプシーズ”のメンバーとなるベーシストのビリー・コックスがおりました)から除隊。

本格的に音楽の道に進みたかった彼はオーディションを受けまくって、アイク&ティナ・ターナー、リトル・リチャード、アイズレー・ブラザーズなど、当時の人気R&Bミュージシャン達のバックで経験を積みます。

ギターは上手かったのですが、それ以上に派手なアクションでギターを弾くパフォーマンスは聴衆からそれなりに注目を浴び、バンド・リーダーからは「あんまり目立つな」と注意されるといった「何かわからんが面白いヤツ」という彼のスタンスは、既にこの頃には出来上がっておりました。

もちろんジミは自分のバンドもバックミュージシャンの仕事と並行してやってましたが、こっちはどうもパッとしなかったようです。

そんな時に当時人気ロックバンドだったアニマルズのベーシスト、チャス・チャンドラーが「ユーいいね、イギリス行ってロックやらない?」と、声をかけたことが、一大転機になりました。

それまでR&Bの世界の住人だったジミにしてみれば

「ロック?・・・て何ですか、ロックンロールじゃないの?」

「イギリスって・・・行ったことないし、自分黒人っすよ?イギリスで演奏しても受け入れられるんスか?」

ぐらいの不思議な話でしたが、チャドに「まぁまぁ」と一方的に説得されて渡英して、そこで「まあまあ」と行われた「ジミ・ヘンドリックスのバンドのオーディション」を通ってメンバーになったのが、ベースのノエル・レディングとドラムのミッチ・ミッチェルという白人青年2人。

ミッチ・ミッチェルに関しては、そのパワフルでキレの良いドラミングは早くから注目され、セッション・ミュージシャンとして活躍している時にザ・フーの結成時にドラマー候補として名前が挙がったほど。

で、ベースのノエル・レディングですが、彼は元々ギタリストとして、何と17歳の頃からプロとして活躍しちた凄腕で、実はジミヘンのオーディションをアニマルズのギタリスト・オーディションだと思って参加したところ、いきなりベースを持たされて、しかしそれでも完璧なプレイでジミとチャドのド肝を抜いたと云われております。

R&Bで鍛え上げたジミと、直前まで凄腕ギタリストだったベーシスト、そしてロックの正統実力派ドラマーという、全くバックグラウンドの違う3人が(ジミにって)異国であるイギリスで結成した、このバンドが”ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス”なんですが、この異色の3ピースが放つサウンドは、最初から同時代のどのバンドとも全く違っておりました。

何がどう違うのか?これはぜひ皆さんに聴いて頂いて、できれば同時代の他のバンドと聴き比べてください。

ジミのギターのサウンドや奏法など、専門的に聴けばそれこそ一冊の本に出来るぐらい色々と出てきますが、これだけは強調しておきたいのが、歌、ギター、ベース、ドラムの4つの音が、セオリー通りの

「歌が真ん中、ギターが横、ベースとドラムが後ろでリズム」

という形ではないんです。

全部の音が同じ場所で、同じ質量で溶け合って譜面のない楽曲を同時に即興演奏しているような自由度の高い演奏でいて、楽曲が

・タテノリの疾走する曲

・ブラック・ミュージックの影響色濃いファンキーな曲

・美しいバラード

と、それぞれ綺麗に際立っておるんです。

しかもそれが、デビュー作の時点でもうほぼ完成された形でアルバムに収まっているという所が、この”ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス”というバンドの、恐ろしいほどのカッコ良さなんです。

タテノリの分かり易い曲”だけ”は入っておりませんので、もしかしたらいきなり聴いて分かる人は少数派かもしれませんが、ジミヘンの音楽って、少し置いて最初に「凄い!ヤバい!」がいきなり来て、それから何年か置きに別の角度からの「凄い!ヤバい!」が、何度も何度も飛んでくる音楽ですので、聴く人は一生刺激をもらえることは間違いないです。

アタシももう25年の付き合いになりますが「まぁジミヘンってこんなだよね」とかいうナメた気持ちになったことは一回もないです。てか、そうさせてくれません。なので一生かけてとことんまで付き合うつもりです。








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2017年10月23日

アレステッド・ディベロップメント/ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地


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アレステッド・ディベロップメント/ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地
(EMIミュージック)

あれは1994年とか95年とか、その辺りの頃だったので、今からもう20年以上前のことになります。

”ラップ”と呼ばれていたヒップホップは、当時オルタナやメロコアと呼ばれていた人気のロックを凌駕する勢いで、急速にメディアに進出しておりました。

その露出の仕方というのは「新しく刺激的な音楽」という側面もありましたが、どちらかというと「流行の不良音楽」というような売り出し方が多かったように思えます。

ワルな黒人が、大音量で重低音を響かせながら、独特のファッションと身の動きで、歌ではない”しゃべり”を次々とリズミカルに吐いてゆく。そしてそのライフスタイルも、ゴージャスなクラブ、そこにまつわる銃や麻薬やその他もろもろの犯罪とリンクして、何だかヤバそうな未知の世界として、彼らの存在はブラウン管に映りました。

実際にヒップホップは、1970年代のニューヨークの下町ブロンクス地区で、その最もヤバいエリアに住む(主に)ジャマイカ系移民の間で”ファンクのレコードに合わせて自由に言葉を繋いでゆくリズムの遊び”として産声を上げてから、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市の、常に犯罪や暴力の危険に曝されるエリアの生活の音楽として、アメリカ黒人音楽の裏の先端をずーっと担ってきた音楽でした。

更に80年代後半から90年代になる頃には、レーガン大統領による”強いアメリカ”政策の失敗により、都市部における貧困の格差は深刻なものとなり、その煽りは元々貧しく不安定だった黒人社会を直撃し、結果貧困から抜け出せない環境にいる若者達は次々とギャングになっていき、彼らが愛好していたヒップホップの中から”ギャングスタ・ラップ”というひとつのジャンルが確立されます。

この頃”ヒップホップ”といえばそのままギャング達のライフスタイルであり、また、加熱していた東海岸と西海岸のギャング・グループの過激な抗争の勢いに乗って、瞬く間にその勢いは全米から全世界へと伝播していき、世界中のいわゆる不良文化みたいなものに大きな影響を与えるようになります。

日本においても、1990年代ぐらいからダボダボの服を着て”ラップ”(当時の呼び方)を聴いてるヤツというのが、ぼちぼち幅を効かせるようになってくるんです。はい、アタシが十代の頃ですね〜。

正直その頃アタシは”俺はロックだぞ”という変な自負もあって、ヒップホップには好意的にはなれませんでした。

「何だよ、チャラチャラしやがって」

というのが正直な感想。



「そんな連中が聴くラップなんか聴くか!」

と。

でもね、本音ではファンクがベースになっているヒップホップのグルーヴィーなサウンドはとっても魅力的だったし、それ以前にレッチリやビースティ・ボーイズとか、限りなくヒップホップなロックバンドは、好きで聴いてた訳なんですよ。もちろんその前の、エアロスミスとランDMCの「お説教」なんてもう最高だと興奮しておりましたから、ヒップホップという音楽が嫌いだった訳ではないんです。要はつまらん意地です。

で、そんなある日

「最近出てきた奴らなんだけど、アレステッド・ディベロップメントってのはお前の思ってるラップと違うから聴いてみなよ、全然チャラチャラしてないよ」

と、友達から教えられたんですね。

話によると、アメリカの南部の田舎から出てきた連中で、オシャレで心地良い音だし、歌詞も平和を訴えてるし、何より深いんだ、と。

最初は「へー、そうかい」ぐらいに思ってましたがね、ソイツの部屋で、淡い夕日が何となくいいムード作ってる時間帯に(注・部屋には野郎2人)、ぼへーっとタバコ吸いながら聴いたアレステッド・ディベロップメントの音は、何だか思ってたヒップホップと全然違う、優しく包み込むような暖かなサウンドで、不思議とじんわりきてしまったんです。



【収録曲】
1.WMFW
2.ユナイテッド・マインズ
3.エイキン・フォー・エーカーズ
4.ユナイテッド・フロント
5.アフリカズ・インサイド・ミー
6.プライド
7.シェル
8.ミスター・ランドロード
9.ウォーム・センチメンツ
10.ドラム
11.イン・ザ・サンシャイン
12.祭壇にひざまずいて
13.回春の泉
14.イーズ・マイ・マインド
15.プレイジン・ユー
16.エッグビーターズ

その時の忘れもしないアルバムが「ズィンガラマドゥーニ〜踊る大地」1994年リリースの、彼らのセカンド・アルバムです。

フロントマンのスピーチを中心に、若者もいて、女性もいて、それから一番衝撃だったのが、ラッパーでもDJでもシンガーでもない”スピリチュアル・アドバイザー”というパートの、白髪白ひげのオッサンがいて、何をやってるかといえば、何だかアフリカっぽい旋律を「アァアァ〜」と歌ったり、詩みたいな言葉のフレーズを朗読してたりするんですけどね、それが怪しくなくて、ゆるやかにアフリカを感じさせるジャズっぽい洗練されたサウンドと優しく知的なラップと絶妙に絡んでてバランスが取れていて、素晴らしくカッコ良かった。

そしてアルバム全体を聴いても、刺々しいところは一切なく、聴いてから何ともおだやかな気分がずっと残りました。友達に「貸してくれ」と言ったのは、言うまでもありません。そして数か月後に、やっぱり自分でも欲しくなってコッソリ買ってしまいました。

激しいロックやディープな戦前ブルースばかりを聴いていたアタシにとっては、どこまでも心身を癒してくれる稀有な音楽であり、また、好きで聴いている音楽の本質みたいなものを、何故か彼らの穏やかなヒップホップ・サウンドが上手く解説してくれるようでいて、不思議な話ですがこの一枚があるが故に他の色んなジャンルの音楽も、より深く好きになれる。そんなアルバムでした。

音楽に与えた影響としては、それまでヒットチャートに上るヒップホップといえば、ギラギラしたギャングスタ系一辺倒だったシーンに緩やかな風穴を開け、90年代後半にエリカ・バドゥやアンジー・ストーンなど、ナチュラルでブラック・ミュージックの深いルーツを感じさせる、いわゆるオーガニックなR&Bを世に出すことに一役買った重要なグループがアレステッド・ディベロップメントだと思います。

でも、そんなことよりもこの優しくて暖かくて、行ったこともないアメリカ南部やアフリカに、奇妙な懐かしさすら覚えさせてくれる、静かな知性に溢れるこのアルバムが、今も自分の心の中で「音楽っていいよな」と変わらず思わせてくれる大事なところにあることの方が、きっと大事なんです。



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2017年10月22日

オリジナル・ナゲッツ

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V.A/オリジナル・ナゲッツ
(ワーナー)


生きていると色々あって、大好きな音楽もちょっとキツい時があります。

でも、そんなクソッタレな気分の時もアタシは

「かっこいい音楽はパンク!」

という信念を持ちつづけ、音楽を愛してきました。

「パンク」という言葉を、アタシは1970年代に出てきたパンクロックだけを指すのではなく、ひとつの思想や姿勢の現れを示す言葉として使っております。

「カッコイイ!!」と思ったらブルースもパンクだし、ジャズもパンクだし、ソウル、レゲエ、ハウス、民俗音楽、ポップスだってクラシックだってみーんなパンクです。

じゃあ”パンク”って何なの?

はい、パンクというのは

「今あるものをぶっこわす」

「概念とか方法とか、そういう既存のものからはみ出す力」

のよーなもんだと、アタシ思っています。

「こうかな?」「これはこうだろう」

と、思っているユルい気持ちをスカーンとぶっこわしてくれる音楽、知らないものに触れた時のピュアな興奮や感動、いいですね。そういうものをこのブログで皆さんに今後もじゃんじゃん紹介していきたいと思っております。

というわけで、今日はガレージ・ロックであります。

ガレージ・ロックは、パンクロック誕生のおよそ10年前にアメリカで誕生した、まぁいってみればパンクのご先祖さんみたいな音楽なんですが、この時代たまたま”パンク”という言葉がなかっただけで、これはもう立派なパンクロックと言っていいでしょうね。

ロックンロールが衰退した1960年代、イギリスで50年代のロックンロールやブルース、R&Bに影響を受けた若者達がロックというものを色々と試行錯誤しながら生み出していったことは、皆さんご存知の通り。

その中からビートルズやローリング・ストーンズ、クリームなんかが人気バンドとして頭角を現しました。

これを聴いたアメリカの若者達が

「やべぇ、クールだ!オレらもこんなことやろうぜ!!」

と、あちこちで触発されることによって、アメリカにも独自のロック・シーンが誕生することになるんですが、このシーンが最初に産声を上げたのが、青少年達の自宅ガレージの中だったんです。

何でかっつうと、そこはほれ、エレキギターとかドラムとかをジャンジャカドンドコやると騒音が出るでしょう。

アメリカって国の住宅は、ほとんどが都市部から離れた郊外にありまして、で、やたら土地は広い訳ですから、自宅ガレージで大音量をやかましく鳴らしても、さほど問題にはならなかったんですね。

で、ヤツらはやっちゃうんです。

ガレージなのをいいことに、ギターアンプのツマミをじゃーっと最大にして、アホみたいな音量にするわけです。

大体ロックなんてのは、若者にとっては「やかましい音で、どんだけ騒げるか」という音楽であり、そこはビートルズもストーンズもアメリカの若者達の心理と全く変わらなかった訳です。

でも、やっぱりちゃんとした会場で演奏したり、レコードをキッチリ作るとなると、それなりにバランスってものが必要になってくるでしょう。だからメジャーなイギリスのバンド達は、やかましくやるけれども、曲や歌がちゃんと聞こえるように、そこは調整していた。

でもアメリカ人はそうじゃなかった。

アイツらアタマおかしいから若さとエネルギーに満ち溢れた彼らは、外で演奏する時も自宅ガレージで作ったサウンドをちゃーんとフルに出して、で、客もアタマおかしいからオーディエンスもその熱意に応えてキッチリ盛り上がっていた。もちろん演奏する店の主は頭を抱え、時につまみ出し、大人達は困惑し、学校は「ロック禁止」の通達を何度も出した。でも、そんなことぐらいで一度火が点いたスピリッツが消える訳がない。

演奏がそれなりに評判を呼び、そこそこの小遣い銭を手にしてもしなくても、ガレージバンドの連中は「もっとイカレた音」に手を出します。

すなわち開発されたばかりの歪み系エフェクター”ファズ”や、アナログエコー等の機器であります。

この頃のエフェクターには正しい使い方なんてない。ひたすらひとつかふたつぐらいしか付いてないツマミでもって「元音とかけ離れた音」を出すのみ、という実にアナクロな使い方をそれぞれ勝手に極め、ゴワゴワに歪んでボヨボヨにエコーかかって、キンキンにフィードバックするという、ギターの”更にやかましい音”というのが生まれました。

で、ガレージバンドってのは面白いなぁと思うのは、曲はビートルズやストーンズなどのUKサウンドに影響を受けたポップなやつなのに、サウンドがところどころおかしい、いや、モノによっては明らかにぶっ飛んでいて、50年前の音楽のくせに、いちいち聴く側の常識とかそういうもんに、助走付きで揺さぶりをかけてくる。

古いとか新しいとかじゃあないんですね、このはみ出し感、破れかぶれ感に「あぁパンクだなぁ、どうしようもねぇなぁ」という”粋”を感じてしまうんです。

ガレージバンドというのは、そんな感じの、価値観が根本から何かおかしい、アメリカンロックの偉大なるアマチュアリズムの集大成なんです。

というのも、このすぐ後にアメリカでも”ロック”というものがちゃんと形になってきて、クオリティの高いものがどんどん出てきてそれらがシーンの潮流を決定付けてゆく訳で、ガレージはあくまで「ロックの連中の下積みの頃やってた音楽」みたいになって徐々に消えてゆくんですね。或いはアンダーグラウンドなサイケシーンの底流に潜伏して、パンクロックの登場まで息を潜めていた。

だもんで”ガレージロックのバンド”と言っても、ロックの表舞台で派手に活躍したバンドはほとんどおりません。超絶無名な、ほとんど一発屋みたいなバンドの、まー気持ちいいぐらいのオンパレードです。

後にイギリスや日本のコレクターが「アメリカのガレージは面白い」と注目して、7インチレコードの値段がすごいプレミアになったりとか、そういう売れ方をしたんですがちょっと待って、そんなマニアックなところだけにこの素晴らしくパンクで実に分かり易くノれる音楽を仕舞い込んでいていいのだろうか?と、アタシはいつも思うんですね。





【収録曲/アーティスト】
1.I Had Too Much To Dream (Last Night)/The Electric Prunes
2.Dirty Water/The Standells
3.Night Time/The Strangeloves
4.Lies/The Knickerbockers
5.Respect/The Vagrants
6.A Public Execution/Mouse
7.No Time Like The Right Time/The Blues Project
8.Oh Yeah/The Shadows Of Knight
9.Pushin'Too Hard/The Seeds
10.Moulty/The Barbarians
11.Don't Look Back/The Remains
12.An Invitation To Cry/The Magicians
13.Liar,Liar/The Castaways
14.You've Gonna Miss Me/The Thirteenth Floor Elevators
15.Psychotic Reaction/Count Five
16.Hey Joe/The Leaves
17.Romeo&Juliet/Michael&The Messengers
18.Sugar And Spice/The Cryan Shames
19.Baby Please Don't Go/The Amboy Dukes
20.Tobacco Road/Blues Magoos
21.Let's Talk About Girls/Chocolate Watch Band
22.Sit Down,I Think I Love You/The Mojo Men
23.Run,Run,Run/The Third Rail
24.My World Fell Down/Sagittarius
25.Open My Eyes/Nazz
26.Farmer John/The Premiers
27.It's-A-Happening/The Magic Mushrooms


だもんで皆さん、ロックが好き、エレキギターのジャーン!が理屈抜きで好きなら、その源流にしていっちばん濃いのがいっぱい詰まっているガレージを聴きましょう。

1972年に編集され、世に出された「ガレージコンピのパラダイス」ともいえる”ナゲッツ”!

これはもう、これ聴けばガレージのオイシイところは大体聴けるっつう最高なコンピなんですよ。

パティ・スミスのバックでギターを弾いていたレニー・ケイという、ロックを心から愛しているいい男が、好きなバンドを集めたオリジナル・カセットを元にして、エレクトラ・レコードというメジャーな会社から、気合いの入ったLP2枚組で出したけど、実はあんまり売れなくて、1976年にふたたびジャケットやら何やらリニューアルして出したけど、これもあんま売れなくて、めげずに96年だったかな?CD4枚組のボックスにしたら、当時日本ではギターウルフとかミッシェルガン・エレファントとかのおかげでサイケやガレージなんかのルーツ・ロックに興味を持つ若い人(はぁいアタシです♪)が結構飛びついて、やっとこさ「これはヤバイ!」と正当な評価を得るに至り、その後のロック系コンピや、インディーパンクのプロモーションなんかにも、実は多大な影響を与えたという、素敵すぎるアルバムの、オリジナル仕様での復刻盤です。

ここに収録されてるのは、どのバンドも見事に60年代の一瞬を若さと勢いだけで突っ走り、消えていったバンド達。でも、そういったバンドならではの、全然作為とかのないピュアな音楽が聴けます。



(お試しでThe leavesの”Hey joe”。ザ・バーズ、ジミ・ヘンドリックスでおなじみのロック・クラシックスですが、もうね、この何も考えてない感が最高なんです)


The Shadows Of Knightの「Oh Yeah」とか、The Amboy Dukesの「Baby Please Don't Go」この辺はブルース・クラシックなんですが、全然深く渋くやろうとしていないドッカーンな感じがたまらんです。The Amboy Dukesはアメリカン・ハードロックの大物、テッド・ニュージェントが地元デトロイトで結成した最初のバンドなんですが、のっけからハウリングがコーーーーン!と言ってる捨て鉢な音で、もうアレですね、野人ですね。テッドは今も変わらんですね。

大体が「曲はポップで音はイカレて」という、実に気持ち良いぐらいのネジの飛び具合なんですが、演奏力の高い実力派として、Blues Magoosの「Tobacco Road」こっちは歪んだギターとサイケなオルガンに不思議な安定感があって、途中から変拍子でガンガン攻める、実に渋いアレンジとかあったりします。

色んな意味ではみ出して破れた、そんな青春の古傷みたいなガレージ・バンドの音楽。テクノロジーが進化した今現在の音と見事に対極なんですが、単なるアンティークじゃあないですね。いつまでもアツくてイカレてる、本当にパンクな音楽です。







『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

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