2017年10月03日

トニー・フラッセラ トランペットの詩人

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トニー・フラッセラ トランペットの詩人
(Atlantic/ワーナー)

只今秋の感傷モードの真っ最中ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

ブログをご覧の皆様には、既にお気づきかと思います。アタシはこの秋になり「トランペットってもしかして切ねぇ!?」ということを、今更にして気付いてしまい、感動したジャズ・トランペットのアルバムについて書いております。

えぇ、皆さんも心の中に「これ、切ないよ」という音楽、あろうかと思いますので、秋になったらぜひともそういう音楽と、とことん切なくお過ごしになられたらと思いますが、まだそういう音楽ねーよという方や「ちょっと切ない音楽聴きたいけど何を聴けばいいのよ」という切実な思いをお持ちの方は、どうかこのブログでのアタシの戯言を記憶の片隅にでも置いて頂き、音盤と出会う時のご参考にしていただけたらと思っております。えぇ、切に願っております。

で、今日も「せっつねぇトランペット」いきましょうね。

トニー・フラッセラという、白人ジャズ・トランペットの、知る人ぞ知る名手がおります。

いや、どっちかというとあんま知られてないことの方が多い、隠れ名手と言うべきでしょうか。

知られてない理由を挙げると、やはり活動期間が短く、作品をほとんどリリースしていないということ、聴いた誰もが衝撃を受けるような、激しさとインパクトに溢れた演奏というものは一切やっていないということになるでしょう。

ですが、ジャズをこよなく愛し、色々と聴いてトニー・フラッセラに辿り着いた人達は口を揃えてこう言います。

「この人のトランペットは本当に深い。これを聴いていると、何か忘れていた大切なものを思い出したような気持になるね」

と。

はい、そうなんです。トニー・フラッセラの吹くトランペットは決して派手じゃない。聴く人を興奮させる速いフレーズとかスリリングな展開とか、そういうのはないけれども、その一音一音丁寧に噛み締めるような演奏スタイル、曲の持つメロディの肝とも言うべき部分をひたすら美しく磨き上げ、余分なもののないありのままの美しさを、鮮やかさとはまた別の、深く落ち着いた光沢で輝かせるようなアドリブで、聴く人の心にそっと花を置いてくれます。

そんなどこまでも抒情的な演奏をするフラッセラに付いたあだ名が”トランペットの詩人”。

はい、その通りだと思います。

でもこの”詩人”という言葉の響きって、彼の演奏を聴いていると、どこかやるせなく、どうしようもないものが青白く揺らめいているようでどこか哀しい、そして悲しい。

彼の人生は孤児院で始まって、そこを出た時に音楽に希望を見出して、見よう見まねでトランペットを手にする訳なんですが、良い感じに上達して、人気も出て、演奏活動そのものは順調のようでしたが、レコードセールスの波に乗れず、元々常用していた麻薬が彼を呑み込み、シーンから遠ざかることと、束の間復帰することを小さく繰り返しつつ、結局若くして亡くなってしまう。

音楽に簡単に、ミュージシャンの人生を反映させることはどうかと思いますが、彼の片言で懸命に愛を歌ってるかのようなトランペットを聴くと、何かそんなどうしようもない人生が、バカみたいにスッと折り重なってしまうのです。

似たようなタイプでチェット・ベイカーがおります。

才能にも容姿にも恵まれていながら、まるで自ら望んで破滅に向かって突き進んでいるかのような破天荒な人生という意味で2人は大いに重なりますが、チェット・ベイカーはトランペットの演奏技術が実はズバ抜けていて、優しく甘い音色とは裏腹な、派手で華のあるプレイをします(意外とベイカーは吹きまくっている演奏多いのですよ)。それゆえ生涯を通じて華やかなジャズの表舞台に常に居ることが出来たということを考えると、フラッセラのひたすら楚々として美しく、そして派手な脚光を浴びることのなかったジャズ人生って・・・と思い、また胸に切ない感情が滲んでくるのであります。




【パーソネル】
トニー・フラッセラ(tp)
アレン・イーガー(ts)
ダニー・バンク(bs,AD)
チャウンシー・ウェルシュ(tb,AD)
ビル・トリグリア(p)
ビル・アンソニー(b)
ビル・ブラッドレイ・ジュニア(ds)

【収録曲】
1.アイル・ビー・シーイング・ユー
2.ムイ
3.メトロポリタン・ブルース
4.レインツリー・カントリー
5.ソルト
6.ヒズ・マスターズ・ヴォイス
7.オールド・ハット
8.ブルー・セレナーデ
9.レッツ・プレイ・ザ・ブルース

彼の数少ない作品の中から、代表作であるところの「トランペットの詩人(原題:Tony Fruscella)」を聴きましょう。

とにかくもうこのジャケットですよね、繊細そうな良い男が、トランペットを抱えて沈んでる白黒のポートレイト。これは紛れもない本人で、決してアルバムジャケット用に取ったポーズではないでしょう。えぇ、普段からこんな雰囲気を醸す人であったらしいです。

とにかく中身を聴かずとも、このジャケットだけで、この中に収録されている音楽がどんなものであるか、8割がた語られていると言っていいと思います。

中身はフラッセラのトランペットが、”幻のテナーマン”と呼ばれたアレン・イーガーのまろやかで共通した翳のようなものを持っているテナー・サックスと、ひたすら美しいメロディを紡いでゆく、派手で猛々しいところが一切ない、アンニュイな空気から醸される上質な憂いが終始漂っておるアルバムです。

2曲でバリトン・サックスとトロンボーンが入り、ちょっとだけ賑やかにはなりますが、「ススス・・・」と吐息まじりでメロディを淡々と紡いでゆくフラッセラのトランペットが響くだけで、空気がスーンと落ち着いたものになるから不思議です。

リズム・セクションはビル・トリグリア(p)、ビル・アンソニー(b)、ビル・ブラッドレイ・ジュニア(ds)という、偶然にも”ビル”が3つ並んだトリオで、この人達もさほど有名な人達ではありませんが、落ち着いた気品のある、いいサポートです。

特にビル・トリグリアのピアノは、バックでは控え目にコードを、ソロは弾き過ぎずコンパクトに、の職人的な”引き”が感じられて、そのさり気ないセンスの良さがひたすら好感度高いです。

楽曲の中でオススメ、というか、聴く毎に何ともいえないやるせなさの海へ引きずり込まれてしまうのが6曲目の「ヒズ・マスターウ・ヴォイス」。

クラシックのフーガ風のイントロから落ち着いた4ビート(ドラムはブラシ)が入り、フラッセラ、イーガー、トリグリアと、静かにバトンが渡されてゆくソロの、何と切々と優しく身を切ることか。そしてまたエンディングでトランペットとテナー・サックスによる美しいフーガが哀しく響く。

あぁ、何だろうこのどうしようもないカッコ良さは。。。



(↓アナログもあります)





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:15| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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posted by サウンズパル at 17:25| Comment(0) | つぶやき、小ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする