2017年10月04日

ブッカー・リトル(Booker Little)

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ブッカー・リトル/Booker Little
(Time)

この10月に入ってどハマりしている”ジャズ、哀しいトランペット・シリーズ”(うむ、他に何か良い言い回しはないだろうか・・・)でございます。

今週はウェブスター・ヤングトニー・フラッセラと、それぞれ違うタイプの「この人のラッパは凄く切なくて、そこはかとない味があっていいよね〜・・・」という二人を皆さんにご紹介してきました。

んで、他にこういう味わいを持っているトランぺッターっていないかなぁと、CD棚を物色していたら、おりました。

というよりも、まずもってアタシに生まれて初めて

「ジャズのトランペットってカッコイイかもよね」

と、思わせてくれた、原点である重要なトランぺッターの存在を、アタシはすっかり忘れておったんですね。

あぁいけません。

でも、そのままにしといたらきっといい加減で頭の弱いアタシは、またしても忘れてしまうと思いますので、忘れないうちにご紹介します。

ブッカー・リトルです。

アタシが決定的にジャズという音楽にハマり・・・や、その底無しの魔力にすっかり魅入られてしまったきっかけがエリック・ドルフィー

そのドルフィーの、最高にスリリングで、最高に妖しくて、最高に狂った毒に溢れているライヴ盤に「アット・ザ・ファイヴ・スポット」



というアルバムでした。

全員が全員、唯一無二のクセの塊のような個性を全力でぶつけ合った、今でも全てのジャズのライヴ盤の中でも最も刺激的なアルバム群(ファイヴ・スポット・シリーズは3枚の連作なのです)だと思っていますが、このアルバムで主役のドルフィーのひたすらブッ飛んだ演奏に対し、激しく盛り上がりながらも、時にフレーズを強引にアウトさせながらも、トータルでは美しく均整の取れたフレージングで全体のバランスを取っていたのが、トランペットのブッカー・リトルでした。

とはいえ、最初からドルフィー目当てでドルフィーのプレイしか聴いていなかったアタシにとって、その頃のリトルの印象は「いい感じに吹きまくってるけど、音は優しいし全体的に地味なトランペットだよね」というものでしかなかったのですが、それがある日突然、ドルフィーの特異で異様なソロの余韻をスーッと消して、全く独自の、激しさの中に憂いが満ち溢れた色に「パラパラパラ〜」と塗り替えてゆくその雰囲気にハッと気付いてから

「何て凄いトランペットなんだ!」

と、アタシはすっかりリトルにも夢中になったんです。

そう、この人の場合は「切ない哀しいトランペット」といっても、演奏スタイルそのものはどこまでも熱く激しく、聴き手にしっかり興奮も与えます。

資料に目を通してみたら、1950年代半ばに交通事故で不慮の死を遂げたモダン・ジャズ・トランペットの第一人者、クリフォード・ブラウンの正統な後継者として、演奏技術もアドリブセンスも、かなりの人に期待されておった。

つまりモダン・ジャズの本流の、次世代のスターとしてとても注目されるぐらいの実力者だったんです。

19歳で大物ドラマーであり、クリフォード・ブラウンと一緒にバンドをやっていたマックス・ローチに

「君いいね、クリフォードの後任としてウチのバンドに入りなさい」

と言われ、そこで評価を得て、バリバリの過激派と呼ばれたエリック・ドルフィーと一緒に「何か今まで誰もやってないような新しいジャズをやろうぜ!」とバンドを立ち上げたのが22歳の時。

正にミュージシャンとしては「これから」の時、尿毒症であっけなくあの世へ行ってしまったんですね。

周辺のミュージシャン達は

「ブッカーは元気でピンピンしてたのに、ある日いきなり病院運ばれてそこで死んだと。急死だよ、訳わかんねぇよ」

と、その若すぎる死に戸惑ったと言いますが、尿毒症・・・、多分喧嘩に巻き込まれて腹でも蹴られたんでしょうとアタシは思っております。倒されて激しく腹部を蹴られると、腎臓が損傷してそこから感染症を起こすことがあるのです。

それはそうと、リトルのミュージシャンとしての活動は、そんな風にたったの4年という短いものでありました。

もし生きてたら、リー・モーガンやフレディ・ハバードのように、60年代を代表するトランぺッターの一人として、数多くの作品を残してくれたに違いませんが、実はリトルは短い活動期間の中で3枚の正式なスタジオ盤を残しており、そのどれもが個性の輝きに満ちた、名作と呼ぶに全く値する珠玉のアルバムです。

その珠玉に順番なんかとても付けられませんが、彼のトランペットの素晴らしさに集中して最初から最後まで堪能できるのが、リーダー作として最初にリリースされた『ブッカー・リトル』



【パーソネル】
ブッカー・リトル(tp)
トミー・フラナガン(p)
ウィントン・ケリー(p)
スコット・ラファロ(b)
ロイ・ヘインズ(ds)

【収録曲】
1.オープニング・ステイトメント
2.マイナー・スウィート
3.ビー・ティーズ・マイナー・プレア
4.ライフズ・ア・リトル・ブルー
5.ザ・グランド・ヴァルス
6.フー・キャン・アイ・ターン・トゥ


トランペットのバルブの部分が、手書きで大きくイラストされたジャケットがもう最高ですね。ジャズのアルバムでこういう楽器を描いたもの結構あるんですが、そういうジャケットで中身がガッカリだったというアルバムには、未だ出会ったことがありません。

そしてメンバーが、ピアノにコルトレーンの『ジャイアント・ステップス』ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』などなど、多くの作品で堅実なプレイを務め上げ、それらをことごとく名盤にしてきた、ザ・名盤請負人のトミー・フラナガン(BとCだけウィントン・ケリー)、ビル・エヴァンス初代トリオの天才ベーシスト、スコット・ラファロ。ドラムはバップからモダンから、ちょいと前衛なものまで、この人に任せておけば安心のロイ・ヘインズ。

モダン・ジャズの、ちょっとクセのあるカッコいいホーン奏者のワン・ホーンを聴きたいなと思ったら、これ以上望むべくもない最高のメンバーです。

そんなメンバー達、全員がしゃかりきになって個性をブチ撒けずに、カッコイイ伴奏に徹した、すこぶる大人な演奏なんですよ。

そのサポートを得て、思う存分に吹いているリトル。

この人の個性は「一見フツーに聴こえるんだけど、実はちょっとしたところにクセやアクがみなぎっている」とでも言いましょうか。とにかくブリリアントです、リズムに乗れば結構吹きまくります。決して”味”だけで売ってるラッパ吹きじゃないし、若さゆえの”突っ走り”もあって、テクニックだけで無難にそつなくこなす人でもありません。どちらかというと激しく突っ走ってる時でもメロディを意識して「丁寧に歌を紡ごう」という気配りに溢れた展開に、聴く側の意識を誘うのがとても上手い人です。

でも、この人独特の「クシュッ」とひしゃげた音色がそうさせるのか、それともアドリブの途中でさり気なく織り交ぜられるマイナー・フレーズの一瞬がそのような効果を持っているのか、とにかく全体がどこか沈んだ感じであり、そして聴き終わった後にヒリッとした切なさが残ります。

どの曲もカッコ良くて、キッチリ興奮もさせてくれますが「これ!」という曲は、2曲目の「マイナー・スイートと5曲目の「ザ・グランド・ヴァルス」。

「マイナー・スウィート」は、疾走系4ビート・ナンバーですが、無伴奏っぽく(ロイ・ヘインズが軽くアクセントでオカズを入れる)吹き上げている哀愁のイントロから、一気にやるせないアドリブが走り抜けてゆくこれがもうたまんなくて、「ザ・グランド・ヴァルス」はエリック・ドルフィー、メモリアル・アルバムに入ってる『ブッカーズ・ワルツ』と同じ曲ですが、コチラはテンポをグッと落としていて、クシャッとしたリトルの音のまろやかさと美しいメロディとの溶け合いに何だかウルッときてしまうのです。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:28| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする