2017年10月20日

ローウェル・フルスン ハング・ダウン・ヘッド

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ローウェル・フルスン/ハング・ダウン・ヘッド
(Chess/ユニバーサル)


アタシはブルースが大好きで、幸いアタシの周囲の音楽好きの仲間もブルースが好きですので、ブルースのある生活、もとい、ブルースが日常的に流れてる生活というものが当たり前なのですが、果たして世間一般からブルースという音楽は、どのように見られているのだろうかということをよく考えます。

世間話のついでにブルースについてどう思うかということを、街のおねーちゃんやおじちゃん達にさり気なく訊いてみますと。

「何か渋いよね」

「んー、わかんないけどー、”男!”みたいな」

「あんま聞かんけどね、何か気軽に手ェ出しちゃいかんような気がする」

「毛深そう」

・・・ん、まぁいろいろですが、これらの意見を要約してみると、ブルースという音楽は

『頑固親父がやっているこだわりのラーメン屋』

なのではないかという仮説が成り立ちます。


元々ラーメンというのは、安い値段で気軽に食える、庶民の味でありました。

ブルースですね。

ほんで、その味については、関東は醤油、九州はとんこつ、北海道は味噌など、地域によってベースとなるスープが大きく違っていたりします。

いいですね、ブルースです。

90年代半ば以降ですかね、とんこつラーメンの濃厚な味わいが、東京に住んでいる人達の好みに合い出してきて

「とんこつギトギトで、ニンニクがっつりで、背脂タップリ」

のようなお店が都心にたくさん出来てきて、若い店主達が個性を競い合い、ラーメンもどんどん派手で刺激の強い食べ物になってきたなぁというのが正直な感想です。

これはブルースがファンクとかソウルの土台になって、どんどん派手に進化していったのと似ています。

ほんで「こだわりの店」とかいうのが出てきました。

お店に何だかごっつい筆文字で書いた「感謝!」みたいなメッセージとか、「あれ禁止これ禁止」みたいなルールが書いてあったりとか、そういう、いわば飲食店というより道場みたいな店も増えてきたんだよと、都会に住んでる友人は云います。

で、お前さんどうだい?そういうお店でラーメン食うのかい?

いやぁ、あそこまで行っちゃうともうね、オレらみてぇなシロートや女子供にゃあ用はねぇって感じですよ。毎日ラーメン食べてそうな連中がカウンターで必死の形相してだまーって食ってやがるんです。昔みてぇにちょいと腹減ったからラーメンでも食おうかなんて気楽に入っちまうと怒られそうで、最近は遠慮してますねぇ。

しかしアレだねぇ、オレらなんかおめぇ九州の離島の街っ子だから、とんこつラーメンなんて当たり前で。でもどうだろうねぇ、昔は名瀬のラーメンつったら味竹とか菊水とかだったけど、言うほどこってりしてなくて、ちょうどいい味だったよねぇ。

そこなんですよ、オレらとんこつラーメン文化圏のヤツから言わせてもらうと、都会のとんこつラーメンってのはどうも濃すぎて、何でもドバドバ入れりゃいいみたいな、そういうところがあって・・・まぁ、全部が全部じゃあないんでしょうけど、オレぁそいつについて行けねぇんです。普通のラーメン食わせてくれよって思いますねぇ。


・・・なんて会話が延々交わされそうなので、ここら辺で切っておきます(汗

まぁその、ブルースをラーメンにたとえますと、恐らくは「味が派手になる前の九州とんこつラーメン」なんじゃないかということを言いたいんですね。

ブルースに影響を受けた音楽も、1980年代以降になると、ベテランとか大御所とかいう人達がそろそろ出てきて、じゃあそんな凄い人達が愛しく語る「ブルース」ってのは、何というかもっと凄いんじゃあないかと。うへぇ、聴いてみたいけどそんなそんな・・・、とっても恐れ多いというか何というか・・・。

と、高いところに持ち上げられて敬遠されてきた感もあるんじゃないかと思います。

でも、ブルース。特にエレキギターを使ったバンドスタイルのそれが形になった1950年代のものを聴いてみると「これよこれ、食べて安心出来る昔ながらのとんこつラーメンだよ!」という味わいのものが実に多く、たとえばドライブとか、家事をしながらのBGMなんかにはピッタリのものが意外に多いんですよ。

そんなわけでブルース界の「元祖とんこつラーメン」といえば、まさしく1950年代のローウェル・フルスン御大であります。

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フルスン御大は、そのどこまでも武骨で辛口なヴォーカルとギターの魅力もさることながら、何といっても表現全体から溢れてくる男の哀愁が、そのまんまブルースを体現しておる人で、超絶有名なスターではないけれども、源流であるテキサス・ブルースのコアな部分の伝道者であり、B.B.キングをはじめ、その後のモダン・ブルースにはとてつもない影響を与えている、ブルースを語るにはやはり外せない人で、だからアタシは目一杯の敬意を込めて”御大”と呼んでおります。

1921年オクラホマ州タルサ生まれで、少年時代は戦前テキサス・ブルースの創始者の一人であるテキサス・アレクサンダーの伴奏を務めるなど、早くから頭角を現しますが、やはり戦後60年代後半に、ファンキーな要素を大々的に取り入れた『トランプ』でブレイクしてからの活躍が、ファンには知られております。

つまり遅咲きの人であるんですが、最初に小ヒットを飛ばしたのは1950年代。その頃シカゴにあったシカゴ・ブルースの総本山的なレーベル”チェス”にてシングルを出していた頃の演奏を熱心に聴いていたB.B.キングによって「あの人はブルースの眠れる巨人だよ」と言わしめたのが、フルスン御大復活のきっかけでありましょう。




【収録曲】
1.ザッツ・オール・ライト
2.アイ・スティル・ラヴ・ユー、ベイビー
3.リコンシダー・ベイビー
4.アイ・ウォント・トゥ・ノウ
5.ロウ・ソサエティ
6.チェック・ユアセルフ
7.イッツ・ユア・オウン・フォルト
8.ドゥ・ミー・ライト
9.トラブル、トラブル
10.ハング・ダウン・ヘッド
11.トウリン・ベルズ
12.ドント・ドライヴ・ミー・ベイビー
13.ブルー・シャドウズ


という訳で、フルスン御大初期の集大成、チェスのシングル・コレクションとも言える名盤の「ハング・ダウン・ヘッド」であります。

このアルバムは凄くいいんですよ。

実はブルースには

・ミシシッピ→メンフィスとかいろいろ通ってシカゴ

という流れと

・テキサスから西海岸

というざっくりな二大流派がございまして、フルスンはテキサスから西海岸な流れの人なんですね。

でも、何でそんな人がとことんシカゴ・ブルースなチェスかといいますと、えぇ”たまたま”です。

地元シカゴのブルースマンばかりでなく、洗練されたゴージャスなスタイルの西海岸ブルースも手掛けてヒットを出したかったチェスがたまたま見つけたのが、当時「スリー・オクロック・ブルース」や「エヴリデイ・アイ・ハブ・ザ・ブルース」というヒット曲を出していたフルスン御大で

「えぇと、別に西海岸にいてもいいから、ウチからレコード出してくれないか?」

「うん、いいんじゃね?」

ぐらいのノリで決まったらしいです。

フルスン御大はスケールがデカいから、地域性やスタイルの違いなんて全く気にしません。

レコーディング・スタッフに西海岸に来てもらって、そのまんまシングル用の曲をちょこちょことレコーディングさせているんですね。

だから、このアルバムは1955年から1961年までの割と長い期間の曲が集められておりますが、録音のほとんどは西海岸で、フルスンのレギュラーバンドをバックに演奏された曲なので、シカゴブルースのような強烈な泥臭さはありません。むしろ西海岸流儀の洗練されたジャズィなバックの上で、ひたすら硬派で辛口な唄とギターのコアを剥き出しにシャウトするフルスン御大が聴けるって寸法です。

ブルースはパンクだと思っているアタシ、ブルースに”渋い”という形容はなるべく使わないで、皆さんにはそのフリーダムでアナーキーな魅力を楽しんでもらおうと思ってブログも書いておりますが、コレに関しては例外的に



渋い!!



と、声を大にして言わせていただきます。

いやぁ、渋いんですよ。もうね、むせび泣く男の哀愁が、最初から最後までじわ〜んと物凄い量沁み出ているし、物凄い勢いで空間を侵食しますよこれ。

特にこの時期の大ヒットであり、タイトル曲になった「リコシンダー・ベイビー」の、不器用だけど言葉より語るものに溢れたギター弾き倒しと、感情をクッと押し殺したヴォーカルの味わいは、ブルース知らない人が聴いても「これがブルースだ」と言わしめる強烈なカッコ良さに溢れております。

また、フルスンのゴツゴツした声やギターを絶妙に引き立てるバックの演奏が秀逸です。パシッと心地良く決まる乾いたリズム、ピアノにホーン、曲によってはヴィブラフォンまで入ったジャズ寄りと思わせて、実はしっかりと地に足の付いた、そう、テキサス・ブルース特有の”乾いた質感”が滲みまくるアレンジ。1950年代に若きB.B.キングが熱心に聴いてバンド・アンサンブルのお手本にしたサウンドです。

フルスンにしては珍しい、チェス・レコード唯一のアルバムではありますが、リリースされたのが1970年と、丁度日本で最初にブルースのレコードが聴かれるようになった時期と重なって、このアルバムは当時の多くのブルース・ファンにとって「原点の一枚」になったと言います。

CDの時代になって、フルスンの60年代以降のアルバムが次々リリースされ、その中には代表作と呼べるクオリティの名盤もたくさんありましたが「やっぱりフルスンはコレだよな♪」と、今なお多くの人に愛されております。

やっぱりこのアルバムは昔ながらのシンプルなとんこつラーメンだと、そのじんわりと辛口の沁みる味わいに舌鼓を打ちながらしみじみと・・・。





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:18| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする