2017年11月14日

ジャック・ブルース Things We Like

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ジャック・ブルース Things We Like
(Polydor)


ごめーん、今日もジャック・ブルースです。

そしてごめーん!

これ最高です。

1968年、クリーム解散直前にジャック・ブルースが各方面に「ジャズやろうぜ」と声を掛け、「おう、いいぜ」と、ジャズとプログレッシブ・ロックの面々が集まって出来た、ブルースロックの”ブ”の字もなければクリームの”ク”の字もない、純度限りなく100に近い、気合いの入ったジャズ・アルバムなんです。

1960年代のイギリスのロッカーといえば、十代の頃はスキッフル・バンド(アコースティックでトラディショナル・ジャズやフォークソングを演奏し、歌う音楽)を経験し、その後ブルースやR&Bなどアメリカの黒人音楽に衝撃を受けて、エレキギターでブルースやR&Bのカヴァーをするバンドを結成するというのが、ひとつの王道なパターンだった訳ですが、クリームの場合はクラプトンはご存知の通り”ブルース少年からロッカー”のど真ん中におる人で、でもジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーは、クリーム以前、グレアム・ボンドという人の、ホーンなんかも入ったかなりジャズ寄りのR&Bバンドが、そのキャリアのスタートでした。

このバンドのリズムというのが、ブルースのシャッフルやロックンロールの8ビートだけではなく、ジャズのチーチキ、つまり4ビートやラテン・ビートなんかも色々と使っている、なかなか画期的なバンドでありまして、何が言いたいのかと言うと、ジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーという人達は、最初から英国ロックの王道な流れとは若干毛色の違う”ジャズ”という感覚に、割と早くからドップリだった人達だったんです。

あ、でも、このグレアム・ボンドのバンドでは、ジャックとジンジャーはものすごく仲悪くて、クリーム結成も、実はかつての不仲を知る周囲からは「アイツら仲悪かったよな?大丈夫かぁ!?」と散々心配されていたようなんですが、・・・結果は言わずもがなですね(汗)。

はい、余談はこれぐらいにして、とにかくジャック・ブルースは、そのソロ作品には常に「ロックの”当たり前”には収まらない音楽性の広さ」と感じさせます。なかんづく”ジャズ”というキーワードは、ジャックを語る時に外せない重要なワードなんですが、この「Things We Like」には、全編インスト、全編ウッドベースでガッツリJAZZをやっている、ジャックのある意味原点がかいま見られるアルバムであります。

実は録音年月日は、ソロ第一作目の『Songs for a Tailor』の前年の1968年ですが、発売が後だったんですね。だから実質ファースト・アルバムなんじゃないの?とも訊かれたことがあったりするんですが、このアルバムはジャック・ブルースのソロ作というよりも、イギリスの、ジャズの心得のある若手ミュージシャン達が集まって、特定のリーダーを決めずに行った自由なセッション・アルバムと言えるでしょう。

セッションに集った面々は、下の【パーソネル】にも記入しますが、まずウッドベースのジャック・ブルース、ギターのジョン・マクラフリン、サックスにディック・ヘクトール=スミス、ドラムにジョン・ハイズマンであります。

ジョン・マクラフリンは後に渡米してマイルス・デイヴィスのバンドや、トニー・ウィリアムスのライフタイム、そして自身の”マハヴィシュヌ・オーケストラ”などで70年代以降のジャズ・ギター界を代表するほどのビッグネームになりました。そうなんです、実はイギリス出身で、このセッションの直後にアメリカに渡っておるんです。

で、ディック・ヘクトール=スミスにジョン・ハイズマンといえば、これはもうプログレファンにはおなじみの”コロシアム”のメンバーですね。

プログレッシブ・ロックというのは、知らない人にとっては何だか頭のいい人達がやっている難しい音楽とか、サイコでおどろおどろしい音楽とか思われるかも知れませんが、元々はジャズ・バンドをやっていた連中が「じゃあ俺達もジャズをベースにしたロックをやるべ!」と、ジャズをベースにロックの色んな要素を掛け合わせたような音楽がベースなんですね。

だから全然難しくないし怖くもないよ〜ということを言いたいんですが、その中でもコロシアムのオリジナル・メンバーであるジョンとディックの2人は、元々イギリスのブルース・ロックの走りと言われるジョン・メイオールのブルース・ブレイカーズにも参加していた面々で、そういう意味で非常にキャッチ―な”掴み”に溢れたプレイも出来る人達です。

で、こんなグレイトな(や、よく分かんない人ごめんなさいだけど、後の各分野での活躍ぶりを知ってる人から見たら、これはあり得ない豪華顔合わせなんですよ)面々が、どうして集まったかというと、実はさっきちょこっと言った”グレアム・ボンド”の関係者なんですね。

マクラフリンとコロシアム組の2人共、グレアム・ボンドのバンドで演奏していた時期があって、ジャックともその頃から絡みがあったんです。いうなればこのアルバムは”グレアム・ボンド・バンドの同窓会的セッションであり、1960年代末期のイギリスで最もホットなジャズの記録でもないかしらと、聴きながら毎度アタシはワクワクします。






【パーソネル】
ジャック・ブルース(b)
ジョン・マクラフリン(g)
ジョン・ハイズマン(ds)
ディック・ヘクトール=スミス(ts,as)

【収録曲】
1.Over the Cliff
2.Statues
3.Sam Enchanted Dick Medley: Sam's Sack/Rill's Thrills [Medley]
4.Born to Be Blue
5.HCKHH Blues
6.Ballad for Arthur
7.Things We Like
8.Ageing Jack Bruce, Three, from Scotland, England



実に素晴らしいのはメンツだけではなくてやっぱり中身です。

演奏の方も実にそれぞれのプレイが個性的で、これがいわゆる「オーソドックスなアメリカのジャズの真似事」で終わっていないんです。

パッと聴いて「あ、面白いなぁ〜」と印象に残るのは、フツーに渋いフレーズも吹くけど、基本ひねくれて、よじれまくって、どこにすっ飛んで行くか分かんないフリーキーでアナーキーなディックのサックスと、アンプをガンガンに歪ませて、遠慮なく”オレが感じるロック”を、ジャズなフレーズの中に後先考えずガンガンぶち込んで、もう攻めに攻めるギターで楽しませてくれるジョン・マクラフリンのギターですよね。

全体的に60年代フリー・ジャズの不穏さ、不健全さに大きく影響を受けた実験的な香りがムンムン漂ってはいるんですが、キメのメイン・フレーズや、ディックが要所要所で披露するローランド・カークばりの”サックス2本同時吹き”に、特有の大道芸的な陽気さ「実は俺達、楽しみながら不健全やってんだよねー」みたいなカラッとした磊落さを感じます。

で、ジャックとドラムのジョン・ハイズマンは何をやってるのかというと、派手にやらかしているサックス&ギターのバックで、真面目に黙々と”コイツらがちゃんと暴れやすいように”と4ビート刻んでるんです。

や、バンバンボンボンとかなり手数多めにジャックは派手なアドリブをかましてるし、ハイズマンのドラムは実に知的で切れ味鋭くて、これもフロントに呼応しながら自由自在にリズム・パターンを変化させておるんですが(この辺は流石元祖プログレのバンドリーダーですよ)、その仕事ぶりがとても真面目で誠実なんです。

ジャックのベースは暴れてなんぼと、アタシは思ってますが、このアルバムで実は一番の聴きどころは、サックスやギターのソロが佳境に入ってブチ切れ気味になる一歩手前の時にフツーの4ビート刻んでるとこだったりします。

それにしても、これだけ見事にジャズしてるのに、やっぱり他のアメリカのジャズと聴き比べてみたら凄く特有の”ロックフィーリング”みたいなのがあって、それが気持ちいいんですよね。何がどうロックなのか?それを考えると結局雰囲気としか言えないからもどかしいのですが、敢えて言葉にするならば「ジャズのフォーマットの中で、ロック的な自由闊達なやりとりが成立してる」ということになるでしょうか。や、ジャック・ブルースという人は聴けば聴くほど奥が深いです。






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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 19:19| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする