2017年11月19日

INU メシ食うな

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INU/メシ食うな
(徳間ジャパン)


みなさんこんばんは、気温も寒くなって機嫌が良いので、今日は”そもそも”についてお話しようと思います。

考えてみればそもそもアタシが音楽にハマッたきっかけは、小学校6年の頃に聴いたブルーハーツです。

音がどうとかスタイルがどうとか、アタマの悪い小学生にはそもそもそんなことは分かりません。

ただ、歌詞が良かったんですね。

そもそも思春期だったんです。

思春期といえば、友達関係とか異性のこととか、そういう事に思考がのめり込む時期で、アタシも一丁前にそういうことで悩み始めておりました。

そもそもアタシのいけないところは、手前のクダラナイ悩みにも、すーぐ世の中という、手前には手に負えないスケールのことを持ち出して、必要以上に深刻になってしまうことでありまして、ええ、最初にそういったことを具体的に思考に絡めて、よせばいいのに悩み苦しんでおったのが実に小学校から中学校に上がるか上がらないか、そのぐらいの時期だったんじゃないですかね。

その時に聴いたブルーハーツの歌詞というのが、アタシにとっては救いであり天啓であり、キリスト教徒にとっての聖書とか、中国共産党員にとっての毛沢東語録とか、アントニオ猪木ファンにとっての赤いバスタオルとか、猫にとってのマタタビとか、そういうものだったんですね。

で、親父に

「この音楽は一体何ていう音楽だ?」

と訊いたら、親父は

「パンクだ」

と言うのです。

そもそもパンクというのは、世の中の体制みたいなものにノーを唱えるメッセージみたいなもんが必要なんだ、と。

アタマの悪い小学生ながら、ほほぉと思いまして、アタシはパンクにのめりこんで行く訳です。

パンクロックというのは、1970年代のイギリスで誕生したんだと言われ、イギリスのパンクも聴きたかった訳なんですが、そもそもブルーハーツの歌詞に感動したお子様なので、英語の歌詞は分からないからとりあえず日本語のパンクを聴かせてくれやと、オススメされるままにアナーキーとかスタークラブとか、ラフィンノーズとかもよぉ聴いとりました。

その頃丁度バンドブームというのがあって、ラフィンノーズは2コ上とかの先輩達が「ゲット!ゲット!ゲットグローリー!」とか言って盛り上がってました。

アタシもその中に恐る恐る混ざってみたりしたこともありましたが、いやちょっと待て、そもそもこの”パンクロック”というのは、みんなで仲良く一緒にをーをー言う種類のパンクロックだ。そもそもアタシが好きなのは、何かこうもっと個人的なアレのヒリヒリしたところにチクッとくるようなものが欲しいんだ。と思いまして、田舎ということもあり「パンクロックは家で一人で聴く音楽」に、早々と認定してしまい、それについて学校とかではっちゃけることはあんまなかったです。

そもそもアタシは暗い人間です。

学校を適当に切り上げて、ウキウキで家に帰ってきたら自転車で街に出てCDとジュースとお菓子を買って、家で聴く。たまに友達と街で会えば、そりゃ遅くなるまで適当なことで盛り上がったりもしましたが、そもそも心はいつも我が家の自室のCDラジカセと共にあるよーなクソガキでした。

例えば夜の10時とかに帰ってきても、サッとメシ喰って、ジャッと風呂浴びて、部屋に籠って爆音で音楽を聴くと。

それを面白がって見ていたのが母親で「これを聴きなさい」とオススメしてくれたカセットテープには、スターリン、レピッシュ、PINK、BUCK-TICK、筋肉少女帯、そして町田町蔵のバンド”INU”なんかが入っておりました。

そもそも母親は、そういうカセットにしれっと遊佐未森なんかを入れるヒドい人なんでありますが、この人の「これ、パンクよ」と言うバンドやアーティストの曲は、大体どれも「仲間ををーをー言わない歌詞/音楽」だったりして、非常に好感が持てたのですが、特に「これがいいの!」と熱を上げていたのがスターリンと町田町蔵です。

今は作家の町田康として、素晴らしい小説や随筆をたくさん書いておられる人なんですが、そもそもこの人はパンクロッカーで、高校時代からもうバンド組んで関西では名の売れた人だったんですよ。



【収録曲】
1.フェイド アウト
2.つるつるの壷
3.おっさんとおばはん
4.ダムダム弾
5.夢の中へ
6.メシ喰うな!
7.ライト サイダーB(スカッと地獄)
8.インロウタキン
9.305
10.メリーゴーラウンド
11.気い狂て


INUですねぇ。

このアルバムは町蔵が”INU”としてリリースした唯一のアルバムです。はい『日本のパンクロックの黎明期の名盤』と呼ばれております。

名前がそもそも『町田町蔵』なんていうイカツい名前でパンクロッカーと言うんですから、アタシはてっきり何か物凄いゴツい声の、坊主頭で人相も凶悪で、上半身裸のプロレスラーみたいな人を想像していたんですが、ご本人のルックスは非常に端正なお兄さんで、ヴォーカル・スタイルも思ってたより全然ゴツくない、ついでに言えば音楽的にも拳振り上げて全力疾走する、いわゆるパンクロックというよりも、その後のニューウェーブの、物凄い硬派なヤツみたいな感じで、音楽的な完成度みたいなものが、あ、これは高いなと、そもそも音楽的な完成度とかそういう高度なことは分からなかったくせにそう思ったんです。

メンバーはとても流動的だったようですが、北田昌宏の緊張感溢れるギターが凄くて、町蔵の内へ内へと沈み込んで爆発する狂気のヴォーカルがギットギトに描く世界観と異常な親和性でリンクして、もう怖いぐらいなんですよ。

そう、このアルバムの「凄いなこれ」と思わせるところには、特有の”怖さ”というものがあります。

町蔵の歌詞は、この時代から(確かこれ書いた時はまだ十代だったと思う)実に文学的でやぶれかぶれで、内から湧き出るむき出しの言葉を、音程とか共感すらもどうでもいい、そんな潔さで聴き手の意識にぶつけてきます。

そもそも一人称が”俺達”になりがちな(言葉としてではなく態度として)ロックにあって、終始一貫して一人称”俺”なんですよ。


沢山の人間が居て 俺はその中の一人
定まらぬ視線の中で みんなお互い窒息寸前
ええ加減にせんと気い狂て死ぬ



大衆、世の中、世間・・・まぁ何でもいいんですが、そういった実に曖昧でやたら大きなものに、ガリガリの上半身を曝して包丁握って自爆しに行く。仲間なんぞいらん、勝手にやらかして勝手に死んだるわい!どの歌詞からも、そういったヒリヒリしたメッセージがガンガン飛んできて、あぁ、これはパンクだなと、納得なんか出来なくても、叫び、振り絞り、呻き、呟く町蔵のヴォーカルには、安直な”みんなでがんばろう”みたいなものを、吹き飛ばして切り裂いて、足で踏みつけてグチャグチャにする、凄まじい呪詛として、アタシの脳裏には写りました。

そもそも凄まじいネガティヴの力です。でもこのINUのサウンドと町蔵の怨念ヴォーカルには、クールでスタイリッシュなUKパンクから、そのまんま影響を受けた”パンク”にはない”パンク”を感じてしょうがないんですよ。

そもそも音楽に必要なものって、こういう正当な怒りなんじゃないかと、大人になってどうでもいい物分りの良さを身に付けたつもりのアタシは、今冷静に思っています。



『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 11:55| Comment(0) | 日本のロック・ポップス・その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする