2017年12月05日

マジック・サム ライヴ!

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マジック・サム/ライヴ!
(Delmark/Pヴァイン)

さあさあ、マジック・サムのアルバムは、まだまだ名盤つづきますよー!

という訳で、ブルースファン、いや、これはもう『エレキギターが炸裂する全ての音楽が好きな人にとって
、出会ってしまったら一生を捧げて聴きまくりたいぐらいになるアルバム』であると断言しちゃいます。マジック・サムの『ライヴ!』と銘打たれた2枚組のこのアルバム。

これはもう何と言いましょう。個人的な体験から申し上げるのを許して頂きますと、それまで戦前ブルースが大好きで、B.B.キング以降のモダン・ブルースに関しては「いいんだけど何だかワンパターンな曲が多いなぁ」ぐらいにしか思えてなかったアタシはコレを聴いて「い、い、いや、すげぇ、やべぇ、すいませんでした!」と、自らの不明を恥じ、CDで買って余りにも素晴らしかったものだから、思わずレコード屋さんで見かけたアナログ盤も購入してそのまま友人にプレゼントしたという、そういうことをやりました。

とにかくスタイルとか年代とか、曲とか音とか、そんなことよりも音楽そのもののパワー、いや、もっと言えばこの音盤の中に収録されているライヴと、それを演奏しているマジック・サムという人と、ライヴを目一杯楽しんでいるオーディエンスが、それぞれ「音楽ってサイコーだー!!!!」と感じ入ってるパワーに圧倒される。そう、理屈を超えてひたすら聴く人を圧倒し、その素晴らしい空気の中に力強く引き込んでくれるんですね。

1枚目がサムがよく出演してたシカゴの小さなクラブでのライヴ、そして2枚目が3万人の聴衆を前にしての大規模フェスでのライヴ。どっちの録音も、ポーダブルデッキでのマイク一発録りで当然音はクリアではない。しかし、この割れてくぐもったサウンドからリアルに伝わってくる熱気、音楽をやらずにはおれない男の凄まじい気迫の何と凄いことか。あぁ・・・(!)

はい、マジック・サムに関しては、その名を目にしただけで胸に何かアツいものが込み上げてくると、これまでもあちこちで書いておりますが、その”アツいもの”とは、すなわちこのライヴ盤に刻まれた空気そのものかも知れない。そう思っておりますし、これからも多分この考えは変わることはないでしょう。

言っておきますが、マジック・サムが生前に残した2枚のアルバム(『ウエスト・サイド・ソウル』と『ブラック・マジック』)はいずれも名盤です。いずれもサムの快調な歌いっぷり弾きっぷりと共に、1960年代後半のシカゴ・ブルースの粋とイナセを、感動しながらお腹いっぱい楽しめます。

で、このアルバムは、出来れば生前に残した2枚のスタジオ・アルバムを堪能してから、そのテンションが更に粗くリアリティに溢れた音質でドカーンと飛んでくるこのアルバムを聴いて頂きたいことなんですが、ちょっと待って、今聴きながら書いてますけど、えぇ、そういうのとりあえずどうでもいいです。最初にコレを聴いてズガーンとヤラレた人は、その時点で恐らくブルースという音楽に魅入られてしまった人ですので、えぇと、何を言いたかったか忘れてしまいましたが、聴いてください。



(Disc-1)
1.Every Night About This Time
2.I Don't Believe You'd Let Me Down
3.Mole's Blues
4.I Just Got To Know
5.Tore Down
6.You Were Wrong
7.Backstroke
8.Come On In This House
9.Looking Good
10.Riding High

(Disc-2)
1.San-Ho-Zay
2.I Need You So Bad
3.You Don't Love Me
4.Strange Things Happening
5.I Feel So Good (I Wanna Boogie)
6.All Your Love
7.Sweet Home Chicago
8.I Got Papers On You, Baby
9.Looking Good
10.Looking Good (encore)


まずは1963年と64年に収録された、シカゴのクラブ「アレックス」での演奏からいきましょう!

もう曲が始まる前から、テンションの高いアナウンスと客のヤジ。クラブの薄暗い中での熱気がムンムンとこもってるこのザワついた雰囲気、そしてサムも異常なテンションで、何度も「イェー!イェー!!」と煽りまくる。くあぁ、たまらんねぇこれ・・・と思ってたら、いきなりおっぱじまります気合いのスローブルース(!)

そしてもうのっけからアルバム全部のクライマックスが、この1曲目で来ちゃってるんですが、歌い出し

「エェェェビバデナイバウディスタァァァーーーーム!!」

のサムの声とユニゾンでハモッてるのは、何と一緒に歌ってる観客の女性。

いやいや、ブルースのライヴ盤では、確かに客が歌うのもあるし、テンションがヤバいことになった聴衆の熱狂とか掛け声とか、そういうのが凄いのたくさんありますが、この歌い出しの「知らないネーチャンとの合唱」これに勝る感動的なオープニングはそうはないだろうと思います。

で、誰だって女の子が一緒に歌ってくれれば気合いが入って機嫌も良くなるってもんです。サムは終始曲間に「イェエエイ!!」と奇声を上げ、歌もギターもヤバすぎるテンションですこぶる盛り上がります。

ブルースといえば、ギターソロで、サムもところどころ「フレディ・キングとのバトルで勝利した伝説」を裏付けるかっこいいソロを聴かせてくれますが、この盤でのサムのギターの凄さは、ソロよりもむしろギャリギャリに歪んだ音でのブギ系曲のリフ・バッキング。そうなんですよ、サムの魅力は歌とかギターソロとかそういう一部にだけ偏ってない、テンション高いし荒削りなところも味ではありますが、それでいて全体が安定してカッコイイところにあるんです。

編成はヴォーカル、ギター+ベース、ドラム。曲によってキーボードと、何とエディ・ショウにA.C.リードという、戦後シカゴ・ブルースのサックスを語る時に絶対ハズせない大物2人が同時共演。凄いですよコレ、普通はホーン・セクションといえば、サックス+トランペットとか、或いはそれにトロンボーン加えてとかが多いのに、テナー・サックスが2本ですからね。しかもどちらもサムのプレイを邪魔せずいいところで絶妙なフレーズで好サポートしておりますから流石であります。

Disc-2の1969年”アン・アーバー・ブルース・フェスティバル”はサムが亡くなる4ヶ月前の演奏で、この日サムは具合でも悪かったのか、或いは飲み過ぎたか、会場には白人ベーシストだけを引き連れてかなり遅刻して入ってきたらしいのですが、この時助っ人で「オゥ、オレが叩いてやってもいいぜ」と加わったのが、当時ポール・バターフィールド・ブルースバンドでキレッキレのドラムを叩き、それ以前にも”シカゴで一番万能なドラマー”として評判だったサム・レイ(!)

さあここから3万人の聴衆を前にしての、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスもかくやと思われる怒涛の3ピースの熱演が始まります。

オープニングはアルバムでもおなじみフレディ・キングのナンバーですが、まぁこのテンション、鬼気迫るド迫力の演奏といったらどうでしょう。えぇ?これでたった3人?マジかよ!?となること必至の音圧、空間の埋め尽くしでありますよ。

これ、録音がもっと良かったら多分ここまで音がひと固まりになって「ゴワーン!」と響く感じにはならなかったでしょうね。とにかくサムの緊張が演奏に尋常じゃない覇気を与えた歌とギター、サム・レイのバシッ!バシッ!とカッコイイところで容赦なく決まるドラミングが最高であります。

これもまた「全曲推し!」と言いたいところですが(だってホントに気の抜けた一瞬すらないんだもん)、個人的にお気に入りは『Strange Things Happening』ですねぇ。

原曲は50's R&Bの偉大なるシンガーソングライター、パーシー・メイフィールドが歌う落ち着いたスロー・ブルースですが、サムは更にテンポを落として感情を沸々とたぎらせるへヴィなブルースで歌を、2本の弦を「ギャイーン!」とヒットさせるタフなプレイでギターを炸裂させます。

ここから一気にテンポ・アップしてハイテンションのブギーになだれこんで、更にその歪んだ音と鋭過ぎるドラミングがもうヤバイんですよ。えぇ、聴いてください、聴けば分かります。

2枚組というのがウソみたいに短く感じられる、どこから聴いてもどれだけ聴いても、決して衝撃が色あせない、本当の意味での”生”の音楽の凄さです。えぇ、もうこれ以上の言葉はいらんでしょう。

posted by サウンズパル at 21:56| Comment(0) | ブルース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする