2017年12月13日

ジミー・フォレスト ナイト・トレイン

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ジミー・フォレスト/ナイト・トレイン
(Delmark/Pヴァイン)

そもそもジミー・フォレストという人を知ったのは、確か1998年だか1999年度版の「Pヴァインレコードカタログ」でありました。

あの頃といえばインターネットなどあんまよく知らないし、ケータイすらも持ってなかったので、情報といえば雑誌か本、そしてレコード屋さんに置いてある無料の冊子やチラシの類です。

特にレーベルが出しているカタログは、貧乏人には凄く有り難かったんですよ。アーティスト名/タイトル、値段や収録曲の他に、下の方に内容紹介の一口コメントが大体書いてある。

カタログをパラパラっと開いて、知ってるアーティストのアルバムなんかは「そうそう、そうなんだよね〜」と納得してニンマリやってましたが、重要なのはむしろ知らないアーティストの聴いたこともないアルバムの類で、カタログに載っている一口コメントを読みながら想像を膨らませ、ワクワクドキドキしながら購入してみる。なんてことの繰り返しが、今にして思えばアタシの音楽生活に素晴らしい実りをたくさんもたらしてくれました。

特にお世話になったのが、ブルースや洋楽ロックのヴィンテージな再発盤などをリリースしてくれる日本のインディーズレーベルのカタログ達。

その頃はブルースにドロドロのめり込んでいた時だったので、良質なブルースや、ブラック・ミュージック全般のリイシューに本気のPヴァインのカタログは、もう毎年カネ払ってでも欲しいけど、タダ!?ラッキー!ぐらいのバイブル的なもんでした。

ほいでもってPヴァインのカタログを眺めているとジャズのページもあります。

そのページが、アタシの知らない人達の作品がズラッと並んでて、いやこれは凄いと思って夢中で読んでおりました。

どんなのがあるんだろうと思ってコメントを読んでいたら、そこは流石に良質なブラック・ミュージックの牙城だけあって「コテコテ」「黒い」「タフな」「ソウルフル」と、コチラの心をくすぐるワードがじゃんじゃん表示されている。

ほほぉ、これは何か一枚買わねばならないなと思い、真っ先に目印を付けたのがジミー・フォレストなるテナー奏者の『ナイト・トレイン』というアルバムでした。

だって、ジャズのところに載っているのに「R&Bヒットとなった」と書かれてるんですよ。これは気になる!しかもレーベルを見ると、ジュニア・ウェルズやマジック・サム、ビッグ・ジョー・ウィリアムスなんかのシカゴ・ブルース名盤を多く出しているデルマーク・レコード。

聴いてみたら、まず曲がどうとかアドリブがどうとか、そういう細かい事はさておきで、何よりそのズ太くてタフなブルース・フィーリングの塊のようなそのテナー・サックスのサウンドと、いかに1950年代初期の、たとえばラジオとかジュークボックスから流れてきたら最高にカッコイイだろうなと思わせる音色がたまんなく響きました。

そう、これです。

いわゆるメジャーなレコード会社から出されているモダン・ジャズは、ブルースに比べて音質が良かった。

そりゃもちろんいいことなんですが、何となくブルースとジャズ、行ってみれば非常に近い所にあって、当時のクラブでフロアを熱狂させていたであろう二つの音楽の、近いようで何だか遠い距離感みたいなものを、アタシはちと感じておったので、この音色と、このストレートな演奏の良い意味でのB級感がドンピシャリでハマッた訳です。

1920年ミズーリ州セントルイス生まれ、南部と北部の中継地点であるこの街で、行き交う人々を楽しませていたブルースを少年時代から目一杯浴びて、やがて都会に出て一流のデューク・エリントン楽団や、チャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィスも居たことのあるジェイ・マクシャンのオーケストラでその実力を認められ、40年代後半のモダン・ジャズ誕生のきっかけとなったビ・バップには目もくれず、セントルイス仕込みの強烈なブルース・フィーリングを染み込ませた、スウィング仕立ての豪快な吹きっぷりを手前のたったひとつの武器に、時に若いヤツらが好きなR&Bで大胆にブロウをかましながら、生き馬の目を抜くジャズ・シーンを生き抜いた男、いや漢。う〜んカッコイイ。




【パーソネル】
ジミー・フォレスト(ts)
チャウンシィ・ロック(tp)
バート・ダブニー(tb)
バンキー・パーカー(p)
チャールズ・フォックス(p)
ハーシェル・ハリス(b)
ジョニー・ミクソン(b)
オスカー・オルダム(ds)他

【収録曲】
1.Night Train
2.Calling Dr.Jazz
3.Sophisticated Lady
4.Swingin’ And Rockin’
5.Bolo Blues
6.Mister Goodbeat
7.Flight 3-D 
8.Hey Mrs.Jones 
9.My Buddy (Previously unissued)
10.Song Of The Wanderer
11.Blue Groove
12.Big Dip
13.Begin The Beguine (Previously unissued)
14.There Will Never Be Another You
15.Coach 13
16.Dig Those Feet (Previously unissued)
17.Mrs.Jones’ Daughter (Previously unissued)


【録音年:1951】



もうこういった人に関しては「語るより聴け」の方が早いんでサクサク紹介しちゃいます。

昨日の『アウト・オブ・ザ・フォレスト』に続きまして本日ご紹介いたしますのは1950年代初頭、ジミーがエリントン楽団を卒業して「男一匹食っていくための仕事」としてせっせと録音してはリリースしていたシングル盤を集めたアルバムであります。

どの曲もシングル盤(当時はSP)に収まる長さの3分ちょいぐらいの演奏時間で、ストレートなジャズありR&Bあり、当時流行っていたラテン風味あり、コク豊かなバラードありで、しかもどの曲でも変わらないタフなブロウが楽しめるって言うんだから、これはジャズファンもブラック・ミュージック好きも聴いて楽しまなければなりますまい。

冒頭を飾るのは1952年のR&Bチャートで、インスト曲ながらヒットして堂々1位を獲得した『ナイト・トレイン』。

R&Bというより、これはゆったりとしたテンポの(リズムに若干ラテンのテイストが入っとる)ロッキンなブラック・インストゥルメンタルってノリですね。

覚えやすく印象に残るリフが中心になって、テナーがゴキゲンに鳴り響くんですが、このテナーのアドリブは、主旋律をほとんど崩さず展開する実にシンプルなもの。

イェ〜イと聴いてたら、あっという間に終わってしまうので「え?もう?」とはなりますが、いやいや、このシンプルさ、分かり易さ、そして大きくたゆたうなだらかなグルーヴが醸すノリやすさが3拍子揃ったからこそのヒットなわけで、ジャズとかブルースとかそういう枠組みを外して単純に黒いノリのエンターティメントとして聴けば、この曲噛めば噛むほど味わいが出てくるスルメのような曲でして、だからこそ後年はオスカー・ピーターソンをはじめとする色んなジャズマンにカヴァーされてというのも納得。

そして実はこの曲は、ジミーのオリジナルではなくて、親分だったエリントンの「Happy Go Lucky Local(のろまな鈍足列車)」という曲のカバーだったりするんですね。

エリントンが「ディープ・サウス組曲」という曲を作ったその一部を構成するスロー・ブルース・ナンバーで、まぁどういった経緯でジミーが演奏することになったのかは分かりませんが、もしかしたら

「親分、あの曲ワシ録音してもいいですか?」

「あぁいいよ、おめぇはそういえばセントルイスの出身だったな」

「へぇ」

「ならブルースは得意だろう、最高にディープな演奏をやっとくれ」

「へい、頑張ります」

みたいな会話もあったんじゃなかろうかと想像するのも楽しいですな。

このアルバム『ナイト・トレイン』だけでなく、『アウト・オブ・ザ・フォレスト』の一発目でやっていた名刺代わりのスロー・ブルース『ボロ・ブルース』の(多分)初演ヴァージョンや、ストレートアヘッドなジャズをやらせても確かな実力と安定したテクニックを感じさせる『ブルー・グルーヴ』『スウィンギン・アンド・ロッキン』コーラス・グループが明るく歌うラテン風R&Bの『ヘイ・ミセス・ジョーンズ』、ブルージーなバラード表現にどことなく気品を感じさせる見事なバラード『ソフィスティケイテッド・レディ』『マイ・バディ』など、一本気でいて本当に芸の幅が広い、しかも全部の曲のアドリブを、3分ちょっとの中でピシャッと収めるセンスの良さ(タフネスばかりじゃあないんだぜ)も際立った職人芸に惚れ惚れします。

1940年代後半から50年代初頭の、まだジャズとブルースが完全に分かれていなかった頃の、何とも幸福な空気感はもちろんアルバム全体に漂っていて、繰り返しますが曲がどうのとか演奏のこの部分がどうのよりもまず、その空気感に触れて欲しいアルバムです。

まとめると「まぁそんなことよりコイツを聴きながら飲む酒は最高だぜ」の一言に尽きるんですが、飲めないアタシに変わってどなたかこのアルバムを聴いてそれを証明する記事なり書いてくださればと思います。

この辺のジャズ、本当に味がありますよ〜♪





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『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:25| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする