2018年01月05日

エアロスミス 野獣生誕

6.jpg
エアロスミス/野獣生誕
(ソニー・ミュージック)

さー正月も終わってまた忙しい日々の始まりです(や、正月は正月で忙しかったのですが)。

気合いを入れるにはやはりガツンとこうロックですよね、しかも色々と凝って派手な方向に行くやつではなく、なるだけシンプルに不器用でカッコイイやつがいい。

で、エアロスミスです。

え、エアロスミス!? 何を言うんだい、エアロスミスって言えば超大御所で最高に派手でロックンロールからバラードまで、何でもカッコ良くこなせるスーパーバンドじゃないか。

という声も今聞こえました。

はい、そうです。エアロスミスは今や洋楽ファンでなくても「あ、あのアメリカの凄いバンドね」と、何となく知っている。ヴォーカルのスティーヴン・タイラーが、ハリウッド女優リブ・テイラーのお父さんということでも有名です。

でも、実はエアロスミス、実は売れっ子になるまでに結構時間がかかってきております。

アタシの記憶ではリアルタイムのエアロスミス体験といえば、高校時代に新譜を予約して買った1993年の『ゲット・ア・グリップ』。

それ以前には89年の『バンプ』またはバラード名曲『エンジェル』が入ってる87年の『パーマネント・バケーション』この辺りを聴く洋楽小僧が多かったです。えっと、確か「あのガンズ・アンド・ローゼスに大きな影響を与えた実力派バンド」とか、そういう紹介のされ方で、洋楽を聴いてガンズやスキッド・ロウ、エクストリーム、その辺の売れているハードロック系のバンドを聴いてる人達が、一部「じゃあ70年代のハードロックも聴くか」ぐらいの感じでエアロスミスまで手を伸ばしている。そんな感じでした。

音を聴く限りでは、1980年代後半のアルバムは非常に洗練されていて、やはりベテランの凄味みたいなものが出ています。

どの雑誌でも名盤と紹介されていたのは、1976年にリリースされた4枚目のアルバム『ロックス』なんですが、この辺まではキャッチーさよりも硬派なロックンロールバンドの味が強くて、90年代の派手な音に慣れたアタシら高校生の中では「初期のエアロスミスもかっこいいよね」と「う〜ん、何かピンとこない」という人とに分かれていたような気がします。

でも、実はアタシが好きなエアロスミスは『ロックス』より前の時期なんですよね。分かり易くドラマチックな曲よりも、何だか分からないけどカッコイイ曲が、ちょい汚く録られたラフなギターの音と共にうねってるこの感じ。

確かに70年代の音は、当時のキラキラにエッジの立った90年代のハードロック/ヘヴィメタルのサウンドと比べると迫力に欠けるとか最初は思ってましたが、自分が実際エレキギターを買って、それを安物のトランジスタアンプに繋いで音を出すと、やっぱりコレに近い音になって、自分が思う”生”な感じがすごくする。で、そんな音で弾くなら、メタルの重圧高速リフよりも、こういうロックンロールなリフの方が何故かしっくりきました。

そんなこともありましたが、やはり一番大きかったのは、ガンズです。

ガンズのアルバムの中では一番ラフで荒削りなヤバい空気がみなぎっているデビュー前のデモ&疑似ライヴを集めたミニ・アルバムで『GN'ライズ』という素晴らしい作品がありますが、コレでカヴァーされていたのがエアロスミスの『ママ・キン』。



ガンズの『ママ・キン』は、何と言いましょうか、一言で言えば究極の「オラオラ、ロックンロールだぜ!」な感じです。



あ〜かっこえぇ・・・。


「この曲エアロスミスのカバーよ」

「マジか!?どのアルバムに入ってんだ?」

「ファーストらしい」

「うぉー買う!」

で、1も2もなく『ママ・キン』目当てで買ったのが、1973年リリースの、エアロスミス記念すべきファースト・アルバム『野獣誕生』。



【収録曲】
1.メイク・イット
2.サムバディ
3.ドリーム・オン
4.ワン・ウェイ・ストリート
5.ママ・キン
6.ライト・ミー
7.ムーヴィン・アウト
8.ウォーキン・ザ・ドッグ


「とにかくママ・キン」で買ったので、ものすごーく期待は高かったです。

そして本家本元エアロスミスの『ママ・キン』は期待通りカッコ良かった(!)

や、元がシンプルなロックンロールですから、ガンズのあのカヴァー・ヴァージョンは、実はエアロスミスのオリジナルにほとんど忠実なものだと知っただけで、そりゃもう嬉しくて、やっぱりギターをすぐにアンプにぶっこんで、この死ぬほどかっこいいロックンロールなリフを絶対耳コピしてやろうと夢中になりました。

そしてもうひとつびっくりしたのがエアロスミスの代表曲である、バラードの『ドリーム・オン』がこのアルバムに入っていたこと。

へぇぇ、エアロスミスのファーストっていえば、ゴリゴリしたロックンロールナンバーしか入ってないと思ってたのにこれは凄いと思ってたら、この曲最初に売り出した時は全然注目されず、3年後にシングルカットされてようやく売れて、そのヒットが今の人気に繋がるきっかけになったんだとか。

はい、エアロスミスも最初の頃は「ボストンにいいバンドがいる」ぐらいの知名度以上のものを獲得することは出来ず、このアルバムもあちこちで雑だのヘタクソだのローリング・ストーンズの単なる物真似と酷評され、セカンド・アルバムまではほとんど売れず、レコード会社からも契約を打ち切ると言われてたんですね。

確かにこの頃のエアロスミスの音はチープで、演奏もめちゃくちゃ上手いという感じもしません。どっちかというと、街のちょいワルなあんちゃん達が一生懸命ロックやってるような、そんな感じは確かにあります。でも、それとカッコイイということは違うんですよね。

アタシはこのアルバムの泥臭さ、制作にお金がかけられなかったがゆえのチープな質感、でも「何かこう突き抜けてやろう」というメンバー達の気合いや、恐らく地元のライヴハウスやっているそのまんまのワクワクするようなノリをレコーディングスタジオにそのまんま持ち込んだかのような曲やアレンジのこの感じ、もうたまんなく大好きなんです。これぞロックです。

特にブレイクのきっかけとなった3枚目以降は、演奏もびっくりするぐらい上手くなって行きますので、この時期の味はやっぱりこれでしか楽しめません。

で、このアルバムの看板はやっぱり『ママ・キン』と『ドリーム・オン』なんですが、あれからブルースとかソウルとか、色々通過して改めてこのアルバム聴いてみると、最初聴いた時は特にカッコイイというよりは「何かいいね」ぐらいだった他の収録曲の、さり気ないブルースやR&Bのテイスト(あとサザン・ロックな感じもすごくする)にやみつきになってしまいます。

特に看板の2曲に挟まれた『ワン・ウェイ・ストリート』これは7分ある長い曲ですが、 軽快なブルース・ナンバーで、ミディアム・テンポの粘る曲調と、頭と間奏鳴り響くイカしたブルース・ハープ(多分スティーヴン・タイラーが吹いてる)が、おぉ、こんなにカッコ良かったんだ!と、新たな発見で繰り返し聴いております。

 昔、先輩に

「いいアルバムってどんなアルバムなんすかね」

と訊いたことがあって、その時先輩が

「何年か後になって、最初は別に気にも止めなかったような曲がめちゃくちゃカッコ良く感じるアルバムはいいアルバムだよなー」

と言った言葉を、今噛み締めてます。名盤とか物凄いインパクトがあるとかじゃないけど、これは間違いなく”良いアルバム”です。








『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:22| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする