2018年01月06日

ジェームス・チャンス&ザ・コントーションズ BUY

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ジェームス・チャンス&ザ・コントーションズ/BUY
(ZE/Pヴァイン)

パンク小僧にとっては永遠の憧れの作品のひとつとして『No New York』というコンピレーションがありました。

これはですのう、アタシはアタマの悪い高校時代に、例によって雑誌の記事でイギリスやアメリカのパンクの歴史みたいなものを特集したページがあって、それをパラパラと読んでいたら出てきたんですね。

『ノー・ニューヨーク』というタイトルからして何かこう激しいものを感じますね。まずそこが気に入って、細かい文字を読んでみたら、これはお前凄いんだぞと。ここに入ってる4組のバンドはノーウェーブと言って、70年代後半のニューヨークで、まず流行していたファッションパンクやニューウェーブへのアンチであり、既存のあらゆる音楽にノーを突き立てる、他のどのパンクよりも精神が過激で、音楽的な”ちゃんとした形”を根本からぶっ壊しててとにかくヤバイんだぞと。お前らとにかくパンク好きだったら、オリジナルパンクやハードコアもいいけど、ここまで聴かんとパンクの精神を理解したとは言えんのぞと。

まぁそんな書き方はしてませんでしたが、内容的にはそんな感じでした。

アタシも大概アタマが悪いので

「カッコイイからってピストルズやクラッシュの成り恰好ばかり真似したよーなのはパンクじゃないんじゃ、音楽的にどんだけイカレたことやるかっつうことにアホみたいに命かけてるよーなタワケが真のパンクスなんじゃ」

と、それはもうピュア真っ盛りでそんな風に思い込んで(つうかほとんど思い詰めて)音楽聴いてましたから、この雑誌の特集ページの『No New York』に関する一文は、それこそ天から降りてきた神の声か何かみたいにビビーンと来たんです。

このコンピレーションに絡む逸話として気に入ったのが、DNAというバンドのアート・リンゼイというギターの人は、チューニングがまるでデタラメなギターを、まるでデタラメのまんま弾きまくってるという話と、コントーションズというバンドでサックス吹きながらヴォーカルやってるジェームス・ホワイトというヤツは、演奏中に客席に降りて行ってとりあえず客をぶん殴る。で、殴り返されるから目の下にいつも青アザが出来てた。

という話でした。

おおお、パンクじゃ!つーかこのジェームス・ホワイトってヤツは本当のイカレ野郎だ!聴きたい!ノーニューヨーク聴きたい!コントーションズ聴いてみたい!!

と、思って、当時親父の経営するサウンズパルに行って

「ノーニューヨークくれ!!」

とイキリ立ったんですが

「あー、あれはない。ずっと廃盤じゃ」

と言われ、マジで心がポッキリ折れてしまいました。

その頃はパンクつっても、イギリスのパンクか初期ハードコアぐらいしか知らんかったので、そのノーウェーブとかいうやつをどうしても聴きたかったんですが、No New Yorkは1978年に一度リリースされたっきり一回も再発されず、その頃(90年代前半)にはもう伝説とか幻の作品として語られているような、レア盤の代名詞みたいなものだったんですね。

なので、アタシがノーニューヨークを本当の本当に初めて聴いたのは、大人になってから。

1997年にLPとCDで初めての再発が成され、これは当時アタシが丁稚をしていたレコード屋さん界隈でもすごく話題になって、店長から「ノーニューヨークを買う人は早めに予約してください」と指示が出たぐらいだったんです。

アタシ、もちろん予約して買いました。

さて、ワクワクドキドキで手にして、家に帰って針を落としたノー・ニューヨーク、いやもう全部の曲が予想より攻撃的で、予想以上に暴力的で、予想を遥かに超えて他の「パンク」と呼ばれているどの音楽との全然似てなくて、しばしアタシも正気を失ってしまうぐらい興奮してました。

どれぐらい興奮してたかというと、正座したままピョンピョン飛び跳ねるぐらい興奮してました。

冒頭に入ってたのが”ジェームス・チャンス&ザ・コントーションズ”!

あれ?確か雑誌の紹介では「ジェームス・ホワイト」ってなってたはずなのに、ジェームス・チャンス?まぁいいか、一緒名前だ。と一瞬ゆらっとなりましたが、いやもうこれ、バカ。

バカスカうるさいドラムと、ギャリギャリやかましいギターをバックに、思いっきり調子のずれたサックス、気合いを振り絞ったというより、ガラの悪いあんちゃんを、適当に吊るして締め上げたかのような捨身の絶叫系ヴォーカル。うほっ!




【収録曲】
1.Design To Kill
2.My Infatuation
3.Don’t Want To Be Happy
4.Anesthetic
5.Contort Yourself
6.Throw Me Away
7.Roving Eye
8.Twice Removed
9.Bedroom Athlete
10.Throw Me Away (Live)*
11.Twice Removed (Live)*
12.Jailhouse Rock (Live)*

*ボーナストラック


で、コンピレーションでカッコ良かったんだから、当然オリジナル・アルバムも探して聴くでしょうということで、都内の中古屋さんを探したら、ノー・ニューヨークの幻ぶりに比べて実にあっさりと、それほど高くもない値段で発見出来たジェームス・チャンス&ザ・コントーションズの、これがファースト・アルバムです。

内容は、オリジナル・アルバムだからコンピと違うとか全くそんなことなくて、初めて聴いて衝撃を受けた時のイメージそのまんまの、弾けてぶち壊れて、激しく調子が外れたまんま何かに全力でぶつかって、その都度粉々に砕け散る、絶好調の自己破壊サウンド。

これパンク? イエス、これパンク。

とはもう固く固ーく思うのです。たとえば90年代に出てきたマッチョで分厚くヘヴィなサウンドのハードコアなんかと比べたら、音の質感はうっすいカミソリみたいにヨレヨレのヘロヘロ。ただ、その分表現の仕方がぶっ壊れてるので、リアルタイムの音と比べても鬼気迫る狂気みたいなもんは遥かに上です。つうか何かと比べようがないです、良い意味でバカ過ぎて。

で、アタマの悪いアタシがすっかりハマって「これがパンクじゃあうひゃひゃひゃひゃ!」と聴きまくったのは言うまでもありません。

でも、彼らのとことん”自己破壊&巻き込み型の他者破壊”な表現のコアとは別に、音楽、特にリズムの方をよくよく聴くと、ロックにありがちな8ビートは一切使ってないんですよね。

サックスやギターの上モノがとにかくズッ外れてるし、ヴォーカルは絶叫だから気付かなかったんですが、リズムはむしろファンクなんです。

大体パンクでサックスなんか吹いてるところからしてフツーではないとは思ってましたが、彼らの音楽性というのは実に多彩で、いやその、ニューヨークというところは大体色んな人種の色んな音楽が集まるところだし、音楽以外にもアートや演劇など、あらゆる前衛芸術がこんずほぐれつやりあって、地下シーンから生まれるものは大体のっけからミクスチャーなものだということは理屈では分かっておりますが、コントーションズのミクスチャーぶりは、余りにもそのパンクな表現とマッチし過ぎていたのでうっかり見過ごすところでありました。

ノーウェーブっていうのは、当時パンクから派生したポップス路線のロックとして人気だったから、そういった商業主義的なものはクソだ、んなもんいらねぇという気持ちでもって名付けられたと聞きましたが、コントーションズ聴いていると、それ以上に気持ちいいBGMとかオシャレアイテムになっちゃったジャズとか、当初のソウルやファンクの反骨精神を失ったディスコ・ミュージックまでも射程に捉えて、全部の音楽のダメな部分に中指おっ立てておった。これはそういう音楽なんじゃなかろうかと、そのサウンドに心底興奮すると共に、その恐るべき反逆精神に心底ゾクッとする訳です。

それより何よりジェームス・チャンス、今もうすっかり60代半ばのいいおじいちゃんになってるのに、未だ”この”スタイルで現役です。それが一番おそろしい・・・。





『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:17| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする