2018年01月08日

DNA on DNA

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DNA on DNA


1970年代末期のアメリカ、ニューヨークの最先端であり最前衛の音楽をまとめたコンピレーション『ノー・ニューヨーク』の衝撃は、広く世界に、ではなく、世界の音楽や芸術シーンに深い衝撃を与えました。

パンク、或いはロックという音楽の側面からいえばこれはある意味イギリスのロンドンで起こったパンク・ロックのムーブメント以上にジャンルやカテゴライズの壁をぶち壊し、音楽のあらゆる要素が計画的無秩序に裁断され、粉砕されたその美しく危険な残骸を残骸のまま輝かせた、ということになりましょうか。

や、実はこのノー・ニューヨークというコンピに収録されたバンド達の演奏は、過激で暴力的でありながら、その表現の根幹には知性を感じさせるものが多いんです。

だから聴いてると、心と体は

「うをー!カッコイイ!ぎゃー!!」

と、ストレートに反応してしまいますが、頭の中にはどこか哲学的文学的な思考というのがループします。

一番最初に衝撃を受けたのは「ヴォーカルのやつが絶叫してサックスを吹く」というコントーションズでしたが、それとは別に「こんなにハチャメチャなのにクール!」と、これまた価値観や常識に捕らわれた脳味噌に回し蹴りを喰らわせてくれたバンドが"DNA"でした。

とにかくもうアート・リンゼイのキョーレツ極まりないノイズ・ギターです。

「ギャリギャリギャリギャリ!!」と耳をつんざくような凄まじく尖った雑音、どこをどうやって押さえて、どんなエフェクター使ってるのか?まず聴いた時にそんなことを思いましたが、何と、聞くところによるとアート・リンゼイ氏は12弦ギターに弦を11本だけ張って、それらの弦をまったくチューニングしないでムチャクチャに掻き鳴らしてるんだとか。

えぇぇ恐ろしい、何それ怖い・・・。

と、アタクシ狂喜しました。

そもそもこのDNAというバンドが、オリジナル・メンバーの3人(アート・リンゼイ、ロビン・クラッチフォード、イクエ・モリ)が3人共、楽器をマトモに弾けない”超”の付く初心者。

それぞれの話をすると、リンゼイ氏はDNA以前はパンクバンドでヴォーカルなどやっていたそうですが、元々は詩作に精を出す文学志向の青年で、ドラムのイクエモリは日本人ですが「ニューヨークの前衛シーンが面白いと聞いて・・・」ぐらいのノリで、ガッツリNYの過激なロックシーンを見たいという本気の青年(レックと言う人で、この人は帰国してフリクションというバンドを結成、日本のアンダーグラウンド・シーンのカリスマになりました)に付いていっただけなんですね。

で、ニューヨークには、音楽や文学、アートや演劇など、とにかくジャンルに関係なく過激で面白いもの、それまで誰もやってなかったようなことをやろうという若者達のパーティーがよく行われていて、そこでリンゼイ氏がメチャクチャなギターを弾いているバックで「おい、誰かドラムやってくれ」ということになり、”たまたま8ビートらしきものが叩けた”イクエ・モリを「君いいね、バンドやろう」と、リンゼイ氏とロビンが声をかけたことが始まりと言われております。

で、その声をかけたロビン・クラッチフォードは、一応キーボードを弾いてたけど、もちろん両手使ってちゃんと弾ける訳ではなくて、1本の指で鍵盤をガー!っと押さえてたと。

そんな連中がバンドをやる訳です、出す音は自ずと客観的に見れば”常識に囚われない/斬新な音楽”になります。

結成した78年にシングルを出し、続いてプロデューサーのブライアン・イーノの肝入りで『No New York』に参加。

この時の演奏が、マンハッタンの片隅でしか知られてなかったDNAの名をアメリカ東海岸の地下シーンに轟かし、しかもその評判は音楽(ロック)界隈ではなく、やっぱりアート界隈で「最高じゃねぇか!」「素晴らしい、価値観への新たなる挑戦だ!」と話題になりました。

ところがその直後に新しいバンドを結成したいという理由からロビンが脱退。

で、後任のメンバーとして、ベーシストのティム・ライトという人が加入します。

名の知れたパンク・バンド”ペル・ウブ”の結成メンバーであり、唯一ちゃんと楽器が出来るティムの参加は、DNAの音楽の質を一気に高めました。

リンゼイ氏もイクエ・モリも、流石に文学やアートに造詣が深いだけあって、素人とはいえ、そのセンスは並外れております。

ハチャメチャとはいえ「ここでこういうタイミング、こういう間で放ったら効果的である」ということをキチンと考えているフシが伺えるリンゼイ氏のギターはもちろん、イクエ・モリのドラムも「バスとスネアでリズムの軸を刻んで、タムやシンバルでオカズを入れる」というドラムのセオリーに則らず、タムタムで軸のビートを刻んだり、とにかく予測不可能なパターン度外視のリズムも本当に素晴らしく「これは磨けば確かなものになる」と、ティムは直感でそう思ったのでしょう。




【収録曲】
1.You & You
2.Little Ants
3.Egomaniac's Kiss
4.Lionel
5.Not Moving
6.Size
7.New Fast
8.5:30
9.Blonde Red Head
10.32123
11.New New
12.Lying on the Sofa of Life
13.Grapefruit
14.Taking Kid to School
15.Young Teenagers Talk Sex
16.Delivering the Good
17.Police Chase
18.Cop Buys a Donut
19.Detached [Early Version]
20.Low
21.Nearing
22.5:30 [Early Version]
23.Surrender
24.Newest Fastest
25.Detached
26.Brand New
27.Horse
28.Forgery
29.Action
30.Marshall
31.New Low
32.Calling to Phone


アルバム『DNA on DNA』は、そんなDNAの、最初期のシングルや、6曲入りたった10分ぐらいのデビュー・ミニ・アルバム『A Taste of DNA』と、ライヴ音源も含む編集ベストであります(リリースは2004年)。

ベストとはいえ、1978年の結成から84年の解散まで、短い期間で残した彼らのスタジオ音源の全てが入っておりますので、これはもうこれさえ持っていればOKぐらいの決定盤でしょう。

初期の野放図なカオス演奏もカッコイイけど、やはりティム加入後の、ほとんどの曲を2分弱とか3分以内に収めた、無駄のない深淵な演奏が絶品です。炸裂する初期衝動の中に奥深い知性をたたえながら、どこまでも聴き手の想像力を刺激して止まない”間”がたゆたう演奏は、俳句にも喩えられるほどに研ぎ澄まされた芸術性をやはり有しております。




『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 12:09| Comment(2) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする