2018年01月13日

ダニー・ハサウェイ ライヴ

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ダニー・ハサウェイ/ライヴ
(Atco/ワーナー・ミュージック)

デジタルダウンロードが最盛の時代にあって、ここのところアナログレコードやカセットテープなどの売り上げが伸びていると聞いております。

ほんでもって、僅かではありますが「やっぱり音楽はCDで聴きたいな」と、ダウンロードからCDに戻っている人もいるよという嬉しい話も耳にします。

当たり前の話ではあるんですが、やっぱり音楽ソフトっていいよねって思うのは、中身だけではなくて、歌詞カードやブックレットからジャケットに至るまでが、そのアーティストの心が入ったひとつの”作品”なんですよね。

で、不思議なことにそういう付加価値のいっぱいあるものってのは、手にした人にもたくさんのエピソードをお届けしてくれます。

「あのCD聴いてた時に失恋してさ、毎日泣きながら聴いてた」

とか

「友達の家に行ったら誰々のCDがあって、聴かせてもらったらエラいカッコ良かった」

とか

あぁすいません、アタシは発想が貧困な人間なので、こういったベタなたとえしかパッと出てきませんが、とにかくCDやレコードとか、そういった”モノ”としての音楽ソフトは、手にした人にとって、その人だけの特別な思い出が出来るんだよ、だからとってもいいもんだよ。

ということを、アタシはこれからも大々的に説いていきたいと思っております。

や、とにかく手軽に音楽聴きたいって時にはダウンロードも全然アリだし、youtubeで知らないアーティストを検索で引っかけて出会うとか、そういうことも素晴らしい。音楽に使うお金だって限られている訳だし、色んな素敵なものがタダで聴ける環境があるってのは否定しても何も始まらんですが、それを十分に肯定した上で

「気に入ったやつは記念としてCDとかレコードで聴いてみる」

っていうことを、どうかやってみてください。アナタの気に入った音楽の方からアナタに何らかの形で応えてくれるでしょう。

はい、音楽って本当に良いもんなんですよ。何より心を豊かにハッピーにしてくれる。


特にCDやレコードなど「作品」として作られた音楽にとっては、アルバム1枚という作りはひとつのドラマであります。

聴いているうちに、この曲がどうとかいった感覚ではなく「何か1枚通して聴いてしまうよね、グッとくるわ〜」という上質な感動に包まれる。

どのジャンルにも、そういったものの”究極”というのがあって、そういうのがいわゆる名盤というやつになります。

ベタな展開ですまんですが、今日は名盤を紹介しましょう。

その昔、アタシが大人になるかならないかぐらいの時、音楽好き、ロック好きの先輩の家に遊びに行けば、大体の確立でその人の家にあるアルバムというのがありました。

ダニー・ハサウェイの『ライヴ』です。

たとえば、CD棚にメタルやらローリング・ストーンズやら並んでいる中に、もしくはRCサクセションとかボ・ガンボスとか並んでる中に、唐突に『ダニー・ハサウェイ/ライヴ』と書かれた背表紙を発見するんですね。

そして、その率というのが、どういう訳か異常に高い訳です。

訊けば大体

「おぉ、コレはソウルだね。これいいぞー」

と、単純明快な答えが返ってきます。

というのも、この人達は「それ以上は知らん」訳なんですが、でも「これはいいものだから」と手に入れて棚に置き、大事に聴いてる訳です。

その頃はアタシもソウルとかはそんなに知らんかったので「ほぉ〜」ぐらいな感じでした。「どんな感じっすか?」と尋ねて耳にしても「なるほどオシャレでカッコイイわ」ぐらいの感想でとどまっておりました。ブルースは好きだったんですが、その反動でブラック・ミュージックには容赦ない濃さ/ドス黒さみたいなのを求めてたから、70年代の洗練されたソウル・ミュージックっていうのは、あぁ、まだオレには早いかなとしか、その頃は突っ張ってたので思えなかったんですね。

でも、そのほんの数年後に、このアルバムの凄さというか奥底からくる凄い”泣き”の部分に触れて

「うぉ!ダニー・ハサウェイって凄いですね!!あの”ライヴ”ってアルバム超名盤じゃないですか!!」

と興奮し、その都度

「いやだからお前、アレはいいぞって俺言っただろ」

とツッコミを喰らいました。





【収録曲】
1.愛のゆくえ(What's Going On)
2.ザ・ゲットー
3.ヘイ・ガール
4.きみの友だち
5.リトル・ゲットー・ボーイ
6.ウィアー・スティル・フレンズ
7.ジェラス・ガイ
8.エヴリシング・イズ・エヴリシング

何がどういうきっかけで、急に響いたのかは分かりません。ハタチ頃のアタシの精神状態といえば、よくある若者に特有の不安定なそれで、バカみたいなことばかり考えていて心はキュウキュウだった。そんなバカみたいな心に、この人の声、メロウでとことん優しい演奏、最高に暖かなライヴ会場の雰囲気みたいなものが一気に押し寄せたんでしょう。

何とはなしにいいなと思って聴いていたマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイング・オン』と、元々好きだったキャロル・キングの『きみの友だち』という2曲の絶品カヴァーが、とにかくぶわっときて、涙腺を刺激しました。

いや、人間本当に感動的なものに触れると、何も言葉が出なくなってボロボロと涙だけ出るってのは本当ですね。そんな体験がアタシの”はじめてのダニー・ハサウェイ体験”でした。いや、厳密には”はじめて”ではなかったんですが、そんなこたぁ関係ありません。感動で胸がいっぱいになったんです。

ダニー・ハサウェイがマーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールドと並んで70年代ニュー・ソウルを代表するシンガーということや、元々アレンジャー/作曲家として60年代シカゴのソウル・シーンでは高い評価を受けていた人だったということ、彼のオリジナル曲はとても優しいけど、歌詞には非常に社会性の強いメッセージが込められているということ、ソロ・アーティストとして順調な活躍をしていたけれど、精神の病に悩まされ、若くして不幸な事故でこの世を去ってしまったことなどは、後で知りましたし、いずれもこのアルバムを聴いた”感動の裏付け”でありました。

もちろんロックやブルース、フリージャズだらけのアタシのCD棚に「珍しくソウルのアルバム」としてこのアルバムはありましたし、その後これを中心に70年代ソウルのCDもどんどん増えていったのでした。今でもこのアルバムは、色んな音楽の「これ、優しいな」という部分を見出すための、良い基準となっております。つまり良いんです。えぇ、言葉なんて今も上手に出てきません。







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posted by サウンズパル at 11:30| Comment(0) | ソウル、ファンク、R&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする