2018年01月21日

デヴィッド・マレイ ミン

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デヴィッド・マレイ/ミン
(BlacK Saint/SOLID)

「70年代ジャズが面白いのよ!」と、つくづく思う昨今であります。

何が面白いかって、この時代は50年代のハード・バップ、60年代のモード・ジャズにフリー・ジャズにソウル・ジャズ、そしてリアルタイムで出てきたジャズファンクやフュージョンなどなど、ジャズのありとあらゆるスタイルがとりあえず出揃った段階で「さて、コイツをどうやって料理してやろうか」と、意欲に燃えるベテランから若いミュージシャンまでの、純粋に音楽的な探究心が追究された上で出来上がった作品が多い。

セールス的には、ジャズにとっては不遇の時代ではありました。

かつて一世を風靡した大物達でさえ、メジャーレーベルからの契約を切られたり、製作費を極端に減らされたりしてたんですが、そういった境遇が逆に

「よし、どーせ売れないんなら、徹底的にいいもん作ってやる!」

と、彼らの創作意欲を大いに刺激することになったんではないでしょうか。Do It Yourselfでありますね。

そして、若手の意識としては最初から芸術志向というか、そりゃあ売れるに越したことはないけど、オレはそんなんじゃなくて、カッコイイ音楽を極めたいからジャズやるんだよというものが何となく備わっており、そういった連中がニューヨークなんかの地下で客が少なかろうが何だろうがアツい演奏を連日繰り広げていて、これが後に”ロフト・ジャズ”と呼ばれる先鋭ジャズの一翼を担うシーンへと盛り上がってゆく訳なんですが、端的に言えば彼らの音楽が実にカッコイイ。

60年代のフリー・ジャズの流れを誠実に受け継ぐロフト・ジャズの連中は、やってる事はバリバリに硬派なんですが「オゥ、チャラくなきゃ何でもいいぜぇ」みたいな気前の良さがあって、ロックだろうが何だろうが、精力的に自分らの演奏に取り込む訳です。何というか音楽ももちろん良いの極みなんですけど、そういった独特の柔軟さみたいなものがサウンドに表れていて、そこにアタシは『ノー・ニューヨーク』なんかに限りなく通じるパンク・スピリッツを感じております。

で、そんな70年代ニューヨーク地下の住民としてアタシがイチオシする硬派なサックス吹きはデヴィッド・マレイです。

この人は今も現役バリバリ、アルバムも結構な数出しておりましてライヴも積極的にやっている、そのサウンドの如くタフな方であります。

1955年生まれで、本格的な活動を開始したのが70年代半ば。彼は元々アルバート・アイラー大好きっ子で、デビュー・アルバムも『フラワーズ・フォー・アルバート』という、タイトルも中身も”まんま”なぐらいにアイラーしているんです。

ん?この時代のフリー・ジャズな人達って、みんなコルトレーンが好きで、サウンドにも何かしらコルトレーンの影響が出てるんじゃないの?と、アタシも最初(どーしてもコルトレーン大好きっ子なもんで)その影響を懸命に探しておりましたが、どのアルバム聴いてもやっぱりアルバート・アイラー、アーチー・シェップ、それからコールマン・ホーキンスとかベン・ウェブスターとか、フリーからスウィング時代の王道テナーの影響はどんどん濃くなるけれど、コルトレーンっぽさはちょろっとも出て来ない。調べてみたら

「うん、コルトレーンは大好きだよ。でもみんなやってんじゃん、それってコルトレーンをリスペクトしてることになるのかなーって俺は思うんだよね。コルトレーンの曲はもちろん演奏するけど手法というところではあえてコルトレーンライクなフレーズはやんないね。まぁそれでいいじゃない」

というポリシーを持ってるんだとかどうとかで、こういう話に弱いアタシ

「あ、この人は漢(おとこ)!」

と惚れてファンをやってます。



【パーソネル】
デヴィッド・マレイ(ts)
オル・ダラ(tp)
ローレンス“ブッチ”モリス(cor)
ジョージ・ルイス(tb)
ヘンリー・スレッギル(as)
アンソニー・デイヴィス(p)
ウィルバー・モリス(b)
スティーヴ・マッコール(ds)


【収録曲】
1.ジャスヴァン
2.デューイズ・サークル
3.ザ・ヒル
4.ミン
5.ザ・ファースト・ライフ

(録音:1980年7月25日)


アルバムはたくさん出ています。

で、時代を経る毎に伝統的なものを重んじたオーソドックスなジャズもやればジャズ・ファンクもアフリカもするし、ラテンや歌モノとか、とにかく幅広く色んなことやってますが、この人の場合は「衝動と伝統へのリスペクト」が沸点に達して如何に豪快なブロウで暴れられるかという一点だけが良し悪しの基準ですので、アルバム色々聴いて「これはちょっとな・・・」というものはありません。

でもやっぱり個人的な好みといえば、70年代から80年代のノリと勢いで吹き切っている作品がいいですね。

吸い込まれそうな美人さんのジャケットが印象的なこの『ミン』なんか最初の1枚としては最高です。

これはですのう、録音は1980年、マレイが大好きなアルバート・アイラーのスタイルから更に踏み出してオリジナルなスタイルを築き始めた時期の口火を切ったアルバムみたいな感じになるんでしょうか。

コルネットというトランペット以前の古い楽器を使ってるのにバリバリのフリー・ジャズ・ミュージシャンであるブッチ・モリス、ラッパーNasの父ちゃんのオル・ダラ、シカゴフリー派の重鎮で、アルト・サックス奏者としてはもちろん、多くの若いアーティストの思想的な部分にも大きな影響を与えたヘンリー・スレッギル(そういえば最近ピューリッツァー賞を受賞しましたね!)といった、濃いメンツを10人も集めたスモール・オーケストラ作であります。

演奏は基本しっかりとした4ビートを軸にしたリズムに、渋いアレンジの上モノが演奏の輪郭をハッキリと描き、その上でマレイのサックスやその他のソロ楽器が存分にフリーキーな暴れっぷりを聴かせるという興奮モノ。

フリージャズといえばリズムも大胆に解体して、聴く人のイマジネーションに挑戦するようなものも多いけど、このアルバムではあくまで基本は「ジャズ」です。そのジャズとしてのスピード感や重厚なビート感、そして巧みに仕掛けられたアレンジの妙をしっかりと聴かせつつ、テンションを”クレイジー”にまで持っていかせる、小難しいことは何にもない感動と興奮の祭典。

マレイのブロウはのっけから炸裂です。正しく”ジャズなサックスのキレ方”ですこれ。

とにかくソロがカッコ良くて、暴走するテナーを聴いてるだけでおなかいっぱいになれますが、リズム・セクション、特にアンソニー・デイヴィスのピアノとウィルバー・モリスのベースが、手堅い4ビートのラインから一瞬脱線して暴れるそのアウトするセンスの良さにもシビレてしまいます。

聴きどころは他にもたくさん。でも何よりもこの「理屈じゃねぇんだよ、カッコイイことやりてぇんだよ」と言わんばかりのストレートな熱気、これが本当に素晴らしいのです。





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サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
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posted by サウンズパル at 20:30| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする