2018年01月26日

コーネル・デュプリー ティージン

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コーネル・デュプリー/ティージン
(Atlantic/ワーナー・ミュージック)

さて皆さん、お待たせしました。

今日まで硬派なやつとかファンキーなやつとか、色々と知られざる名盤をご紹介してきまして

「やっぱりアレだろ、70年代ジャズってのはフュージョン抜きでは語れねーだろー」

という、いずかたからの心の声が、アタシにも響いてきたところで今日はフュージョンでございます。

その前に「フュージョンってよく聞くけど、ぶっちゃけ何?」と、結構問い合わせを受けるんですよ。

確かに。フュージョンってのは、ジャズから発生した”新しい音楽”の呼び名でありますが、我が国においてフュージョンの全盛期ってのは1980年代。

その頃はカシオペアやTスクエアといったスーパーバンドがもう飛ぶと鳥を落とす勢いの大人気で、実はその時フュージョンを夢中で聴いていた人達(アタシより10ぐらい上の、今50代の人達ですかね)ってのは、学生の時にジャズを経由せずに、もうその頃の人気フュージョン・バンドやアーティスト達の作品を、ジャズとか何とか関係なく”フュージョンという音楽”として耳にすることが出来た。

で、よく本なんかを読んでいますと

「フュージョンというのはマイルス・デイヴィスが最初にジャズに電気楽器やロックビートなどを入れる事により云々、そしてその影響下からウェザー・リポートやチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーが云々、一方西海岸ではソウル/R&BのフィールドからStuffが云々」

と、割と難しく書いてありますが、多分フュージョン好きな人にとってはこういうお話、あんまどーでもいいんじゃないかなぁと、アタシ思うんです。

じゃあ今更どうフュージョンを説明するの?

と訊かれれば、それはそうですねぇ、じゃあザックリとシンプルに行きましょうか。

はい、フュージョンって音楽は、元々ジャズも出来るR&B畑のミュージシャン達が、LAとかカリフォルニアの、ちょい金持ちのオシャレな若者達が求める、海岸沿いの道をビーチで走るのに適した音楽を、いっちょう自分達もやってみようかねと、オッシャレ〜なジャズとオッシャレ〜なR&B要素を融合させて作り出した音楽です。

えぇぇ!?エレクトリック・マイルスは!?チック・コリアは?ウェザー・リポートは??

と、思う向きもおられるでしょうが、多分80年代日本で流行ったクチの”フュージョン”が好きな人達は、マイルスやリターン・トゥ・フォーエヴァーやウェザー・リポートの、ある種の”ドロドロ”を醸してるフュージョン、聴いとらんです。そんなことよりも爽やかでダンサンブルで、女にモテそーなのがいい、そういうの聴きたいと思って、そっち系の音を求めておったんでしょう。

はい、で、そんな感じのフュージョンの元祖は何になるかといえば、さっきもチョロっと名前が出てきましたが、西海岸で結成された”Stuff(スタッフ)”です。

このバンドは、主にニューヨークで活躍する腕利きのスタジオ・ミュージシャン達が集まった、ライトなR&Bをジャズのテクニックを駆使したインストで、どんな人でも楽しめるような、ポップでメロウで泥臭くないグルーヴ感がとっても魅力。

しかし、ライトなノリとはいえ、そこは70年代に様々な一流セッションで活躍した職人集団。その演奏は実に気合いが入っていて「これなんかいいよな、車で流そうか」といったBGM的な感じで聴くことも出来るポップな音楽を、同時にオーディオの前でじっくり対峙しても聴けるハイ・クオリティなものをしっかり作り、だからこそその後の”時代の音”となるサウンドの礎となり得たのであります(その思想を最も強く色濃く受け継いでいるのは、日本における山下達郎なんですが、この話長い上にクドいので今日は省略)。

さて、そんなスタッフの中心メンバーに、コーネル・デュプリーという素晴らしいギタリストがおりまして、この人が本日の主役です。

コーネル・デュプリーといえば、アレサ・フランクリンのバック・バンドのメイン・ギタリストを長年務め、はたまたレイ・チャールズ、マライア・キャリーにハリー・ベラフォンテ、マイケル・ボルトンにロバータ・フラックなどなどなど、本職のソウル/R&Bからポップスまで、錚々たる実力派シンガーのバックで見事なプレイを刻み込んだ、スタジオ・ミュージシャンの中のスタジオ・ミュージシャン。

第二次世界大戦まっただ中の1942年、アメリカ南部テキサスに生まれ、10代の頃はヒューストン・ジャンプ全盛のテキサスで、ギタリストとしてみるみる頭角を現し、そのズバ抜けたテクニックやブルース・フィーリングだけじゃなく、サイドマンとしてもキチンとバンド全体を見渡せて、そこに一番合ったバッキングで溶け合うことが出来る奴だと、大層評判でありました。

そんな活躍をしているうちに、この地が生んだスーパー・サックス吹きでありますキング・カーティスに「お前いいな」と見いだされ、若干20歳でカーティスの人気バンド”ザ・キングピンズ”に参加。

実はこのバンドには若き日のジミ・ヘンドリックスがおり、後年のぶっ飛びを思わせる過激なソロを弾いておりました。

で、コーネルはジミが派手に(地味が派手じゃないよ)暴れているバックで、黙々と最高にセンスの良いサイドギターとして頑張っており、このプレイがきっかけで、色んなレコーディングに呼ばれるようになり、テキサスの1ブルース・ギタリストから、あっという間にソウル/R&Bのシーンにはなくてはならないサイドマンとなったのです。


で、彼がようやくソロ・アーティストとして活動を開始したのが1974年。

満を持してリリースしたのが、デビュー・アルバムの『ティージン』です。



【パーソネル】
コーネル・デュプリー(g)
ジョー・ニューマン(tp)
アーニー・ロイヤル(tp)
ジョン・ファディス (tp)
ガーネット・ブラウン(tb)
ジョー・ファレル(ts)
セルダン・パウエル(bs)
トレヴァー・ケーラー(bs)
リチャード・ティー(p,org)
ポール・グリフィン(p)
ジョージ・スタッブス(p)
チャック・レイニー(b)
バーナード・パーディ(ds)
ラルフ・マクドナルド(perc)

【収録曲】
1.プレイン・オール・ブルース
2.ティージン
3.ブルー・ノクターン
4.ジャマイカン・レディ
5.フィール・オール・ライト
6.ハウ・ロング・ウィル・イット・ラスト
7.ホワット・ウッド・アイ・ドゥ・ウィズアウト・ユー?
8.オーキー・ドゥーキー・ストンプ

(録音1973年11月5・6・19・20日)


内容は、実にメロウで爽やかで、もうこの時点で後に”フュージョン”と呼ばれるサウンドを、誰よりも先取りしております。

そうそう"フュージョン"という言葉が出てきたのは、実はちょっと後になってからで、デュプリーらの「テクはジャズ、テイストはR&B」な、このテのライトメロウな音楽、出てきた頃は「クロスオーバー」と呼ばれておりました。

さてこのアルバム、どの曲も極上のリラックス・ムードに溢れていて、相棒のリチャード・ティー(p)による「ジャズ、ブルース、ソウル、そのどっちにも偏らず、かといって中途半端にならない絶妙な間合い」を意識したアレンジが効いてますね。

しかし、元々が南部テキサス仕込みの、強烈に粘るブルース・フィーリングを持っている人なので、これだけ爽やかでポップな雰囲気なのに、ギターはとことんアツい聴き応えを感じさせてくれます。

まずは1曲目『プレイン・オール・ブルース』での、絶妙ファンクなバック・サウンドに乗って、心地良く「フィーッ」と伸びてゆくチョーキング。あぁもうコレ聴くだけで幸せなんですが、曲を進める毎に、クールでメロウでポップな曲調の中からジワジワ沁みてくる、大人のアーバン・ブルースな”泣き”がもうたまらんのです。

特筆すべきは、テキサスの大先輩クラレンス”ゲイトマウス”ブラウンの大ヒット曲『オーキー・ドーキー・ストンプ』(!)前半から中盤の完璧なフュージョンの流れから、いきなりシャッフルビートでノリノリ(つうか原曲にびっくりするほど忠実なカヴァー)のヒューストン・ジャンプでバリバリに弾きまくっていて、ブルース好きにも大興奮間違いナシであります。

で、凄いのはこのロッキン極まりないブルース曲をポーンと入れても、全体の穏やかで爽やかで、ちょっぴりホロ苦い雰囲気は、全く壊していないところ。

アタシはこの人のギターが大好きで、やっぱりこのアルバム聴く時も”Stuff"聴く時も、ギターソロとカッティングを追っかけるように聴いてますが、ギター・プレイが際立ってカッコ良く聞こえるのも、この人の感覚が本能的にサイドマンで、ソロ弾いてる時も全体の雰囲気をしっかり考えて、隅々まで気配りが行き届いてるからなんだろうと、その真似出来ないクールな感性には毎度驚愕。

この人の音楽、一言で言えば「気合いの入ったフュージョン」なんですが、気合いとかそういうのどうでもいい、心地良い音が聴きたいという人には、気合いのキの字も見せず、とことんメロウに聴かせます。つくづくプロなんだなぁ、カッコイイです。


『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 19:33| Comment(0) | ジャズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする