2018年03月18日

ライ・クーダー Chicken Skin Music

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Ry Cooder/Chicken Skin Music

(Reprise Music)

スライド・ギターの名手にして、ロックンロール、ブルース、カントリー、ハワイアン、ラテン、テックス・メックスなどなどなど、世界中のあらゆるルーツ・ミュージックを縦横無尽に駆け巡る、音の探検野郎、ライ・クーダーであります。いやもう「人間らしいぬくもりのある音楽が聴きたいよ、そしてギターもカッコイイヤツね」という問い合わせを受けたならば、もう迷わずこれだろうと、自身を持ってオススメするのはきっとアタシだけではありますまい。

そうなんです、ライ・クーダーといえばスライド。

アタシが初めてその妙技にヤラレたのは、高校時代にブラインド・ウィリー・ジョンソンのスライド名曲『Dark Was The Night』の、余りにも有名なあのカヴァー・バージョンを耳にした時でした。

その美しい音ですすり泣いているかのような旋律はもちろん、それ以上にその旋律を通じて、見たこともないしあんまりよくわからん”アメリカの風景”が、脳裏にうわぁ〜んと迫ってきて「これはこれは!このギター誰が弾いてんの!?何?ライ・クーダー?知らん、どのバンドの人?え?バンドじゃない?何だそれウホッ!!」と、やたら感動したことがきっかけでありました。

決して派手なギターソロをギンギンにかます訳ではないけど、その曲に一番合った感じのセンスの良いフレーズを、スライドや優しいフィンガー・ピッキングのバッキングで弾くそのプレイは、どこまでも誠実でカッコイイ職人技で、やっぱり彼が奏でる音楽からは、アメリカ南部だったりハワイの海辺だったり、カリブに浮かぶ島の集落だったり、そういう見たことも行ったこともないけど、どこか懐かしい原風景なものが強烈に感じられ、アタシは聴いてくうちにギタープレイの技術的なことより何よりも、その”風景”にどうしようもなく惹かれてしまって、それがすっかり”ハマる”という状態に、いつの間にかなっておりました。

プロフィールを見ればアメリカ西海岸の大都会ロサンゼルスに生まれ、ブルースやカントリーを愛する音楽少年としてスクスク育ち、60年代には同じようにアコースティックなルーツ音楽が大好きだった黒人青年のタジ・マハール
と出会って意気投合。それからタジとのバンド”ライジング・サンズ”やキャプテン・ビーフハート(!)などでギタリストとして活躍し、ローリング・ストーンズの名盤『レット・イット・ブリード』に参加したことがきっかけで「アメリカン・ロックの真髄を知るスライド・ギタリスト」として注目を浴び、ソロ・デビュー。

売れ線の音楽には一切脇目もふらず、ただひたすらにアメリカや世界中の古いトラディショナル・ソングを持ち前のセンスで蘇らせながら、彼を敬愛する多くのミュージシャンや世界中にいる真の音楽ファンにアツく支持されて今に至ります。

そう、彼こそは「音楽が本当に好き!大好き!」という熱意だけで音楽やっている稀有な人、彼が奏でる音楽にはあざとさもなく、いろんな音楽をチャンプルーしてる割には、その音楽が1枚のアルバムの中でもとっ散らかることもなく自然に心地良く響いておるのです。

さてさて、ここまで読んでライ・クーダー知らない方や聴いたことがないという人も多いと思いますので前置きはこれぐらいにしてオススメのアルバムを紹介しましょう。





【収録曲】
1.Bourgeois Blues
2.I Got Mine
3.Always Lift Him Up / Kanaka Wai Wai
4.He'll Have To Go
5.Smack Dab In The Middle
6.Stand By Me
7.Yellow Roses
8.Chloe
9.Goodnight Irene


アルバム『チキン・スキン・ミュージック』は、1976年リリースの、ソロ名義としては5枚目のアルバムで、個人的には彼の作品の中でも「これこれ、この雰囲気なんだよね♪ ライ・クーダーの音楽って♪」と最もワクワクさせてくれる一枚です。

のっけからアメリカン・フォーク・ソングのレジェンド、レッドベリーのブルースが、乾いた良い感じのギター・アンサンブル(ギター×スライドギター×マンドリン×アコーディオン)でアレンジされた、ほんわかナンバーでグッときます。

収録されているのは全てアメリカのフォークやブルース、R&Bのクラシックスなんですが、ここで単なるカヴァーに終わらせないのがこの人の凄いところ。そう、こういった誰もが「アメリカの古い歌」として知っているようなナンバーにも、深い繋がりのある”周辺の民俗音楽”テイストをたっぷりとふりかけて、懐かしく心に訴える原風景を見せてくれるのがライ・クーダー。

具体的には、このアルバムでは”雰囲気”としてアメリカとメキシコ国境地帯の音楽である”テックス・メックス”とハワイアンのテイストが、全体に絶妙に、そして深く絡んでおります。

テックス・メックス側からはアコーディオン奏者のフラコ・ヒメネス、ハワイアンからはギターでギャビー・パヒヌイという、それぞれそのジャンルの大御所中の大御所と言ってもいい”ホンモノ”がガッツリ参加。

とりあえずパヒヌイのおおらかなヴォーカルが、ライの優しいギターと夢のようなハーモニーを聴かせる7曲目『黄色いバラ』と8曲目『クロエ』(こっちはパヒヌイのギターが最高)、これ、原曲ハワイアンではないのですが、何でこんなにもハワイアン独特の”横ゆれ”の心地良さに満ちているんでしょう。

更にパヒヌイは参加していないけど、ライのギターとハワイアン・チャントのコーラス隊による天国のような感想に泣く3曲目『いつも優しく』も、ハワイアン名曲として永遠に語り継がれて良い出来であります。

テックス・メックスの楽しさは4曲目『浮気はやめなよ』で。

まったりしたスンチャカリズムに乗った歌とヒメネスのほわ〜ん切ないメロディのアコーディオンにコーラス・ワーク。これですねぇ、うまく言えないけど、メキシコ系住民の多いテキサスのとある街角、そこでただ自分達のささやかな楽しみのために、テキーラひっかけながら音楽やっているおじちゃん達の、すこぶるゴキケンなあの感じ、あの感じですよ。

ライ・クーダーという人は「この音楽が好きだから」というシンプルな理由で今もひたすらにルーツ・ミュージック探求の旅を続けております。

もちろんあらゆる音楽のことに尋常じゃない程深く精通していて、たとえばブルースやカントリーとハワイアンやカリプソなんかが別々の地域で勝手に生まれて発展したんじゃなくて、根っこのところで様々な交流があってしっかり繋がっていることも理解している訳です(だから彼の全ジャンルの”ごった煮”はごった煮じゃなくてちゃんと繋がっている音楽として聴ける)。

でも、聴いている人にはそういう難しいことを一切考えさせない。むしろライが音楽的にとても高度で凝りに凝ったことをすればするほど、聴く人(はぁいアタシです)は、その音楽が醸す夢のように心地良い響きと、そこに込められているストーリーの奥深さに「はぁぁいいねぇ〜」と、シンプルに感嘆のため息を漏らすのです。










『音のソムリエ 高良俊礼の音楽コラム』

サウンズパル店主高良俊礼の個人ブログ
http://ameblo.jp/soundspal/
posted by サウンズパル at 17:43| Comment(0) | ロック/ポップス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする